■藤商事の今後の見通し
1. 業界動向と販売シェア
(1) 業界動向
レジャーの多様化や人口減少とともに、遊技機市場は緩やかな縮小傾向をたどってきた。特に2020年のコロナ禍以降は来客数の減少やスマート遊技機の導入による設備投資負担などで経営環境が一段と厳しくなるなかで、経営体力のない企業の淘汰が進んでいる。警察庁発表の資料によると2025年末のホール軒数は6,464軒、前年末比で3.6%減と減少率は2022年の9.4%減をピークに縮小傾向にあるものの、依然下げ止まりの兆しが見えない状況にある。パチンコホールの減少に伴い遊技機の設置台数も減少傾向にあり、2025年末でパチンコ・パチスロ遊技機全体では2.7%減の3,234千台であった。1ホール当たりの平均設置台数は500台と緩やかに上昇しており、中小ホールの淘汰が進んでいることがうかがえる。
設置台数の内訳は、パチンコ遊技機が同4.9%減の1,872千台となったのに対して、パチスロ遊技機は同0.5%増の1,362千台と2年連続で増加した。これはスマスロでヒット機種が相次いだことにより、スマスロの設置台数を増やす動きが広がったことが背景にある。スマート遊技機は2022年秋から導入が開始されたが、2026年3月末時点でスマスロの普及率が約60%まで上昇したのに対して、スマパチは25%前後の水準にとどまっている。スマスロでは稼働力の高い魅力的な機種が開発され、市場に投入されたのに対して、スマパチは従来機種との差別化が図れず、魅力的な機種の開発が少なかったことや、パチスロと比較してスマート遊技機の設置優先度が低い低貸玉営業の設置台数比率が高いことが要因と見られる。
こうした状況を打破するため、スマパチに関しては2025年7月からゲーム性の大幅な向上を可能とする「LT3.0プラス」が解禁され、各社から「LT3.0プラス」搭載機の投入が始まった。「LT3.0プラス」の特徴は、当たりとなるバリエーションが広がったことと、大当たり後のゲーム性に関する規則が緩和され、幅広いゲームシナリオを組み込むことができるようになるなど(=ゲーム性の向上)、商品設計の自由度が増したことで同じ「LT3.0プラス」搭載機でも様々なタイプの機種を開発できるようになった点が挙げられる。2026年3月期の市場動向を見るとまだパチンコ遊技機に関しては苦戦が続いている状況に変わりないが、今後は娯楽性をより重視した機種の開発が進むことで稼働力も向上し、スマパチの普及率も上昇すると予想される。
娯楽性を意識した開発の一例として、2025年秋にパチンコ遊技機でイヤホンジャックを搭載した機種の導入が始まった。業界団体が2024年に実施したアンケート調査で、若年層や女性を中心に約6割のユーザーが「イヤホン対応機能を望む」と回答している。イヤホンジャック搭載機の導入で「周囲の音がうるさい」といったネガティブなイメージが払拭されるだけでなく、使用するユーザーは直接イヤホンから遊技機の音声を聞くことで、迫力や臨場感の増した没入型の遊技を楽しむことができるようになり、稼働力の向上につながるものと期待される。現在は有線イヤホンのみだが、今後はワイヤレスイヤホンへの対応も視野に入れている。
同社では2026年度の市場見通しについて、業界団体の予測や市場動向をもとにパチンコ遊技機で前年度比9%減の700千台、パチスロ遊技機で同10%増の700千台を想定している。同業大手3社も含めた4社の平均値で見ても、パチンコ遊技機が同11%減の713千台、パチスロ遊技機が同6%増の738千台、合計で同3%減の1,450千台と緩やかな減少が続くと見ている。これは、スマート遊技機の普及が必ずしも市場の活性化につながっておらず、遊技ホール側で新機種の買い替えを積極的に行えるほどの環境にはなっていないことを意味している。このため、同社が販売台数を伸ばすには、競合先よりも稼働力の高い機種を多く開発し、シェアを拡大していくことが重要になると弊社では見ている。
(2) 商品戦略と販売シェアの動向
同社は商品戦略として、ユーザーを年齢層別に分け、各ターゲットに合わせてジャンルを強化している。また、主力タイトルの開発・育成によりラインナップを拡充し、パチンコ・パチスロ遊技機の双方で販売シェア拡大を図る方針である。特に、最近は若年層を中心に人気のある「アニメ」のIPを活用した新機種の開発に注力し成果に結び付けており、今後もこうした戦略を継続する。
同社の販売シェアは人気機種の販売時期によって変動はあるものの、パチンコ遊技機はメインスペックの新機種を年間4〜6機種のペースで投入しており(その他シリーズ機種も4機種程度投入)、ここ数年は5〜9%の水準で推移している(2026年3月期は5.5%)。2021年3月期以降は「とある」シリーズが高い人気を継続しており、主力機種としてのブランドを確立している。今後も「ホラー」や「萌え」で継続的な機種開発を進めるほか、「アニメ」ジャンルのラインナップを拡充することで、販売シェア10%以上を目指す。
一方、パチスロ遊技機はパチンコ遊技機で販売実績のあるタイトルを中心に年間1~4機種のペースで新機種を投入してきた。2023年3月期以降はパチンコ遊技機と同様に「アニメ」ジャンルを中心に新機種を投入し、一定の稼働実績を残している。特に、2023年に発売したスマスロ遊技機「L ゴブリンスレイヤー」がヒットしたことで、パチンコホールからの評価も高まっている。同社はパチスロのシェア拡大を図るべく開発ラインを年間4機種以上の投入が可能となるよう増強し、現在2~3%にとどまっている販売シェアを5%以上に引き上げることを目指す。
(3) スマート遊技機(スマートパチンコ/スマートパチスロ)について
スマート遊技機と従来の遊技機との大きな違いは、スマパチについては玉が封入され循環式となったこと、スマスロはメダルレスとなったことが挙げられる。ともに遊技に必要な玉やメダルの貸出がなく、電子情報をもとに遊技ができるため、プレイがしやすく不正防止対策にもなるなどメリットが多い。ホール運営側にとっては初期導入コストが掛かるものの、出玉やメダルの持ち運び、計数管理など店舗スタッフの業務が減少することで人件費の抑制につながる。また玉やメダルの補給装置が不要となるため省スペース化が図れるほか、店舗レイアウトの自由度が増すといったメリットがある。メーカー側にとっては、スマート遊技機で魅力的な新機種を開発し販売シェアを拡大する好機となる。
また、スマート遊技機導入の目的の1つとして業界の健全化が挙げられる。各遊技機の出玉情報等を新設した第三者機関「遊技機情報センター」で一元管理することにより、のめり込み対策や不正防止対策を行う体制を構築している。業界の健全化が進めば、客層の広がりも期待できる。当初は2~4年で大半がスマート遊技機に置き換わると想定していたが、パチンコホール事業者の経営状況が厳しく投資余力が限られるなかで、当初の想定よりも緩やかなペースで導入が進んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)