一目でわかるミライアル
塩谷航平氏(以下、塩谷):株式会社hands代表取締役の塩谷航平です。今回は、初の取り組みとなる「『PERAGARU(ペラガル)』の気になる企業を取材してみた」という企画です。
我々がウェーハメーカーの決算説明資料を拝見した際に、「在庫の底打ち」というワードが多く見受けられたため、ウェーハ関連事業を展開されているミライアル株式会社さまにお越しいただきました。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?
兵部匡俊氏(以下、兵部):ミライアル株式会社代表取締役社長の兵部です。本日はよろしくお願いします。
羽山哲生氏(以下、羽山):同じくミライアル株式会社、取締役執行役員CFOの羽山と申します。よろしくお願いします。
塩谷:よろしくお願いします。簡単に会社概要をご紹介いただけますか?
兵部:ミライアル株式会社は1968年に設立された、主にプラスチックの成形・加工をコア技術とする会社です。現在、もの作りは熊本県、福島県、山口県で進めており、社員数は500名から600名の規模で運営しています。
塩谷:プラスチック製品というお言葉があったと思うのですが、一言でいうと、プラスチック製品の中で何を作っている会社になるのでしょうか?
兵部:ミライアルは主としてプラスチック製品を製造している会社です。それらは主に半導体市場向けで、多くのみなさまが日常生活で目にするプラスチック製品とは性能面や用途面においてまったく異なる性質の製品を手がけています。
塩谷:社歴がかなり長いですが、もともと半導体向けの事業をやられていたのですか?
兵部:設立は1968年で、ご指摘のとおりまもなく60周年を迎えます。1968年に株式会社として設立され、現在の基盤が築かれました。
ちょうどその頃、新たにフッ素樹脂を使って、国産初となるシリコンウェーハの搬送容器を開発するに至り、以降ミライアルは、半導体業界に深く関わるようになったという歴史があります。
塩谷:特に我々が注目しているのが、説明資料にもある「高機能性樹脂」という言葉です。これは、普通のプラスチックと何が違うのでしょうか?
兵部:ミライアルが主に使用している原料は、非常に高い性能を有する樹脂が中心です。出来上がった製品をご覧いただくと、汎用樹脂で作られたプラスチック製品と見た目はあまり変わらないように見えますが、持っている機能はまったく異なるものと言えると思います。
塩谷:他のメーカーでは簡単には作れない、ということですね。
兵部:そのとおりです。
塩谷:ちなみに、半導体用のウェーハ容器は、樹脂の成形に関して特別な技術が求められるという理解でよいですか?
兵部:半導体用ですので、不純物を非常に嫌います。しかし、プラスチックは石油化学製品のため、さまざまな化学物質が含まれています。これらの化学物質はプラスチックにとって必要なものですが、半導体用途では不純物とみなされます。
そのため、原料メーカーさまに「プラスチックから添加剤や不純物をできるだけ抜いてください」と依頼し、いわば原料メーカーさまと特殊グレードを共同で作成して、それを使用しているかたちになっています。
そのような添加剤を抜くと成形が非常に難しくなります。通常は成形しやすくするために添加剤を使用することが多いのですが、これを取り除くことで、量産時に良品を維持し続けることが非常に難しくなります。そのため、成形および量産をうまく行うことが1つのノウハウになっているのではないかと思います。
半導体製造プロセスにおけるミライアルの立ち位置
塩谷:製品の具体的なイメージが少し難しく感じられるのですが、視聴者の方へもう少しわかりやすくご説明いただけますか?
兵部:私どもは、先ほどから話題に上がっているシリコンウェーハを収納する容器をプラスチックで製造しています。シリコンウェーハの搬送容器と呼ばれるもので、現在主流となっている直径300ミリメートルのシリコンウェーハを入れて運搬するための容器です。これが現在、ミライアルの主力製品となっています。
半導体製造プロセスにおけるミライアルの立ち位置
兵部:当社が手掛ける容器には2種類あります。1つ目は透明な容器で、シリコンウェーハを出荷する際に使用されるものです。ウェーハメーカーさまがウェーハを製造し、デバイスメーカーさまに出荷する際に、この透明な容器に収めていただいています。
塩谷:工場から工場へ輸送する際に使用される容器ということですね。
兵部:はい。もう1つは黒い容器で、こちらはデバイスメーカーさまの工場内に設備として配置されているものです。
デバイスメーカーさまは、ウェーハメーカーさまから白い透明な容器でウェーハを調達し、そのウェーハを黒い容器に移し替えます。そして、自社の半導体チップを製造する複数のプロセスにおいて、次々に工程を進めていきます。黒い容器はそのように使用されています。
塩谷:そのような違いがあるのですね。なぜ入れ替える必要があるのでしょうか?
兵部:容器によって目的が異なります。透明な容器は、ウェーハメーカーさまがデバイスメーカーさまにウェーハを出荷する際に使用する容器です。そのため、求められる性能としては、ウェーハを安全に保護することが重要です。
輸送時には、陸上輸送、航空輸送、海上輸送など、さまざまな輸送手段があります。航空輸送では気圧の変化があり、陸上輸送では大きな振動が生じる場合もあります。こうした輸送中の厳しい条件下で、壊れやすいウェーハをいかに保護するかに注力して設計・開発されたものが、この透明な容器です。
一方、デバイスメーカーさまの工程に入ると、輸送のような過酷な環境はなくなり、非常に清潔な環境でウェーハが処理されていきます。このため、そこまでの物理的な保護性能は必要ありません。
逆に、必要とされる性能としては、ウェーハに徐々に回路が形成され、単なるシリコンウェーハから電気製品としての性質を帯びる段階で、例えば、静電気によるショートを防ぐことなどが求められます。このような観点の異なる守り方が求められるため、透明な容器と黒い容器を使い分けています。
塩谷:貴社の説明資料を読んでいて、「なぜ入れ替える必要があるのだろうな」とずっと思っていたので、非常に理解できました。
本日は製品をお持ちいただいているとうかがいましたが、拝見してもよろしいですか?
兵部:はい。よろしくお願いします。空の状態で約4キログラム、すべて入れると約8キログラムになると思います。
塩谷:実際にウェーハが入っているのですか?
兵部:今日はサンプルのウェーハをご用意しています。
塩谷:本当にレコードのような感じですね。
兵部:そうですね。透明でキラキラしており、非常にデリケートな素材です。
塩谷:すごいですね。これは何枚入るのですか?
兵部:フルで入れると25枚入ります。
塩谷:ありがとうございます。黒いほうも見ていいですか?
兵部:はい。
塩谷:説明資料で見るのと、サイズ感のイメージがぜんぜん違いますね。こちらが工場内で搬送・輸送する際に使うものですね。
兵部:そうですね。主にデバイスメーカーさまの工程内を輸送する際に使います。
塩谷:こちらも25枚入るのですか?
兵部:こちらも25枚入ります。
塩谷:持ってみてもいいですか?
兵部:はい。
塩谷:意外に重いです。これはプラスチックでできているのですか?
兵部:すべてプラスチックです。
高機能樹脂製品の開発を通して、革新的な価値をご提案します。
塩谷:ここから少し、ビジネスの具体的な内容について質問します。貴社には2つのセグメントがありますよね。
先ほどのお話はプラスチック成形事業についてでしたが、もう1つ成形機事業があると思います。この2つの違いについて教えてください。
兵部:両事業は技術的にまったく異なる事業です。プラスチック成形事業は、いわゆるプラスチック製品を製造する事業です。
一方、成形機事業は、そのプラスチック製品を製造するための装置を作る事業です。この装置を製造する事業を成形機事業と呼んでおり、機械を製造する事業です。
バリューチェーンを内製化し一貫生産を実現
兵部:プラスチック成形事業と成形機事業を個別に見ると、それぞれが独立しているように感じられるかもしれません。技術的にも異なる印象を受けますが、プラスチック製品のバリューチェーン、つまり製造工程全体という視点で見直すと、見え方が少し変わると考えています。
プラスチック製品は、金型を成形機に取り付けて成形されます。そして、物によっては寸法精度を高めたり、表面を美しく仕上げたりするために、成形された品に切削加工を行う場合もあります。
つまり、プラスチック製品を完成させるためには金型、成形機、そして切削加工、それぞれの技術が必要です。
ミライアルはこれまで、成形機を製造する山城精機製作所と樹脂の切削加工を得意とする宮本樹脂工業(現在は株式会社ミライアル東北に社名を変更)をそれぞれ買収してきました。これは、プラスチック製品製造のバリューチェーンをグループ内で完結させたいという狙いで行われたものです。
現在、各社はそれぞれの固有ビジネスを持ちながら、グループ内のバリューチェーンの構成要素としての機能を発揮し合い、助け合い、有機的に連携する関係を形成しています。
塩谷:成形機事業は半導体向け以外の会社にも提供しているというイメージでよいのでしょうか?
兵部:そうです。成形機事業のお客さまは、必ずしも半導体関連とは限りません。むしろ他の事業が中心です。
市場別売上高の内訳
塩谷:売上シェアで見ると、プラスチック成形事業のシェアが現在非常に高く、全体の80パーセントから90パーセントほどを占めているという認識でよいでしょうか?
兵部:そのとおりです。
塩谷:この90パーセント弱の売上のうち、ほとんどが半導体向けという理解で間違いありませんか?
兵部:そのとおりです。プラスチック成形事業の売上のほとんどが半導体関係です。一方で、成形機事業の売上の約半分は、自動車業界向けとなっています。
塩谷:説明資料にEVが含まれていました。こちらについても後でいろいろとおうかがいしたいと思いますので、よろしくお願いします。
我々はウェーハの、まさに容器の部分を詳しく調査しています。その中で「貴社でないとダメ」というような強みはどのような点にあるのでしょうか?
兵部:特に、最先端半導体と呼ばれるものでは、シリコンウェーハに1桁ナノレベルの回路を描いていきます。そのため、ウェーハを搬送する容器に対する品質要求は、いっそう厳しくなっています。
このような状況での他社や競合との競争においては、「いかにクリーンな容器を作るか」という領域が重要になってきます。ミライアルは、長年のノウハウや暗黙知を含むこれまでの知見を活かし、この課題をなんとかクリアしてきたことで、お客さまに選ばれていると考えています。
しかし、今後も一層厳しい要求が続くと予想されます。そのため、研究開発の手を緩めることなく、高い緊張感を持ってお客さまのご要求にしっかりと応えていく努力を続けていきます。
塩谷:お客さまの中で自動車関連が多いというお話がありましたが、ここは自動車がメインの顧客ということでしょうか?
兵部:そうですね。約半分は自動車関係のお客さまです。「プラスチックを多く使う業界はどこですか?」というご質問に対して、おそらく塩谷さまの頭の中にいろいろ浮かぶかと思いますが、その中に正解があると思います。それがやはり自動車なのです。
自動車の内装や外装、さまざまな基幹部品には、多くの樹脂パーツが使用されています。これら樹脂製の部品を製造するには、プラスチック製品を作る成形機が必要です。このような背景から、成形機事業の売上の約半分は自動車業界が占めています。
一方で、プラスチック製品は世の中に数多く存在しているため、医療機器メーカーや工業部品メーカー、スポーツ用品メーカーなど、多岐にわたる業界の企業に当社の成形機をご利用いただいています。
まとめると、自動車業界を中心として、非常に幅広い業界や分野で活用されているセグメントです。
経営成績の概況
塩谷:2つのセグメントについて理解が深まりました。ここから直近の業績についてご質問します。2026年1月期の売上高は、前年度比で10パーセント前後のマイナスとなりました。前期1年を振り返ると、どのような年でしたか?
羽山:前期については、まずプラスチック成形事業において、半導体市場はAIやIoT関連分野の需要が堅調に推移しました。一方で、スマートフォンやパソコンといった民生品の需要がなかなか伸びず、軟調に推移した状況がありました。
また、成形機事業に関しては、国内の設備投資需要が低迷したことを背景に、顧客の生産計画の見直しや設備仕様の変更などが発生し、予定していた受注の遅れが生じました。その結果、工場稼働が相対的に低水準で安定するという背景がありました。
塩谷:プラスチック成形事業と成形機事業の両方の一部の領域で、需要や受注の落ち込みがあったということですね。
羽山:そのとおりです。
塩谷:プラスチック成形事業において、半導体向けは好調で半導体関連以外の分野は低調だったということでしょうか?
羽山:そうではありません。いわゆる先端製品には復調の兆しが見られました。ただし、半導体で数量が多く出るものは、先ほどお話ししたスマートフォンやパソコンといった民生品の部分です。そのため、全体としては数量がなかなか上がらなかったというのが、昨年の状況です。
塩谷:確かに、昨年はスマートフォンとパソコンの統計データも悪い数値が続いていましたね。今年はやや復調しつつあり、特にスマートフォンは復調傾向にあるというレポートも最近発表されています。
羽山:全体として、現在は復調の兆しが見られると感じています。
塩谷:貴社のプラスチック成形事業を理解するには、先端向けと汎用・民生向けで分けて考えることが重要ですね。
羽山:そのとおりです。
塩谷:利益の状況はいかがですか? マイナス幅については、前年度比でおおよそ60パーセントだったと認識しています。
羽山:売上が減少すれば、当然ながら工場の稼働率が低下し、生産効率が悪化します。その結果、売上に占める固定費の割合が大きくなります。売上減少以上に固定費負担が相対的に増加し、利益が大きく落ち込むというのが昨年の構造です。
塩谷:稼働率が利益率に影響する点は、他のメーカーと同じですか?
羽山:同じです。
塩谷:貴社がここ数年行っている設備投資について、その償却費の負担が少し重くなっている印象がありますが、いかがですか?
羽山:そのとおりです。ここ数年は生産キャパシティを上げるため、そして組み立て工程における労務費負担を軽減するために自動化ラインを導入してきました。それに伴い、固定資産の稼働が始まり、先行して減価償却費が増加するという状況が昨年もありました。
塩谷:工場稼働率の低下と減価償却費の負担増について、あらためてもう少しわかりやすく説明していただけますか?
羽山:まず、売上が減少すると、変動費を差し引いた限界利益も比例して減少します。これにより、工場の稼働率が低下することになります。
一方で、工場の操業や会社全体の運営には、一定の固定費がかかります。この中には、減価償却費も含まれており、売上や生産量にかかわらず、この固定費の負担は一定です。
その結果、限界利益から固定費を差し引いた営業利益は、売上や生産が減少すると大幅に減少する収益構造になっています。
そのため、昨年のように売上高が減少すると、売上高に占める減価償却費の割合が増加します。その結果、売上減少のペース以上に利益が減少したのが、昨年の収益状況でした。
塩谷:設備投資をしたタイミングと需要低下が、運悪く重なった年だったということですね。
羽山:そうですね。その端境期に当たったと思います。
塩谷:理解しました。投資家が気になることとして、昨年が利益のボトムで、ここから復調するのではないかということだと思います。そのような認識でよいのでしょうか?
羽山:そのような認識で、我々は取り組んでいます。
塩谷:わかりました。設備投資のどの工場でどのような生産の増加や効率化が進むのか、もう少し具体的に教えていただけますか?
羽山:当社は熊本に工場を持っています。過去数年にわたり、将来の市場拡大や人件費の上昇に伴う労務費コストの増加に対応するため、生産能力を増強する拡張投資を行ってきました。また、労務費の抑制や品質向上、つまり人の手をできるだけ介さずに物を作る品質向上を目的とした自動化投資も推進しています。
これにより、先ほどお話ししたとおり、減価償却費の負担が増えていますが、事業環境は現在、好転しつつあります。今年以降、これらの投資回収を着実に進めていきたいと考えています。
塩谷:ウェーハなどは、現在の相場を考えると、これからさらに必要になりそうですね。
半導体市況とミライアル業績の関係
塩谷:ここからは外部環境や業界全体について、投資家が貴社以外の会社を見る際に気になる点でもあるため、質問します。
半導体売上が少し落ちたという話がありましたが、これは半導体業界全体が落ち込んだ影響なのでしょうか、それとも貴社の領域や貴社特有の需要減少によるものなのでしょうか?
兵部:ミライアルが製造している出荷容器FOSBは、シリコンウェーハの出荷容器です。そのため、当社ミライアルの業績を評価する際には、半導体業界全体という広い視点で見ることも重要ですが、視点を少し狭めてシリコンウェーハの出荷動向に注目することも必要だと思います。おそらく、この点がご質問への答えになるのではないかと思います。
まず、半導体業界全体では間違いなく活況と言えます。マスコミなどでもさまざまな情報が報じられているかと思います。ご承知のとおり、AI需要を背景とした最先端半導体のニーズが非常に高まっていることが、その背景にあると考えられます。
しかし一方で、やはり多くの数量が必要なのは、自動車や家電、先ほどお話ししたスマートフォン、パソコンなど、いわゆる民生分野です。この分野で活用されるのがレガシー半導体であり、これがボリュームゾーンを形成しています。
レガシー半導体は、先端半導体や最先端半導体よりも安価ではあるものの、数量の面で半導体業界を支える重要な存在です。しかし、このレガシー半導体の需要が低迷する時期が少し続いていました。その影響でウェーハの出荷ボリュームも伸び悩む状況が見られ、結果として、ミライアルの出荷容器の需要も落ち着いた状況が続いていたと考えています。
昨今においては、もう1つ別の観点があると思います。数年前のコロナ禍では、経済が大きく混乱した時期がありました。当時、シリコンウェーハを在庫として積み増す動きが見られました。その影響で、半導体のバリューチェーンおよびサプライチェーン内にウェーハの在庫が溜まり続ける状況が発生しました。
これにより、ウェーハの新品需要が頭打ちとなり、結果として、ミライアルの出荷容器の需要も伸びない時期が続いたと考えています。
その後、在庫が解消される時期に入ると、新品ウェーハの需要が相対的に落ち着き、私どものFOSBの出荷量も同様に落ち着いたという状況です。
塩谷:直近までウェーハメーカーに在庫が溜まっていたというのは、コロナ禍の時からの在庫というイメージなのですね。
兵部:そうではないかと思います。
塩谷:今期予想についてですが、貴社では四半期予想を開示されています。先日、第2四半期予想も発表され、かなり強気な数字が出ているのではないかと感じています。この部分の現場の実感や、どのように描いているのかについてお聞きしたいと思います。
また、1点気になっているのは、第1四半期の数字は前年と比較して大幅に回復傾向にある一方、第2四半期の予想数字を見ると利益にそれほど変動がないように見受けられる点です。このQonQでの現場での実感の違いについても併せて教えていただけますか?
兵部:当社が四半期ごとにしか予想を出していない件については、投資家のみなさまからさまざまなご意見をいただくことがあります。
かつては半年後や1年後の予想を出していた時期もありました。しかし、ご承知の通り、半導体業界は非常に波が大きく、変動が激しい業界です。そのため、正直申し上げて3ヶ月後を読むことすら難しい状況です。
無理に半年後や1年後の予想を出していた際は、開示の変更が重なり、かえって投資家のみなさまのご判断を誤らせてしまうのではないかという懸念がありました。
そこで、「もうここは3ヶ月先でやっていこう」というかたちに変更し、現在に至っています。そのため、この点については、何卒ご容赦いただきたいと思います。
現在の状況ですが、先ほど申し上げたサプライチェーン内のウェーハ在庫については、おおむね底打ち感があるとの見方が強まっています。これに加えて、メモリなどの需要が旺盛で、シリコンウェーハの需要もある程度堅調に推移していくのではないかという感触を持っています。
特に、AI向けの最先端半導体の需要がさらに強まっています。それに引っ張られるかたちで、それ以外の半導体需要も強くなっているのではないかと感じています。
そうした中で先般、第2四半期の予想を出しました。「そういう肌感覚の割には数字に表れていないのではないか」というご指摘をいただいたと承知していますが、まさにご指摘のとおりです。
回復の兆しが、我々の想定を超えるほど急激でした。そのため、工場側の受け入れ体制が十分追いついておらず、現在、急遽増産に向けて体制を立て直しています。そのような事情により、数字に反映しきれていない部分がある状況ですが、需要自体は堅調に推移していると感じています。
塩谷:そのような背景があったのですね。工場側の体制としては、人員の確保が十分でなかったということなのでしょうか? それとも、生産設備に問題があったのでしょうか?
兵部:これは人員に関する問題です。
塩谷:現在は、ある程度体制が整ってきたということでしょうか?
兵部:現在、急いで整備を進めているところです。
塩谷:需要が急激に喚起され、一気に増加したというかたちだったのですね。これは第3四半期ぐらいまでに体制が整うというイメージでしょうか?
兵部:そのような方向を目指して準備を進めているところです。
塩谷:投資家の方が貴社を見て心配している点について、「生産キャパシティがもうこれ以上伸びないのではないか」という懸念も挙げられていますが、そのようなことはなく、あくまで人員の問題という理解でよろしいでしょうか?
兵部:おっしゃるとおりです。生産キャパシティはここ数年でしっかり投資を行いましたので、当面の需要に応えられる水準はほぼ整っています。現在の課題は、それを運用する人員がボトルネックになっているという点です。
塩谷:半導体市況についてうかがっていると、先端の分野は盛り上がっているものの、業界として波が激しく、サイクルも短い印象があります。この波と貴社の業績の連動性は、やはり避けられないものでしょうか?
兵部:そうですね。この業界にいる以上、波に慣れていくしかないというのが現実だと思います。ただ一方で、私どもの容器は、半導体の種類、例えば最先端やレガシーといった区分に関係なく、基本的に同じ容器が使われます。
そのため、半導体の種類にかかわらず、ウェーハが出荷されれば容器の需要も増えるという構造になっています。したがって、半導体向けのウェーハ、すなわちシリコンウェーハの需要が伸びれば、容器の需要も伸びると言えます。
塩谷:先端向けでもレガシー向けでも、元となるウェーハは一緒ですものね。
兵部:厳密に言うと、ウェーハの質は私自身の専門外のため、詳細なコメントは控えますが、それぞれ最先端向けとレガシー向けでノウハウの違いがあるのではないかと思います。ただ、それらにかかわらず、当社で取り扱う容器は同じ仕様となっています。
塩谷:貴社のプラスチック関連事業において、「ナフサ影響は大丈夫なの?」という市場の懸念があるかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか?
兵部:当社ではプラスチック樹脂を使用しているため、原料の観点からさまざまな影響が出ているのは事実です。実際、価格の上昇は顕著に現れています。
ただし、供給にまで大きな影響が出ているわけではなく、必要な量の原材料は現状確保できています。現在も、大きな懸念となる状況ではないと考えています。
また、ナフサ由来の消耗品、例えばゴム手袋やクリーンルームで使用する消耗品などの入手が難しくなっている状況もありますが、さまざまな手を尽くしながら、対応しています。
したがって、生産に大きな影響が出るような状況ではなく、今後も対応していけると考えています。いずれにしても、緊張感を持って対応していきたいと思います。
塩谷:必要な量はある程度調達できているというのは、向こう1年分といったイメージでしょうか?
兵部:そこまでは至っていません。ある程度綱渡りな状況が続いていますので、引き続き緊張感を持って取り組んでいきたいと考えています。
当社の発展段階と中期成長戦略の位置づけ
塩谷:中期成長戦略において意欲的な目標を掲げていると思いますが、この数字を達成するにあたり、どのような会社を目指していくのかというビジョンについて、定性的な観点を中心にお答えいただけますか?
兵部:ご指摘のとおり、2028年度に私どもは設立60周年を迎えます。それ以降を第3創業期と位置づけ、「FOSBのミライアル」という印象から脱却し、次のステージに進むことを目指しています。そのため、これに至るまでの足元の5年間を土台作りの期間とし、中期成長戦略を推進しています。
まもなく、その中間の折り返し地点を迎えます。残りの中期成長戦略の2年半では、「資本市場からの要請を踏まえた経営への転換」や「持続的かつ安定的に成長を実現する事業ポートフォリオ変革を実現する」ということを目指して取り組んでいきたいと考えています。
この方針を支えているのは、「ずっと、必要とされ続ける」というミライアルグループのミッションです。
みなさまに常に必要とされ続ける会社であるために、私は意図的に社内に新しい風を送り込み、思考をリフレッシュして、「さまざまなステークホルダーに何が求められているのか」を従業員一人ひとりが自律的にアップデートしていく力が必要だと思います。
塩谷:社内の改革が土台にある、そのようなイメージなのですね。
兵部:私はその一人ひとりの考え方を重視しながら目標に向かって取り組んでいきたいと思います。
中期成長戦略の数値目標
塩谷:一方で、売上がほぼ倍増するような計画を掲げていらっしゃると思いますが、社内改革や社員の姿勢を変えていく以外では、どのようなアプローチで達成を目指していくのかお聞きしてもよろしいでしょうか?
兵部:確かに困難な数字ではありますが、前提となる半導体業界の成長や、それに伴うシリコンウェーハの出荷量、デバイスメーカーさまの投資などが、過去には想像できなかったレベルまで突き抜けていることも事実です。
ですので、足元の状況を踏まえると、半導体業界のオーガニックな成長により、ある程度数字は積み上げられるのではないかと考えています。さらにこれに加え、M&Aなどによるインオーガニックな成長も視野に入れています。
これらをバランスよく進めながら、引き続きこの数値目標を目指して取り組んでいきたいと考えています。
塩谷:今、M&Aの話や事業の多角化といった文脈が含まれていたと思います。一方で、やはり半導体市況が良好な状況ですので、半導体関連事業をメインとするというメッセージがあれば、投資家側も貴社をより評価しやすいのではないかと感じています。
一方で、半導体中心の売上構造を見直す必要があるというお話もあったと思います。このポートフォリオ変革の必要性について、どのような点で感じられていますか?
兵部:ご指摘のとおり、半導体に集中するという選択肢も経営判断としてはあると思います。その点を認識しながらも、事業ポートフォリオを拡大していく必要があると考えています。その理由として私は2点挙げたいと思います。
1つ目は、まず経営リスクの分散です。グループ全体として持続的かつ安定的な成長を実現するため、収益源を多様化する必要があると考えています。
もう1つは、企業カルチャーを刷新するきっかけにしたいという意図があります。
組織というものは、同じ環境に身を置き続けると、それなりの慣性の法則が働き、外の世界に目を向けなくなる可能性があると考えています。このような状況に陥ることを未然に防ぎ、常に組織に新しい風を吹かせ続けることが非常に重要だと思っています。
この2つの観点から、事業を拡大すべきだと考えています。
塩谷:そのような経営の方向性となっているのですね。他の領域に進出し、第2・第3の柱として高機能樹脂や成形機を伸ばしていく中で、半導体以外ではどの分野が対象になるのでしょうか?
兵部:まず、高機能樹脂製品に関してですが、長年携わってきた半導体業界においても、まだ手が届いていない分野があると認識しています。
まずは得意とする半導体業界を深掘りし、その中で製品ラインを広げていくことが、まず取り組むべき課題だと考えています。
加えて、半導体分野で培った精密さやクリーンネスなどの技術を活かせる分野があります。例えば、ライフサイエンス分野や理化学用品分野など、特色のある分野への横展開にも力を入れていく必要があると考えています。
また、もう1つのセグメントである成形機事業では、まず成形機という機械単体の独自性を追求することが非常に重要です。ただし、それだけでは、お客さまに付加価値を提供するという点で十分ではない時期に来ていると思います。
これからは、成形機単体での提案に加え、お客さまの成形ライン、工程全体を提案できる能力まで技術力を高めていく必要があると考えています。
塩谷:半導体以外の成長領域として、どのような可能性を感じていますか? 例えば、EVが今後伸びる可能性がある中での展望などについて教えてください。
兵部:ミライアルグループの現時点でのこだわりは「ニッチであり、トップでありたい」という点です。また、独自性を重視し、さらに言えば、自社製品や自社ブランドに強くこだわりたいと考えています。
このポリシーを具体化する一例として、成形機事業におけるEVへの取り組みがあります。EV向けを想定した次世代モーターの製造工程に最適な成形機の開発を継続して進めてきました。
現在、自動車業界ではEV一辺倒の方針から若干転換しつつありますが、これまで培った特殊な成形技術が無駄になるわけではありません。ある程度ハイブリッドEVに向けた方向性が形成されつつあります。
このハイブリッドEV用モーターや、その他の産業用モーター、次世代モーターといったさまざまな種類のモーターなどのさまざまな分野において、これまで培ってきた研究開発の成果が応用できることがわかっています。
引き続きお客さまと技術開発を深めながら、成形機事業の柱として、EV用モーター向けの成形機を育てていきます。
塩谷:布谷グループの業績寄与についてですが、第3四半期以降に寄与していく認識でよろしいでしょうか? また、第3四半期以降の業績への寄与度について教えていただけますか?
羽山:まず、布谷舶用計器工業株式会社を含めた3社についてですが、第2四半期の期末にみなし取得を行い、第3四半期決算から同社の損益を取り込む予定です。
この件についてはすでに開示済みですが、連結子会社化による連結業績や財務状況への影響については、現在精査中です。そのため、現時点で公表できる内容はありませんが、公表すべき事項が発生した場合には速やかに開示いたします。
ご参考までに、こちらも4月20日に開示しましたが、2025年3月期の布谷舶用計器工業株式会社の営業利益は7,500万円です。当社の孫会社にあたる株式会社布谷計器製作所の営業利益は1億9,100万円、同じく孫会社の大阪布谷精器株式会社の営業利益は8,400万円となっています。
一方、造船業界の足元の受注動向は比較的堅調であり、事業環境は引き続き堅調に推移する見通しです。当社にとっても、第3四半期以降の業績寄与が見込まれる状況です。
株主還元
塩谷:株主還元についてうかがいたいと思います。配当は年間50円の予定であり、DOE導入もされていることから、仮に利益が落ちた場合でも累進配当に近い性質があると考えてよろしいでしょうか?
羽山:累進配当というわけではありませんが、先ほどご説明したとおり、半導体のサイクルによって収益が減少した場合には配当も減少してしまうという課題がありました。
そこで、半導体市況のボラティリティに左右されず、配当を安定化させるため、単年度利益に基づく配当性向の安定化ではなく、配当額を安定的に出す方針に変更しました。
具体的には、前期の2026年1月期に、総還元性向30パーセントまたはDOE2パーセントのいずれか高いほうを下限とする安定配当の方針へと転換しました。
企業価値向上に向けた新たな取り組み
塩谷:自己資本比率についてですが、貴社は非常に健全な財務体質をお持ちだと思います。今後については、デットを活用するようなことを検討されているのでしょうか?
羽山:従前は無借金経営で、自己資本比率が高い状況でした。これはもちろん、会社の信用力や安全性の面では非常に好ましい状態でしたが、一方で資本コストが高くなるため、ROEが低下し、結果として企業価値の低下を招くという課題がありました。
こちらについても前期の2026年1月期から「企業価値向上に向けた新たな取り組み」として打ち出しました。
さらなる収益力強化による事業成長と市場からの要請に沿った資本政策や財務戦略の両輪を通じて、ROEとPERの向上を促進し、PBR1倍超を恒常的に達成することで、中長期的に企業価値の最大化を目指す方針を対外的に発表しました。
この中で、ROE向上のための施策として、資本構成の見直しを進めます。具体的には、先般開示しました有利子負債の活用により財務レバレッジを効かせ、最適な資本構成に転換していきます。これにより、資本コストの低減も図ることを狙っています。
塩谷:還元や資本コストの部分も含めて、ここ2年ほどで開示内容がどんどん充実してきており、今回の還元やM&A戦略を含めたスライドも、個人的に非常にわかりやすく、それらのIR資料もどんどん進化している印象を受けています。
企業価値向上に向けた取り組みを実現するための新経営体制
塩谷:経営体制の部分について、前年と今年でなにか変化があったところがあれば教えていただけますか?
羽山:2025年4月から、組織を機能別の本部組織として整理し、各組織の役割と責任を明確にしました。経営機能と執行機能の双方を強化する目的で、本部を導入したのが昨年の出来事です。
本年4月には、市場に合わせて製品群ごとに組織を見直しました。本部の新設と統廃合を実施したことに加え、同時にCxO制を導入しました。これにより、専門性の強化、迅速な意思決定、競争力の向上、コーポレートガバナンスの強化を狙い、中長期的に企業価値の最大化を実現する体制へと変革しました。
塩谷:今回からCxO制を導入され、羽山さんがCFOで、社長がCEOというかたちですね。兵部社長がご就任されたのは何年前ですか?
兵部:2019年だと思います。当時から、いわゆる資本市場からの要請が高まりつつあったことは認識していましたが、会社として正面から取り組むことはしていませんでした。
これは、さまざまな会社の歴史の中で培われた文化だったと思いますが、借金をしない、自己資本を厚くする、現金をしっかり貯めるというのが基本でした。
塩谷:貴社にはそのイメージが強くありますね。
兵部:それは時代の中で醸成された文化であり、決して間違ったことではないと考えています。ただし、やはり資本市場を意識した経営が求められるように、時代は変化してきましたね。
経営はそのような変化に対して柔軟に対応していく必要があると考えています。2019年以降、そうした方向へ我々も変化していかなければならないという認識のもと、少しずつ舵を切り始めました。
その後、中期成長戦略として「我々の還暦に向けて変わりきろう」というタイミングを迎え、「これはもう経営体制から一新して、前に進んでいこう」という、現在の体制へと移行する段階に至りました。
塩谷:まさに貴社といえば無借金経営で自己資本比率が高いという印象がありましたので、少しずつ変化の兆しが見えるのかと勝手ながら思っていました。そのような背景があったのですね。
半導体業界は波がある中で、必ずしも先端需要だけに引っ張られない部分も少し理解できました。「ここは安心してほしい」「ミライアルのこういうところを見てほしい」という点について、視聴者へのメッセージとともに、最後にお願いできますか?
兵部:現在、中期成長戦略期間の折り返し地点に立っています。我々経営陣は、本気で企業カルチャーを変革し、これからの時代に必要とされる企業グループを目指していく覚悟です。
私たち経営陣は、スピード感を持ってミライアルの変革の先頭に立ち、一致団結してさらなる収益力向上による事業成長やM&A、資本市場からの要請に応えるための資本政策や財務戦略を両輪で進めつつ、中長期的な企業価値の最大化に取り組んでいきます。引き続き、ご指導を賜れればと考えています。
塩谷:貴社の事業理解に加え、業界全体の理解を深めることができたので、大変勉強になりました。貴重なお時間をいただき、感謝申し上げます。本日はありがとうございました。
兵部:ありがとうございました。
羽山:ありがとうございました。