■要約
スタートラインは、障害者雇用・就労支援サービスのパイオニアであり、業界をけん引するリーディングカンパニーである。民間企業向けに、障害者の採用から職場定着、能力開発までをワンストップで支援する障害者雇用支援サービス事業を主力とするほか、就労移行・定着・選択支援や就労継続支援B型などの障害者福祉事業も展開する。科学的根拠に基づく障害者の職業リハビリテーション技術「支援力」をベースに、「コーヒー焙煎」「植物栽培」「オフィスワーク」などの様々な業務を通じた障害者雇用支援を行っており、この「支援力」と「豊富なサービスラインナップ」を強みとし、農園型などの単一サービス中心の同業他社との差別化を図っている。関東と関西エリアを中心に障害者雇用支援サービス拠点48拠点(2026年4月1日時点)において、顧客企業373社、障害者2,514名の雇用を支援している(2026年3月末時点)。
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の同社業績は、売上高5,599百万円(前期比25.2%増)、営業利益450百万円(同71.3%増)、経常利益374百万円(同63.5%増)、当期純利益433百万円(同200.8%増)と大幅な増収増益となり、売上高・各段階利益ともに過去最高を記録した。大幅増収の要因は、積極的な新規出店による拠点数の増大と利用企業数の増加である。営業利益が前期比71.3%増となったのは、売上高増加に伴う利益増加に加え、運営拠点の効率化による売上総利益率の向上やスケールメリットによる販管費率の抑制がプラス寄与したためである。なお、当期純利益は税効果会計における企業分類変更による一過性の影響(209百万円)により、営業利益の伸びを上回る大幅増益となった。
2. 2027年3月期業績見通し
2027年3月期の通期業績は、売上高7,009百万円(前期比25.2%増)、営業利益560百万円(同24.4%増)、経常利益475百万円(同26.9%増)、当期純利益310百万円(同28.3%減)を予想している。前期の税効果関連のプラス影響の剥落により減益となる当期純利益を除き、売上高、営業利益、経常利益は前期比で20%超の伸びを予想し、過去最高を更新する見込みである(なお、税効果の影響を除いた実質当期純利益ベースでは増益基調が継続する)。
業績好調が続くのは、2026年7月の法定雇用率引き上げ(民間企業において2.5%から2.7%)に伴う需要増加、複合拠点「Diverse Village」を中心とした出店加速、東海や北関東エリアへの進出(新規出店5拠点を確保済み)、スケールメリットによる販管費の効率化継続などが寄与するためである。ただし、上期については、下期の新規出店に関連した先行投資により、売上高3,052百万円(前年同期比16.9%増)、営業利益34百万円(同73.7%減)と、2ケタ増収ながら大幅な営業減益(下期偏重の計画)になる見込みであることに留意する必要がある。
3. 成長戦略
中長期的な成長戦略として、同社は競争優位性の源泉(コアコンピタンス)である「支援力」と「豊富なサービスラインナップ」をベースに、障害者雇用支援サービス事業へ経営リソースを優先的に投資する。これにより、強固な経営基盤を確立し、そこで得られた利益をさらなる出店や新サービス開発、さらに、障害者福祉事業や、生きづらさを抱える人向けの新規事業開発へ再投資していく方針である。
具体的な施策として、既存事業では「Diverse Village」を中心とした出店加速、大都市圏に加え人口10万人以上の市区町村へのエリア拡大、年間約50名程度の支援員の新規採用、さらなるサービスラインナップの拡充を図る。さらに2027年3月期以降は、障害者就労移行支援事業の拡大を進め、就労継続支援B型※事業で「GOOD THE GOOD」を1拠点出店し、2028年3月以降の拠点拡大に向けた体制を構築する。
※ 就労継続支援B型(非雇用型)は、一般企業への就職が困難な障害者へ働く機会を提供するサービスであり、雇用契約を結ばずに、軽作業などの生産活動や訓練を通じて「働く場」と工賃を得ながら、日常生活・社会生活の自立を目指す障害福祉サービスである。
4. 株主還元
同社は株主への利益還元を経営の重要課題の1つに位置付けているものの、現時点においては財務体質の強化と開発投資による事業拡大のため内部留保の充実等を図ることが先決であり、事業拡大による利益成長が株主価値の増大につながるとの判断から、設立以来配当は実施しておらず、配当実施時期は未定である。
■Key Points
・科学的根拠に基づいた「支援力」と障害者の特性に合わせた「豊富なサービスラインナップ」が強み
・2026年3月期は積極的な新規出店やエリア拡大による顧客企業の増加で売上高・利益ともに過去最高を更新
・2027年3月期は法定雇用率引き上げもあり2ケタ増収・営業増益が継続する見込み。ただし、上期は先行投資により営業減益を予想
・既存事業の障害者雇用支援サービスを成長ドライバーに、障害者福祉事業の拡大、新規事業開発を進める
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)