■要約
クイックは、1980年に設立され、「関わった人全てをハッピーに」を経営理念に「ヒト」と「情報」に特化したサービスを提供する企業である。専門職・特定領域での人材紹介に特徴があり、既存領域で培ったノウハウを新たな領域へ横展開する事業成長モデルを採用している。現在は東京証券取引所(以下、東証)プライム市場に上場しており、主力の人材紹介を含む人材サービス事業に加え、リクルーティング事業、地域情報サービス事業、HRプラットフォーム事業、海外事業の計5事業を、同社とグループ企業で運営している。
1. 2026年3月期業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.4%増の33,924百万円、営業利益が同1.1%増の4,583百万円、経常利益が同1.7%増の4,689百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同16.1%増の4,158百万円となり、増収増益かつ過去最高の売上高となった。人材サービス事業では、建設・不動産や看護師などの専門職領域の人材紹介が順調に拡大し増収に貢献した。リクルーティング事業ではアグリゲーション型(特定の情報を複数のWebサイトから収集する検索エンジン)求人サービスが好調で増収となった。地域情報サービス事業では地元優良企業に対する採用支援サービスがけん引し2ケタ増収を記録、米国関税政策の影響が懸念された海外事業も北中米、欧州、タイなどでの取り組みが功を奏し増収となった。一方、リプレースニーズの一巡と主要顧客の予算縮小の影響を受けたHRプラットフォーム事業は減収となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で2ケタ増となっているが、これは保有する投資有価証券の売却益(特別利益)の計上お及び賃上げ税制の適用による税額控除を受けたことが主な要因である。
2. 2027年3月期業績見通し
2027年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比2.6%増の34,800百万円、営業利益が同10.3%減の4,110百万円、経常利益が同10.0%減の4,220百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同32.5%減の2,805百万円と増収減益の見通しである。米国の通商政策や中東情勢の悪化といった外部環境の変化のなか、2027年3月期を中長期的な成長のための経営基盤を固める時期と位置付け、先行投資を進める。主力の人材サービス事業においては、旗艦サイト「アンドプロ」の機能強化・コンテンツ拡充を中心に先行投資を行い競争優位性の確立を目指す。リクルーティング事業においては、アグリゲーション型求人サービスと採用コンサルティングなどを組み合わせた総合提案を推進するとともに、新卒看護領域の事業基盤を強化する。地域情報サービス事業では、転職領域のさらなる事業拡大のために人員体制の強化を進め売上の底上げを図る。HRプラットフォーム事業においてはイベントの開催形態の見直しなどにより顧客が実感する投資対効果の向上などに注力する。海外事業は米国での待遇改善による自社社員の定着率向上や欧州での新規顧客開拓など、これまでと同様に地域特性に合わせた施策を推進する。なお、親会社株主に帰属する当期純利益について2ケタ減益予想の主な要因は、2026年3月期における投資有価証券売却益の計上の影響である。
3. 成長戦略
中期計画では2029年3月期に売上高41,230百万円、営業利益4,610百万円を目指す。主力の人材サービス事業では、新たな中核となるサービスブランド兼旗艦サイト「アンドプロ」への経営資源の集中投資により、資本効率の最適化と集客力向上を図ると同時に、積極的な採用と育成体制の充実により若手社員の早期戦力化を推進する。リクルーティング事業では、採用活動全体を支援するクライアントエージェント機能を拡張し、総合的な提案力を強化するとともに、新卒看護領域へも積極的な投資を行っていく。さらに地域情報サービス、HRプラットフォーム、海外の各事業においても、Web媒体の販売拡大や顧客ネットワークの基盤化、国際間の転職支援(クロスボーダーリクルートメント(R))の拡充などを通じて収益力の維持・向上をねらう。また、現預金の蓄積に伴う資本効率の低下という課題に対しては、2027年3月期からの3年間で中長期の成長投資を加速させると同時に株主還元も強化する。具体的には、既存社員の待遇向上・経営参画意識の醸成を目的とした従業員向け譲渡制限付株式付与制度(RS)導入、採用経費の増額などの人的資本投資、看護師転職・就職支援の機能強化やAIを活用した生産性向上などの既存事業投資、「アンドプロ」の機能強化に向けた投資、及びM&Aや出資などの戦略投資を積極的に推進していく。
4. 株主還元方針
同社は持続的な企業価値の向上と株主への利益還元を重要な経営課題と位置付けている。株主還元策は、配当政策、自己株式取得、株主優待制度、そして市場における株式の流動性向上策を組み合わせて行われている。
2026年3月期の1株当たりの期末配当は予想の18円から3円増額し21円に引き上げられ、年間配当は前期の32円から37.6円へと5.6円の増配となった(配当額は2025年12月の株式分割を反映)。また、機動的な資本政策の遂行及び株主への利益還元強化のため、2027年3月期より株主還元方針を変更した。具体的には、2027年3月期から2029年3月期までの3年間は、下限の年間配当38円と配当性向70%のいずれか高い方を配当として採用する方針とし、加えて2029年3月期までの3年間で累計30億円以上の自己株式を取得する。2027年3月期の年間配当は、2026年3月期実績の37.6円から38円へと増配とする計画であり、同社の年間配当は2022年3月期から6期連続の増配となる見込みである。
また、株主優待制度を導入しており、中長期的な株式保有を促している。保有株式数と継続保有期間に応じ、クオカード、特産品、工芸品といった優待品が贈呈される。株式の流動性向上については、2025年2月に主要株主が保有する90万株の立会外分売を実施、さらに2025年12月に普通株式1株につき3株の割合をもって株式分割を実施している。
■Key Points
・2026年3月期は、過去最高の売上高を記録し営業利益・経常利益ともに増益
・2027年3月期は、中長期的な経営基盤再構築への先行投資を実施するため増収減益の見通し
・2029年3月期に、売上高41,230百万円、営業利益4,610百万円を目指す
・成長戦略の中核は、新サービスブランド兼旗艦サイト「アンドプロ」を中心としたさまざまな投資強化
・中長期的な資本効率の改善を実現するための自己株取得を含む株主還元方針の変更
(執筆:フィスコ客員アナリスト 西村 健)