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戸田工業 Research Memo(4):収益構造改革効果で営業黒字転換、営業キャッシュ・フローは2期連続30億円超

■戸田工業の業績動向

1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の業績は、売上高で前期比11.4%減の28,041百万円、営業利益で862百万円(前期は648百万円の営業損失)、経常損失で77百万円(前期は1,411百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失で3,455百万円(前期は3,563百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となった。不採算事業であったカナダの電池材料事業(TAM)の損失解消に加え、諸経費削減、価格是正活動、原価低減などの収益改善施策が奏功し、営業損益は黒字転換を達成した。また、事業ポートフォリオマネジメントに基づく迅速な撤退・再編判断も収益改善に寄与した。一方で、EV市場の成長鈍化の影響を受けた持分法投資損失とそれに関連するBTBMの出資持分譲渡決定に伴う引当金計上などが影響し、親会社株主に帰属する当期純損失が継続した。

電子素材セグメントの売上高は前期比14.1%減の20,726百万円、セグメント利益は同77.5%増の2,151百万円となった。誘電体材料は、生成AIの普及に伴うAIサーバー需要の拡大やスマートフォンの高性能化を背景にMLCC向け需要が増加し、過去最高の売上高を更新した。MLCCは電流制御やノイズ除去を担う電子部品であり、AIサーバーの高性能化に伴い搭載数量が増加している。また、スマートフォンなどの電子機器では小型化・薄型化が進むなか、MLCCの多層化・低背化が求められている。同社は微細で均一な粒子を製造できる水熱合成技術を有しており、MLCCメーカーの高度な材料ニーズに対応することで市場拡大の恩恵を取り込んだ。一方、磁石材料は自動車市場の減速などを受けて減収となったものの、コストダウンや歩留まり改善、新製法導入などの効果により利益率は改善した。また、軟磁性材料は中国市場における価格競争激化の影響を受けて苦戦した。さらに、TAMの解散・清算決定やハイドロタルサイトにおける協業解消の影響もあり減収となった。しかしながら、拡販活動に加え原価低減や諸経費削減を進めたほか、TAMの費用減少や在庫販売も寄与し、利益面は大幅に改善した。

機能性顔料セグメントの売上高は前期比3.2%減の7,815百万円、セグメント利益は同48.5%増の1,498百万円となった。トナー用材料では一部顧客による在庫調整の影響を受けたものの、AI普及に伴うデータ需要の拡大を背景に、LTOバックアップテープ向け酸化鉄などの記録材料需要が増加した。近年は生成AIの普及に伴いデータ量が急増している一方、すべてのデータをHDDやSSDで保存することはコストや消費電力の点で非効率になるため、長期保存用途としてのLTOバックアップテープが再評価されている。また、祖業である着色材料も回復した。また、原価低減や諸経費削減、価格是正活動の効果により収益性は大きく改善した。

2. 財務状況と経営指標
2026年3月期末の総資産は前期末比2,785百万円減の47,887百万円となった。流動資産は同3,410百万円減少した。主な要因は売上債権が1,177百万円減少したことに加え、現金及び預金が796百万円減少したことである。一方、固定資産は有形固定資産の増加などにより625百万円増加した。負債合計は同825百万円減の38,069百万円となった。短期借入金はほぼ横ばいで推移したものの、長期借入金が2,621百万円減少したことから、有利子負債は同2,695百万円減の25,069百万円となった。純資産は当期純損失の計上などにより1,960百万円減少し9,817百万円となり、自己資本比率は18.9%と同2.8ポイント低下した。

一見すると、同社は2025年3月期及び2026年3月期の2期連続で多額の当期純損失を計上していることから財務面に懸念を抱く向きもある。しかし、その内容を精査すると、TAMの解散・清算に伴う損失やBTBM出資持分譲渡決定に伴う引当金計上など、キャッシュアウトを伴わない会計上の損失計上が大きく影響している。実際、営業活動によるキャッシュ・フローは2025年3月期が3,820百万円、2026年3月期が3,323百万円と2期連続で安定したプラスを確保しており、本業による資金創出力に大きな問題は見られない。

また、投資活動によるキャッシュ・フローは2026年3月期に994百万円の支出となったものの、営業活動によるキャッシュ・フローの範囲内に収まっており、フリーキャッシュ・フローは2,329百万円の黒字となった。前期の1,930百万円から399百万円改善しており、資金創出力はむしろ向上している。さらに、財務活動によるキャッシュ・フローは3,175百万円のマイナスとなっており、有利子負債も2,695百万円減少した。これは創出したキャッシュを借入金返済に充当し、財務体質の改善を進めた結果と評価できる。

以上から同社の財務内容は着実に健全化へ向かっていると考えられる。今後は事業ポートフォリオ改革の成果が利益面に反映され、親会社株主に帰属する当期純利益の黒字化と自己資本の回復が実現できるかが注目点となろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)

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