■今後の見通し
2. 中期経営計画
(1) 業績計画
キャリアリンクの2026年5月に発表した2029年3月期までの中期経営計画では、2030年3月期以降のさらなる成長を見据え、持続的成長を実現するための基盤強化に取り組む期間と位置づけ、業績計画については国内外の不透明な経済情勢を踏まえて、実現可能性の高い計画を策定した。具体的には、2029年3月期の売上高で54,290百万円、営業利益で4,527百万円、経常利益で4,542百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で3,104百万円を設定した。3年間の年平均成長率は売上高で6.7%、営業利益、経常利益で5.1%、親会社株主に帰属する当期純利益で6.2%となる。また、事業セグメント別売上高の年平均成長率については、事務系人材サービス事業で7.0%、製造系人材サービス事業で5.8%となる。製造系人材サービスについては、直近3年間の年平均成長率が17.3%となっており、事業規模がまだ100億円に達していないことからすると、成長率が上振れすることも十分に考えられる。
(2) 成長戦略
成長戦略として、業績基盤の拡大、持続的成長への積極投資、インオーガニック成長の3つを重点施策として取り組む方針だ。
a) 業績基盤の拡大
業績基盤の拡大戦略として、地方自治体向けについてはエリア拡大と業務領域の拡大(ダブル広域化)に取り組むとともに、長期案件の受注比率を高めていくことで売上規模の拡大とともに安定性の向上を図る。ダブル広域化戦略において、短期的には業務領域の拡大による1自治体当たり案件数の増加に注力する。既に、マイナンバー関連や給付金案件、各種窓口業務など複数業務を受注する自治体数が増え始めており、エリアを拡大するよりも既存取引先のなかで業務領域を拡大する方が、事業効率の面からもメリットが大きいためだ。取引先自治体数については再委託先も含めて直近の206自治体※から2029年3月期は220自治体まで拡大することを目標としている。
※ 事務系人材サービス事業において、2024年3月期~2026年3月期の期間で取引実績のあった地方自治体数。
生成AIの普及によって今後、事務派遣ニーズが減少するリスクがあるものの、地方自治体におけるBPO案件は多岐にわたっており、対人業務が完全になくなることはない。また、非定期に発生する業務に対する需要もあること、シェア拡大余地が大きいことなどから、今後も持続的な成長を続けることは可能と弊社では見ている。
また、民間企業向けでは新規事業開発、業務領域拡大によって成長を目指す。慢性的な人手不足や賃金上昇などを背景に、BPO市場は今後も安定成長が見込まれ、大手BPO事業者と良好な関係を構築していることもあり、同社にとって成長余地は大きい。
製造系人材サービス事業では、派遣業務主体から請負業務などへの展開、並びに拠点の拡充を進めていくことで売上成長を図る。請負業務になれば自助努力で収益性を高めることが可能なため、利益率の向上につながる可能性がある。
(b) 持続的成長への積極投資
持続的成長を実現するための投資を積極的に行う方針だ。具体的には、取引先満足度の向上、業務改善・品質向上に向けたBPO案件の運用体制強化につながる人材投資や、AIの活用などDXへの取り組みを推進するための高度なスキルを有する専門家人材の採用を進める。
(c) インオーガニック成長
インオーガニック成長として、M&Aや事業アライアンスへの投資について検討・推進していく。中期経営計画の業績計画には織り込んでいないため、これらが実行されれば上乗せ要因となる可能性がある。同社は定款の変更を行い新規領域に進出することを視野に入れている。進出にあたって、これら領域で事業展開している企業をM&Aまたはアライアンスを組めれば、時間をかけずにスムーズに事業を拡大できるため、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)