マネーボイス メニュー

ミロク情報 Research Memo(8):2029年3月期経常利益120億円に向け、生成AIを全社活用(2)

■ミロク情報サービスの今後の見通し

(2) 基本戦略
「中期経営計画Vision2028」におけるグループ共通の成長戦略として、ビジネスモデルの変革(サブスクモデルへの移行)、新規顧客の獲得による顧客基盤の拡大、LTVの最大化の3点を掲げており、以下の6つの基本戦略を推進している。

a) 「クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換」
主力ERP製品のクラウド・サブスク型への移行は既述のとおり、企業向けで2026年3月期に想定を上回るペースとなり、2027年3月期は抑制する方針である。2029年3月期の目標は、主力ERP製品のARRで110億円、ソフト使用料全体ARRで200億円、サービス収入全体ARRで310億円であり、ストック型収入で全体の5割を超える水準を目指す。

b) 「中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略」
中堅・中小企業向けの成長戦略としては、既存ERP製品の拡充とSaaS製品の開発・提供、DXコンサルティング・サービスの強化を進めている。SaaS製品は2025年11月より中小企業を対象とした新製品「LucaTech GX Lite」の提供を開始した。従来のERP製品における豊富な機能や高い利便性を踏襲しつつ、AI機能の実装により「オートメーション」「リアルタイム」「シェアリング」を実現し、経理事務の最小化と経営判断の迅速化・高度化を支援するシステムとして開発を進めてきた。「Lite」版についてはまだ利用できる機能が一部に限定されており、開発を進めながら完成度を高める。当面は既存ERP製品と同時並行で導入提案を進める。「LucaTech GX」シリーズすべての開発費用は、これまでに約80億円を資産計上しており、今後も40億円程度の開発投資を予定している。

また、中小企業向けに最適なDX戦略を提案するDXコンサルティング・サービスを2026年3月期より試行的に開始し、2026年3月までに約230件の契約を受注した。中小企業のDXが遅れている理由の1つにIT人材の不足が挙げられており、同社では専門コンサルタントであるITコーディネータ※による伴走支援を行い、自社製品にこだわらず幅広く製品・サービスを提案することで、中小企業のDX推進に貢献しながら、自社製品の受注獲得やクロスセルにもつなげていく考えである。このため、継続的にITコーディネータの育成強化を進めており、ITコーディネータの有資格者を2026年3月期末の130名から、2026年4月には140名でスタートし、翌期には160名まで拡大させる計画だ。顧客ターゲットは主に会計事務所を通じた顧問先企業約50万社となり、効率的にターゲットにアプローチできることが競合他社にない強みとなる。また、全国19のソリューション支社からも、新規の中小企業に対しシステム提案の前工程としてDXコンサルティングのアプローチを行うことで早期に信頼を獲得し、顧客基盤拡大を図る考えである。同社では旺盛な需要に対応すべく、米Anthropicが開発した生成AI「Claude」を業務にフル活用して、コンサルタント1人当たりの生産性を20〜40%引き上げ、高単価案件の受注獲得に注力していく方針である。

※ ITコーディネータ:経営に役立つIT利活用に向けて、経営者側の立場で助言・支援を行うスキルを持った人材を育成すべく、国策の1つとして2001年から設けられた経済産業省推進の資格制度で、試験合格及びケース研修修了することで取得できる。

c) 「会計事務所ネットワークNo.1への戦略」
「会計事務所ネットワークNo.1への戦略」として、DXコンサルティング・サービスと新たなSaaSビジネスにより、会計事務所と顧問先企業のDXを推進中である。短期的な施策として、会計事務所向けERP製品「ACELINK NX-Pro」と合わせて独自開発したAIソリューション(AI仕訳、AI-OCR入力、AI監査支援)を提供し、会計事務所の高齢化や人手不足といった課題に対応するとともに、業務効率化を支援している。

また、会計事務所が顧問先企業に対して経営コンサルティングを行う際のツールとして、2024年10月に「Hirameki 7」上で利用できる会計事務所向けのオプションサービス「経営分析プラス」をリリースし、2025年5月には「経営分析プラス」の新機能として「AIレポート」をリリースした。「AIレポート」は生成AIを活用し、顧問先企業の会計データと公的統計※を基に、AI分析コメントがついたレポートを自動作成する機能で、「Hirameki 7」上に顧問先企業の会計データをアップロードするだけでAIレポート(月次レポート、年次レポートの2種類)を自動作成できる。「AIレポート」機能は「Hirameki 7」並びに「経営分析プラス」を契約している会計事務所ユーザーであれば無料で利用可能であり、利用の拡大が期待される。2025年6月から2026年3月までの10ヶ月間の利用実績としては5,300件超となった。「Hirameki 7」を導入する会計事務所が限られており、まずは会計事務所向けの拡販が重要となる。また、顧問先企業についても「Hirameki 7」の導入メリットを訴求し、利用拡大につなげられれば、「Hirameki 7」を中心とした統合型DXプラットフォーム事業の収益化も見えてくるだけに、今後の動向に注目したい。

※ 「景気ウォッチャー調査」「国民経済計算(GDP統計)」など7つの公的統計。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。