■マイクロアドの中長期の成長戦略
中長期の成長戦略として同社は「アドテクノロジーの企業から、総合データカンパニーへ」というスローガンのもと、データ活用を軸とした成長戦略を描いている。具体的には「データプロダクトの拡大」「新領域へのデータ活用」という2つの基本戦略により、業績の拡大と企業価値の向上を目指す構えだ。
(1) データプロダクトの拡大
インターネット広告市場において「ブランド領域(自動車や飲料・食品など、実店舗での製品提供を行う企業が対象となるマーケティング領域)」に特化しながら、販売体制の強化と新製品のタイムリーな投入によって「UNIVERSE」の稼働アカウント数を増やす計画である。ブランド領域に特化する理由は、競合企業がいないためだ。また、既存マス広告4媒体(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)からのデジタルシフトによって、市場規模の拡大が見込めることも要因だ。成長する市場のなかで利益を確保していく。
販売体制の強化に関しては、2021年10月に営業組織を顧客の属性に特化した組織体制へと変更したほか、リモートワークを実施する顧客に対応するため、オンラインセミナーを通じて販売強化を推進している。2023年9月期においてはオンラインで営業活動を行う専門の部署を新設し、販売体制をより時代に合った形へ変更したほか、「まちあげ」「MARBLE」などの新プロダクトの提供を開始した。2025年9月期は新たな販売拠点として北海道支社を設立、2026年6月には需要を受け、京都支社を設立した。地方エリアは、大手広告代理店をはじめ、広告配信事業を手がける事業者があまり手を広げていない「ブルーオーシャン」である。デジタルマーケティングが十分に浸透していない地方自治体や拠点周辺の企業に対し、少額から開始可能な「UNIVERSE」を地域・業種特化型で展開することは、マクロ経済の波を受けにくい強固な顧客基盤の形成につながっている。そのため、「UNIVERSE」の売上拡大を推進するうえで営業人材を地方拠点にも配置することが重要である。
加えて、付加価値の高い製品を継続的に市場に投入し、中長期的な成長を実現するため土台となる人材への投資を一段と厚くする。具体的には生成AIなどを活用した独自の育成ノウハウによって質の高い人材プールを構築する方針だ。
(2) 新領域へのデータ活用
同社の事業は広告関連が中心であるが、保有している膨大なデータや分析技術を活用し、広告以外の領域へもデータビジネスの拡大を進めており、実績を順調に積み上げている。2023年1月からオルタナティブデータを活用した自己資金での投資事業を開始した。さらに直近ではデジタルマーケティングのデータ分析手法を取り入れながら独自の投資戦略を構築している。2025年9月期実績は新旧2つのモデルを並列して運用し、年利換算で-4.84%となったが、7月以降新モデルへの切替を行い、新モデルのみの2025年1月から9月までの実績は+5.99%となった。今後も安定収益を獲得することを目的にさらに運用モデルのブラッシュアップを進める方針だ。それ以外にも今後のさらなる成長に向けて、インバウンド関連の新規サービスや越境EC関連の新規サービス、「UNIVERSE」関連の新規サービスなど、市場投入を続けている。
同社はこれまでポストCookieに向けた対応に注力し、3rd Party Cookieのサポートが停止された際のデジタルマーケティング市場において先行者優位を獲得することを成長戦略の1つとしてきた。しかし、GoogleがCookie廃止の撤回を発表したことを受け、同戦略は停止し、2025年9月期にはCookie対策に投下したソフトウェアの減損を行った。なお、開発リソースを「UNIVERSE」や新規サービスの開発に振り向けることにより業績の拡大と企業価値の向上を目指す方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)