■日本動物高度医療センターの成長戦略
1. 動物医療インテリジェンスプラットフォーム構築を推進
動物高度医療の市場環境は良好である。犬猫飼育頭数はペットブームが落ち着いて横ばい傾向だが、動物の長寿命化や疾病の多様化なども背景に、ペットの飼い主の間では「ペットにも人間と同じように高度な医療を受けさせたい」として、高度医療(二次診療)に対するニーズが一段と高まっている。このように良好な事業環境も背景として同社は2024年6月に、中長期成長ビジョン「家族としてのペットの健康を支えることで、飼い主とペットの健やかな暮らしに貢献していく」を掲げ、目標数値には売上高5,707百万円(うち二次診療サービス4,151百万円、その他サービス1,556百万円)、営業利益1,002百万円を掲げた。前提となる獣医師数は120名、初診数は11,604件とした。また資本コストを意識した経営と経営資源の配分見直しによりROE12%以上を目指すとした。
そして目標数値のうち売上高と営業利益については2026年3月期に1期前倒しで、ROEについては2025年3月期に2期前倒しで超過達成した。この前倒し達成を受けて重点戦略を一部修正し、さらなる収益性の向上と持続的な成長の実現に向けて、地理的拡大、診療体制強化、グループ能力の結集と一次診療施設との関係強化、DX・データ活用を重点テーマとした。
地理的拡大については、2025年5月に名古屋病院の診療受入能力拡大に向けた新築移転の用地取得(診療受入能力は2.5倍に拡大)を発表、同年6月に新病院として福岡病院の用地取得を発表した。なお名古屋病院の新築移転及び福岡病院の開院時期については、建設事情の影響で遅れる可能性があるものの、開院後はグループ全体としての診療受入体制が拡大する。
診療体制強化では、人的資本への投資拡大や2025年10月に運用開始した新人事制度によって計画的な高度専門人材確保・育成を継続的に推進するほか、既存病院で医療機器を最新鋭化(川崎本院のCT増設は2025年12月完了、川崎本院のMRI更新は2026年4月完了)して診療受入能力及び診療品質の大幅な向上を推進している。ITインフラ刷新は継続的に実施していくが、2026年7月に第1フェーズが完了予定としている。また診療品質向上・診療フロー最適化を目指し、AIを実装した次世代型電子カルテシステムを導入する。
グループ能力の結集では、同社の二次診療サービス、キャミックの画像診断サービス、テルコムの在宅ケアサービスの専門能力を結集し、一次診療施設への支援と関係強化を図る。テルコムにおいては、新たな酸素濃縮器等の新機種投入とラインナップ拡充を準備中であるほか、動物病院向け販売用機器に限定していた動物用医療機器の認可を飼い主向けレンタル製品に拡大(2026年4月に認可取得完了)する。また、次世代型電子カルテシステムと各社基幹システムを統合したグループ新基幹システムが2026年秋一部稼働・2027年夏本格稼働予定、グループ統合の新CRM(顧客関係管理)システムが2026年夏一部稼働・同年冬本格稼働予定である。
DX・データ活用では、AIを実装した次世代型電子カルテシステムを構築(2026年秋一部稼働・2027年夏本格稼働予定)し、診療業務の負荷軽減や、獣医師が診療と飼い主コミュニケーションに集中できる体制を構築する。また日々蓄積される豊富な画像診断・診療データを活用して動物医療インテリジェンスプラットフォーム構想を実現し、全国の一次診療施設・大学・製薬会社等への提供や協業も目指す。
2. 株主還元
株主還元については2024年3月期に初配当(期末一括で1株当たり20.0円)を実施した。そして2025年3月期より基本方針を、連結配当性向20%以上かつ株主への利益還元の安定的拡大とした。この基本方針に基づいて2026年3月期の配当(2026年5月15日付で期末4.0円上方修正)は、前期(2025年12月17日付の株式5分割を遡及換算した7.4円)比4.6円増配の12.0円(期末一括)とした。配当性向は19.6%である。そして2027年3月期の配当予想は前期比1.0円増配の13.0円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は19.9%となる。
3. 弊社の視点
ペット市場及び動物高度医療の市場環境は良好であり、市場拡大余地も大きい。そして同社は高度な医療サービスを提供できる総合動物病院という強みにより、連携病院数や初診数が増加基調であることを弊社では評価している。また従来は新病院開院によって業績が拡大する傾向があったものの、2026年3月期は2023年6月に開院した大阪病院の効果だけでなく、既存病院の二次診療サービス、子会社の画像診断サービスや動物用医療機器・健康管理機器のレンタル・販売も大幅に伸長して業績が急拡大した。これは同社が継続的に推進している診療体制強化戦略や、グループシナジー最大化戦略の成果と考えられる。そして成長が加速するステージに入った可能性があり、成長戦略の進捗状況に注目したいと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)