■今後の見通し
1. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の業績は、売上高が前期比6.0%増の50,000百万円、営業利益が同8.8%増の7,740百万円、経常利益が同1.0%増の7,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.9%増の5,460百万円を見込んでいる。半導体事業は増収増益、分析機器事業は増収減益ながら、全体としては増収増益を計画している。ジーエルテクノホールディングスの見通しでは、中東情勢による物流の影響といった不確実要因は業績計画に織り込まず、現中期経営計画の計画値を据え置いた「順調な成長速度」を前提とした保守的な計画を策定している。また、半導体事業を中心とした成長投資を継続しながら、分析機器事業の収益力の向上により全体収益の拡大を図る方針である。
2. セグメント別業績見通し
(1) 分析機器事業
売上高は22,500百万円(前期比4.4%増)、営業利益は2,110百万円(同10.0%減)を見込む。売上面ではPFAS分析需要の拡大が引き続き追い風となる見通しである。水道法改正に伴うPFAS分析需要は、2026年3月期までの分析装置導入需要に続き、2027年3月期以降は固相抽出カートリッジなど分析用消耗品需要の拡大が期待されている。利益面では減益計画となるものの、現中期経営計画策定当初の計画数値を据え置く計画となっており、足元の状況を踏まえ営業利益率10〜11%程度の水準を維持できるとの見方を示している。売上総利益率が高い自社消耗品の比率を高める方針であり、新製品「Inertsil Hybrid-C18」を含む自社消耗品の販売拡大による収益性の向上を目指している。
(2) 半導体事業
売上高25,000百万円(前期比5.7%増)、営業利益5,430百万円(同15.9%増)を見込んでいる。AI向けデータセンター関連や生成AI関連製品向けの需要を背景として、市場回復が継続する前提で計画を策定している。同社によると、2023年後半以降のAI関連の需要拡大を背景に装置メーカー向けの需要が増加しており、一部顧客では在庫確保を目的とした先行受注も発生しているとのことだ。利益面では、高付加価値製品の販売拡大に加え、量産効果による生産効率の改善が業績に寄与する見込みである。同社は市場回復を背景に営業利益率20%程度を目指しており、半導体事業が引き続きグループ全体の利益成長をけん引する役割を担うとみられる。また、生産能力増強の投資として、ベトナム工場や喜多方第二工場なども計画どおり進んでおり、中長期的な需要拡大への対応を進めている。
(3) 自動認識事業
自動認識事業は売上高2,500百万円(前期比26.3%増)、営業利益200百万円(同295.8%増)を見込んでいる。同社では2027年3月期も依然として厳しい事業環境が続くとの認識で、現在は低採算案件によって売上を確保しながら固定費を回収する局面が続いており、高収益案件の比率を向上させることが課題となっている。一方で、中長期的な成長に向けた取り組みは着実に進んでいる。特に顧客装置向けの機器組込み型製品については開発案件が進行しており、量産化が実現すれば収益性の改善につながる可能性がある。建物や住居向けの入退室管理に加え、工場での製品管理、医療現場での投薬記録、店舗の省人化や決済連携など用途拡大も進めており、将来的な収益改善の布石を打っている状況である。
3. リスク要因
2027年3月期は増収増益を見込むものの、同社では複数のリスク要因の存在を認識している。これに対して、それぞれの課題に応じた具体的な対抗策を既に進めており、想定されるリスクを適切にコントロールしながら、将来に向けた成長投資を積極的に実行していく方針を掲げている。
(1) 分析機器事業
中東情勢の悪化に伴う物流リスクが不確定要素として挙げられる。2026年3月期において、分析機器事業では物流混乱を背景とした先行発注が業績を押し上げたが、同社はこれを2027年3月期計画には織り込んでいない。今後の動向を注視しつつ、事業成長により計画達成を目指す考えである。
(2) 半導体事業
足元ではAI・データセンター向け需要の拡大を背景に好調な受注環境が続いているが、一部顧客による先行受注や在庫積み増しも含まれているため、将来的な反動減や市況調整の可能性は否定できない。過去には同様の局面を経験しており、2027年3月期の計画は過度な需要拡大を前提とせず、順調な成長を前提とした保守的な計画としている。加えて、高付加価値製品の拡販や生産効率の改善を進めることで、利益率の向上を図る方針である。原材料や供給の観点からは、半導体製造工程に不可欠なヘリウムの調達が潜在的なリスク要因となる。ヘリウムは代替が難しい重要材料であるが、同社は調達先との連携強化や供給先分散を進めており、現時点では安定供給に問題はないとしている。
(3) 自動認識事業
2027年3月期も厳しい収益環境が続く見通しである。現状は低採算案件の比率が高く、固定費の回収を優先する局面が続いている。一方で、収益改善策として機器組込み型製品の開発を進めており、顧客ごとの専用設計により、競合他社との差別化を図っている。量産化までには時間を要するものの、中長期的には収益性の改善につながる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)