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アブラハム合意後の通貨【フィスコ・コラム】

トランプ米大統領が提唱するアブラハム合意が実現した場合、市場はどのような影響を受けるでしょうか。原油相場は安定化し、資源国通貨の買いが見込まれます。その中でも最大の恩恵を享受するのは、実はあの国の通貨かもしれません。

アブラハム合意とは、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化を目指す枠組み。第1次トランプ政権時代の2020年にアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンなどが参加し、中東外交の大きな転換点となりました。トランプ氏は現在、この枠組みをさらに拡大し、中東地域の有力国の参加を実現したい考えです。

鍵を握るのはサウジアラビア。同国は世界有数の産油国であり、イスラム教の聖地メッカとメディナを抱える中東の大国でもあります。サウジが参加すれば、アブラハム合意は単なる外交合意から中東全体の秩序再編へと発展する可能性があります。一方で、パレスチナ問題やイランとの関係を重視する国も多く、パキスタンなどは慎重な姿勢を崩していません。

市場では中東情勢の安定化が期待されるでしょう。地政学リスクが後退すれば、原油価格に上乗せされている「戦争プレミアム」は縮小する見通し。近年の原油相場は中東情勢に振らされましたが、産油国間の対立が解消されればその懸念も和らぐはず。原油高を背景に買われてきたカナダドルやノルウェークローネなど資源国通貨は追い風が弱まり、逆に原油輸入国の通貨が見直される展開が考えられます。

直接的なメリットを受けるのはイスラエルの通貨シェケルでしょう。サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国との経済交流が進めば、投資や貿易の拡大が期待されます。イスラエルは人工知能(AI)、サイバーセキュリティー、半導体分野で高い競争力を持つため、中東マネーの流入先として改めて注目を集めるかもしれません。

ただ、為替市場全体で見た場合、最も恩恵を受けるのはインドルピーではないでしょうか。インドは原油需要の約8割以上を輸入に依存する世界有数のエネルギー輸入国です。原油価格が下がれば輸入負担が軽減し、貿易赤字や物価上昇圧力の緩和につながります。インド準備銀行(RBI)も金融政策を運営しやすくなり、海外投資家にとっても魅力が増します。

さらに、インドはイスラエル、サウジアラビア、UAEのいずれとも良好な関係を維持しています。近年は中東の政府系ファンドによるインド投資も活発です。アブラハム合意の拡大は単なる外交ニュースではなく、中東マネーの流れを変える可能性を秘めています。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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