■藤商事の今後の見通し
4. 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
同社の株価はPBRで0.5倍前後と1.0倍を下回る水準が長らく続いている。PBRが1倍を下回っている要因として、1) 遊技機メーカーのビジネスモデルが開発先行型であり、継続した新機種開発のためには潤沢な内部留保とキャッシュを保持しておく必要があるためROEが低くなる傾向にあること、2) 新機種の投入タイトル数が年間でも10タイトル以下と業界大手と比べると少ないため、ヒット機種の有無によって業績が大きく変動し、時には損失を計上するケースもあるなど業績変動リスクの大きいこと、3) パチンコ・パチスロ遊技市場の縮小傾向が続くなかで、市場全体の成長シナリオが描きにくいこと、などが影響していると弊社では見ている。
こうした状況に対して、同社は資本コストや株価を意識した経営に取り組むことで企業価値を高める方針だ。具体的な目標として、2030年3月期にROEを同社が想定する株主資本コスト(約5%)を上回る8.0%の水準まで引き上げることで、PBR1.0倍の達成を目指す。ROEは売上高純利益率と総資産回転率、財務レバレッジの3要素に分解できるが、同社は無借金経営のため、売上高純利益率と総資産回転率の向上がROE上昇の要件となる。売上高純利益率の向上については、パチンコ、パチスロ遊技機ともに市場ニーズに沿った新機種を投入し、売上規模の拡大により固定費比率を引き下げるほか、原価低減施策に取り組むことで実現する考えだ。また、総資産回転率の向上については、積極的な成長投資(パチスロ遊技機の開発ライン増強、アニメ版権の育成、人材確保)による売上規模の拡大に加えて、遊休資産の効率化による資産のスリム化により実現を図る。
もう1つの課題である収益の安定性向上については、スマート遊技機で稼働力の高い新機種を開発し、一定の販売シェアを獲得することが重要と考えており、年間30億円以上の経常利益を安定的に創出できる経営基盤の構築を目指す。さらに資本政策の充実により市場評価を高める方針であり、安定的な株主還元(配当性向30%以上かつ下限は1株当たり50円を継続方針)に加えて、流通株式比率を現在の約30%から35%以上へ引き上げる考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)