■業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
アーレスティの2026年3月期の業績は、売上高が前期比2.6%増の167,092百万円、営業利益が同10.9%増の3,739百万円、経常利益が同5.9%減の2,865百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が3,580百万円(前期は2,892百万円の損失)となった。国内自動車生産の回復に伴う主要顧客向け受注量の増加や新規製品の量産開始などにより増収となった。利益面では、受注量の増加に加え、生産体制の合理化による基礎的収益力の向上や価格転嫁の推進、一過性の北米での収益計上が寄与し、営業増益となった。一方で、為替差損を計上したことから経常利益は減益となったものの、上期に関係会社売却益を計上したことなどにより親会社株主に帰属する当期純損益は黒字転換した。
同社は従来の生産性重視の改善活動に加え、収益インパクトを重視した改善活動へと軸足を移しており、付加価値向上と総労働時間削減を同時に進めることで収益体質の強化を図っている。売上高営業利益率は2.2%と依然として改善余地を残すものの、北米事業の損失縮小や国内事業の収益改善など、収益構造改革の成果が徐々に顕在化し始めていると評価できる。
2. 事業セグメント別動向
(1) ダイカスト事業
a) ダイカスト事業 日本
ダイカスト事業(日本)は、売上高が前期比6.2%増の68,574百万円、セグメント利益が同13.7%増の2,638百万円となった。国内自動車生産の回復に伴う受注量増加や新規製品の量産開始が増収に寄与したほか、生産性向上や収益改善施策の効果により増益となった。日本セグメントは営業利益増減要因として355百万円の増益要因となり、グループ業績をけん引した。
b) ダイカスト事業 北米
ダイカスト事業(北米)は、売上高が前期比5.0%増の52,209百万円、セグメント損失が428百万円(前期は1,617百万円の損失)となった。受注量の回復に加え、収益改善施策の進展や一過性の収益計上も寄与し、損失額は大幅に縮小した。米国工場では生産性改善が着実に進展しており、個別製品の採算改善、コスト構造改革、マネジメント強化、米国・メキシコ一体運営強化による収益最大化などの再建施策を推進している。依然として損失を計上するものの、収益改善は着実に進展している状況にある。
取材によれば、米国工場では再建計画をフェーズ2へ移行しており、個別製品の採算改善、自動化による省人化、生産量に応じた最適人員体制の構築、マネジメント強化などを進めている。加えて、米国・メキシコ拠点の一体運営を強化することで北米全体の収益最大化を図っており、2027年3月期の北米セグメント黒字化、さらにその先の米国工場単独黒字化に向けた基盤整備が進展している。
c) ダイカスト事業 アジア
ダイカスト事業(アジア)は、売上高が前期比0.8%減の36,228百万円、セグメント利益が同54.2%減の828百万円となった。中国市場における受注変動の影響などにより減収となったほか、利益面でも収益性が低下した。同社の営業利益増減要因では、アジアセグメントが395百万円の減益要因となっており、全体の利益成長を抑制した。
中国では一部中資系顧客向け需要の変動や市場競争激化の影響が続いており、利益水準が低下した。一方で、インドでは受注量が拡大基調で推移しており、第2工場の稼働率も高水準となっている。今後は中国拠点の収益改善とインド市場の成長取り込みがアジア事業における重要テーマになると考えられる。
(2) アルミニウム事業・完成品事業
アルミニウム事業は、売上高が前期比8.2%減の6,622百万円となった。販売重量が前年比10.4%減少したため減収となったものの、販売単価の上昇や原材料費低減効果などによりセグメント利益は同11.9%増の253百万円で2ケタ増益となり収益構造改善が進展した。
完成品事業は、売上高が前期比29.2%減の3,457百万円、セグメント利益が同45.1%減の437百万円となった。主力製品であるクリーンルーム向けフリーアクセスフロアにおいて、半導体関連企業向け大型案件が減少したため減収となった。利益面でも減収の影響を受けたが、利益水準は計画を上回って着地した。
3. 財務状況
2026年3月期末の総資産は前期末比1,721百万円増の135,815百万円となった。流動資産では受取手形、売掛金及び契約資産が3,454百万円増加した一方、現金及び預金は1,344百万円減少した。固定資産は投資その他の資産の増加などにより20百万円増加した。
負債合計は前期末比2,233百万円減の79,872百万円となった。短期借入金が3,824百万円減少した一方、長期借入金は3,116百万円増加しており、借入金の長期化による財務基盤の安定化を進めた。
純資産は利益剰余金の積み上がりを主因として前期末比3,954百万円増の55,943百万円となった。この結果、自己資本比率は38.7%から41.1%へ上昇した。
同社は財務戦略としてROE9.0%、自己資本比率40%以上の維持等を掲げている。自動車業界を取り巻く事業環境の不確実性が高いなか、財務健全性を重視した資本政策を採用しており、2026年3月期末の自己資本比率41.1%は同社が目標とする水準を達成した状態にある。
また、「SMARTなものづくり」による収益力改善と健全なバランスシートを通じたROE向上を目指す方針である。今後も自己資本比率40%以上を維持しながら、利益成長と株主還元の両立を図る考えである。
2026年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは12,275百万円のプラスとなった。前期の15,308百万円から減少したものの、安定した利益創出力と減価償却費を背景に高水準のキャッシュ創出を維持した。一方で、売上高増加に伴う売上債権の増加などが資金流出要因となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは11,547百万円のマイナスとなった。有形固定資産を中心とした設備投資を継続したものの、前期の12,889百万円からやや減少した。この結果、フリー・キャッシュ・フローは728百万円のプラスとなり、2期連続でプラスを確保した。
取材によれば、2026年3月期の設備投資額は77億円と当初計画である119億円を下回った。グループ内で設備を有効活用する取り組みを進めたことが背景にあり、投資効率を重視した資金運用がキャッシュ創出に寄与した。
財務活動によるキャッシュ・フローは2,516百万円のマイナスとなった。借入金の返済や株主還元を進めた結果、現金及び現金同等物の期末残高は11,725百万円となった。
2026年3月期はフリー・キャッシュ・フローを確保しつつ借入金の圧縮を進めており、財務健全性の向上と成長投資の両立を図る同社の財務戦略に沿った内容であったと評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)