■橋本総業ホールディングスの中期計画
(1) 3つのフル
成長戦略の「3つのフル」は「フルカバー」「フルライン」「フル機能」のことで、「どこでも、何でも、どんなことでも対応する」という同社の意思表示であり、「3つのフル」を追求することで、ステークホルダーとともに栄えるという考え方に基づいている。「フルカバー」とは、得意先や仕入先とともに地域にネットワークを作り、1県1拠点の県別体制※で全国各地の需要に対応、各メーカーから物流だけでなく営業も任せられる体制を構築することを指す。これまでも着実に拠点づくりを進めてきたが、今後は新設拠点の展開スピードを加速し、中期計画期間では新設8拠点と移転6拠点を予定している。それでもまだ進出していない県が西日本を中心に多く残っており、既存エリアを含めて出店余地は大きいと言える。
※ 実際は複数拠点を擁する県もある。
「フルライン」は、設備関連資材であれば何でもワンストップで対応することを指し、PCやタブレットにより同社のみらい百科やWebカタログを通じて商品閲覧も可能となっている。これまで仕入先口座数を着実に伸ばし取り扱いアイテム数を拡充してきたが、取引先をさらに拡充するため、管材のみならず電材や建材、住宅設備、産業機械など新領域の商材を積極的に増やしているところである。「フル機能」では、メーカーや販売店など取引先の利便性向上につながるなら、基本7機能(対応、価格、在庫、配送、販促、研修、情報)、工程9機能(事前の引合・受注・照会、当日の納入・施工・加工、事後のアフターメンテナンス・現調・取替)、ソリューション9機能(物流、施工、情報、システム、業務、サポート、教育、人材、金融)を駆使して、どんなことでもワンストップで対応する方針である。なかでも、設計(双日建材、タイ設計センター)、施工(集合住宅向け材工一括対応、手配の一本化など)、金属加工(白井工場)といった機能の強化や、子会社とのコラボによる取引先ニーズに沿ったソリューションの提供については、具体的成果につながってきている。
(2) みらい会活動
同社はバリューチェーンづくりを「みらい会活動」と呼び、業界最大かつ最良のネットワークの構築を進めている。そこでは「売り手」と「買い手」という関係ではなく、人と人がつながることで互いにビジネスが向上する「ベストパートナー」の関係づくりを目指している。また、業界のハブとしての有効性、エキスパート制度や次世代人材育成などによる経営の再現性、そして進化に取り組む経営の革新性にチャレンジすることで、業界全体の発展に貢献する方針である。
「みらい会活動」の核となる「みらい会」は、販売店、仕入先メーカー、工事店、そして同社が「四位一体」となって構成されており(ほかに金融会員)、これまで順調に拡大、販売店491事業所、仕入先658事業所、金融会員13社、建設みらい会69社、会員数3万人弱という規模となっている(2026年3月期)。毎年4回以上開催される研修会では、参加者は互いに情報を持ち寄り、商材や経営などのノウハウの取得に取り組んでいる。開催される様々なイベントでは、メーカーから販売先への情報伝達だけでなく、会員同士の情報交換や販売先からメーカーへのフィードバックも多く、参加者にとって非常に有益な交流の場となっている。同社もまた、研修やイベントを通じて会員の要望に応じている。したがって、こうした機能を持たない競合先に対して、営業や末端売上高の質などの面で明らかに優位性があると言える。引き続き商材・サービスの拡大や物流の強化、西日本での新規取引先獲得を進め、2028年3月期までに正会員1,000社、拠点数2,000を目指す。
「みらい会」では、会員相互の販促の場となる大型イベント「みらい市」を開催している。「みらい市」はリアルとWebで開催する業界最大級のハイブリッド展示会で、メーカーの展示だけでなく、「みらい会」会員相互の販促の場にもなっている。2028年3月期に50,000人の動員を目指していたが、好評のため2026年3月期に前倒しで達成した。また、「毎月がみらい市」をコンセプトに、Webみらい市のバージョンアップも進めている。「みらいサービス」では、「みらい会」会員に対して、販促、健康、研修、IT、分科会、イベント、物流、メディアの8つの分野のサービスを提供している。なかでも様々なツールを使った情報発信や、経営幹部セミナー「橋本学校」などを通じて毎月開催する業界のプロ人材を育成する研修、「OPS」の運営による24時間365日の発注やリアルタイムデータ連携などは人気があり、成果も上げている。こうした活動を行っている企業は同業にほとんどないため、これも大きな差別化ポイントとなっている。
(3) 進化活動
「進化活動」は、「しくみ作り」「ひと作り」「しかけ作り」を通じて、同社だけでなく取引先の生産性も向上する取り組みである。「しくみ作り」では、商流の一貫化(サプライチェーン)、物流の共同化(ワンストップ化)、情報流の共有化(ダイレクト化)に取り組んでいる。「ひと作り」では、業界のプロ人材の育成に取り組んでおり、仕事の基本、商品知識、業界資格の習得のほか、「橋本学校」など対面とオンラインを併用した研修、実地研修ができる東雲研修センターでの施工研修を開催している。次世代経営者の育成を通じて、取引先各社と同社の人間関係の深化や、社会問題化しつつある後継者難の解消につなげる方針だ。「しかけ作り」では、AIやDXの活用、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)、見える化、チーム活動などを推進している。
社会的課題の解決にもつながる「H-SDG活動」を展開
3. H-SDG活動
同社は独自の「H-SDG活動」のなかで、経営上のリスク把握や新たな事業機会の創出を積極的に進めるとともに、社会的な課題解決につながるSDGs(持続可能な開発目標)にも取り組んでいる。「H:Health」では、テニスなどスポーツや医療機関によるサポートを通じCSR活動・育成活動に取り組み、健康経営優良法人2026に認定された。「S:Society」では、地方自治体と協業した地域貢献や産学連携、業界貢献を推進し、一定の評価を得ることでプライム市場を目指す。「D:Digital」では、社内や取引先間、業界全体の効率化、生産性向上など自社開発システムなどを通じたDXに取り組み、「DX認定」を取得するなどスマートカンパニーを目指す。「G:Green」では、環境・設備機材の販売はもとより、社内のゼロエネルギー化や再生可能エネルギーの活用など新しいビジネスモデルのグリーンカンパニーを目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)