■矢作建設工業の今後の見通し
1. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の連結業績は、売上高で前期比11.5%減の150,000百万円、営業利益で同34.5%減の9,000百万円、経常利益で同35.2%減の8,880百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同3.2%減の8,200百万円と、減収減益を見込んでいる。
売上高は、前期に複数の大型工事が完工した反動に加え、分譲マンション事業の譲渡に伴う売上消失(前期実績5,065百万円)が影響する見通しである。利益面では、前期に完工精算の進展により利益率が押し上げられた反動に加え、高機能オフィスなど新用途案件への取り組みを進めることから、売上総利益率は13.9%(前期比1.4ポイント低下)を見込んでいる。前期までに資材価格上昇分の価格転嫁が進展したことで、新規分野への展開を進める体制が整いつつある。販管費は前期比438百万円減少する見込みだが、売上総利益の減少に伴い営業利益及び経常利益は減益を予想している。一方、マンション管理事業譲渡益(約1,000百万円)及び政策保有株式の売却(約1,000百万円)を特別利益に計上する見込みであり、親会社株主に帰属する当期純利益は小幅にとどまる見通しである。中東情勢の影響については、一時的に資材調達の遅延などが発生したものの、足元ではおおむね解消しており、業績への影響は限定的と見られる。また、前期末の次期繰越高は過去最高となる174,023百万円を確保している。2027年3月期は一時的な調整局面となる見通しであるが、豊富な受注残高を背景に、中長期的な業績拡大基調に変化はないと弊社では見ている。
建築は端境期で一時的減収、土木は増収増益見通し
2. 事業別見通し
(1) 建築事業
建築事業は、売上高で前期比13.7%減の97,000百万円、売上総利益で同23.1%減の8,500百万円を見込む。前期は複数の大型物流施設工事の完工が業績を押し上げたが、2027年3月期は施工初期段階にある案件が多く、売上計上の端境期となる見通しだ。一方、中長期の成長に向け、物流施設以外の用途である工場、高機能オフィス、データセンター、ホテル、商業施設などへの展開を推進している。これらは、将来の顧客基盤拡大に向けた投資的な取り組みと位置付けている。前期までに資材価格上昇分の価格転嫁交渉が進展したことを背景に、戦略的に利益率を引き下げながら新規分野の開拓を進める。次期繰越高113,153百万円を確保しており、今後は工事の進捗に伴い売上高も回復局面へ移行する見通しである。
(2) 土木事業
土木事業は、売上高で前期比11.1%増の42,000百万円、売上総利益で同4.7%増の8,200百万円と、増収増益を見込む。前期末の豊富な次期繰越高60,869百万円の工事が順次進捗することに加え、2026年4月に子会社化した海昌の業績寄与も増収要因となる。また、PW工法とSD工法の連携により法面補強分野の商品ラインナップが拡充し、受注機会の拡大が見込まれる。次期繰越高は高水準にあり、今後2~3年にわたる安定的な売上計上を支える。
(3) 不動産事業
不動産事業は、売上高で前期比42.8%減の11,000百万円、売上総利益で同42.2%減の4,100百万円と大幅減収減益を見込む。分譲マンション事業譲渡に伴う売上消失(前期実績5,065百万円)と、前期に増加した産業用地売却の反動減が減収要因となる。一方で、2027年3月期下半期に新たな大規模産業用地売却を予定している。また、ストック活用事業への投資を強化することで、フロー収益への依存度を低減し、収益基盤の安定化を図る。不動産事業の売上総利益率は37.3%の高水準を維持する見通しであり、マンション事業売却後も収益貢献は大きい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)