2026年11月期第2四半期決算説明
川村俊之氏:ファーストブラザーズ株式会社執行役員経営企画部長の川村です。2026年11月期第2四半期決算についてご報告します。
本日のご説明は2部構成です。前半で第2四半期決算の内容を、後半で今回の決算発表と同日に公表した説明資料「株主還元方針および株価と株主資本コストを意識した事業の方向性について」の内容をご説明します。特に後半の株主還元の部分は、本日私どもが最もお伝えしたい内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
決算数値のご説明に入る前に、当社の決算を見ていただく上で前提となる「2つの特徴」を、あらためてお伝えします。この2点をご理解いただけると、本日の数字の見え方が変わってくるはずです。
1点目は、当社は「売上高」ではなく「売上総利益(粗利)」の額を最重要指標としている点です。不動産取引は物件ごとに原価率が大きく異なるため、大型物件を売却して売上高が膨らんでも、利益が出ていなければ企業価値への貢献はありません。見かけの規模ではなく、実質的な稼ぐ力を表す売上総利益を重視して経営を行っています。
2点目は、中長期的な「株主価値の最大化」を優先するため、期間損益の変動(ボラティリティ)をあえて一定程度許容している点です。当社は、会計期間ごとの利益を平準化するために、まだ上昇余地のある物件を早期売却するようなことはしません。物件の潜在価値が最も顕在化するタイミングまで待って売却するという投資規律を徹底しています。
その結果、期ごとの業績は大きく振れます。今期のように売却が集中する期は利益が大きく出ますし、前期のように売却を絞った期は小さく見えます。この振れは戦略の結果であって、事業の不調や好調をそのまま意味するものではないという点をまずご理解ください。
エグゼクティブサマリー
当第2四半期は、売上総利益39.9億円(前年同期比94.7パーセント増)、営業利益27.3億円(同240.8パーセント増)、経常利益23.3億円(同573.3パーセント増)、親会社株主に帰属する当期純利益24.3億円(同988.3パーセント増)と、各段階利益がいずれも大幅な増益となりました。売上高は105.0億円(同95.3パーセント増)です。
純利益が前年同期比で10倍超という増減率に驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、冒頭にお伝えした特徴の裏返しです。前年同期は物件売却が下期に偏った期で、売却粗利はわずか0.1億円でした。売却の谷であった前年同期との比較ですので、増減率はどうしても極端になります。率直にお伝えして、見ていただきたいのは前年比の倍率ではなく、通期計画に対する進捗です。純利益ベースの進捗率は93.0パーセントと、上期でほぼ通期計画の水準に達しています。
もう1つ、純利益24.3億円が経常利益23.3億円を上回っている点に気づかれた方もいらっしゃると思います。当期は後ほどご説明する固定資産の譲渡益9.7億円を特別利益として計上したため、このようなかたちになっています。
セグメント別では、投資銀行事業は、前期売却案件の賃料収入の剥落等により賃貸粗利が16.0億円(前年同期比11.4パーセント減)と減少した一方、物件売却により含み益を売却益として顕在化させ、増益を牽引しました。含み益は前年度末比で約10.9億円減少し166.7億円となっていますが、これは含み益が当期の実現利益へ転換されたことによるもので、投資サイクルが機能している結果です。
施設運営事業は売上総利益2.1億円(同9.2パーセント増)と増益、投資運用事業は前期の売却フィー剥落により減少していますが、想定どおりの進捗です。
TOPICs ― 当2Q決算のトピックス
当第2四半期のトピックスとして、2つの資産売却をご説明します。当社は以前から、資本コストを超える価値創出が見込めなくなった資産は、含み益の有無にかかわらず売却・入替を行ってきました。今回の2件は、この一貫した規律に基づく判断の一例であり、後半でご説明する事業の方向性とも軌を一にするものです。
1つ目は、連結子会社における固定資産の譲渡です。神奈川県鎌倉市御成町の自社運営宿泊施設(土地・建物)を譲渡価額26.8億円で譲渡し、帳簿価額17.1億円との差額9.7億円を固定資産売却益(特別利益)として計上しました。引渡日は2026年3月31日です。
本物件は長期保有を想定して固定資産に計上していたものですが、不動産売買市場の動向・収益性・資本効率を総合的に勘案し、このタイミングでの資金回収が企業価値向上に最も資すると判断しました。長期保有前提の資産であっても聖域にはしないということです。回収した資金は成長が見込める優良案件へ再投資していきます。
2つ目は、営業投資有価証券の売却です。対象会社が未上場の時期から投資銀行事業で投資していたTerra Drone株式会社の株式について、保有する全株式11万900株を売却し、売却額5.9億円、売却粗利2.8億円を計上しました。売却は2026年4月16日に完了しています。
上場後のロックアップ期間終了と株価動向を踏まえ、資本コストを考慮の上、利益確定したものです。不動産以外の投資でも、出口まで含めてリターンを実現できることを示す事例と考えています。
TOPICs ― 株主還元方針・事業の方向性に関する説明資料の公表
もう1つのトピックスが、本決算発表と同日に公表した、個人投資家のみなさま向け説明資料「株主還元方針および株価と株主資本コストを意識した事業の方向性について」です。当社IRサイトにも掲載しています。当社の事業構造の実像と投資哲学、配当・株主優待の新しい方針の方向性、資本コストを意識した事業の方向性をまとめたものです。
なお、記載事項はいずれも取締役会における審議の方向性を示す検討中のものであり、決定した事実ではありません。内容は本日のご説明の後半で、時間を取ってご説明します。
ファーストブラザーズのビジネス
当社の事業セグメントです。当社は役割の異なる3つの事業を組み合わせています。成長エンジンとして自己勘定でリスクを取り高いリターンを追求する「投資銀行事業」、投資家さまから資金をお預かりし安定的なフィー収益を積み上げる「投資運用事業」、そしてオペレーショナル・アセットの価値最大化を担う「施設運営事業」です。
当第2四半期の売上総利益39.9億円のうち投資銀行事業が37.5億円と、現在の収益の柱は投資銀行事業です。
各事業における不動産投資
不動産投資のビジネスモデルです。「投資銀行事業」は自己資金(借入を含む)による直接投資で、当社がオーナーとなり、高い賃料収入とキャピタルゲインの獲得を目指します。投資対象は流動性が高く流通量も多い50億円以下の中小型物件が中心で、大手資本との競合が相対的に少なく、投資妙味のある案件が多い領域です。一方、「投資運用事業(ファンド)」は機関投資家から出資を募り、当社は運用に対する手数料を受け取るビジネスで、100億円超の大型物件が対象です。
足元の環境認識を率直にお伝えすると、都心部では過熱感が見られ利回り低下が続いており、金利上昇局面において低利回り案件には警戒が必要と考えています。大型物件はJ-REIT市場の拡大や海外マネーの流入で取得競争が過熱しています。当社が当社主体でのファンド組成を行っていないのは、案件がないからではなく、この過熱した価格では投資家のみなさまにおすすめできる商品を組成できないという判断によるものです。
投資銀行事業で当社グループが取り組んでいること
投資銀行事業のサイクルです。賃貸不動産の取得・保有を起点に、改修・運営改善・新規開発でバリューアップし、安定稼働に乗せた上で、売却により含み益を顕在化させ、その資金を再投資に回します。この繰り返しで、安定収益基盤の拡大とポートフォリオの成長を両立させています。
本日ご説明した鎌倉の譲渡やTerra Droneの売却も、このサイクルの「売却で含み益を顕在化して再投資」の局面にあたります。不動産に加え、再生可能エネルギー・社会インフラ投資、スタートアップ投資にも取り組んでいます。
東日本不動産(HNF)の東北エリアにおける事業戦略
子会社の東日本不動産(HNF)についてです。「なぜ東北なのか」というご質問をよくいただきますが、ポイントは競争環境です。HNFは青森を中心に地元行政・不動産事業者との強固な関係を築いており、優良物件の情報を早期かつ優先的に入手できます。地方都市は大手資本の参入が限定的で、紹介案件や行政連携により競合の少ない物件取得が可能です。
加えて東北エリアはNOI(純営業利益)利回りが高水準の物件が多く、新規供給が少ないためテナントニーズも根強いです。つまり、「競争が少なく、利回りが高い」市場で買える立場にあることが、後ほどご覧いただくポートフォリオ全体の利回り水準を支えています。
ESGを踏まえた事業運営とCSV(Creating Shared Value)
ESG・CSVに対する考え方です。当社は社会課題の解決を、慈善活動ではなく、競合との差別化要因となり持続的な高収益をもたらす「成長戦略」と位置づけています。
象徴が地方投資です。多くの投資家が参入しづらい地方の不動産に当社がリスクマネーを投じ、価値を再定義して再生させます。地域に経済循環を生みながら、当社自身は競争の少ない環境で高利回りを享受することができます。
「地方の課題解決」と「投資リターンの最大化」をトレードオフにせず、ビジネスの力で同期させることが、当社の目指すCSV経営です。
業績ハイライト
各段階利益の推移です。売上総利益39.9億円は、過去2年の同期間(17.6億円、20.5億円)と比べても第2四半期時点では高い水準です。
経常利益23.3億円の増益要因は、売上総利益の増加に加え、前年同期比で融資手数料を伴う借入実行が少なかったことです。親会社株主に帰属する当期純利益24.3億円には、固定資産譲渡による特別利益9.7億円が含まれます。
賃貸不動産ポートフォリオ
ここからは投資銀行事業の中身です。賃貸不動産の残高は取得価格ベースで648億円、物件数は92物件、NOI利回りは7.1パーセントです。
当第2四半期の動きで注目していただきたいのは、期中減少額33.2億円に対し、期中増加額も32.9億円と、売却とほぼ同額の取得を実行している点です。つまり残高を減らして縮小しているのではなく、含み益の大きい物件を利益化しながら、次の価値向上余地のある物件へ入れ替えているということです。
中長期では残高・物件数ともに着実に増やしていく方針に変わりはありません。
物件簿価、時価、含み益の推移
含み益は166.7億円と、前年同期の201.6億円から34.8億円、17.3パーセント減少しました。
「含み益が2割近く減った」と聞くと資産価値が毀損したように見えるかもしれませんが、実態は逆です。減少分は物件の値下がりではなく、含み益の大きい物件を売却し、利益として実現させたことによるものです。帳簿に載らない価値だったものが、当期のPLに現れたということです。
むしろ見ていただきたいのは、これだけの売却を行ってもなお166億円の含み益が残っている点です。これは前期末の株主資本約260億円の6割強に相当する規模で、将来の利益の厚みと再投資の源泉は維持されています。
賃貸不動産ポートフォリオの所在地別、用途別内訳
ポートフォリオの内訳です。所在地別では関東32.8パーセント、東北29.9パーセント、その他主要都市37.3パーセントです。東北の比率の高さは、先ほどお伝えしたHNFの「競争の少ない高利回り市場で買う」戦略の反映です。
用途別ではテナントニーズの固い立地のオフィス・商業施設が中心で、商業45.8パーセント、オフィス19.0パーセントです。コロナ禍に取得を進めた宿泊施設は売却を進めており、ホテル・旅館の比率は15.7パーセントと低下傾向にあります。鎌倉の譲渡もこの流れの中に位置づけられます。
不動産賃貸売上・粗利
賃貸収益です。当第2四半期の不動産賃貸売上は34.2億円(前年同期比10.1パーセント減)、賃貸粗利は16.0億円(同11.4パーセント減)です。
減少と聞くと基盤が弱くなったように見えますが、中身を分解すると、減少しているのはオペレーターに賃貸・運営委託しているホテル施設等のMC契約収入、すなわち変動収入の部分です。前期に物件を売却したことによる剥落で、売却益を取りに行ったことの裏返しですから、想定内の減少です。賃貸不動産からの収入自体は安定的に増加傾向にあり、当第2四半期も複数物件を取得しています。
不動産賃貸売上の構成
賃貸売上の構成です。変動賃料収入の減少により、固定賃料の割合は前年同期の66.7パーセントから73.6パーセントへ上昇しました。
固定賃料は契約期間中原則定額で収益の下支え(ディフェンス)、変動賃料はテナント売上や宿泊指標に連動する成長の取り込み(オフェンス)という役割分担です。
足元は固定寄りの構成となっており、収益の予見性という意味ではむしろ安定度が増した状態です。変動賃料型の商業施設やホテルは消費者需要に左右されるため、過熱感を見極めた売却タイミングの判断が重要と考えており、引き続き市場動向を慎重に見ながら投資判断を行います。
不動産売却売上・粗利
売却の状況です。当第2四半期の不動産売却売上は84.5億円、売却粗利は28.3億円、粗利率は約33パーセントと平年より高めです。含み益の大きい案件を売却できたことによるものです。
過去の推移をご覧いただくと、売却粗利は2023年11月期第2四半期の29.6億円から、2024年11月期第2四半期は1.3億円、2025年11月期第2四半期は0.1億円と、売らないと決めた期は本当に売っていません。
この振れ幅こそが、市況が悪いときに無理に売らず、好機に売るという当社の規律の証左です。下期以降も市況を見極めつつ追加売却を検討します。
資金調達の概要
資金調達です。当第2四半期末の借入残高は484億円、原則10年程度の長期・低金利での調達により、加重平均残存期間は8.7年を確保しています。
金利については正直にお伝えして逆風です。加重平均金利(金利固定化前)は1.80パーセントまで上昇しており、2026年11月期は前期末比プラス0.75ポイントの期中金利負担増を予算上想定しています。
ただし、保有物件のNOI利回りは7.1パーセントですので、借入金利1.80パーセントに対してなお5ポイント超のスプレッドがあり、金利上昇が直ちに収益構造を毀損する状況にはありません。金利動向は楽観視せず、個別物件ごとの収益性を、さらなる上昇可能性を織り込みながら厳格にモニタリングしています。
資金調達の概要
レバレッジ(「借入残高÷賃貸不動産簿価」)は74.4パーセントと70パーセント台で推移しています。金利スワップによる固定化は、ヘッジコストと残存期間を勘案し新規実行を見送っており、固定化割合は12.4パーセントまで自然減となっています。
不動産アセットマネジメント
投資運用事業です。当社組成ファンドの対象となる大型物件は取得競争が激しく価格高騰が続いているため、慎重姿勢を維持し、当期の新規受託はありません。ここでも「過熱した市場では無理をしない」という規律を優先しています。
一方、投資家が主体となって取得した案件の期中管理業務は適宜受託しており、受託資産残高は145.6億円と前年同期(124.7億円)から増加しました。当社グループ保有物件を投資対象とした新規ファンドの組成も、市場を注視しながら検討しています。
業績サマリー
施設運営事業です。旺盛な観光需要を取り込み、売上高9.5億円と前年同期並みながら、売上総利益2.1億円(前年同期比9.2パーセント増)、営業利益は0.4億円と前年同期の損失から黒字化しました。
なお、施設を一部譲渡したため、第3四半期以降このセグメントの収益は減少します。
業績予想
通期予想についてはスライドをご確認ください。
業績予想の進捗について
通期予想に対する進捗です。売上総利益ベースで61.5パーセント、経常利益79.9パーセント、親会社株主に帰属する当期純利益は93.0パーセントです。
純利益は上期でほぼ計画水準ですが、通期業績予想(売上高177億円、経常利益29億円、純利益26億円)は現時点で据え置いています。第3四半期以降は取得に軸足を置きつつ売却活動も継続しますが、物件売却は個別性が強く、時期・金額とも市況と相手方次第の面があるためです。
収益構造・バリュエーション推移
ここからは「株価と資本コストの認識」です。当社が自社の株価をどう見ているかを、お話しします。
当社の売上総利益は、安定的に成長する賃貸収益と、期ごとの変動が大きい売却益の2層で構成されています。賃貸粗利は2022年11月期の23.1億円から前期35.9億円まで着実に積み上がってきました。
一方で株価は、TOPIXが上昇基調にある中、当社のPBR(株価純資産倍率)は1倍を割れた水準が続いています。この市場評価は真摯に受け止める必要があると認識しています。
現状認識と課題
なぜPBR1倍を割れているのか。当社の分析は明確で、利益全体に占める不動産売却益の割合が高く、その変動が激しいためです。実際、当社のROEは直近4期で5.6パーセント、13.9パーセント、5.8パーセント、6.9パーセントと大きく振れています。
2025年11月期末時点のPBR0.66倍は、当社の創出するROEよりも市場の求める期待収益率(=資本コスト)の方が高い、「期ごとの変動の大きさ」に対する割引評価だと認識しています。瞬間風速的な利益の上振れは、再現性への懸念から市場では評価されません。これが当社の偽らざる現状認識です。
当社グループの投資哲学
それでは、なぜ市場に割り引かれてまでボラティリティを許容するのかと言いますと、理由は不動産の2つの特性にあります。
1つは「不可逆性」です。不動産は個別性が強く、一度手放せば二度と同じ条件では買い戻せません。優良物件ほど、安易な早期売却は利益を捨てることと同義です。
もう1つは「潜在価値の顕在化」です。不動産の価値は、その物件を最も必要とする買主と出会った瞬間に跳ね上がります。私たちは市況を待つのではなく、ベストな買主とのマッチングを成立させるために時間を使います。
この価値のジャンプアップには保有期間の調整が必要で、結果として年度業績が振れます。しかしこれこそが簿価以上の「真の価値」を顕在化させ、中長期の株主価値最大化に寄与すると考えています。
資本コストを意識したポートフォリオ・マネジメント
ただし、漫然と待っているわけではありません。「売却を待つ」判断には、その期間分の資本コスト、すなわち株主資本の機会費用が発生し続けます。私たちは保有期間中、各物件の期待収益率が資本コストを上回っているかを常時モニタリングし、下回った、つまり価値創造が終わったと判断した資産は、含み益の有無にかかわらず即座に売却・入替を実行します。
目安はコーポレートガバナンス報告書記載のとおり、CAPM等により推計した資本コスト約7パーセントから9パーセントです。「哲学」でリターンを最大化し、「規律」で資本効率を守る、この両輪で企業価値の向上に努めます。
株主資本の成長と株価評価の乖離
その上で、直視すべき事実があります。当社の株主資本は10年で78億円から260億円へ3.3倍に成長しましたが、PBRは2025年期末時点で0.66倍です。株主資本1円が、市場では0.66円としか評価されていません。「留保した1円が1円未満の価値しか生まない」と実質的に評価されている状況です。
利益を出し、資本を積み上げるだけでは株価はついてきません。この認識が、本日公表した説明資料、そしてこの後ご説明する株主還元の見直しの出発点です。
配当の基本方針
決算説明の最後に、現行の株主還元制度です。当社は利益連動の配当性向ではなく、株主資本に連動する「株主資本配当率(DOE)」2.0パーセントを目安に、年1回の期末配当を基本としています。期ごとの利益が大きく振れる当社にとって、毎期着実に積み上がる株主資本を基準とすることが、安定配当の要だからです。
期末配当は初配当の15円から前期の35円まで、10年連続で増配を継続しています。加えて2024年11月期から、直前期の親会社株主に帰属する当期純利益が20億円を超過した場合に超過分の40パーセントを中間配当として還元する仕組みを導入しており、2026年11月期は1株当たり37円の期末配当を予想しています。
ただ、この中間配当の仕組みについては、率直に課題があると認識しています。2024年は中間33円が加わり年間67円となった一方、翌2025年は期末35円のみでした。期末配当自体は増配を続けているにもかかわらず、年間の配当額だけを見ると67円から35円へ大きく減ったように見えてしまいます。基準がわかりづらく、株主のみなさまにとって予見しづらい、このわかりづらさ自体が課題であるという認識が、この後ご説明する見直しの背景にあります。
株主優待制度
株主優待は「ファーストブラザーズ・プレミアム優待倶楽部」を導入しており、保有株数・期間に応じたポイントを「Amazonギフトカード」等に交換いただけます。こちらも制度の見直しを検討しており、あわせて後半でご説明します。
株主還元方針および株価と株主資本コストを意識した事業の方向性について
ここからが本日の後半、私どもが最もお伝えしたい内容です。本日公表した個人投資家のみなさま向け説明資料に沿ってご説明します。
なお、以降にご説明する事項はいずれも取締役会における審議の方向性を示す検討中のものであり、決定した事実ではない点に、あらためてご留意ください。
先に結論からお伝えします。当社が問題だと考えているのは2つ、「株式の流動性が低いこと」と「還元の仕組みがわかりづらいこと」です。
これに対して、株主優待の見直しで流動性の懸念を解消し、配当は変動の少ない安定的な仕組みに改めた上で、その水準を中長期的に段階的に高めていく、この2つをセットで実行することで、株価のディスカウント解消を目指すというのが今回の方針の骨子です。
当社の実績
まず、この還元強化を支える土台となる実績です。当社は自己資金で不動産を取得し、価値を高めて運用・売却する「自己勘定投資」を主な事業とし、大手資本が入りにくい地方都市や、複雑で他社が手を出しにくい案件に特化してきました。
株主資本は上場来10年で78億円から260億円へ、年率12.8パーセントで成長しています。この間、一度も赤字を出していません。つまり株主資本は一度も減ることなく積み上がり続けてきたということです。
保有不動産の含み益は166億円あり、期末配当は10年連続増配、1株あたり15円から前期末35円まで増やしてきました。還元の原資と実績、その両方があるからこそ、これからご説明する引き上げを目指せると考えています。
収益構造
収益構造は2層です。第1の柱は約90物件から生まれる家賃収入、インカム基盤です。NOI利回り7.1パーセント、固定賃料比率約70パーセントで、前期の賃貸粗利は35.9億円まで着実に積み上がってきました。この安定した土台があるからこそ、売り急がず、じっくりと価値を高める投資が可能になります。
第2の柱が、価値向上による売却益です。この2つの柱が生み出す利益の蓄積、すなわち株主資本の着実な成長が、後ほどご説明する配当の基準となります。
配当政策の方向性(2027年11月期以降)
本日の核心である配当政策です。ポイントは3つ、「下限を引き上げる」「変動しにくい仕組みにする」「その下限を段階的に高め続ける」です。
第1に、下限の引き上げです。これまでDOE2.0パーセントを目安としてきた配当を、まずDOE2.5パーセントへ引き上げる方針で検討しています。2025年11月期末の株主資本約260億円と発行済株式数に基づく概算で、1株あたり年46円程度に相当します。前期末配当35円との比較で約3割の増配水準であり、しかもこれは上限ではなく「下限」です。
第2に、変動しにくい仕組みへの転換です。先ほどお伝えしたとおり、利益連動の変則的な中間配当は、年間配当額を大きく見えたり小さく見えたりさせ、予見性を損なってきました。これを見直し、シンプルで予測しやすい設計に改める方向で検討しています。
基準となるDOEは株主資本連動ですから、単年の利益が振れても配当は振れません。そして当社の株主資本は、繰り返しになりますが上場以来一度も減ったことがなく、年率12.8パーセントで成長してきました。利益を計上して株主資本が成長すれば配当額は自動的に増え、さらに、DOEの割合自体も段階的に引き上げます。「成長」と「引き上げ」の二重効果で、配当が着実に増え続ける仕組みを目指します。
第3に、段階的な引き上げの道筋です。第一段階の2.5パーセント(概算で年46円程度)の後、中期的に3.0パーセント(同55円程度)、中長期的に3.5パーセント(同64円程度)、長期的には4パーセント超(同74円程度以上)と、業界上位水準を目指します。
「本当に払い続けられるのか」というご懸念にもお答えします。だからこその「段階的な」引き上げです。DOEの引き上げは、後ほど還元設計のところでもご説明しますが、事業の配当余力、すなわち利益とキャッシュフローの水準を確認しながら判断します。
当社はレバレッジを活用した事業モデルであり、賃貸収益には借入の元利金返済も充当されますので、PL上の利益がそのまま配当原資になるわけではありません。だからこそ、一足飛びに高い水準を掲げるのではなく、キャッシュフローの裏付けを確認しながら無理なく維持できる水準を「下限」として設定し、段階的に切り上げていきます。
この慎重な設計自体が、変動の少ない安定的な配当を長く続けるための担保だと考えています。あわせて、基準となる株主資本は上場以来一度も減少したことがないという事実も申し添えます。
本変更のタイミングは2027年11月期以降を予定しています。なお、経過期間にご心配をおかけしないよう申し添えますと、2026年11月期実績に基づく2027年11月期の中間配当については、制度を変更した場合でも実施する方向で検討しています。移行によって株主のみなさまが不利益を被る空白期間を作らないという考え方です。
株主優待の見直し(2027年11月期以降)
次に株主優待です。ここは当社が最も強い問題意識を持っている、流動性の話です。
率直にお伝えすると、当社株式は出来高が少なく、流動性が低い、買いたい方がまとまって買いづらく、売りたい方も売りづらい、この流動性の低さ自体が株価のディスカウント要因になっていると認識しています。
そして皮肉なことに、その一因が現行の株主優待制度にあります。現行制度は5,000株まで優待ポイントが増え、長期保有で優遇される設計のため、大口で長く持ち続けることが最も有利になります。結果として大口保有が固定化し、市場に出回る株式と売買が減る構造を、当社自身が作ってしまっていた面があります。
そこで、見直しの方向性は3点です。第1に、優待上限を現行の5,000株から5,000株未満の水準へ引き下げます。優待の魅力をより多くの株主のみなさまに行き渡る設計にし、出来高の増加を目指します。
第2に、長期保有と短期保有の条件を同一化します。現行の1年以上優遇を廃止し一律同条件とすることで、保有期間を理由に売買を控えるインセンティブをなくし、売買需要を喚起します。
第3に、優待基準日を期末1回から増やすことが流動性向上に有効かどうかを検討しています。基準日が年1回だと、その日に向けた保有だけが促されるためです。すでに大口で保有いただいている株主さまには、優待ポイントの上限引き下げはご負担に感じられると思いますので、当社の考え方を正直にお伝えします。
第1に、先ほどの配当引き上げです。5,000株保有の場合、概算で年間の配当は現行水準比で相応に増加し、優待の減少分を配当で補う設計を意図しています。
第2に、売買が活発になり流動性ディスカウントが解消されれば、その利益は保有株数に比例して大口株主のみなさまに最も大きく及びます。
配当の引き上げとあわせ、中長期的なトータルでの還元は現状以上となることを目指しています。優待は「保有を固定化させる仕組み」から「流動性を高める手段」へ、位置づけを変えるということです。
市場とのギャップ
ここからは、以上の方針の背景となる数字です。当社のPBRは2026年5月末時点で0.64倍です。不動産関連の自己勘定投資を主業とする主要上場各社は1.08倍から1.50倍で、全社が1倍を超えています。差は歴然です。
還元面でも、PBR1.0倍換算時の還元利回り水準である「実質DOE」で、当社1.97パーセントに対し主要数社は3.81パーセントから5.25パーセント(最大7.11パーセント)です。つまり当社は、バリュエーションでも還元利回りでも見劣りしています。この2つのギャップを同時に埋めにいくのが、今回の方針です。
インカム基盤の経済性
一方で、事業の実力が劣っているわけではありません。物件単位では、NOI利回り7.1パーセントが借入金利1.80パーセントを5ポイント超上回り、資本コストを超える収益力があります。
問題は連結です。2025年11月期の連結ROEは6.9パーセントと、CG報告書記載の資本コスト認識(約7パーセントから9パーセント)を下回っています。物件単位では稼げているのに連結で届かない主因は、収益への貢献が小さい資産が貸借対照表に残っていることです。
したがって対応は明確で、このような資産の売却・入替を進め、リターンの期待できる分野へ再投資し、連結ROEを物件単位の収益力の水準へ近づけていきます。これが事業構造変革の核です。
もっとも、これは今回初めて始めることではありません。当第2四半期の鎌倉の譲渡やTerra Droneの売却がまさにそうであるように、当社が以前から実践してきた売却・入替の規律を、今後より一層意識的に、連結ROEの水準改善という明確な目標に紐づけて進めていくということです。
資本コストの認識
その判断基準となる資本コストの認識を再定義します。当社はCG報告書で「CAPM等により約7パーセントから9パーセント」と開示していますが、流動性が乏しく固定株比率の高い当社では、CAPMは実態より低く出る傾向があります。
そこで益利回り等(1/PER)を含む、より広く、より厳しいレンジで資本コストを認識し、投資判断のハードルレートに組み込みます。
なお、借入比率の高い当社のWACC(加重平均資本コスト)は約2.3パーセントですが、これをハードルレートに使えば大半の投資が正当化されてしまいます。低すぎて規律として機能しないため、不適と考えています。あえて自らに厳しい基準を課すということです。
還元設計の考え方
還元設計の全体像です。DOEの段階引き上げは、事業の配当余力、すなわち利益・キャッシュフローの水準に基づいて判断します。目標水準として重要なのは、「PBR1.0倍時にも配当利回り3.5パーセント以上を維持できる水準」を目指すという点です。これは、株価が上がって配当利回りが薄まってもなお、市場で魅力的な利回りを保てる配当額まで引き上げるという意味です。
株価上昇と配当の魅力を両立させる設計であり、中長期で安定的に配当を高めていくという当社の意思を、水準として示したものです。株主優待は流動性向上の手段と位置づけ、個人投資家のみなさまの投資インセンティブを補完します。
事業構造変革と成長の方向
事業面では、インカム基盤の拡充とローテーション(規律ある売却・再投資)の効率化を4つの方向で進めます。
売却ペースの最適化、賃貸NOIの向上、レバレッジの最適化、ポートフォリオの規模・地域の見直しです。共通の前提は「資本コストを超える場合にのみ投資する」という規律です。
あわせて、当社の投資判断力を活かせる新領域への拡張も模索します。具体的な内容は今期中に開示します。
情報開示方針・スケジュール
本日の資料は第一段階として、事業の実像と還元の仕組みをお示しするものです。事業構造変革の具体的な計画は今期中にあらためて開示し、当社Webページや適時開示、その他の情報発信も継続的に充実させていきます。
最後に
最後に、本日のメッセージを3点に要約します。
第1に、当第2四半期決算は純利益進捗率93.0パーセントと、通期計画に対して順調を超える進捗であることです。
第2に、当社は自社株式の流動性の低さを明確に課題と認識しており、株主優待の見直しによってその解消に取り組むことです。
第3に、配当は変則的な仕組みを改め、変動の少ない安定的な設計とした上で、下限をDOE2.5パーセント、さらに3.0パーセント、3.5パーセント、4パーセント超へと中長期的に高めていく方針であることです。
いずれも検討中の事項ではありますが、長期的に応援していただける株主のみなさまとともに着実に成長していくという当社の意思として、受け止めていただければ幸いです。
私からのご説明は以上です。本日はご清聴いただき、誠にありがとうございました。今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。