テクセンドフォトマスクは5月13日、2026年3月期連結決算(IFRS)を発表した。売上収益が前期比9.8%増の1,295.76億円、営業利益が同2.4%減の275.30億円、税引前利益が同8.6%増の334.32億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同150.9%増の249.47億円となった。売上収益および各段階利益ともに当初予想および直近の通期予想を上回る堅調な着地となった。
主力の外販フォトマスク市場では、生成AIの普及やデータセンター向け投資の高水準な推移が力強い追い風となった。「ノーマスク・ノーチップ」の構造下、半導体メーカーやファウンダリにおけるフォトマスクの需要は増加している。テクセンドフォトマスク社においては、特に先端ロジック製品の引き合いが加速しており、同社に対してフォトマスクをアウトソーシングする動きが拡大しているとみられる。半導体チップの製品設計数に比例してフォトマスクの必要枚数が増加する中、同社は製品数が圧倒的に多いロジック向けを中心に、旺盛な先端需要を幅広く取り込むことに成功した。また、次世代領域であるEUVマスクにおいても、各メーカーとの間で着実な共同開発を推進しており、研究開発力の高さが大きな強みとなっている。
利益面では、将来の成長を見据えた先行投資として減価償却費や人件費、設備保全費などのコストが重なる局面であり、さらに新規上場に伴う一過性費用が発生したことから営業利益は微減となった。しかしながら、材料費率が20%未満に抑えられているため限界利益率が高く、先端品にシフトするほど収益性が向上する特性を持つ。在庫をほとんど持たない「完全受注生産×短納期」というビジネスモデルによる高いキャッシュ創出力に支えられ、営業キャッシュ・フローは360.61億円と非常に潤沢に推移し、営業利益率も中期目標の20%以上を上回る21.2%をしっかりと確保した。また、上場準備に伴う資本再編によって海外会社を統合した際のドル建て負債に関わる通貨スワップ取引において、日米の金利差や為替の円安進行を背景とした一過性の評価益などの金融収益が大幅に拡大したことが、当期利益の押し上げに大きく寄与した。
当期のトピックスとしては、中長期的な成長基盤のさらなる強化に向けて、韓国の現地顧客からの需要拡大をサポートするため、同国利川(いちょん)市と投資業務支援協約を締結し、現地における先端フォトマスクの供給体制を強化すべく、第3工場新設を決定した。また、大株主としてTOPPANやインテグラルが名を連ね、評価や組成が難しいチャレンジングなIPOであったにもかかわらず、公募目標を完全に達成したことが資本市場から高く評価され、LSEG主催の「DEALWATCH AWARDS 2025」において株式部門の「Equity Issuer of the Year」を受賞した。
株主還元については、中長期的な目標として配当性向30%を掲げている。当期は非キャッシュ項目である通貨スワップの評価益によって当期利益が大きく押し上げられたため、この一過性の金融収益の影響を除いた実質的な業績ベースで配当を算出し、年間配当金を1株当たり56.00円とした。今後は、設備投資に必要な資金と財政状態を見極めつつ、自社株買いの実施なども選択肢に視野に入れ、柔軟な株主還元姿勢を維持していく方針である。