2026年3月期決算および新中期経営計画説明会
李太煥氏(以下、李):みなさま、こんにちは。株式会社NITTAN代表取締役社長の李です。本日は大変お忙しい中、当社の説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
当社は、内燃機関向けエンジンバルブを主力製品とする精密鍛造部品メーカーであり、独自に開発・製造が可能な、系列に属さない企業です。
特に自動車向けエンジンバルブでは、日本企業としてトップシェアを誇り、世界第4位を占めています。また、二輪車向けや船舶向けの分野では世界トップシェアを有しています。そのシェアを支えているのが、当社のグローバル対応力です。
世界10ヶ国18拠点で生産を行っており、お客さまの地産地消ニーズに対応できることが当社の強みです。また、独自の開発能力はエンジンバルブだけでなく、燃料電池関連の新事業領域への進出にも役立っています。
本日は決算説明に加え、このような当社の強みや企業価値向上に向けた取り組みについてお伝えします。最後までよろしくお願いします。
0. 本日お伝えしたいこと〜NC10達成への道〜
本題に入る前に、本日お伝えしたいことについてご説明します。
まず、当社の中長期経営ビジョン「NITTAN Challenge 10」についてです。このビジョンを当社では「NC10」と呼んでおり、以降は「NC10」と表記します。
詳しくは後ほどご説明しますが、この「NC10」を一貫して進めてきた結果、2026年3月期には中期経営計画の達成が見えるレベルまで成長し、収益基盤を確立できたと認識しています。
今回はこの基盤を踏まえ、新たな中期経営計画を策定しました。この新中期経営計画については後ほどご説明しますが、以降は、新中計と表記します。
0. 本日お伝えしたいこと〜NITTANの変革〜
ここで、これまでの3年について振り返ります。
私が社長に就任したのは2022年ですが、その2年後の2024年8月30日には、現在のNITTAN恵那金属のM&Aを発表しました。
そして2025年には、当社の成長の鍵を握るインド拠点で、ヒュンダイインディアおよびロイヤルエンフィールドの新規受注獲得を発表しました。同年7月には、ヒュンダイインディアから軸中空バルブおよび傘中空バルブの受注獲得を発表しました。
11月にはインド拠点の第2工場の竣工セレモニーに私も出席しました。この拡張したスペース分の受注はすでに埋まっており、さらに拡張が必要な状況です。
また、11月28日には横浜キャピタルとの事業提携を締結しました。そして、2026年2月には韓国にある新和精密グループの連結子会社化を発表しました。この新和精密は、私自身が設立に関わった会社でもあります。
新和精密が製造しているバルブリフターについては、インド拠点で2028年を目途に現地生産を予定しています。そのため、インドには引き続き積極的に投資を行っていきます。
0. 本日お伝えしたいこと〜NITTANの強み〜
私は社長就任前から、一貫して「内燃機関はなくならない」と言い続けてきました。当時はバッテリーEV(BEV)一択という見方が強く、内燃機関の縮小が業界の予測でしたが、現在ではハイブリッド(HEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)を中心とする多様なパワートレイン構成へと変化しています。
このような事業環境の変化の中で、当社は自社の強みである内燃機関分野における技術開発と事業基盤を強化してきました。具体的には、中空バルブのさらなる進化と拡販、インド拠点での受注拡大および設備投資などが挙げられます。
今回の新中計では、これら既存事業の収益性をさらに高めるとともに、営業キャッシュフローを最大化し、そのキャッシュを成長投資と株主還元の両立に活用していきます。
目次
本題に入ります。本日はスライドに記載のとおり、4部構成でお伝えします。
第1部および第2部は、経営企画部担当執行役員の村山より、第3部および第4部は私、李がご報告します。
1-1. 会社概要
村山誠治氏(以下、村山):執行役員経営企画部担当の村山です。先ほど、李さんからグローバル対応力についてのお話がありましたが、その点も踏まえて、第1部「NITTANってどんな会社?」についてご説明します。
まずは会社概要です。設立は1948年で、今年で創業78周年を迎えています。前身を含めると102年の老舗企業です。従業員数はグローバルで2,503名、製造拠点は10ヶ国18拠点に展開しています。売上高は、2026年3月期において516億円を記録し、過去最高となりました。
当社は日本で初めてエンジンバルブの量産化に成功した企業です。スライド右下に記載のとおり、現在も国内トップシェアを維持しています。
1-2. 会社概要–Globalの歩み–
当社のグローバルの歩みについてご説明します。前身である恩加島(おかじま)鉄工所は、1924年に大阪で設立され、その後1948年に日鍛バルブ製造として当社の歴史が始まりました。
その20年後の台湾日鍛設立を皮切りに、1988年に北米の「U.S.エンジンバルブ」、1995年にはインドネシアと韓国へ進出しました。その後もタイ、中国、ポーランド、インド、ベトナムなどに拠点を設け、グローバルな成長フィールドを築いています。
2022年には社名を「株式会社NITTAN」に変更し、M&Aを通じて新たな技術を取り入れることで、さらなるグローバルな飛躍を目指しています。
1-3. 会社概要–Global展開–
NITTANグループは、このような成長の結果として、日本に3拠点、海外ではASEANおよびアジアに13拠点、北米と欧州に各1拠点の、合計10ヶ国18拠点を展開するまでになりました。
NITTANのグローバル展開の強みは、世界中で働く仲間です。国籍や文化、価値観といった多様な違いを受け入れ、尊重し、それを力に変えてきました。世界中の仲間が、それぞれの違いを認め合いながら同じ目標に向かって進んでいること、これがNITTANのグローバルであり、ダイバーシティの姿そのものです。
このようなグローバルな基盤を強みとして、私たちは中長期経営ビジョン「NC10」の達成に向けて挑戦を続けていきます。
1-4. 売上高及び事業セグメント別比率
連結売上高および事業セグメント別比率です。2026年3月期の連結売上高は516億円となりました。
その中で、小型エンジンバルブ事業の割合は80パーセントとなり、昨年から7ポイント減少しました。これは、舶用事業の売上拡大とNITTAN恵那金属のM&Aが影響しています。「NC10」を通じて、事業の多角化を着実に進めていきます。
1-5. 売上高及び所在地別比率
海外売上高は全体の59パーセントを占めており、アジア、北米、欧州のグローバル拠点の強みを活かして地産地消体制を整えています。
特にインド市場では、現地生産が受注の前提となっており、拠点の有無が競争優位に直結しています。そのため、すでにインド拠点を保有している当社は、競争力の面でも大きな強みを持っていると考えています。
1-6. 国内・海外 主要お取引先様比率(連結売上高)
こちらのスライドは、国内および海外の主な取引先別のシェアを表しています。国内では、系列に属さない強みが反映されており、主要顧客との取引基盤があることを示しています。
海外については、特定顧客の比率が高い面もありますが、すべてのお客さまの地産地消ニーズに対応してきた結果です。
1-7. NITTANのコア技術
これまでにご紹介した売上を支える、NITTANのコア技術についてご説明します。
当社は、鍛造、盛金、接合、加工、表面処理の5つのコア技術を有し、これらを組み合わせることで高付加価値バルブの量産を実現しています。高付加価値バルブである中空バルブの製造では、鍛造、穴あけ加工、冷媒封入、接合という4つのステップで効率的な製造プロセスを確立しています。
また、環境対応エンジンの中でも、特にCNGエンジン向けバルブには、盛金技術による耐摩耗性・耐食性の向上が重要な要素となっています。
当社は、これらの技術をグローバルに展開し、高付加価値製品を供給することで競争力の強化につなげていきます。
1-8. 当社主要製品の搭載箇所
こちらのスライドは、当社製品がコア技術を活用してどこに搭載されているのかを示した資料です。
①エンジンバルブ、②バルブリフターは、エンジンの上部にあるシリンダーヘッドに組み込まれています。また、③精密鍛造歯車は、自動車の後輪間にあるリヤーデフケース内や、オートマチックトランスミッション内に組み込まれています。
そして、エンジンの燃費改善に欠かせない製品である④タービンハウジングも、当社グループの主要製品に加わりました。
2026年後半から連結子会社となる新和精密グループで生産・出荷しているバルブリフターは、韓国の自動車メーカーであるヒュンダイのグローバルシェア約5割を占める製品です。
これらの部品はいずれも一般のユーザーが目にすることはほとんどありませんが、1つでも欠ければ車が一切動かなくなる、最重要機能部品です。
1-9. Globalでのトップシェア〜エンジンバルブ当社推定シェア〜
当社のグローバルシェアに関する内容です。各事業領域において、トップシェアを持つお客さまと取引しており、その結果が表れていると言えます。
また、競争が激しい四輪向けバルブでは、国内メーカー3社の中でトップシェアを維持しています。
さらに、船舶用エンジンバルブについては、先ほど李さんがお伝えしたとおり、中速エンジン向けでトップシェアを誇っており、当社はまさにドミナントリーダーとして存在感を発揮しています。
1-10. カーボンニュートラルに向けての活動状況について
当社のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みについてです。2025年度のScope1・2・3におけるCO2削減実績は41.8パーセントで、目標を大幅にクリアしました。
また、経済産業省から当社の省エネに関する取り組みが評価され、「Sクラス優良事業者」として認定されています。
さらに、マツダからカーボンニュートラル改善賞を3年連続で受賞しています。これは、当社の環境戦略が確実に成果を上げている証左です。
加えて、神奈川県秦野市が展開するWebサイト「はだのde脱炭素」にも当社の取り組みが紹介されました。
このような取り組みは、環境負荷の低減と企業価値の向上を両立させる、当社の強いコミットメントを示すものです。
1-11. NITTANの健康経営推進取組
当社の健康経営に対する取り組みについて紹介します。NITTANでは、経営理念として「人間性を尊重し、夢と活力のある職場を創造する」を掲げています。この理念のもと、従業員一人ひとりが心身ともに幸せで健やかに働ける環境作りを進めてきました。
その取り組みが評価され、「健康経営優良法人2026」と「食育実践優良法人2026」に認定されました。
1-12. NITTANグループのCSR、SDGs活動状況について
当社グループのCSRおよびSDGsへの取り組みについてご紹介します。
NITTANグループは、具体的な活動として、ベトナムのバクニン赤十字と共同で社会貢献活動を行い、インドネシアでは植林活動を実施しています。そして日本では、地域貢献の一環として秦野市に文房具を寄付し、感謝状をいただきました。また、恒例となった「NITTANピーナッツカップ」も開催しました。
これらの活動を通じて、私たちは各国で企業市民としての責任を果たし、地域社会とともに歩む企業であり続けたいと考えています。
1-13. NITTANグループのCSR、SDGs活動状況について
こちらのスライドでは、当社が今年1月に更新した「パートナーシップ構築宣言」の概要と、その狙いについてご説明しています。
この「パートナーシップ構築宣言」では、サプライチェーン全体での共存共栄を重視し、取引先のみなさまと連携しながら、情報共有のデジタル化、BCP対応、脱・低炭素化の取り組みを推進する考えを明確にしています。
また、適正取引の観点から、振興基準の遵守に加え、適切な価格転嫁について協議する機会を定期的に設ける仕組み作りも進めています。
当社は、これらの取り組みを通じて、取引先とともに持続的な競争力を高め、安定供給や中長期的な企業価値の向上につなげていきます。
2-1. 26年3月期通期 業績総括
第2部の業績動向についてご説明します。こちらのスライドは、2026年3月期の業績総括です。
売上高は前期比0.4パーセント増の516億7,600万円となりました。
一方、利益面では、北米拠点の生産効率化や舶用部品事業を含む各拠点の改善により、営業利益は前期比165.2パーセント増の39億9,800万円、経常利益は前期比133.3パーセント増の44億2,300万円と大幅に増加し、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比253.4パーセント増の22億2,700万円となりました。
2-2. 事業セグメント別業績
事業セグメント別業績です。昨年度まで火災の影響で厳しい状況が続いていた舶用部品事業は、生産体制の正常化に目途がついたこと、さらに受注の増加と収益性の改善により、増収増益となりました。
2-3. 所在地別業績
所在地別業績です。2026年3月期はすべての地域で黒字化を達成しました。国内では、小型エンジンバルブ事業の黒字化やNITTAN恵那金属の連結化により、増収増益となっています。
アジア市場では内燃機関の販売不振の影響を受け、厳しい状況にありますが、利益を牽引する地域である点に変わりはありません。
北米市場については、転注の影響で減収となりましたが、生産体制の効率化が実を結び、大幅な増益となりました。
2-4. 連結営業利益増減要因
連結営業利益の増減要因についてですが、前年に比べて24億9,100万円増加しています。
その主な要因を為替影響額から除いて分析すると、北米の生産体制の効率化や舶用部品事業の収益性改善、中空バルブによる収益性向上が挙げられます。これらが利益の増加に結び付いています。
今後もこの好調を維持し、さらなる安定生産化を図るとともに、すべての拠点における原価改善活動を継続し、利益拡大に努めていきます。
2-5. 連結貸借対照表
連結貸借対照表については、スライドに記載のとおりです。
2-6. 連結キャッシュ・フロー
連結キャッシュ・フローについても、スライドに記載のとおりです。
2-7. 2027年3月期通期業績見通し総括
2027年3月期通期の営業利益および経常利益の見通しです。
2026年3月期と比べて減益に見える要因として、成長投資による初期費用が2億円、為替想定レートを1ドル150円で設定した影響が2億円あります。
一方で、2026年3月期には一過性の増益要因として2億円が含まれていました。したがって、基礎収益性が悪化したものではありません。
これはさらなる成長に向けたスタートアップコストであり、悲観的に捉える必要はないことをあらためてお伝えします。
2-8. 2027年3月期通期事業セグメント別業績見通し
2027年3月期通期の事業セグメント別業績見通しです。
小型エンジンバルブについては、ヒュンダイグループからの特需の影響もあり増収となる見込みです。しかし、成長投資による一時的な影響および日系OEMの中国市場における低迷により、減益を見込んでいます。
舶用部品事業に関しては、安定的な増産体制を整えるための大型投資や前年度の受注残が解消されたことから、減収減益を見込んでいます。ただし、全世界的に好調が続いているため、年度内には挽回が可能と予測しています。
歯車事業は、市場の冷え込みと取引縮小の影響で減収を見込んでいます。
その他については、第3四半期から韓国・新和精密グループの連結化の効果により、増収と損失幅の縮小を見込んでいます。
2-9. 設備投資・減価償却費
設備投資および減価償却費です。2027年3月期は、特にインドでの成長投資に加え、その他の地域でも効率化を促進する更新投資を行い、収益性の向上を図る計画です。
3-1. “NITTAN Challenge 10”
李:第3部の中期経営計画については、私からご説明します。新中計についてご説明する前に、当社の中長期経営ビジョンである「NC10」についてご説明します。
この「NC10」は、2019年から2030年までの10年間で、新しい時代を切り拓くための挑戦として掲げています。2030年に向けて、売上高1,000億円以上、営業利益100億円以上、営業利益率10パーセント以上を目標としています。
「NC10」は単なる規模拡大ではなく、収益性と資本効率を高め、企業価値向上を目指すことを目的としています。
その実現に向けて、VISION Ⅰは内燃機関の可能性をさらに広げる挑戦、VISION Ⅱは電動化領域や異業種への挑戦、そしてVISION Xは開発者の楽しさとやりがいを追求する挑戦として進めています。
次のスライドでご説明する新中計は、この「NC10」を実現するための具体的な実行ステップといえます。
3-2. 中期経営計画策定の背景
こちらのスライドでは、新中計の策定背景についてご説明しています。これまで私は、電動化が進む一方で、内燃機関は引き続き一定量残るとお伝えしてきました。実際に現在の市場環境を見ても、その予測どおりとなっています。
一方で、当社のVISION Ⅱ、すなわちxEVや異業種への挑戦については、成長のドライバーとなる新商品の量産化にはまだ至っていない状況です。
したがって、当社は既存事業において収益改善が進んでいる一方で、新領域はまだ立ち上げ段階という過渡期にあると認識しています。
このような状況を踏まえ、新中計ではこの3年間を、既存事業で収益を高め、成長投資の原資を生み出す期間と位置づけています。
3-3. 外部環境認識
こちらのスライドには、パワートレイン市場の見通しが記載されています。内燃機関搭載車は、2040年においても一定規模が残ると見込まれています。
また、排出ガス規制の強化およびHEVやPHEVの普及拡大により、エンジンにはこれまで以上に高い環境性能と耐久性が求められるようになっています。そのため、エンジンバルブの付加価値化が進むと考えられます。
このような状況は、当社にとって「なくなる市場」ではなく「質が求められる市場」へとつながるものであり、当社が長年培ってきた中空バルブの技術力が活かされる市場への変化であると認識しています。
3-4. NC10に対する本中期経営計画の位置づけ
こちらのスライドは、「NC10」に対する新中計の位置づけを示しています。当社は新中計を「NC10」達成に向けた中間ステップと位置づけています。
この3年間では、まず既存事業、すなわちVISION Ⅰの収益力強化に重点を置き、しっかりと稼げる筋肉質な体質に鍛え上げていきます。そして、次の成長投資に向けた投資を実行できる体力を蓄えていきます。
3-5. 財務KPI
新中計における財務KPIです。2029年3月期において、営業利益率9.2パーセント、ROE8パーセント以上、営業キャッシュフロー232億円の達成を目指しています。
これらの数値が持つ意味は非常に重要です。いずれも企業価値を評価するためのパラメーターと言えます。
営業利益率は「稼ぐ力」、営業キャッシュフローは「投資力」、ROEは「資本効率」をそれぞれ表しており、新中計では、これらを次の成長を生み出す「変革の3年」と位置づけています。
このKPIを達成することで、次の成長投資や事業ポートフォリオの変革につなげていきます。
3-6. 目指す事業ポートフォリオ (26年3月期→29年3月期)
事業ポートフォリオ変革の考え方です。まず、量の成長としてインド拠点を中心とした事業拡大を実現していきます。一方で、質の成長として中空バルブをはじめとする高付加価値製品の拡販を進めていきます。
このように、インドで売上を伸ばし、中空バルブで収益性を高め、成長領域へ再投資するという正のスパイラルで事業ポートフォリオを変革していきます。
3-7. 目指す収益水準 (営業利益)
ここから数ページは、新中計における新たな指標に関するご説明となります。これまで開示していなかった内容ですが、株主や投資家のみなさまとの対話を深めるためにも必要な項目と判断し、開示に至ったものです。この点については、村山氏を含め、全役員が同じ考えです。
では、まず目指す収益水準についてです。2026年3月期の約40億円に対し、2029年3月期には58億円まで引き上げる計画です。
ここで重要なのは、利益を伸ばすための手段です。単なる増産による増益ではなく、戦略的な拡販、高付加価値製品化による収益性の改善、さらには原価改善施策を積み上げることで、構造的に利益を拡大する計画です。
さらに、アップサイドとして、M&Aやポートフォリオ変革によるさらなる成長を、新たな目標値として設定していきます。
3-8. 資本コストや株価を意識した経営① 株主資本コストの認識
資本コストを踏まえたROEの考え方です。当社は株主資本コストを約10パーセントと認識しています。これに対し、新中計ではROEを8パーセント以上に設定し、最終的には「NC10」の達成期に10パーセント以上を目指します。
このように、収益性改善と資本効率の最適化を着実に進めることで、段階的に株主資本コストを上回る企業へと変革していきます。
3-9. 資本コストや株価を意識した経営② PBRツリー
PBR最大化の取り組み内容です。ROEとPERの両面を改善することで実現できると考えています。特に新中計では、ROEの構成要素の中でも収益性の改善に注力します。
具体的には、高付加価値製品の拡販、インド事業の拡大、生産拠点の最適化を通じて、利益率を引き上げていきます。
また、企業の成長期待値を示すPERについては、適時の情報開示や投資家とのコミュニケーションを強化することで、評価向上を図ります。
3-10. キャピタルアロケーション
キャピタルアロケーションです。新中計では、営業キャッシュフロー以上の投資を実行する計画です。内訳としては、成長投資に約75億円、M&A投資に約100億円、効率化を含む更新投資に約112億円、株主還元として配当性向30パーセント以上を目指しています。
ここでお伝えしたいのは、守りではなく攻めのキャピタルアロケーションに踏み切るという点です。
具体的には、既存事業で創出したキャッシュと、必要に応じた外部資金調達を活用し、将来につながる攻めの投資を優先するという考え方です。同時に、株主還元も安定的に継続することで、成長と還元の両立を図っていきます。
3-11. 株主還元方針
株主還元方針です。配当性向は30パーセント以上を目安に還元を実施します。企業価値向上のためには株価向上が必須であり、安定的に配当を維持・向上することがその前提になると考えています。
成長投資を行いつつ、株主のみなさまへの還元も着実に実施する、バランス型の資本政策を進めていきます。
3-12. 中期経営計画施策の全体像
新中計における政策の全体像です。スライド右側に具体的な施策を整理しています。
これまでご説明したとおり、売上を伸ばす施策と収益性を改善する施策の両面で取り組みを始めています。インドを中心とした事業拡大や中空バルブの拡販を主な施策としており、成長投資を積極的に実施する全体像となっています。
その先には、M&Aも含めた事業ポートフォリオの変革も視野に入れています。それぞれの施策の詳細については、次のスライド以降でご説明します。
3-13. VISION I 売上成長:インドにおける事業拡大
売上成長施策の目玉となるインド事業の拡大についてご説明します。冒頭でもお話ししたとおり、インド拠点では新規受注の獲得や第2工場の拡張工事を進めてきましたが、拡張部分も新規受注ですでに埋まっている状況です。
新中計では、倍増計画を滞りなく立ち上げ、目標売上高の達成を目指しながら、さらなる受注やバルブリフター事業の立ち上げも並行して進める必要があります。過去最大規模の投資に踏み切っている状況です。
このように目まぐるしい状況が続く中、インド拠点を当社グループの第2の成長エンジンと位置付けたグローバル戦略のもとで、生産体制の構築に向けて邁進していきます。
3-14. VISION I 収益性改善:中空バルブ拡販
中空バルブの拡販についてご説明します。これまでの説明のとおり、今後の内燃機関には高い環境性能と耐久性が求められており、中空バルブの需要は着実に拡大すると予測されています。
そこで当社では、この分野の技術開発および顧客開拓を戦略的に進めてきました。その結果、既存の中実バルブから中空バルブへの切り替えが着実に進んでいます。
スライドに示しているとおり、今後も中空バルブの需要増加を見込み、数量および売上ともに中期的な成長を計画しています。このように、高付加価値製品の拡販を通じて収益性の改善につなげていきます。
3-15. M&Aの取り組み方向性
こちらのスライドには、M&Aに関する当社の基本的な考え方を示しています。当社のコアケイパビリティを活用できる領域を中心にM&Aを検討していきます。
具体的には、エンジンバルブ事業におけるシェア拡大を目指す取り組みに加え、エンジンバルブ以外の自動車部品領域においても、当社の技術や製造ノウハウを活用したシナジー効果を追求するM&Aを目指しています。
このように、既存事業との親和性を重視しながら、事業ポートフォリオの拡充と成長の加速に取り組んでいきます。
3-16. NITTANの目指す姿
新中計を通じて、当社が目指す姿です。
この3年間で、内燃機関領域で稼ぐ力を確立していきます。そこで得たキャッシュを次の成長投資につなげることで好循環を生み出す会社を目指し、「環境高性能のエンジンはNITTANなしでは作れない」とお客さまから評価される会社へと進化していきます。
4-1. 配当金の推移
第4部では、株主還元についてご説明します。配当は中間配当10円、期末配当10円の合計20円を予定しています。配当性向30パーセント以上を目安とした安定配当を維持しながら、株主還元の強化も検討していきます。
4-2. 株主優待制度について
昨年度から導入している株主優待制度についてです。保有株式数に応じて「QUOカード」を支給しています。スライド右下に記載のとおり、6月8日現在の株価を反映した当社の配当と優待を合わせた利回り率は4.72パーセントです。
私たちはこれからも株主のみなさまとともに持続的な成長を目指し、企業価値向上に努めていきます。今後ともよろしくお願いします。
以上で本日のご説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:インド市場の成長性と投資回収リスクについて
司会者:「インドへ過去最大規模の投資を実施される背景について教えてください。現地需要の成長性をどのように見ているのか、また投資回収リスクへの考え方についてもお聞かせください」というご質問です。
李:みなさまもご存じのとおり、インドは世界で最も人口の多い国であり、人口増加も続く見通しです。しかしながら、インド国民の中で自動車の恩恵を受けている人の割合は10パーセント未満です。したがって長期的に見ると、インドは非常に大きなマーケットであり、需要の拡大が見込めると言えると思います。
さらに、インドは内燃機関が最も長く、多く残る国とも言われています。電力事情にも左右されるとは思いますが、そのような状況下において、私たちとしては、インド市場は今後も成長していく市場であると判断しています。
当社はローカルのお客さまやヒュンダイインディアから、傘中空バルブや軸中空バルブを含む非常に大規模な量産受注を確定しています。したがって、市場は成長を続け、安定した受注も見込まれています。これからモータリゼーションの進展も想定されるため、ここへの投資を行わない理由はないと考えています。
一方で、ご質問の中で触れられたリスクの面については、インドにさまざまなリスクが存在することも認識しています。
リスクとしては、まず規制や政治的なルールが頻繁に変更される点が挙げられます。また、サプライチェーンの安定確保も非常に難しいと言われています。さらに、人材育成も大きな課題であると考えています。
このようなリスクに対して、私たちはインドだけでなく、近隣にある子会社を活用し、グローバル体制でサポートしながら低減を図りたいと考えています。
投資回収については詳細をお伝えすることはできませんが、先ほどお伝えした傘中空バルブや軸中空バルブに加え、現地ローカルのお客さまからも高価格かつ収益性の高い製品を受注していることから、早期の回収が可能であると見込んでいます。
質疑応答:早い段階でインドに投資できた理由について
司会者:「なぜ早い段階でインドの投資に着手できたのでしょうか?」というご質問です。
李:私たちがインドに拠点を構えたのは2013年度のことです。その際、日本の四輪メーカーのお客さまから強い要請がありました。「新しいディーゼルエンジンを作るのだが、まともなバルブメーカーが欲しい」ということでした。話をうかがう中で、ほかの四輪メーカーや日本の二輪メーカー2社からも同様のご要請がありました。そのため、インドで拠点を構えることを決めました。
当時、インドは難しい市場という認識があり、パートナーを探しながらさまざまな企業との話し合いを進めてきました。しかし、結果的にはすべての交渉が破談し、私たちは単独で進出することとなりました。
振り返ってみると、単独進出の判断は結果的に良かったのではないかと考えています。単独で進出したことで、苦労を伴いながらも新たな受注の獲得、第2工場の建設、新たな事業拡大といった成果につなげることができました。
2013年度に無理を承知でくだされた単独進出という経営判断は、諸先輩方のすばらしい見識によるものだったと感じています。
質疑応答:グローバル化について
司会者:「グローバル化を意識したのはいつですか?」というご質問です。
李:グローバル化については、私の意見だけでは十分ではないと思いますので、村山さんの意見も補足していただきたいと思います。
私は生まれも育ちも韓国のソウル、そしてみなさまもよくご存じのカンナムで育ちました。日本に留学して、日本企業であるNITTANに入社したのは1995年です。その頃から、すでにグローバル化を意識していました。「韓国人として日本の企業で働くのだから、その価値を、そしてその多様性を認めてもらえるようにしないといけない」と感じたことも事実です。
また、当時の経営陣、特に社長が「NITTANをグローバルエクセレントカンパニーに仕上げる、目指すんだ」というスローガンを掲げており、私もそれに同感でした。
その結果、当時からグローバル化をさらに進めるべく、中国、ポーランド、ベトナム、インドといった拠点を拡張できるように、共に努力してきました。したがって、グローバル化を意識し始めたのは、入社の時からではないかと考えています。
村山:私も入社した頃、李さんが韓国にいた頃ですが、韓国の立ち上げと並行して、1995年にはインドネシアの工場建設も進められており、工場内ではインドネシアの方々が一生懸命研修していました。その観点からすると、私たちが入社した当時、すでに周囲ではグローバル化が進んでいたと考えています。
また、私は当時経理部に所属していましたが、現在は経営企画部におり、そこから中国やインドをはじめとしたさまざまな拠点の立ち上げにも関わるようになりました。その経験を通じて、さらに一層グローバル化を意識するようになったと思っています。
質疑応答:M&Aの方向性と資金調達計画について
司会者:「今後のM&A戦略の方向性を教えてください。特に中期経営計画で示されている既存事業で稼ぐ力を増やすことから、内燃機関の部品を製造する企業も含まれていますでしょうか? また、その資金調達方法についてはどのように考えていますか?」というご質問です。
李:ただいまのご質問に関して、M&Aの方向性については私から回答します。また、資金調達については村山が回答します。
よく「目指すM&Aは何ですか?」というご質問をいただくのですが、M&Aは目標ではなく、あくまで手段と考えています。これは企業価値を向上させるための手段です。
内燃機関領域においては、当社がこれまで得意としてきた分野であり、失敗する可能性が低く、シナジー効果も得やすいと考えています。そのため、内燃機関部品やエンジン部品について優先的に検討しているのは事実です。
ただし、エンジン部品以外でも、自動車業界全体においてシナジー効果を得られる可能性が十分あると考えています。このように、内燃機関部品はもちろん、それ以外の部品についても視野を広げて検討しています。
さらに、NITTANには多くの海外パートナーがおり、それぞれ得意とする分野を持っています。その分野において当社と協力し、事業ポートフォリオの多様化や拡張が可能であれば、そのパートナーとのビジネス拡張を1つの選択肢として検討しています。
その場合はボーダーラインを設けずに、M&Aを検討していきます。また、このようなM&Aについては、横浜キャピタルとの連携を有効活用し、専門家の意見を取り入れながら進めていきたいと考えています。
村山:新中計では約100億円のM&A投資枠を設定しています。資金面に関しては、計画に含まれる営業キャッシュ・フローに加え、必要に応じて外部資金の調達も検討しています。また、政策保有株式の売却などにより充当していく考えです。
これまで案件については待つ姿勢が多かったのですが、今後は攻めの姿勢でM&Aを進めていきたいと考えています。