■要約
富士紡ホールディングスは1896年に設立し、長年の構造改革を経て、現在は研磨材事業と化学工業品事業を成長領域とする高収益の先端材料メーカーへと変貌を遂げている。2026年3月期は、AI関連向け先端半導体の需要増による主力の研磨材事業の好調と、電子材料分野にけん引された化学工業品事業の高稼働が相まって、各段階で大幅な増収増益を記録した。今後は新中期経営計画「進化26-30」を始動し、積極的な成長投資と株主還元の強化との両立により、さらなる飛躍的成長を目指す。
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高45,929百万円(前期比7.0%増)、営業利益8,143百万円(同25.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,612百万円(同25.4%増)となり、利益面で過去最高を更新した。特に期初に計画していた営業利益70億円に対して11億円もの大幅な上振れとなった点が注目される。主な要因は、生成AI等の需要拡大により主力の研磨材事業(CMP用途等)が想定以上に好調に推移し、同セグメントで売上高22,561百万円(同16.8%増)、営業利益6,385百万円(同35.0%増)を記録したことにある。限界利益率の高い研磨材事業がけん引したことに加え、化学工業品事業も国内工場が年間を通じて高稼働を維持し、安定した収益基盤として利益の上振れに貢献した。
2. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の連結業績は、売上高52,700百万円(前期比14.7%増)、営業利益9,200百万円(同13.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,300百万円(同12.2%増)と、連続して力強い2ケタ増収増益を見込む。中東情勢などによる原材料・エネルギー価格の高騰や、販売価格改定に伴うタイムラグによる一時的な利益圧迫(研磨材で約5%、化学工業品で約10%の営業利益減少要因)をあらかじめ保守的に織り込んだうえでの計画である。コア事業である研磨材事業では、AI関連投資の継続的な拡大を背景に売上高24,500百万円、営業利益7,000百万円、また化学工業品事業では2026年4月より第5工場が新たに稼働を開始しており、売上高18,300百万円、営業利益1,700百万円と引き続き全社業績を両事業が力強くけん引するシナリオを描いている。
3. 新中期経営計画の戦略的変革
前中期経営計画でROE及びROIC10%以上を達成した同社は、2035年に向けた飛躍的成長の基盤を構築する新中期経営計画「進化26-30」を始動した。最終年度となる2031年3月期には連結売上高650億円、営業利益130億円の到達を目指す。本計画における戦略的なハイライトは成長投資の抜本的な拡大であり、5ヶ年で累計480億円(うち研磨材事業に347億円)の設備・研究開発投資を実行する。この資金需要に対応するため、本業からのキャッシュ創出に加え、前半3ヶ年で約100億円の銀行借入を活用するなど、有利子負債を戦略的に導入する方針へと転換した。また、M&A投資枠として50億円を設定し、ハードパッド市場への本格参入などを含めて非連続な成長機会も追求する。
4. 株主還元と資本効率の追求
株主還元と資本効率の向上において、より幅広い投資家層の拡大と株式の流動性向上をねらい、2026年4月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を実施した。さらに、新中期経営計画のスタートに合わせて、配当性向の目標水準を従来の35%から40%へと大幅に引き上げた。これに伴い、2027年3月期の年間配当予想は分割後基準で78円とし、分割前換算で前期比54円の大幅な実質増配を見込んでいる。なお、同社は配当の原資について、減損損失や特別利益のような一過性の要因を排除した定常収益をベースに算出する方針を明示している。
■Key Points
・2026年3月期はAI需要を背景に主力研磨材がけん引し、計画を11億円上回る過去最高益
・2027年3月期はコスト増を保守的に織り込むも、研磨材と新工場稼働の化学工業品がけん引し2ケタ増益見込み
・新中期経営計画では480億円の成長投資と有利子負債の戦略的活用により営業利益130億円を目指す
・配当性向40%と定常収益ベースの還元を確約。株式分割で資本効率の向上を図る
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水 啓司)