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金子浩幸氏(以下、金子):みなさま、こんにちは。株式会社マツオカコーポレーション取締役の金子浩幸です。お忙しい中、当社グループのIRセミナーをご視聴いただき、誠にありがとうございます。
本日は資料に基づき、当社グループのご紹介、2026年3月期の決算概要、中期経営計画「BEYOND 2028 ~Stitch the Future~」の内容についてご説明します。
会社概要
金子:まず、当社グループの概要についてご説明します。
株式会社マツオカコーポレーションは広島県福山市に本社を置くアパレルOEMメーカーです。1956年の設立以来、縫製事業を中核として活動してきました。
現在、当社グループは中国、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアの5ヶ国に生産拠点を持ち、連結従業員数は2万人を超える規模となっています。
また、主力の縫製事業に加え、ラミネーションフィルム事業の2つのセグメントで事業を展開しています。
沿革
金子:当社グループの沿革です。当社グループは縫製業を基盤として事業を拡大し、1980年代から1990年代には競合他社に先駆けて海外進出を果たしました。そのことが、当社グループの現在の強みである強靭なサプライチェーンにつながっています。
1990年に中国、2004年にミャンマー、2007年にバングラデシュ、2015年にベトナム、2018年にインドネシアと、事業環境に合わせて東南アジアや南アジアに進出しています。
2017年には国内の縫製メーカーとして初めて東京証券取引所に上場しました。以降も徐々に拠点を増やしながら、事業規模の拡大を進めています。
事業概要
金子:事業概要についてご説明します。当社グループの強みは、海外の生産拠点にある自社工場で直接マネジメントを行い、品質と信頼性を確保している点にあります。
売上高の約9割を占める縫製事業では、国内外のアパレルメーカー向けに縫製加工のOEMサービスを提供しています。海外の自社工場を活かした、高品質、低コスト、正確な納期を実現しています。
ラミネーションフィルム事業では、自社で開発・生産した機能性フィルムに生地を張り合わせ、透湿防水機能に優れた加工生地を製造・販売しています。この生地は主にアウトドアウェアに使用されています。
両セグメントを合わせた工場数は、アジア5ヶ国に全14工場です。最大の生産拠点であるバングラデシュには約9,900人の従業員がおり、次いでベトナムでは約6,000人体制となっています。
特に縫製事業では、人の力が事業の根幹を支えており、従業員数の増加が事業規模の拡大と密接に結びついています。
当社グループの中でも最大規模となる工場、ベトナムのアンナム工場です。この工場には、通常のミシンが並ぶ製造ライン以外にも、衣類の製造パーツをハンガーに吊り下げたまま、自動で次の工程に搬送するハンガーシステムや、その他の各工程で活用されるさまざまな自動機器が備わっています。
「縫製工場」という言葉から、昔ながらの縫製工場をイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのイメージを刷新し、アップデートしていただけましたら幸いです。
事業概要
金子:事業の区分についてご説明します。縫製事業はさらに3つの品目に分類して開示しています。スライドは2026年3月期の結果です。
カジュアルウェアが売上高の53.1パーセントを占めています。当社グループのアンナム工場では、このカジュアルウェアを生産しています。みなさまにおなじみの大手SPAとの取引が、このカジュアルウェアのカテゴリに含まれています。
ワーキングウェアは売上高の9.3パーセントを占め、作業服のほか、現在では屋外作業に不可欠となったファン付きウェアがこのカテゴリに分類されており、近年売上を伸ばしています。
インナーウェア・カットソーは売上高の21.0パーセントを占めています。バングラデシュの工場では、生地の編み立てや染色から縫製まで、一貫生産を行っています。
また、ラミネーションフィルム事業の売上高は全体の11.1パーセントを占めています。
アパレルOEMメーカーとしての強み
金子:当社グループの強みは、OEMビジネスモデルにおいて発揮されます。アパレルメーカーや大手SPAなどのお客さまが企画した衣料品の縫製加工を受託し、製造・生産を行っていますが、単なる生産受託にとどまりません。
多元的な生産背景や素材メーカーを含む幅広いサプライチェーン、さらに長年の海外生産によって培われた技術力を活かし、お客さまごとに異なるニーズに応じて、高品質で最適なコストや納期対応、納品量をご提案しています。
自社工場を運営していることから、工場との連携やコントロールの柔軟性を強みとして活かし、お客さまと長期的な信頼関係を構築しています。
また、各工場がそれぞれ異なる得意分野や特性を持っているため、お客さまが重視される要素に応じた生産提案が可能です。この点も当社グループの強みの1つと言えます。
さらに複数の国に生産地を展開することによって、昨今の政変や貿易摩擦、関税などの地政学的な問題に対しても、一定程度回避や対応が可能であることも評価されていると考えています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):質問を挟みながら進めていきたいと思います。まず初心者向けの質問になりますが、御社グループの事業内容についてもう少し詳しく教えていただけますか?
アパレルOEMの会社だとご説明いただきましたが、実際に私たちが店で見かけるさまざまなアパレルブランドと、御社グループとの役割の違いについてうかがいたいです。
服を作る会社だということは多くの方が理解していると思いますが、例えば、デザインまで御社グループが担当されているのか、どのように関わり、それをどこまで担当しているのか、簡単に教えていただければと思います。
金子:消費者のみなさまが目にする小売店や量販店、アパレルメーカーと呼ばれる企業において、最近では製造小売業(SPA)がほぼ一般化しており、その結果小売業の方々が製造も担うかたちになります。
しかし、その多くはいわゆるファブレス企業であり、自社で工場を持っていません。その部分を当社グループが担っています。
坂本:御社グループに対して「作ってください」と依頼が来るのですね。
金子:おっしゃるとおりです。また、少し上流に目を向けると、生地を製造する素材メーカーが存在します。そのようなメーカーは日々新しい素材を開発していますが、消費者の方が素材そのものを購入することは基本的にありません。そのため、それを最終製品に加工し、衣料品として提供する役割も当社グループが担っています。
坂本:なるほど、視聴者のみなさまも理解が深まったと思います。一部、先ほどのご説明と重なる部分もありますが、御社グループが上流工程も含めた企画や提案まで行うこともあるのでしょうか?
また、御社グループは長年、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングとお付き合いがあるとうかがっています。製品に対する仕様が非常に細かい中、それらを確実に実現する技術や蓄積が信頼につながっているのではないかと思います。
長くお付き合いされている理由やその中での御社グループの強み、差し支えなければ簡単な売上比率についても教えていただけますか?
金子:企画については、まずOEMの特徴として、お客さまから依頼を受けた製品を製造することが当社グループの役割となります。そのため、基本的にデザインや企画はお客さま側で作ることになります。
ただし、当社グループの縫製工場として企画提案を行うこともあります。例えば、川上にあたる素材メーカーと協力し、「こういった素材で新商品を作ってはどうか?」と新しい素材の提案を積極的に行っています。
また、大手SPAとのお付き合いは1998年から2000年頃にかけてスタートしましたが、それ以前から当社グループは中国で大規模な工場を展開していました。
そこで、当時はまだ新興国であった中国において、日本の水準で納期を厳守し、一定の品質を担保しつつ、大量の製品をお客さまにお届けすることができました。この点をご評価いただいていると考えています。
坂本:後ほどさらに詳しくお話があると思いますが、そこにはさまざまなノウハウがあるのですね。
金子:最後のご質問にあった売上比率については、ここ数年で大きな変化はありません。全体の売上の約65パーセントから70パーセントほどとなっています。
坂本:高い比率ですね。
向井沙耶氏(以下、向井):海外5ヶ国に工場をお持ちですが、大手SPAの商品は1つの国に限定して生産しているのでしょうか? それとも複数の国に分散して生産しているのでしょうか?
金子:1つの国に限定しているわけではありません。いくつかの国で生産しており、さらに工場ごとに特徴があります。
例えば、大手SPAのような比較的大きなロットを必要とし、大量の製品を安定的に製造することが求められるお客さまの製品はアンナム工場をはじめとする工場で製造するなど、工場の特性に合わせてオーダーを配分しています。
業績ハイライト
金子:2026年3月期の決算概要です。売上高は742億5,100万円で前期比5.2パーセント増、営業利益は21億7,400万円で前期比401.3パーセント増となりました。
当社グループの本業の実力値を示す独自指標、為替差損益調整後営業利益は48億1,300万円で前期比13.7パーセント増となりました。
経常利益は53億9,100万円で前期比28.4パーセント増、親会社株主に帰属する当期純利益は31億1,700万円で前期比19.9パーセント増となりました。
縫製事業における堅調な受注と安定した生産稼働が増収増益に寄与しました。
縫製事業
金子:セグメント別に解説します。
まず、縫製事業のセグメント別業績です。縫製事業の売上高は660億2,900万円で前期比12.5パーセント増、経常利益をベースとしたセグメント利益は59億5,900万円で前期比67.6パーセント増と、大幅な増収増益となりました。
特にワーキングウェアとインナーウェア・カットソーの受注が増加し、それらを生産するバングラデシュ工場で生産キャパシティの拡大が進んだことが、この結果を牽引しています。販売枚数は6,350万枚、前期比22.1パーセント増でした。
また、生産現場では、グループ全体で各国生産拠点の特性を踏まえた生産アイテムの変更や集約を行いました。同時に、従業員の習熟度が向上したことで生産性が高まり、利益拡大につながりました。
2027年3月期は、中期経営計画の戦略に基づき、引き続き受注拡大と生産キャパシティ拡大に取り組みます。インナーウェア・カットソーや、寝装寝具の伸長により、さらなる増収増益を見込んでいます。
坂本:中国の工場を衣類から寝装寝具への転換を進めていく方針だとお話しいただきました。衣類のイメージが非常に強い中で、寝装寝具ビジネスへの転換理由やそれを中国で行う理由について、ポイントを教えていただけますか?
金子:当社グループが縫製工場を営んでいる国ごとの背景に起因します。当社グループが1990年に中国に進出して以来、中国では劇的な経済発展がありました。その結果、アパレル縫製における中国での生産が次第に難しくなっているのが現状です。
坂本:人件費の高騰などが要因でしょうか?
金子:それもありますが、当社グループ規模の工場では従業員が集まりにくいことのほうが大きな要因です。この問題を解消する手段の1つとして、寝装寝具の縫製に目を向けました。
アパレル縫製は、多くの方々に支えられながら製造を進める必要があります。一方で、寝装寝具の縫製は洋服に比べると、縫製箇所が少ないため、より機械製造に近く、少人数でも安定的にものづくりが可能となります。こういった背景から、中国では寝装寝具だけでなく、生活用品などへシフトしていくことを考えています。
坂本:なるほど。確かに製品を運ぶことも考えると、布団などの大きいものは需要地に近いところで製造するほうがよいという側面もありますね。
しかし、先ほどのスライドでは中国工場の従業員数は1,000人ほどと、かなり少なくなっていますよね? だからこそ、使い方や工場の転換を図っていこうという考え方なのですね。
金子:中国はマーケット自体が非常に大きいので、ものづくりの内容を選べば、今後も維持できる環境だと思います。
坂本:御社グループは非常に高い技術力をお持ちですが、作る寝装寝具はやはり高級品に近いものになるのでしょうか?
金子:いわゆる中高価格帯のような一定の品質を求められることから、お客さまにも当社グループの工場を選んでいただいている状況です。
ラミネーションフィルム事業
金子:ラミネーションフィルム事業のセグメント別業績についてご説明します。
売上高は82億2,100万円で前期比30.9パーセント減、セグメント利益は5億5,400万円で前期比67.9パーセント減と減収減益の結果となりました。販売ヤード数は25.2パーセント減となりました。
減収の主な要因として、顧客のヒット商品の剥落が挙げられます。これにより、前々期までの通常水準に収束したことになります。
さらに、中国市況の低迷により、買い替え需要が市場で鈍化したことも影響しています。現在は中国国内で新規顧客やマーケットの開拓を進めています。
2027年3月期は原油価格の高騰が懸念されますが、原材料費の影響を注視しつつ、売上の維持または増収を目指します。
2027年3月期 連結業績見通し
金子:2027年3月期の連結業績見通しです。
2027年3月期の通期業績予想は、売上高800億円、営業利益34億円、為替差損益調整後営業利益53億円、経常利益49億円、当期純利益34億円となっています。
2026年春夏物の受注状況は引き続き堅調であり、生産ラインの稼働計画についても十分な見通しが立っています。
また、経常利益については、期末に向けて緩やかな円高を想定していたことから、若干の減益を予想しています。各セグメントにおける販売量は、いずれも10パーセント前後の増加を見込んでいます。
一方、商品ミックスの影響により、販売量の増加が売上にどの程度反映されるかは、商品構成によって変動する可能性があります。そのため、売上高の業績予想は単価構成の変化を踏まえて見通しを立てています。
これらの見通しは、現時点で入手可能な情報に基づいて策定しています。
株主還元
金子:株主還元についてご説明します。中期経営計画に基づき、2027年3月期より配当性向の目安を5パーセント引き上げ、35パーセントとしました。
2027年3月期の配当予想は配当性向35パーセントを目安とし、15円増配の115円を予定しています。
坂本:株主還元についてうかがいます。2027年3月期から配当性向の目安を35パーセントに引き上げ、年間115円への増配を予定されているとのご説明でした。
中期経営計画では、2028年3月期に親会社株主に帰属する当期純利益40億円を予想されています。この目標が達成された場合も、引き上げ後の配当性向35パーセントがそのまま適用され、絶対額として増配される理解でよろしいでしょうか?
金子:もちろん経済環境などによる変動の可能性があることが前提にはなりますが、当社グループでは2029年3月期までの数値目標を必達することを目標に掲げています。そのため、ご質問いただいた内容でお考えいただいて問題ありません。
坂本:次に、もし自社株買いを検討される場合の条件などについておうかがいします。未来のことなのでご回答が難しいと思いますが、過去に実施された際の決定要素や、新たな中期経営計画における配当政策のイメージなどとあわせて教えてください。
金子:自社株買いは、過去に頻繁に行っていたわけではありません。どちらかといえば将来に向けて検討することになると思います。
当社グループは製造業を展開していますので、先行投資が必然的に発生します。そのため、今回の中期経営計画においても、キャピタルアロケーションをしっかりシミュレーションしています。
投資が順調に進み、想定以上の利益獲得ができる場合、あるいは現預金や株価の状況を踏まえながら検討していきたいと考えています。
前中期経営計画「ビジョン2025」結果と振り返り
金子:今期からスタートした中期経営計画「BEYOND 2028 ~Stitch the Future~」についてご説明します。
まず、2021年度から2025年度の5年間にわたる前中期経営計画「ビジョン2025」の結果と振り返りについてご報告します。
計画発表当初は新型コロナウイルスによる市場の在庫調整局面にあり、先行き不透明な環境下でのスタートとなりました。
その時点での定量目標として、売上高700億円、経常利益35億円を計画していましたが、想定よりもマーケットの在庫調整が早く進んだことに加え、計画前半に建設した新工場の本格稼働による生産性向上が着実に効果を発揮し、当初計画を上回る水準で達成することができました。
一方で、「生産基盤の拡大」「データに基づく経営管理の高度化」については、引き続き取り組むべき課題と認識しています。
アパレル業界を取り巻く環境への認識
金子:計画を策定するにあたって認識している事業環境です。
業界の構造変化として、消費者が価格と価値のバランスを重視する傾向と、サステナビリティへの関心がさらに高まっています。
サプライチェーンにおいては、地政学リスクや人件費の上昇が進む中で、品質、コスト、供給力に加え、製造管理の透明性や信頼性がこれまで以上に求められるようになっています。
また、市場規模の観点では、日本国内において人口減少によるマーケットの縮小が見込まれる一方で、世界のアパレル市場は今後も拡大が予想されています。当社グループとしても、この成長機会を確実に捉え、事業を拡大することが不可欠であると考えています。
前中期経営計画で築いた生産基盤を土台に、これらの環境変化に対応しながら、世界中の顧客から「選ばれる工場」となるため、提供価値を磨き続けていきます。
中期経営計画の位置づけ
金子:中期経営計画の位置づけをご説明します。
当社グループは「あらゆる服づくりの舞台裏に私たちがいる」というビジョンのもと、「選ばれる工場」になることを事業の目指す姿に掲げています。
中期経営計画は、その目指す姿の実現に向けて、持続的成長が可能な事業基盤を確立する3年間であると位置づけています。
中期経営計画の基本方針
金子:今回の中期経営計画では4つの基本方針を策定しています。「工場稼働の最大化・生産の拡大」は、当社グループの生産能力を最大限に活用することです。
「拡大を支える基盤への重点投資」は、これまで継続して実施している工場投資に加え、システムへの投資、製造管理、顧客対応力向上に向けた投資を指します。
財務面では「『資本コストや株価を意識した経営』への転換」をさらに推進します。組織・人財への投資方針としては「グローバル・ガバナンス強化」を掲げています。
以上の4つの基本方針に基づき、中期経営計画では2029年3月期に売上高900億円、経常利益60億円、親会社株主に帰属する当期純利益40億円、ROE9パーセント以上を目指します。
そして、さらなる将来には「選ばれる工場」への進化と、ROE10パーセント以上を見据えています。
坂本:御社グループは新たな中期経営計画期間中に、生産枚数を6,300万枚から7,800万枚に増加させる計画を立てています。
インナーウェアやカットソーといった商品は御社グループの基本的な商品だと思いますが、現在の主要顧客からの受注についてはどのように予測されていますか?
コミットメントベースで生産計画を組まれていると思いますが、実際には季節商品も多く、顧客側の販売状況によって発注数量が変動する部分もあるかと思います。そのような前提の中で、現在の主要顧客からの受注状況や計画達成に対する手応えについて、可能な範囲で教えてください。
金子:お客さまとの具体的なコミットメントについては申し上げることができません。
しかし、先ほどもお話ししたように世界のマーケット全体が依然として拡大基調にあり、さらに当社グループの主要なお客さまはマーケットの成長規模を上回るスピードでの成長を目指しています。それに伴い、当然のことながらお客さまは商品供給や商品調達に対しても、非常に大きな目標を持っています。
当社グループも現在保有している工場を最大限に活用してその期待に応えることで、十分に計画を達成できると考えています。
坂本:これは私の意見ですが、先ほどうかがった御社グループの売上比率と目標とを照らし合わせると、なんとなくイメージがつく部分がありますね。御社グループの工場では、それを受け止める体制が整えられているのでしょうか?
金子:現時点では体制は整っており、さらに将来的にはその体制を拡大する必要があると考えています。
坂本:その点については、このあとお話しいただく今後の成長戦略とあわせてうかがいたいと思います。
事業戦略 ①生産規模を追求し、利益を最大化
金子:事業戦略についてご説明します。1つ目の事業戦略は「生産規模を追求し、利益を最大化」です。
こちらのスライドは、縫製事業における重点政策です。引き続き、生産地拡大によるサプライチェーンの強化および拡充に取り組みます。
これまでの縫製事業では、中国からASEAN諸国などへの生産地シフトを進めてきましたが、今後は生産規模の拡大が中心となります。
ASEAN諸国を中心に生産量を拡大し、縫製事業の売上高は2026年3月期比で24パーセント増となる、過去最大規模の817億円を目指します。
主要な生産拠点として、バングラデシュでは生産設備の拡張により1,000万枚の増産、インドネシアでは新たな縫製工場の建設により300万枚の増産、ベトナムのアンナム工場では稼働の最大化により60万枚の増産を計画しています。
一方、中国ではより自動化・機械化が可能な寝装寝具など、衣類以外の生活用品へアイテムを転換し、生産効率の向上を図ります。
事業戦略 ①生産規模を追求し、利益を最大化
金子:こちらのスライドは、ラミネーションフィルム事業における重点施策です。
ラミネーションフィルム事業では外部環境の変化が激しく、柔軟な対応が求められています。これらを踏まえ、中国とベトナム、それぞれの拠点で施策を推進します。
1つ目は、2拠点両立の稼働最適化です。米国の顧客を中心に、中国からベトナムへの生産移管を進めるとともに、中国工場では中国国内の新たな顧客の開拓により、空いた稼働を埋めていきます。
2つ目は、機会に備える開発力強化です。今後さらに求められる環境対応と機能性を兼ね備えた次世代フィルム製品の開発に注力するとともに、人財投資や設備投資を進めていきます。
この事業は中長期的な成長ポテンシャルを有しており、将来的な回復と拡大を見込んでいます。
事業戦略 ②「選ばれる工場」に向けて提供価値を磨く
金子:2つ目の事業戦略は「『選ばれる工場』に向けて提供価値を磨く」です。
当社グループの強みであるQCD(品質・コスト・納期)を磨き続けること、環境変化による新たなニーズに対応することは、事業競争力の根幹であり、強化すべき2つの柱だと考えています。
1つ目の柱では、同一アイテムのオーダーをまとめることで、習熟度と品質を同時に高める生産計画を徹底し、技術者派遣を通じて技術の承継と最適化を推進します。
工場の習熟度に応じて、オーダー量と生産アイテムを工場ごとに適切に配置し、工場全体の技術・品質レベルと生産アイテムの競争力を底上げしていく方針です。
2つ目の柱では、データに基づき納期や品質リスクを柔軟に統制するサプライチェーンの仕組みを構築するとともに、国際基準に対応したトレーサビリティ基盤を整備し、透明性の確保に取り組みます。
これらを支えるのは、MES(製造実行システム)の導入です。現場における実態の可視化とデータに基づく解決力の強化、経営の対応力を強化する体制を確立できると考えています。
事業戦略 ②「選ばれる工場」に向けて提供価値を磨く
金子:重点施策の1つである「スマートファクトリー化による製造管理の高度化」について説明します。
MESとERP(総合基幹業務システム)の導入により、生産・在庫・収益を可視化し、納期の短縮、安定供給力の向上、コスト削減、品質強化を同時に実現します。
システムを導入することで情報を一元化し、可視化や分析の即時化を実現することで、生産現場の改善や意思決定をサポートできます。
具体的には、生産現場において工程別に異常値を発見し、ボトルネックとなっている要因に即時対応・対策を講じたり、原材料・仕掛品・製品在庫をリアルタイムで把握したりすることが可能となります。
最近、投資家のみなさまからはこのスマートファクトリーについて「将来の縫製工場において、作業のすべてが機械化されるのか?」とご質問をいただくことがあります。
しかし、当社グループが考えるスマートファクトリーの本来の目的は、現場の作業を機械に置き換えることではありません。現場で働く一人ひとりの従業員が、より価値の高い業務に集中できるよう、不必要な負荷を取り除き、情報共有を加速するための投資であるとご理解いただければ幸いです。
現時点では、バングラデシュのIMBD工場とベトナムのタンチュオン工場をパイロット工場とし、スマートファクトリー化のシステム導入に向けて準備を進めています。今年の下半期からは実装フェーズに入る予定です。
このスマートファクトリー化の進捗状況についても、今後適時にご報告する予定です。
財務戦略 ③資本効率を高める経営への転換
金子:3つ目の基本戦略は、財務戦略である「資本効率を高める経営への転換」です。PBR1倍以上の達成に向けて、資本効率と企業価値を高める経営への転換を図ります。
中長期的方針としては、投下資本利益率が資本コストを安定的に超過することを出発点とし、持続的に株主の期待を上回る成長と価値創造を目指します。
重点施策では、ROE10パーセント以上を長期目標に掲げ、資本効率の向上を図ります。今回の中期経営計画では、ROE9パーセント以上を定量目標として設定しました。
さらに、厳格な投資判断と評価に加え、キャッシュマネジメントの高度化を実行し、資本効率の向上につなげていきます。また、成長戦略の発信を柱に、これまで以上に株主のみなさまとの対話や情報開示を強化します。
財務戦略 ③資本効率を高める経営への転換
金子:こちらのスライドは、キャピタルアロケーションの方針を示したものです。
営業キャッシュフローを中心に、150億円から200億円を配分可能資金と考え、55パーセントから65パーセントを成長投資や再投資、事業基盤投資に配分します。3年間の累計で100億円余りの投資を見込んでおり、そのうち75パーセントを成長投資としています。
株主還元については、中期経営計画に基づき、配当性向35パーセントを目安に還元強化を検討していきます。
人財戦略 ④人的資本への重点取り組み
金子:4つ目の基本戦略は、人財戦略である「人的資本への重点取り組み」です。
当社グループでは、「全てのグループ人財がいきいき働く」をマテリアリティとしています。さまざまなバックグラウンドや知識・経験を持つ人財をワンチームにまとめ、挑戦し学び合う職場環境を整備してきました。
中期経営計画では、ASEAN諸国などでの工場拡大に対応し、各国の技能人財が国境や工場の垣根を越えて活動する横断型スキームの構築を目指しています。
また、人的資本の指標として、2029年3月期に連結従業員2万4,000人を目標とし、女性管理職比率は現時点の42パーセントを維持する方針です。
サステナビリティのための取り組み
金子:サステナビリティのための取り組みです。
当社グループでは「服を着る人も作る人も幸せになる社会をつくる」をサステナビリティ指針として掲げています。
当社グループの事業では、創業以来、グループ全従業員2万人超の生活基盤を支えると同時に、その従業員によって我々のものづくりが支えられてきました。
グループ工場の安定稼働と収益確保は、従業員の尊厳を守るための不可欠な土台であり、当社グループにとって重要なサステナビリティ活動の根幹だと考えています。
今回の中期経営計画では、女性の雇用促進と女性管理職登用の維持・拡大、業務の見える化・標準化などを通じて、デジタルトレーサビリティの実現を推進します。これにより、信用と透明性を向上させ、グローバルサプライチェーンで最も信頼されるパートナーを目指します。
私からの説明は以上です。長時間お聞きいただき、ありがとうございました。
質疑応答:中期経営計画における最重要KPIについて
向井:「新中期経営計画では、さまざまな成長施策が掲げられています。経営陣として『これが実現できれば計画達成に大きく近づく』と考える最重要KPIは何でしょうか?」というご質問です。
金子:縫製工場の生産現場におけるKPIは非常に多岐にわたるため、投資家のみなさまに直感的におわかりいただけるかたちで表現することが難しい部分があります。
しかし、当社グループの事業は多くの縫製スタッフによって支えられていますので、従業員数の安定的な拡大を最重要指標と考えています。
先ほども「2029年3月期に連結従業員2万4,000人を目標」と申し上げましたが、その進捗については常に開示していく方針です。まずはそちらにご注目いただければと思います。
向井:投資家のみなさまは、従業員数に注目するのがよいということですね?
金子:従業員数が増えることで、当社グループの生産量を支える基盤が拡大し、それに伴って売上や利益の獲得につながります。これが当社グループの事業の基礎となります。
質疑応答:海外拠点と製品供給の安定性について
向井:「アパレル生産は海外拠点への依存度が高い事業だと思います。米国の関税政策の変更や地政学的リスクなどがある中で、今後どのような生産体制・拠点戦略で競争力を維持していくのか、考えていることがあれば教えてください」というご質問です。
金子:前中期経営計画からの戦略の継続が中心になると思います。
現在、当社グループは5ヶ国で生産拠点を維持していますが、過去4年から5年の間にも、関税問題や各国特有の政変などの特殊な事情として、さまざまな出来事がありました。
しかし、当社グループの工場網では、生産を止めることなく、安定的にお客さまへ縫製品をお届けできています。これはすでに5ヶ国でものづくりの基盤が整っていることによるものであり、この維持・拡大が対応の基礎になると考えています。
質疑応答:生産効率向上施策について
向井:「売上成長だけではなく利益成長も重要だと思います。中期的な利益率向上に向けて、価格転嫁、高付加価値商品の拡大、生産効率化の中で、特に注力する施策があれば教えてください」というご質問です。
金子:ご質問で挙げられた中で言えば、当社グループが取り組むべきことは、間違いなく生産効率の向上だと思います。
原材料や工場経営コストの上昇は、非常に大きな負担であり課題となっていますが、それを価格転嫁してお客さまに解決を求めるのではなく、いかに自社の工場の生産効率を高められるかが重要な課題だと考えています。
その基盤として、各工場の特性に合わせて安定的なものづくりを継続することが、単位当たりの固定費削減につながり、利益率の拡大も可能になると考えています。このような取り組みを通じて利益率を向上させていきたいと考えています。
向井:そのような施策の実行は、現在の主要顧客からの信頼にもつながるのではないでしょうか?
金子:当然のことながらお客さまとの折衝や交渉はありますが、まずは自助努力を優先すべきだと考えています。
質疑応答:新規顧客開拓における強みについて
向井:新規顧客の開拓なども成長の鍵となるように思います。その点で御社グループにはどのような強みがあるのでしょうか?
金子:安定的な生産が可能であることが強みです。そして多様なお客さまの要望に対応していることです。安定的に大量にものづくりをしてほしいというお客さま、コストに重きを置かれるお客さま、コストよりもクイックレスポンスを優先するお客さまなど、本当にさまざまです。
当社グループは5ヶ国で工場を展開していますので、例えばコストを重視されるお客さまには、少し遠くなるもののバングラデシュでの生産を提案し、クイックレスポンスを求めるお客さまには日本から比較的近いベトナムでの生産を提案するなどの対応が可能です。
このような対応力は現在のお客さまからも評価されていますが、新規のお客さまに対する提案においても強みの1つになると考えています。
質疑応答:上海に営業事務所を開設した狙いについて
坂本:「御社が上海に営業事務所を開設した狙いを詳しくうかがいたい」というご質問です。
中国現地での顧客開拓により工場の活用を含めて進めていく狙いなのか、ほかの狙いがあるのか教えてください。
金子:ご質問者は当社グループのいろいろな資料をよくご覧いただいていると思います。実はこちらは、ラミネーションフィルム事業の営業拠点なのです。
当社グループではもともと上海から近い浙江省の平湖にラミネーションフィルム事業の工場を持っていましたが、今回上海にあらためて事務所を設けました。これはご推察のとおり、中国国内には大手企業がまだ数多くありますので、そこに向けた営業力強化を目指して設置したものです。
質疑応答:海外拠点における政変等への対策について
坂本:「海外工場で政変などがあった場合の対策はできているのでしょうか?」というご質問です。
5ヶ国に工場が分散していますが、各工場で同じようなことができるのか、それとも得意不得意があるのかも含めて教えてください。
金子:もちろん工場の特性に応じたオーダーを入れていますので、それぞれに特徴はありますが、基本的には同じオペレーションが可能です。
坂本:それもBCP(事業継続計画)として機能しているわけですね。
金子:最近ではミャンマーやバングラデシュなどでさまざまな事件が発生しましたが、同じ特性を持つ工場にオーダーを振り替えることで、基本的にはお客さまにご迷惑をおかけすることはありませんでした。当社グループにはそのような対応力があると考えています。
質疑応答:IR活動や知名度の変化について
坂本:「数年前と比較して、現時点における御社の知名度はどのぐらいになったという認識でしょうか? 本日のような説明会に積極的に登壇されている印象があります」というご質問です。
なかなか答えにくい質問だと思いますので、IRに対する姿勢などについて、おうかがいしたいと思います。
金子:知名度については、私からはなかなかお答えしにくい部分があるものの、IR活動を通じて少しずつ当社グループを知っていただけているのではないかと考えています。
当社グループはアパレルOEMというややニッチな産業に属しています。本日の説明会のような機会を増やし、投資家の方々だけでなく、一般消費者の方々にも当社グループの事業内容や名前を知っていただけるような活動を広げていきたいと思っています。
金子氏からのご挨拶
金子:みなさま、本日は長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。当社グループは「服を着る人も作る人も幸せになる社会をつくる」というサステナビリティ指針を掲げ、日々活動しています。
「着る人を幸せにする」ことは、当社グループの工場で安定的に品質の高い製品をみなさまにお届けし続けることだと考えています。
「作る人を幸せにする」ことは、当社グループの事業を支えてくださっている従業員の雇用をしっかり守り、生活を支えていくことだと考えています。
当社グループでは、さらなる事業拡大と生産量の増加を目指しています。それを通じて「着る人」も「作る人」も幸せにできる会社にしていきたいと考えています。
引き続きよろしくお願いします。本日はありがとうございました。
当日寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:ワーキングウェアやインナーウェア・カットソーの受注増に対し、バングラデシュ工場の生産キャパシティ拡大が進んだとのことですが、今後も同工場の拡張余地はありますか。
回答:ワーキングウェアを生産するIMBD工場、インナーウェア・カットソーを生産するTMBD工場ともに、生産ライン増設の余地があり、今後の投資により生産能力の拡大を図ることで、売上・利益の成長につなげていきます。