■要約
NexToneは2016年の発足以降、音楽を中心としたエンタテインメント領域において、著作権管理事業、デジタルコンテンツディストリビューション(以下、DD)事業、音楽配信事業などを展開し、音楽産業における権利者と利用者の双方を幅広くサポートしている。主力事業である著作権管理事業の主な競合は、(一社)日本音楽著作権協会(JASRAC)であり、同社とJASRACの2社寡占市場である。
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比7.0%増の20,774百万円、営業利益が同29.4%増の1,301百万円、経常利益が同29.8%増の1,334百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同14.3%増の791百万円となった。全セグメント増収を確保し、2桁増益で着地した一方で、期初計画比では売上高・営業利益ともに下回って着地した。著作権管理事業及びDD事業における配信関連の取扱高が想定を下回ったことや、子会社における新規サービスの展開遅延が響いた。もっとも、基盤収益は拡大しており、配信関連の回復が今後の焦点となる。
2. 2027年3月期業績見通し
2027年3月期の連結業績は、売上高が前期比5.9%増の22,000百万円、営業利益が同23.0%増の1,600百万円、経常利益が同19.9%増の1,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同26.3%増の1,000百万円と、増収増益を予想している。同社は管理楽曲数及び取扱原盤数の増加、既存サービスの拡大、新規サービスの展開により増収増益を計画している。2026年3月期は期初計画を下回ったものの、2027年3月期はDD事業の成長やビジネスサポート事業の黒字化などが利益拡大に寄与する見通しであり、各施策の進捗が業績回復の確度を高めていくだろう。
3. 中長期の成長戦略
同社は2027年3月期から2029年3月期までの中期業績計画を開示している。2桁増収増益基調が続く見通しであり、2029年3月期には売上高260億円、営業利益23億円、営業利益率8.8%を目標としている。収益の中核である著作権管理事業及びDD事業は引き続き高成長を維持しながら、新規事業の展開を通じて、新たな成長ドライバーの創出を図ることにより非連続的な成長を実現し、中長期的な企業価値の持続的向上を目指す。また、株主還元については配当を実施しており、2026年3月期は1株当たり年間配当金20円(期末配当20円)、続く2027年3月期は年間22円(中間配当11円、期末配当11円)を見込んでいる。安定的かつ継続的な配当を基本方針とし、収益成長に応じた増配も視野に入れている。
■Key Points
・主力事業の著作権管理事業は同社とJASRACの2社寡占市場
・2026年3月期は期初計画を下振れたものの2桁増益で着地、基盤収益は着実に拡大
・2027年3月期はDD事業の成長やビジネスサポート事業の黒字化により増収増益の見通し
■会社概要
著作権管理を基幹事業として、総合的な音楽エージェントサービスを提供
1. 会社概要
同社は2016年に発足した。音楽を中心としたエンタテインメント領域において、著作権管理事業、DD事業、音楽配信事業などを展開し、音楽産業における権利者と利用者の双方を幅広くサポートしている。同社の事業セグメントは、著作権管理事業、DD事業、音楽配信事業、その他により構成される。
著作権管理事業は、作詞家、作曲家、音楽出版社など著作権者からの委託を受け、音楽著作物の利用の許諾、使用料の徴収・分配を行う。同事業は、国内では同社とJASRACの2団体による寡占市場である。DD事業は、音楽を中心としたデジタルコンテンツを国内外の配信事業者へ供給する。音楽配信事業は、インターネットを通じて楽曲を配信する。そのほかにも、アーティストブッキングやライブへのユーザー招待、楽曲タイアップに関わる音楽コンテンツの権利処理等を通じたコンテンツ利用促進コーディネート、家庭向けライブ配信サポート、ライブビューイングなどを行うキャスティング事業、著作権・原盤権等の権利処理システムの開発・提供、コンテンツ配信関連のシステム開発・提供などを行っている。
2. 沿革
1899年(明治32年)に旧著作権法が制定されたが、その後も音楽の分野では楽曲の無断演奏などが横行する状況が続いたため、1939年(昭和14年)に「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(以下、仲介業務法)が制定された。同法律の目的は、著作権が正当に行使されるために国の指導監督の下で著作権の集中管理を行う団体を原則一分野一団体として作ることにあった。仲介業務法が制定された年に、音楽の分野では(社)大日本音楽著作権協会(現 JASRAC)が設立され、同法律の下で音楽分野の唯一の著作権管理団体として、以後はその役割を一手に担ってきた。
その後、2001年10月1日に「著作権等管理事業法」が施行されると同時に「仲介業務法」は廃止され、事業の許可制が登録制へ、使用料の認可制が届出制へと変わり、一分野一団体の原則がなくなり、民間に著作権管理業務に関する門戸が開放された。同社の前身の1社である(株)イーライセンスは著作権等管理事業法の成立を前提に、2000年9月に三野明洋(みのあきひろ)氏(元 同社取締役会長、2019年6月まで相談役)が設立したものである。一方、同社の前身のもう1社である(株)ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)は、2000年12月にアーティストマネージメントオフィス11社の出資により、同社の現 代表取締役COOである荒川祐二(あらかわゆうじ)氏により設立された。
両社は、以後約15年にわたりそれぞれが著作権管理事業を行っていたが、イーライセンスの代表取締役社長であった阿南雅浩(あなんまさひろ)氏(現 代表取締役CEO)は、音楽著作権市場に健全な競争原理を導入するためには、市場シェア第2位のイーライセンスと第3位のJRCが事業統合し、JASRACの対抗軸となることが合理的であると考え、荒川氏に合併を提案し、賛同を得た。2016年2月に合併が実現し、商号を現社名に変更した。
同社は、2020年3月30日に東京証券取引所マザーズに上場した(2022年4月4日にグロース市場へ移行)。2023年9月には(株)レコチョクの株式51.7%(議決権割合)を既存株主から取得し、レコチョク及び子会社の(株)エッグスを連結子会社化した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)