カザフスタンで7月1日の新憲法施行を前に、通貨テンゲは底堅さを増しています。原油価格の安定とともに、近年進められてきた政治制度改革への期待が相場を下支え。豊富な資源に加え、中国と欧州を結ぶ物流拠点としての存在感も高まり、成長を後押ししそうです。
米国とイランの和平協議進展を背景に、原油相場は値下がりに転じました。それに追随し、テンゲ相場は3月以降の上昇分を削る展開。もっとも、その後は下げ渋り、中東紛争ぼっ発前の水準で底堅さが目立ちます。世界有数の産油国であるカザフスタンは豊富な外貨収入を維持しているほか、政策金利も高水準に据え置かれ、資源国通貨としては相対的な安定感を保っています。
ここ数年で進められた政治制度改革も、市場心理を下支えする材料。2022年の大規模暴動を契機に、トカエフ大統領はナザルバエフ前大統領時代からの特権の縮小や権力構造の見直しに取り組みました。ただ、今回の新憲法は一院制議会への移行や副大統領職の創設を盛り込む一方、大統領権限を強めるとの見方もあります。市場は民主化そのものより、2029年を見据えた権力移行が混乱なく進むかを注視しています。
カザフスタンは1991年の旧ソ連崩壊後、初代大統領ナザルバエフ氏の下で長期政権が継続。豊富な資源を背景に高成長を実現した一方、権力の集中や民主化の遅れも指摘されてきました。転機となったのは2022年の反政府デモ。社会不安の高まりを受けて政治改革が本格化し、今年3月の国民投票では新憲法が承認されました。7月から新制度へ移行することで、権力移行ルールの明確化や国家運営の透明性向上が期待されます。
同時に経済面でも改革が進んでいます。同国は原油や鉱物資源への依存度が高い国として知られますが、近年は産業の多角化を推進。ウランや銅、レアアースなど戦略資源への関心が高まる中、欧米や中国による投資も増加しています。世界的な供給網再編の流れは同国に追い風となりつつあります。
さらに注目されるのが物流国家への変貌です。ロシアとウクライナの戦争以降、中国と欧州を結ぶ新たな輸送ルートとして「ミドルコリドー(中間回廊)」の重要性が高まりました。その中核に位置するカザフスタンは、鉄道や港湾整備により中国からカスピ海を経由して欧州へ至る物流網の要衝として存在感を高めています。資源、物流、地政学が交差する一大戦略拠点へと発展しつつあり、引き続き注目を集めそうです。
(吉池 威)
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