■POPERの今後の見通し
2. 今後の成長戦略
2026年10月期も前期に引き続き、成長戦略として「顧客基盤の拡大」と「ARPUの最大化」の2軸を推し進める。学習塾業界のみならず、英会話教室、プログラミングスクール、スポーツクラブ、音楽教室などの習い事業界、学童保育や公立・私立学校などの学校教育業界に事業領域を拡大し、多様な収益基盤を構築する。「Comiru」に加え「ComiruAir」「ComiruHR」「ComiruPRO」、さらに「ComiruERP」「ComiruPay」などの新サービスで、ユーザーの多様なニーズに対応した機能を開発・実装し、ARPUを最大化する方針だ。
学習塾領域においては、大手塾、中堅塾、個人塾のそれぞれの市場シェア10.5%、12.3%、5.1%(2026年10月期中間期)を5~10年後に25%まで引き上げる目標を掲げる。目標達成に向け、基幹システムの陳腐化に伴いクラウド化やセキュリティ強化の需要が高い準大手、中堅大手の更改案件を中心に注力する。その他中堅塾と個人塾に対しては、「Comiru」の多様な機能と、特に価格で競争優位性の高い「ComiruPay」を訴求し、生徒ID数を確保した後に他サービスの拡販でARPU上昇をねらう。習い事の領域では、好調な「ComiruPay」をトリガーとした新規顧客獲得に継続して注力する。加えて、マーケティング活動として、学習塾と習い事領域を中心に、ターゲットごとの広告配信や、自社主催カンファレンス「ComiruDay」の定期開催によるリファレンス効果により、オンライン/オフライン双方でのタッチポイントを増やし、見込み顧客を拡大する。
公立・私立学校領域に関しては、部活動などでの連絡ツールをはじめとして採用実績を積み上げているが、学校領域はベース単価自体が民間と比べて低く、単純な業績寄与自体は大きくない。しかし、その市場規模は1,297万IDと、学習塾市場の428万IDの3倍以上となる(文部科学省 平成31年度)ことから、シェア拡大による業績寄与が見込めるため、営業プロセスの入り口となる自治体に対する営業力強化に向け、自治体営業経験者の採用を進めている。これら施策により、5~10年内には習い事と公立・私立学校領域の売上高比率を50%まで引き上げることを目標としている。
3. 2030年時価総額100億円達成に向けた事業戦略
2025年4月に東京証券取引所が公表した、グロース市場の上場維持基準見直し案「上場5年経過後に時価総額100億円以上とし、適用開始を2030年以降とする」に向けて、顧客基盤の拡大とARPUの最大化をベースに、以下の3施策を推進する。
(1) 事業成長への継続投資によるオーガニック成長の最大化
「Comiru」ではもちろん「ComiruERP」「ComiruPay」などの機能強化・改善を加速させ、基幹システム需要の取り込みや、中堅・中小塾、習い事領域の売上を拡大すると同時に、サービスの安定稼働と拡張性を担保するためのインフラ強化に注力する。また、市場規模が大きい習い事領域の新規顧客獲得の加速とリテンションに向け、チケット管理機能やバス運行管理機能等の新機能の投入を計画しており、顧客ロイヤリティの向上を推進する。また、「Comiru」導入のフックとなる「ComiruPay」では、クレジットカード決済機能の導入等、決済手段の多様化を進める。なお、現在進行中の各種新規機能開発は順調に進捗しており、「Comiru」では引き続き新機能を増やす方針で、開発を積極化する。これら戦略の実行に向け、PM人材の内部育成やエンジニア採用を強化し、盤石な開発体制を築く。
(2) 戦略的なM&Aによる事業領域の拡大
相互利益を最大化できる相手先とのM&Aに臨機応変に対応する。M&Aの方向性としては、学習塾向けでは、業務管理や学習管理等システムのプロダクト補完を想定し、市場規模の大きい習い事や学校領域領域では、共通プラットフォーム等の協創を念頭に置いている。なお、M&Aは常時検討しており持ち込まれる案件数も多く、対象企業の選定基準や規律あるバリュエーションを厳格に維持しつつ、中長期的な成長戦略を加速させる優良なパイプラインを常時複数精査しているようだ。また、M&Aの資金として、手元資金や借り入れのほか自社株を活用した株式交換も検討の範疇で、これにより既存株主の持分価値の希薄化を抑制する。
(3) 機動的な株主還元策の実施
同社は、株主に対する利益還元を経営上の重要な課題と位置付け、株式市場や経営動向、資本効率等を総合的に勘案しながら機動的な株主還元策を実施する方針である。2026年の配当・自社株買いの財源規制解消を受け、手元資金を有効活用し、同年3月から4月にかけて自社株買いを実施した。取得総額は39,949,400円(取得株式総数69,100株)となる。M&Aでの株式交換、優秀人材の確保と維持のためのストックオプション等、将来の企業価値向上に直結する投資にも活用する。
4. 中長期成長ロードマップと資本配分方針
本来の事業目的である「塾・スクールの業務効率化により子どもや保護者と向き合う教育の支援」を教育業界全体に広く浸透させるとともに、継続的に安定した収益基盤を確立する「Comiru」を軸とした「ComiruERP」パッケージとセミカスタマイズの提供によるSaaS型ストックビジネスへ集中する。カスタマイズ受託からのフロー収益が低減するため一時的に収益は落ち込むが、注力する「Comiru」を中心としたSaaSサービスはストック収益が主のため、投資回収が始まる2027年10月期から収益拡大の再加速により飛躍的な成長を見通す。さらにSaaSサービスの安定した収益基盤構築の進捗に伴い、営業利益率20%を目指す。
資本配分方針では、「事業成長への継続投資」「事業拡大のためのM&A実施」「新株発行の抑制と手元資金の活用」「自社株買いによる株主への還元」の4つの方針を通じて、資本の効率的な活用と株主還元のバランスを取り、1株当たり企業価値の向上を目指す。2030年を目途に営業利益率20%を目標に継続的な事業成長のための投資による企業価値向上、積極的なM&Aによる事業拡大を優先し、M&Aや成長投資に必要な資金は新株発行を避け、借り入れや手元資金、自社株買いによる株式交換を活用する。有利子負債比率は70%前後を目途に、株主の持分価値を希薄化させないように調整する。2026年10月期中間期時点では、有利子負債比率10.8%(前期末比4.0ポイント低下)、1株当たり中間純利益14.62円(同20.63円減)となることから、他人資本を導入し、レバレッジ効果によりWACC(加重平均資本コスト)を低減し、資本コストの最適化も必要と考えている。そのほか、EPS向上による株主還元に向けた自社株買いや、自社株を活用したM&A(株式交換)やストックオプション付与も実施する方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 若杉 孝)