■要約
冨士ダイスは、1949年の創業以来、超硬耐摩耗工具業界において国内30%超のシェアを維持する企業である。独自の粉末冶金技術と超精密加工技術に強みを持ち、原料粉末の調整から焼結、超精密加工、製品検査までを一貫して手掛ける体制とオーダーメイド対応力を武器にして、多品種少量・高付加価値製品を直販するビジネスモデルで高い収益性を確保している。創業以来黒字経営を継続しており、2026年3月期末の自己資本比率も79.6%と極めて高い水準にある。
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高で前期比5.1%増の17,446百万円、営業利益で同68.5%増の822百万円、経常利益で同46.5%増の883百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同34.6%増の573百万円と3期ぶりの増収増益となり、各利益とも会社計画を上回って着地した。売上高に関しては製品区分ごとに強弱があるが、半導体封止材向けの混錬工具の販売低調により超硬以外の製品が前期比8.9%減となったことを除けば、総じて堅調に推移した。営業利益の前期比増減要因を見ると、原材料費高騰455百万円、賃上げを含む人的資本の拡充費用172百万円、設備関係費88百万円などの減益要因を、超硬素材をはじめとする増収効果851百万円、内製化による外注加工費削減36百万円、電力燃料費などの減少183百万円などの増益要因でカバーして334百万円の増益となった。
2. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の連結業績は、売上高で前期比49.0%増の26,000百万円、営業利益で同14.9%減の700百万円、経常利益で同11.7%減の780百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同9.3%減の520百万円と増収減益の見通しである。原材料価格高騰による大幅なコストアップを、価格転嫁のほか生産効率向上や経費削減などでカバーしきれず営業減益となる見通しである。背景には、中国による重要鉱物の輸出管理強化に伴う主原料の調達環境の変化(物量制限及び価格高騰)があり、同社はリサイクル原料の活用や材料利用の効率化、代替材料の研究、調達先の複線化などの対応策を進めているものの、短期的にはこの中国の輸出規制動向が業績を左右する懸念材料として注意深く見守る必要がある。
3. 中期経営計画
同社は「中期経営計画2026」において、2027年3月期の連結数値目標として、売上高200億円、営業利益20億円、経常利益21億円、経常利益率10.5%、親会社株主に帰属する当期純利益15億円、ROE7.0%を掲げていたが、中国がタングステンを含む重要鉱物の輸出管理・規制を強化した影響を中心とする事業環境の変化を受けて、中期経営計画の売上高目標を26,000百万円とした一方、利益目標は営業利益は700百万円、経常利益は780百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は520百万円とする2027年3月期の会社計画値に修正した。一方、「経営基盤の強化」「生産性向上・業務効率化」「海外事業の飛躍」「脱炭素・循環型社会への貢献」「新規事業の確立」の5つを重点施策は着実に進捗している。
4. 株主還元策
従来の配当政策は「連結配当性向50%」を基準としていたが、「中期経営計画2026」においてはDOE4%を目途とする安定配当に加えて、積極的かつ機動的な自己株式の取得により、株主還元に取り組んでいる。この方針に従い、2026年3月期の1株当たり配当金は前期と同額の40.0円(利益を上回る配当水準)としたほか、機動的な自己株式取得も実施した。続く2027年3月期についても、減益見通しながら1株当たり配当金は引き続き40.0円を計画している。
■Key Points
・2026年3月期は3期ぶりの増収増益、営業利益は68.5%の大幅増益を達成
・2027年3月期は原材料価格高騰で増収減益の見通し、中国の輸出管理強化が懸念材料
・中期経営計画の数値目標を修正したものの、重点施策は着実に進捗
・株主還元ではDOE4%を目途とする安定配当に加えて、機動的な自己株式の取得を実施
(執筆:フィスコ客員アナリスト 古川 聖治)