■業績動向
1. 2026年9月期中間期の業績動向
CRI・ミドルウェアの2026年9月期中間期の業績は、売上高1,849百万円(前年同期比0.4%減)、営業利益301百万円(同22.3%減)、経常利益321百万円(同17.8%減)、親会社株主に帰属する中間純利益222百万円(同18.1%減)となった。通期予想に対する進捗率は売上高で47.3%、営業利益で50.2%であった。減収減益決算のうえ、進捗率(前年同期は売上高53.8%、営業利益69.9%)から厳しい決算のように見えるが、実際は計画通りの着地であったようだ。
日本経済は中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きも見られる一方、企業収益は製造業で米国関税政策による下押しの影響が見られるものの全体としては高水準を維持、業況感も中東情勢の影響を受けつつも良好な水準で推移しており、景気は緩やかに回復している。事業環境としては、モビリティ業界においてSDV※の開発が注目を集めるようになり、ゲーム業界で培ってきた同社のミドルウェアの技術と知見を活用できる環境やタイミングが一層整いつつある。また、「2025大阪・関西万博」でリアル会場に加えてバーチャル万博が併設されるなど、オンラインコミュニケーションがリアルとバーチャルのハイブリッドという形で着実に受け入れられるようになった。
※ SDV(Software Defined Vehicle):販売後もソフトウェア更新によって機能や価値が更新される自動車。
こうした環境下、同社は、モビリティやオンラインコミュニケーションなど今後成長が見込める市場を見据えた研究開発体制を整備するとともに、新製品の開発や海外展開の推進など事業基盤の拡大、グループシナジーの創出に注力した。中間決算は減収減益となったが、第1四半期が6.8%の減収、77.0%の営業減益となったことが最大の要因である。これは前年同期のカラオケの一括許諾売上がなくなったことが主因で、第2四半期は5.2%の増収、7.3%の営業増益と回復している。さらに言えば、第1四半期、第2四半期ともに会社計画どおりであったようだ。
第1四半期の遅れは、ゲーム事業において国内と中国で一時的に許諾売上が落ち込んだこと、前期に再注力を開始した欧米で「CRIWARE」の採用が低調であったところに再注力に伴う営業スタッフの増員でコストが先行したこと、エンタープライズ事業で前年同期にあったカラオケ向けの一括許諾売上がなくなったことなどが要因である。特にカラオケの一括許諾売上は、前中間期の営業利益進捗率を押し上げた主因でもある。第2四半期はゲーム事業が回復、エンタープライズ事業もモビリティ中心に好伸長となったものの、中間期の売上高は減収となった。利益面では、売上高が伸びないなか、受託減に伴って外注費は減少したものの、クラウドソリューションなどにおけるR&D費、モビリティの売上拡大に伴う代理店手数料、欧州での営業スタッフ増員などの費用が嵩んだことに加え、利益率の高いカラオケの一括許諾売上がなくなったことが影響し、営業減益となった。
トピックスとして、2025年12月に、音声解析リップシンクミドルウェア「CRI LipSync Alive」をグローバル市場に向けて提供開始した。機械学習による音声解析技術と事前解析ツール向けに独自開発した技術で、どんな言語にも対応するリアルで自然なリップシンクアニメーションを生成できる。デジタルキャラクターが自然に口を動かし、話すことが当たり前となったゲームやエンタープライズ市場において、高機能なリップシンクは必要不可欠と言える。また、中国Hypergryph社が2026年1月にリリースした大型ワールドワイドタイトル「アークナイツ:エンドフィールド」に「CRIWARE」が採用され、日本語のボイス収録をツーファイブが担当した。近年のゲーム開発ではプレイヤー体験の質が重視されており、映像・音声・操作性を含む演出の総合力がキャラクターや作品全体の評価に影響するため、演出表現を効率的に実現できる同社の強みが発揮される機会が多くなってきたと言える。
カラオケ特需の反動と欧米の先行投資が影響
2. 2026年9月期中間期のセグメント動向
セグメント別の業績は、ゲーム事業が売上高937百万円(前年同期比1.2%減)、セグメント利益86百万円(同32.6%減)、エンタープライズ事業が売上高911百万円(同0.5%増)、セグメント利益214百万円(同17.1%減)となった。ゲーム事業のなかでも順調な音響制作、エンタープライズ事業では好調のモビリティが増収を確保した。
(1) ゲーム事業
ミドルウェア/ツールでは、第1四半期に世界展開を目指す日本発のタイトルがほとんどなかったため、第2四半期で複数の一括契約を獲得したものの、「CRIWARE」などの国内許諾売上高が減収となった。海外向けは、中国で、第3のOSであるHarmony OSの既存ゲーム向け許諾が一巡したものの、テンセントやネットイースなど大手重要顧客複数社で長期継続的に課題解決を提供するアカウント営業戦略の成果が出始めたため、中国全体で許諾収入が増加した。一方、立ち上げたばかりの欧米では、採用タイトル獲得が計画どおりに進まず、欧米全体で減収となった。音響制作は、中国の大型タイトルの音声収録案件が引き続き好調に推移し、大型案件が増えてリピートも安定したため増収となった。KPI(重要業績評価指標)は、「CRIWARE」のライセンスが10,581と着実に積み上がり採用率も改善したが、業績に反映できていないように見えるのは、日本と売り切りの多い欧米で許諾が伸びなかったことによる。利益面では、継続してきた「CRI TeleXus」への研究開発投資が一巡したため減価償却費は減少したものの、外部委託やサポート、コンサルなど欧米再注力のための先行投資がかさみ、減益となった。
(2) エンタープライズ事業
モビリティは、「ADXAT」が着実にライセンスを積み上げるなか、「CRI Glassco」がインド市場向け二輪車を中心に大きく伸長したため増収となった。まだ多いとは言えない「CRI Glassco」の四輪向けについては、車種またはメーカーをターゲットに増やしていく。組込みは、前第1四半期にあったカラオケの新機種発売に伴う特需の剥落により大幅な減収となった。クラウドソリューションは、前第3四半期からR&Dフェーズへシフトする一方、前中間期にはまだ売上があったため、意図された大幅な減収となった。なお、R&Dの完了は当初想定していた上期でなく下期に延びる模様である。KPIは、「ADXAT」ライセンスが1,945万件と着実に増加、「CRI Glassco」は想定どおり大幅な増加となった。利益面では、受託が減少したため外注費は減ったが、組込み分野のカラオケ特需剥落、クラウドソリューション分野のR&Dフェーズへのシフト、モビリティの売上拡大に伴う代理店手数料増により減益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)