マネーボイス メニュー

クエスト Research Memo(4):事業ポートフォリオは重点強化領域×安定成長領域×社会課題解決領域で構成

■事業概要

1. 主な事業領域
クエストは、半導体、製造、金融、エンタテインメント、情報通信、公共・社会、移動・物流、ヘルスケア・メディカルの8業界を対象にITサービスを提供している。特定業界への依存を抑えた顧客ポートフォリオを構築していることが同社の特徴であり、顧客産業ごとの景気変動やIT投資動向の影響を分散できる事業構造となっている。

これらの顧客業界を同社では「重点強化領域」「安定成長領域」「社会課題解決領域」の3つに分類し、成長性と安定性のバランスを重視した事業ポートフォリオを運営している。2026年3月期のセプトを含めた3社連結ベースでの売上構成は、重点強化領域46%、安定成長領域42%、社会課題解決領域11%となっている。

(1) 重点強化領域:半導体+製造
重点強化領域は主に半導体とその他の製造業向け事業で構成される。足元では同領域が最も高い成長を示しており、2026年3月期も半導体分野におけるシステム開発案件の拡大が成長をけん引した。AI需要拡大を背景としたメモリ需要の増加により、キオクシアをはじめとする半導体関連顧客からの需要が高水準で推移している。四日市拠点の拡張や北上拠点の新設も、この成長機会を取り込むための施策である。

(2) 安定成長領域:金融+エンタテインメント+情報通信
安定成長領域は金融、エンタテインメント、情報通信を中心とする事業であり、同社の収益基盤を支える中核領域である。システム開発や保守運用など継続案件が多く、安定的な収益を生み出している。2026年3月期はセプトの連結効果が最も表れた領域であり、金融・情報通信分野を中心に売上拡大に寄与した。さらにセプトからクエスト案件への人材シフトも進んでおり、グループシナジー創出の中心領域となっている。

(3) 社会課題解決領域:公共・社会+移動・物流+ヘルスケア・メディカル
社会課題解決領域は、公共・社会、移動・物流、ヘルスケア・メディカルなどを対象とする事業である。デジタル行政や社会インフラ高度化への対応を背景に需要が拡大しており、2026年3月期も公共分野向け案件や移動・物流分野向けサービスが伸長した。社会課題の解決に直結する分野として中長期的な成長が期待されている。

以上のように、同社は8業界に分散した顧客基盤を持ちながら、半導体を中心とする重点強化領域で成長を追求し、金融・情報通信分野で安定収益を確保しつつ、公共・社会インフラ分野で新たな需要を取り込む事業ポートフォリオを構築している。

2. コアサービスとソリューションサービス
同社の事業は、大きくコアサービスとソリューションサービスに区分される。コアサービスは長年にわたり同社の成長を支えてきた安定収益基盤であり、ソリューションサービスは中長期的な成長と収益性向上を担う戦略領域として位置付けられている。

(1) コアサービス
コアサービスは、システム開発、インフラ構築、保守・運用サービスを中心とする事業である。金融、情報通信、半導体、製造、公共・社会など幅広い業界に対し、顧客業務に密着したITサービスを提供している。同社は90%超の一次請け案件比率を有しており、顧客業務への深い理解と長期的な信頼関係を背景に継続的な案件獲得を実現している。

近年は従来型の開発・運用受託に加え、顧客のIT運用業務を包括的に受託するBPO型サービスの拡大にも取り組んでいる。その代表例が旧ソニーケミカル(株)を前身とするデクセリアルズとの契約である。同案件は、同社との長年の取引を通じて培った信頼関係を背景に獲得したものであり、顧客が戦略領域へ人材を集中させる一方、運用業務を同社が担う形となっている。今後は同様のBPO型受託モデルを既存顧客や新規顧客へ展開していく方針である。

また、2025年にグループ入りしたセプトとの連携も進展している。金融・情報通信分野を中心にグループ内での人材シフトが進み、案件対応力の向上と収益性改善の両立を図っている。セプトからクエスト案件への人材投入を継続的に進めることで、グループ全体としての生産性向上とシナジー創出を目指している。

(2) ソリューションサービス
ソリューションサービスは、同社が現在最も注力している成長領域であり、収益構造転換の中核を担う事業である。従来の受託型ビジネスが顧客ごとの個別開発を中心としていたのに対し、ソリューションサービスでは同社が蓄積してきた業務ノウハウや技術をアセット化し、複数顧客へ横展開することで高付加価値化を図っている。

ソリューションサービスの売上構成比は約22%まで上昇しており、粗利率も従来型サービスと比較して改善傾向にある。立ち上がりには想定以上の時間を要したものの、現在は収益化に向けた基盤整備が進み、今後の成長ドライバーとして期待されている。

同社が展開する「Unite」は、強みである「業務知識」と「テクノロジー」、そして「おもてなしの心」を掛け合わせてお客様に寄り添い、業務に根差した価値創出を実現するための事業ブランドである。クエストのすべての事業に通底する考え方であり、これまで培ってきた事業と、これから拡大していくソリューションサービスを一つの思想で束ねている。

生成AIの業務活用を支援する新サービス「AI Studio」は、Unite発のAIソリューションに位置付けられる。紙文書、PDF、Excel、PowerPointなどの非構造データを取り込み、企業内データの蓄積・分析基盤を構築することで業務DXを支援している。AIにかかわる実績としては、他社と協業し、大手物流企業向けにフォークリフト運行データを活用したプロトタイプシステムを開発するなど、具体的な成果創出を始めている。

同社は今後、コアサービスによる安定収益基盤を維持しながら、ソリューションサービスの拡大によって利益率向上を図る方針である。経営陣は、ソリューションビジネスの拡大、価格転嫁の推進、人材・技術投資の強化により収益構造転換を進めたい考えであり、ソリューションサービスの成長が企業価値向上の重要なカギになると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。