樹脂バルブの国内トップメーカーとなる旭有機材は、2025年4月安値2949円から直近6月22日の最高値7930円(約2.7倍)まで上げ幅を大きく広げている。半導体関連の一角として注目される中、2026年3月期決算発表に合わせ、新中期経営計画「GNT2030」を公表している。
まずは5月15日に発表された2026年3月期決算だが、売上高800.81億円(前期比6.0%減)、営業利益が75.79億円(同31.8%減)と、営業利益は従来計画70億円の計画を上回って着地した。米国における半導体工場建設案件の見直し・延期、中国の液晶工場案件の遅延、国内設備投資・工場建設需要の落ち着きが響き、全社では減収減益となった。また、成長分野を中心とした事業基盤強化に伴い、労務費や減価償却費などの固定費が増加したことも利益を圧迫した。ただし、管材システム事業において中東情勢の悪化による期末在庫需要の増加、樹脂事業の素形材分野における高付加価値品の販売促進等により、前回予想値を上回った。売上高に対する半導体比率は18%で推移している。
セグメント別では、管材システム事業で、半導体製造装置向け「Dymatrix」製品が中国でローカルメーカーの需要拡大を取り込んだほか、国内・韓国でも需要回復の兆しが見られた。また、樹脂事業では、電子材料が後工程向け材料において顧客の在庫調整の影響を受けた。水処理・資源開発事業は、水処理の官庁工事案件やメンテナンス関連が堅調だった一方、温泉・地熱掘削工事の進捗遅延が影響した。
2027年3月期は、売上高900億円(前期比12.4%増)、営業利益85億円(同12.1%増)を見込む。製造業全体の設備投資は引き続き慎重な姿勢が続くとみられるものの、AI活用の拡大を背景に、データセンター分野やAI向け先端半導体需要は改善が進んでいる。半導体製造装置分野は比較的良好な需要環境が継続しており、延期や見直しとなっていた米国の半導体工場建設の進捗見られつつある。同社はこうした需要を取り込み、事業機会の拡大につなげる方針である。
同時に発表した新中期経営計画「GNT2030」では、2030年度目標として、売上高1,200億円、営業利益200億円、営業利益率17%、ROIC10%、ROE15%を掲げている。半導体事業の深化・拡大、地域別ニッチトップ戦略の推進、国内事業モデルの変革の3つを重点施策とし、半導体事業では、Dymatrix製品の新技術開発、製品ラインナップ拡充、海外展開を通じ、拡大する半導体関連需要を捕捉する。投資面では、Dymatrix製品を製造する管材第二製造所建設に175億円を投じ、2028年度の稼働開始を予定。電子材料では、南通電材第二工場の建設などにより中国での供給能力を高め、中国国内の国産化ニーズに対応。愛知の電材第二工場も立ち上げが完了し、今後先端半導体、後工程など付加価値の高い成長市場に対し、高い評価を受けている低メタル化技術を活用してシフトしていく。素形材では、インドを中心に高機能RCS製品の供給能力を増強し、自動車・建設機械向けなどの成長市場でシェア拡大を目指す。発泡材では、グループ施工会社との材工一体モデルを強化し、高断熱材市場での利益構造改革を進める。
同社は管材システム事業、樹脂事業、水処理・資源開発事業の3事業を展開している。2026年3月期の売上構成は、管材システム事業が60%、樹脂事業が29%、水処理・資源開発事業が11%。同社は「ニッチトップ」から「グレートニッチトップ企業」への進化を掲げ、グローバルに事業を展開。2025年度の海外売上高比率は、管材システム事業の売上の中で49%、樹脂事業同30%、全社では同38%となる。
主力の管材システム事業では、金属バルブと比較して腐食リスクが低い樹脂バルブに強みを持ち、化学、非鉄金属、農業、半導体など特殊用途で広く採用されている。樹脂バルブにおいて国内ではトップシェアを誇る。半導体分野では、半導体製造装置向けの小型精密バルブ「Dymatrix」、高精度流量制御機器の「FALCONICS」は一定のシェアを確保。不良率を抑えるための厳しい要求に低発塵化技術など高い技術力で対応、良品率に大きく貢献している。そのほか、半導体工場の超純パイプ・純水装置周りにおけるユーティリティ配管の設計・施工も行っている。樹脂の配合技術「安心・安全」を支える品質管理システムと、耐久性と信頼性を形にする成形技術が評価されている。
また、樹脂事業は、電子材料・発泡材料・素形材に分かれているが、どの材料も社会に不可欠な存在となる。電子材料では、半導体の製造・高度化に不可欠な材料を展開し、レガシー・先端半導体のフォトレジスト材や下層下地材など低メタル化技術に強みを持つ。発泡材料は、マンション・商業施設などに使用されるが、複雑形状部へ施工でき、効率良く気密性の高い断熱工事が可能となる。また、世界最高クラスの現場発泡断熱システム「BEXUR」を開発し、ビル・マンションなどをはじめとした高断熱材市場でもニッチトップの地位を目指している。素形材製品はエンジン部品等の鋳造プロセスで使用されており、自動車関連メーカーの生産活動地域に工場を設置することで、需要地に近い供給体制を構築している電子材料分野では、複数プレイヤーの中で半導体業界において着実に成長しており、素形材では高付加価値品で国内トップを堅持している。また、発泡材料分野では、高断熱性能製品で更なる成長を追求している。
水処理・資源開発事業は、温泉井戸掘削で国内トップクラスの実績を有し、地熱発電井や中水処理施設施工でも国内ナンバーワンクラスの実績を誇る。水資源保護や再生可能エネルギーなど、環境課題への貢献が期待される。
同社の競争優位性は、70年以上にわたり樹脂バルブを開発・提供してきた実績と信頼、顧客の設計・実装段階に寄り添う提案力にある。樹脂バルブでの高いシェアと半導体特化製品群の存在に加えて、管材システムから電子材料までをカバーする一貫体制と米中印などに広がるグローバル生産拠点、水資源保護・省エネ建材・再生可能エネルギーといったSDGs対応も積極に行っている。具体的には、半導体製造装置向けの低発塵製品や高機能バルブでは差別化に成功しており、大手国内企業から微細化対応や薬液管理に直結する技術で信頼を獲得している。
株主還元方針については、新たな株主還元方針導入しており、累進配当、2025年度から6年累計での総還元性向 50-70%を掲げた。財務健全性・成長投資・株主還元のバランスを踏まえたキャッシュ配分による資本構成を最適化していく。
旭有機材は樹脂バルブにおいてニッチトップの地位を確立し、電子材料、水処理や地熱といった分野でも存在感を高めている。生成AIや先端半導体需要に支えられた樹脂事業の成長が収益を下支えし、中長期的には収益性と資本効率の改善が進む見通しである。新中計が発表されたが、樹脂を極めてニッチを制す同社の今後の持続的な成長には引き続き注目しておきたい。