■NECキャピタルソリューションの今後の見通し
2. 「中期計画2028」の策定
(1) グループビジョン2030
グループビジョンに「次世代循環型社会をリードするSolution Company」、プリンシプル(行動指針)に4つの「シンカ」(進化・深化・新化・真価)を掲げる。同社は事業環境について、ICT市場でのシステム更新やDXによる成長継続を見通すほか、リース市場での情報システム投資の増加や価格・金利の上昇、ファイナンス市場における再生可能エネルギー需要増に伴う太陽光発電や不動産投融資機会の増加を予想し、これらを「当社らしい循環型サービスの収益確立」の好機と捉える。次世代循環型社会実現への取り組みを進めながら持続的に企業価値を向上させることで、2031年3月期に財務目標「ROE10%以上」「当期純利益150億円」の達成を目指す。循環型サービス創出を推進した「中期計画2025」(2024年3月期〜2026年3月期)に続き、「中期計画2028」(2027年3月期〜2029年3月期)では「循環型サービスを発展」させる。
(2) 「中期計画2025」の振り返り
1) 財務・非財務目標
財務目標である「2026年3月期における親会社株主に帰属する当期純利益100億円、ROA0.9%」に対する実績は、それぞれ92億円、0.8%とわずかに未達となったが、2026年3月期に最終利益が過去最高となるなど、収益基盤は着実に向上した。非財務目標は、従業員エンゲージメントスコアを除き、目標を達成した。
2) 事業戦略の実績
4つの全社戦略については、ICT・専門サービス、金融プロダクトで利益目標の未達があったものの、継続的な実行計画の推進により一定水準の成果を創出した。
a) サービス事業の拡大、新たな循環型サービスを創出
2026年3月期の利益目標21億円に対し、実績は48億円と目標を上回った。レジデンスを投資対象としたファンド組成による手数料獲得や、販売用不動産の売却等が実績を押し上げた。新たな循環型サービスの収益化は途上だが、キーストーンとの連携により、投資時のビジネスデューデリジェンスや投資後の成長支援の分野で強化が進むことが期待される。
b) 注力事業(ICT・専門サービス、金融プロダクト)への戦略的投資による成長加速
2026年3月期の利益目標189億円に対し、実績は164億円と未達であった。LCMサービスの付加価値提供拡大と手数料獲得のほか、SBI新生銀行との協業案件(不動産・再生可能エネルギー)の増加や高収益資産への入替促進策が寄与した。金融プロダクトは目標未達も、各種取り組みは進んでいる。
c) ベンダーファイナンスの強化及び顧客基盤拡充
2026年3月期の利益目標121億円に対し同水準となり目標を達成した。最終年度のGIGAスクール案件の受注等などが寄与した。事業領域やベンダー基盤の拡大を推進したが、料率競争が激化したため、選択と集中で注力領域を絞り一部事業を見直した。ベンダーとの新たなサービススキーム創出を重要課題と捉えて検討を進める。
d) デジタル化による業務革新、人的資本・スタッフ機能強化とカルチャー変革
SBI新生銀行との資本業務提携に伴う主要株主の異動関連対応が完了し、成長加速に向けたポートフォリオ・リスク管理の強化など、全社リスク管理の高度化が進展した。またカルチャー変革と従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みが進んだほか、2028年3月期稼働予定の次期基幹システム構築に向けた開発が進捗した。
(3) 中期計画2028
グループビジョンで目指す姿や目標の実現に向けた2ndステップとして、循環型サービス発展のための成長基盤を構築するべく「中期計画2028」を策定した。2027年3月期から2029年3月期までの3ヶ年を対象とし、サステナビリティ経営の深化と事業基盤の進化、経営基盤の強化により企業価値最大化を図る。2028年は同社の創業50周年にもあたるため、計画達成の如何は同社にとって大きな意味を持つ。
1) 基本方針
基本方針として次の6項目を定めた。「事業基盤の進化」として「1.持続的な成長に向けた収益基盤の拡大」「2.グループ・パートナーとのシナジー創出」「3.循環型サービスの発展」の3項目、「経営基盤の強化」として「4.ブランド・アイデンティティの構築」「5.人的資本への投資」、「6.DX戦略の推進」の3項目である。
2) 財務・非財務目標・株主還元
財務目標の設定に当たり、同社は資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組み方針を検討した。同社は、現状の株主資本コストを7~8%程度と認識している。2026年3月期のROEは7.9%で株主資本コストと同等だが、中期計画では株主資本コストを安定的に上回るROE水準を目指し、PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)、及びROEの向上を図る。ROE向上策として、ROAの向上と財務レバレッジ施策を進める。前者では当期純利益額の拡大、ノンアセットビジネスの拡大、資産の流動化、各事業領域における収益力強化、ポートフォリオ管理強化等を推進する。後者では資本活用の最適化の観点からバランスシートマネジメントとリスク管理を強化する。ALM(資産負債総合管理)の適正なコントロールや、資金等の調達手法の多様化、リスク資本とリターンを意識したリスク管理を推進する。PER向上策として、新たな循環型サービスの創出や新事業の取り組み、グループ・パートナーとの協業によるシナジー創出、投資家等との能動的な対話や各種情報開示により、期待成長率の向上とともに株主資本コストを低減させる。
上記を受け、財務目標として2027年3月期に当期純利益100億円、ROA0.8%、ROE8.2%、2029年3月期に当期純利益120億円、ROA1.0%、ROE8.8%を設定した。また非財務目標は、サステナビリティ経営の深化に向けて「事業活動を通じた社会課題の解決」と「事業活動を支える経営基盤の強化」に関する14項目を設定した。株主還元については、安定配当の維持を基本方針としつつ、配当性向に加え、単年度の利益水準に左右されない指標としてDOEも参考指標として活用しながら、持続的成長に見合った利益還元を目指す。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)