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明治HD、2026年度営業利益1,000億円達成へ 中長期的には安定した国内事業の収益を元に海外で成長を加速

沿革

菱沼純氏(以下、菱沼):みなさま、本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。取締役専務執行役員 CFOの菱沼です。本日は、基本情報、成長戦略、株主還元の3つのテーマについてお話しします。

まずは、明治グループの沿革についてご説明します。明治グループは、2009年に明治製菓と明治乳業が経営統合して誕生した企業グループです。創業以来、幅広い年代のお客さまに向けて、食と薬の領域で「meijiらしい健康価値」を創造し、時代のニーズに応じた製品を提供してきました。

また、創業精神として掲げている言葉の1つに「栄養報国」があります。これは現代風に言い換えると、「栄養で社会に貢献する」という意味になります。創業から100年を超えた現在でも、この精神を受け継ぎ、「健康」や「栄養」の分野で社会貢献することを、グループの理念としています。

経営統合後の2011年に事業再編を行い、食品事業を担う明治と医薬品事業を担うMeiji Seika ファルマが誕生しました。その後、2018年にはワクチン分野で強みを持つKMバイオロジクスをグループ会社化し、現在の体制が整いました。

業績推移

菱沼:連結業績の推移です。2009年度の統合時には、営業利益率が2パーセント以下であり、稼ぐ力が弱い会社でした。

そこから新しいカテゴリや商品の提案、コア事業への集中、不採算事業の見直し、コスト削減などに取り組むことで、収益性が大きく向上し、2020年度には過去最高水準の営業利益額を達成しました。

その後、コロナ禍や原材料価格・エネルギーコストの上昇など厳しい状況が続きましたが、コスト増への対応や構造改革を進めることで、確固たる収益基盤を構築しつつあります。

2026年度の営業利益は過去最高水準に迫る1,000億円を目標としており、成長軌道の回復に向けた重要な1年と位置づけています。なお、2021年度の売上高が大きく減少したように見えるのは、会計基準の変更によるものであり、実質的には前年並みとなっています。

事業ポートフォリオ

菱沼:事業ポートフォリオです。明治グループの事業は大きく、食品セグメントと医薬品セグメントの2つで構成されています。2025年度の売上高は、食品セグメントが約8割の9,428億円、医薬品セグメントが約2割の2,322億円です。営業利益の比率は、食品セグメントが約7割、医薬品セグメントが約3割となっています。

食品セグメントは、ヨーグルトや牛乳を扱うデイリー事業、チョコレートやグミを扱うカカオ事業、乳幼児ミルクやスポーツプロテインなどを含むニュートリション事業、そしてチーズや業務用商品を扱うフードソリューション事業の4つが主な構成要素です。

なお、海外事業の売上比率は10パーセント程度であり、この拡大が喫緊の課題となっています。

医薬品セグメントは、感染症薬を中心とした国内医薬品事業、海外医薬品事業、そしてインフルエンザワクチンや小児用ワクチンなどを扱うワクチン・動物薬事業の3事業で構成されています。医薬品セグメントの海外比率は28パーセントと、食品セグメントに比べて高い水準です。

食品セグメントの主要製品 国内市場シェア

菱沼:日本国内の市場シェアについてご紹介します。食品セグメントは幅広いカテゴリで展開しており、No.1シェアを持つカテゴリが複数あります。

ヨーグルトでは「R-1」を代表とする機能性ヨーグルト、チョコレートでは「チョコレート効果」などの健康志向チョコレートが市場を牽引しています。また、プロテインや流動食市場でも高いシェアを維持しています。

医薬品セグメントの主要製品 国内市場シェアと海外事業の内容

菱沼:医薬品セグメントについてです。

当社は感染症分野で強みを発揮しており、全身性抗菌剤やインフルエンザワクチンでは国内市場でシェア1位を確保しています。また、予防から治療までのバリューチェーンを有している点が大きな強みとなっており、この感染症領域に経営資源を集中させています。

明治グループの強み

菱沼:明治の強みは、お客さまに寄り添った製品開発や、時代を先取りした付加価値の訴求によって、新市場を創造してきた点にあります。

例えば、チョコレート分野では、本来のおいしさ・楽しさに加え、カカオに豊富に含まれる健康成分であるカカオポリフェノールにいち早く着目し、健康志向のチョコレートとして「チョコレート効果」を開発しました。

乳幼児ミルクにおいては、従来の粉ミルクが主流であった市場に、キューブタイプや液体ミルクという新たな形態の製品を提供し、利便性を格段に向上させました。

医薬品セグメントでは、抗菌薬のトップメーカーとして、医療に不可欠な抗菌薬を安定供給しています。このように、時代ごとのニーズに合った製品を生み出す力が、明治グループの強みと考えています。

食品|営業利益の推移

菱沼:成長戦略についてご説明します。スライドは、食品セグメントの営業利益推移です。グレーや赤の矢印は原材料価格の影響を示しています。

「R-1」など機能性ヨーグルトのヒットや商品の選択と集中によって、私たちは利益成長を続けてきました。近年、原材料費の上昇などコストアップに直面していますが、生産体制の最適化や価格改定を実行し、収益性を回復させています。

2026年度も引き続き原材料費高騰の影響を受けるものの、営業利益の増加を計画しています。各事業の成長戦略については、次のページからご説明します。

1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):原材料の部分で、カカオの相場が1つ重要なポイントかと思います。昨年は相場が高かったものの、現時点では下落しています。相場とP/Lに反映されるタイミングにはタイムラグがあると思いますが、だいたいどれくらいあるのでしょうか?

菱沼:当社グループでは、チョコレートの原料となるカカオ豆については、概ね1年間分の在庫を保有しています。そのため、どうしても払い出しのタイミングでP/Lにはズレが生じます。

今年度も足元の相場は下がっていますが、上期は前年対比で原料費が上昇しています。ただし、下期からは原料費が下がる見通しとなっています。

食品|国内:デイリー事業

菱沼:国内のデイリー事業についてです。スライド左側には、主力商品の売上高推移が示されています。市販牛乳では「明治おいしい牛乳」、ヨーグルトでは「明治ブルガリアヨーグルト」を中心に順調に売上を拡大しています。

2025年度のプロバイオティクスヨーグルトでは、インフルエンザの流行も影響し、主力の「R-1」が好調でした。2026年度は、インフルエンザの流行による「R-1」の特需を見込まず、2024年度並みの売上を計画しています。

スライド右側は、新商品のラインアップです。

「明治おいしい牛乳」ブランドからは「明治おいしいミルクコーヒー」や「明治おいしいミルク紅茶」、「明治ブルガリアヨーグルト」ブランドからは「明治ブルガリアのむヨーグルトLB81 ONE SHOT」を発売しました。

おなじみの強いブランドを活かし、新たなおいしさや楽しみ方を付加していきます。

昨年10月には「明治ヘモグロビンA1c対策ヨーグルト」を発売しました。ヘモグロビンA1cは血糖値コントロールの指標です。この商品は、健康な方の高めのヘモグロビンA1cの低下をサポートする機能性表示食品であり、発売以降ご好評をいただいています。

このように、既存品だけでなく新商品にも新たな価値を創造し、売上拡大を図りたいと考えています。

食品|国内:デイリー事業 生産体制の最適化に着手

菱沼:また、デイリー事業では生産体制の最適化を進めています。拠点の集約による生産効率の向上に加え、新しい生産技術を導入し、さらなる成長の基盤としたいと考えています。

スライド上段に記載の神奈川新工場では、ヨーグルトを製造する工場として、技術革新による賞味期限の延長や新形態商品の生産を計画しています。

スライド下段に記載の北海道新工場は、乳原料を製造する工場です。ここで生産するこれまでにない新しい乳原料を使用して、新たな食のおいしさや健康価値をお届けできるよう取り組んでいます。

両工場ともに先進的なデジタル技術を活用し、生産効率の改善と人手不足の解消を実現していきます。

食品|国内:カカオ事業

菱沼:カカオ事業についてです。カカオ原料の高騰による価格改定が続く中でも、ブランドを活用したマーケティングが奏功し、売上が拡大しています。

スライド右側に示している特許製法を活用した生食感チョコレート「生のとき」や、コラーゲンやセラミドを配合した美容グミ「FRUBI by果汁グミ」などの新商品の育成に取り組んでいます。

今年9月に100周年を迎える「明治ミルクチョコレート」は、アーティストとのタイアップなど、さまざまなマーケティング施策を通じてさらなる売上拡大を目指します。

食品|国内:カカオ事業 独自技術「生ねり製法」による新市場創造

菱沼:生食感チョコレートの新市場創造の挑戦について、詳しくご説明します。

当社が独自特許を取得した「生ねり製法」で製造される「生のとき」は、一般的なチョコレートに比べて口の中でゆっくりと時間をかけて柔らかく溶け、ほどよい甘さと余韻を楽しむことができます。また、常温で長期間保存が可能なため、活用の幅が広いことが特徴です。

これらの特性を活かした商品展開によって、新たな市場を創造するとともに、チョコレート市場全体の活性化に貢献したいと考えています。

現在、約400億円規模である生ねり・ガナッシュ・生チョコからなる「生食感チョコ」市場を800億円規模に拡大し、そのうち約40パーセントのシェア獲得を目指しています。

食品|カカオに関するサステナビリティと事業の融合

菱沼:カカオ原料の持続的な調達に向けた取り組みをご紹介します。

スライド左側の「メイジ・カカオ・サポート」は、2006年に開始した明治独自のカカオ産地支援活動で、ガーナやブラジルなど9ヶ国で展開しています。

直接訪問や外部パートナーとの協働を通じて、カカオ豆の品質向上に向けた技術支援を行うほか、農家の生活向上や教育支援、環境保全など、各地域の課題に応じた支援活動も実施しています。

スライド右側の「ひらけ、カカオ」についてご説明します。こちらは、カカオの持つ可能性を最大化するサステナブルな取り組みであり、2022年から活動を開始しました。

具体的な活動例として、スライド右下に記載されているカカオ豆の皮のアップサイクルがあります。これまで未活用だったカカオ豆の皮をバイオプラスチックにアップサイクルし、商品のトレーとして活用しています。

このように、原産国の支援やカカオの価値を最大化することを通じて、持続可能なカカオ調達の実現を目指しています。

食品|新カカオバリューチェーンへの挑戦

菱沼:生産国との関係強化にも取り組んでいます。

2026年1月、当社CEOの松田がメキシコとエクアドルを訪問し、大統領をはじめとする各国の要人と会談を実施しました。この訪問では、カカオバイオプラスチックの現地ビジネス化を含め、現地のカカオ産業との関係強化につながる対話が行われました。

さらに、栄養失調対策や感染症対策といった社会課題を念頭に、乳幼児ミルクやワクチンの活用など、食と薬の両方を持つ当社だからこそ可能な複合的な協力体制についても話し合いが進められました。

今後も明治らしい活動を通じ、生産国との関係を強化し、カカオの安定調達につなげていきます。

食品|国内:ニュートリション事業

菱沼:ニュートリション事業についてです。近年、「ザバスミルク」の売上が伸長しています。

この商品は、手軽にタンパク質を摂取できるドリンクタイプであり、タンパク質の含有量が多いほど固まりやすいという課題に対し、明治が長年培ってきた乳飲料の製造技術を活用することで、高いタンパク質濃度とおいしさ、飲みやすさを両立させています。

また、1本当たりの価格が粉末タイプに比べて手頃であるため、より多くの方が手に取りやすいことも、売上好調の要因となっていると考えています。

一方、粉末タイプの「ザバス」は競争の激化により、また乳幼児ミルクは少子化の影響で、それぞれ苦戦を強いられていますが、独自価値を改めて見直し、商品改良に取り組みました。

スライド右上の「ザバス BIOPRO」は、従来の「ザバス」が持つ吸収の良いホエイプロテインに、カラダ作りのために選抜した乳酸菌をプラスした新商品です。

また、乳幼児ミルク「明治ほほえみ」には、日本で初めてビフィズス菌を配合しました。今年度は、これらの商品の販売に注力していきます。

スライド右下には、流動食のラインアップの一部が示されています。当社では在宅用と病院用の2つの経路で、高齢化社会を支える豊富な商品を保有しています。

このように、ニュートリション事業では健康や栄養に密接に関わる商品を多く取り扱っています。今後も明治の技術力を活かし、市場に合致した商品を展開していきます。

食品|国内:フードソリューション事業

菱沼:フードソリューション事業で注力しているのはBtoB事業です。BtoBでは2025年度に続き、2026年度も売上拡大を計画しています。

スライド右上には、新たな価値を持つ商品が示されています。

ホイップ時間を短縮することで、ケーキ店の人手不足という課題の解決を実現した植物性クリーム「ルミエージュ」や、先ほどカカオ事業でもご説明した「生ねり製法」を使用して作られた「瑞練(みずねり)」などが代表例として挙げられます。

これらの商品は、差別化された独自の価値により利益率が高く、売上構成の増加に伴い利益貢献も大きくなります。

スライド右下に示した「明治アプリケーションセンター」では、製造ラインに準じた設備を整えています。食品加工業などの取引先に足を運んでいただき、実際に作りながら課題解決やニーズに沿った商品の提案や開発を進めています。

今後もお客さまのニーズに合わせた商品を展開することで、成長を持続させ、事業全体の収益性を向上させていきます。

食品|海外事業

菱沼:成長ドライバーとして位置付けている海外事業についてです。事業は欧米、アジア、中国の3つのエリアで展開しており、2026年度には売上高は増収、営業利益は増益を計画しています。

欧米では、主に米国の菓子事業を中心としています。アジアでは、菓子事業と乳幼児用ミルク事業が中心で、特にチョコレートスナックや粉ミルクが着実に成長しています。

一方で中国では、カカオや乳製品を中心に幅広い事業を展開しているものの、現時点では全体として赤字の状態です。次のページで詳細をご説明します。

食品|海外:中国事業は黒字化に向けて前進

菱沼:中国事業の赤字の要因としては、主にデイリー事業や市販アイスクリーム事業における現地企業との競争激化、経済停滞など、市場環境の変化への対応の遅れが挙げられます。また、当社が反省すべき点も多くあると認識しています。

2025年度末には、構造改革の一環として減損損失を計上しました。上海のアイス工場の稼働停止をはじめとしたさまざまな固定費削減に加え、好調なカカオ事業を中心とした増収効果により、今年度の赤字額は前年度の60億円から8億円まで大きく縮小する計画です。

その中で、スライド右側にあるとおり、中国のカカオ事業は年平均成長率約20パーセントという強い成長を実現しています。

好調の理由は、チョコレート自体のおいしさに加え、カカオと油脂のバランスや、カカオとナッツなどの組み合わせといった、技術力を基盤とした複合型商品の多彩さにあります。今後は、この好調なカカオ事業に経営資源を集中させ、利益の拡大を目指す方針です。

食品|海外:菓子グローバルブランドを核とした拡大

菱沼:海外事業では、先ほど触れた中国を含め、すべてのエリアで菓子が成長ドライバーとなっています。

スライド左側の表は、当社がグローバルブランドと位置付けている各ブランドの生産拠点を示しています。それぞれの生産拠点がある国での販売に加え、輸出も行っています。

「ハローパンダ」は現在、海外のみで販売しているブランドです。スライド右側の画像のように、展開国に合わせた包装形態で販売しています。

スライド右下の商品は、日本では「きのこの山」として親しまれていますが、海外では「Chocorooms」というブランド名で販売しています。

食品|海外:米国を中心にハローパンダの売上拡大中

菱沼:「ハローパンダ」は現在30以上の地域で販売されており、グローバルブランドとして成長を続けています。年平均成長率は25パーセントに達しており、毎年高い成長を維持しています。

スライド右側のグラフは「ハローパンダ」のグローバル売上高を示しています。オレンジの部分は米国での売上を表しており、米国は「ハローパンダ」の売上が最も大きい国です。「ハローパンダ」はチョコとビスケットの組み合わせという独自性が支持を得ています。

現在、供給が追いつかないほど好調な状況にあるため、約100億円を投じて生産ラインの増設を計画しています。稼働は2027年度を予定しており、2030年度には2024年度比で売上を2倍に増やす計画です。生産能力を適切に管理し、持続的な成長を実現させる方針です。

医薬品|営業利益の推移

菱沼:医薬品セグメントの成長戦略についてです。スライドは、営業利益の推移を示しています。ここ10年ほど利益は年々増加し、2022年度以降は毎年過去最高額を更新しています。

グラフ内の矢印は、薬価改定の影響を示しています。薬価は国が定める医療用医薬品の公定価格で、毎年引き下げられることが一般的です。ただし、医療現場での必要性が高く安定供給が求められる医薬品については、国が基礎的医薬品として指定し、薬価が維持または引き上げられる仕組みが導入されています。

グラフの赤い矢印は、薬価改定の影響が利益にプラスとなったことを示しています。当社は安定供給が求められる医薬品を多く保有しているため、2024年度および2026年度においてもその影響がプラスに出ています。

このように、日本での抗菌薬やワクチンなどの薬価改定の影響を受けにくい製品群と、海外の受託製造ビジネスという安定収益基盤により、成長を継続しています。

医薬品|国内事業、ワクチン・動物薬事業

菱沼:ここからは、事業別の成長戦略についてご説明します。まず、国内事業についてです。スライド左側の図にあるとおり、基礎的医薬品に指定されている製品の売上が国内事業の40パーセントを占めています。

具体的な製品としては、注射用抗菌剤や、免疫に関するさまざまな病気の治療薬である免疫グロブリン製剤などがあります。これらの製品の貢献により、基礎的医薬品の売上比率は年々上昇しています。

成長の柱となるのはスライド右上に示されている新規発売品です。

「レズロック」は、白血病患者が移植手術後に発症することのある合併症の治療薬です。日本では2024年5月に発売され、2025年度の売上は2024年度の約3倍となりました。実際に使用している医療機関からも、その効果について高い評価をいただいています。

「ボルズィ」は不眠症治療薬で、2025年11月から大正製薬さまと共同販売を開始しました。「ボルズィ」は即効性がありながらも依存性が少なく、翌日に眠気が続く懸念が少ないことが期待される優れた不眠症治療薬です。

不眠症治療薬市場は、高齢化を背景に年々成長しているため、普及活動に注力し、さらなる成長を目指していきます。

医薬品|抗菌薬の国内安定供給体制構築

菱沼:本日は、感染症領域における重要なトピックとして、抗菌薬の国内供給体制の構築についてご説明します。

抗菌薬は感染症治療に欠かせない医薬品ですが、国内で使用される抗菌薬の原薬調達は海外、特に中国に依存していました。2018年に発生した異物混入による原薬の供給不安を受け、国内での安定供給を確保するため、国家戦略として国産化が決定されました。

当社は、国内で唯一ペニシリン生産に適した条件を備える岐阜工場を保有しており、政府の財政支援を受けて生産設備の強化を推進してきました。そして、昨年12月には約30年ぶりに抗菌薬原料の生産を再開しました。

パートナー企業との連携を進め、最終的にペニシリン原薬の完全国産化が実現するのは2028年以降と見込んでいます。

医薬品|海外:CMO/CDMO事業やワクチンの海外展開が成長ドライバー

菱沼:成長ドライバーと位置付けている海外のCMO/CDMO事業と、ワクチンの海外展開についてご説明します。

CMO/CDMO事業とは、医薬品の研究・開発から製造までを受託する事業です。インドのメドライクが行っている事業であり、当社の海外事業の売上高の50パーセント以上を占めています。グローバル製薬企業からの受託が伸びており、年平均成長率は約10パーセントとなっています。

CMO/CDMO市場は、新興国の経済発展によって安定成長が見込まれており、当社にとっても成長ドライバーの1つと考えています。

スライド右側のワクチンの海外展開について、これまでワクチン供給は主に国内市場を中心に行ってきました。当社では多種多様なワクチンを開発・製造しており、世界の人々の健康に貢献するワクチンも多く保有しています。

輸出や技術提携など、ワクチンを届けるさまざまな手段を検討し、世界の感染症の脅威に対応していきたいと考えています。

Ken:直近でAIがかなり発達してきている中で、医薬品研究へのAI活用について聞くことがあります。この点について、事業への影響を教えていただけますか?

菱沼:AIを活用することで、創薬におけるスピードと網羅性が大幅に向上するとされています。薬の臨床試験そのものは変わりませんが、標的となる病気の原因物質や、それに対応する物質についてより迅速で広範囲なアプローチが可能になります。

化合物の毒性や安全性をAIが幅広く迅速に評価できるようになったことで、創薬の対象範囲やスピードが大幅に向上すると考えています。当社でもこの取り組みを進めれば、大きな利益貢献が期待できるのではないかと考えています。

Ken:これまで人手をかけて工数がかかっていた部分が、AIによって効率化されるというお話ですね。

菱沼:おっしゃるとおりです。従来は探求範囲が限られていましたが、AIを活用することでかなり広げることが可能です。同じ薬でも異なる病気に効く可能性を見出すといった点は、AIが得意とするところです。これは、非常に大きな効果をもたらすと思います。

医薬品|将来の成長基盤となる開発パイプラインの推進

菱沼:成長の基盤となる開発パイプラインについてご説明します。「レズロック」は日本での販売が好調とお伝えしましたが、2026年3月からは台湾とタイでも販売を開始しました。当社は日本とアジア12ヶ国での権利を保有しており、開発申請をさらに進めていく方針です。

新規β-ラクタマーゼ阻害剤「OP0595」は、薬剤耐性対策に有効な製品です。薬剤耐性とは、抗菌薬の不適正な使用などにより細菌やウイルスが抗菌薬に対して抵抗力を持ち、抗菌薬が効きにくくなる、あるいは効かなくなる現象を指します。

日本では年内にも承認される見通しです。この製品も日本だけでなく、市場性のある国や地域をターゲットに申請準備を進めています。

「KD2-396」は、現在販売中の5種混合ワクチンにB型肝炎ワクチンを加えた小児用6種混合ワクチンです。定期接種回数の多いお子さまの負担軽減と接種率向上を目指して開発を進めています。

そのほか、海外で特に需要が見込まれるデング熱ワクチンやMpoxワクチンの開発を着実に進めていきます。

新規事業|食と薬のシナジー事業の創出

菱沼:ここからは、食品・医薬品事業を併せ持っているからこそ可能となる、食と薬のシナジー事業についてご説明します。

いくつかのプロジェクトを並行して進めていますが、今回は新規事業の例として「R-1 EPS」のがん治療サポート食事療法への可能性についてお話しします。「R-1 EPS」は、食品の主力製品である「明治プロビオヨーグルトR-1」に使用されている成分です。

がん治療に使用される医薬品の1つに、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる医薬品があります。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞のブレーキを外してがん細胞を攻撃させる薬ですが、「R-1 EPS」には、この免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を高める可能性があることがわかりました。

2026年4月には、研究結果を世界最大のがん学会である米国癌学会で発表しました。その発表では、これまで動物実験や健常者を対象にした研究で確認した仮説が、実際の肺がん患者においても確認されたという内容をお伝えしました。

今後も、事業化に向けたエビデンス構築やビジネスモデルの探索を推進していきます。これは一例ですが、今後も明治の強みである菌やカカオなどの素材を活用した新規事業を検討し、事業化につなげていきたいと考えています。

Ken:「R-1 EPS」のお話があったと思いますが、このような新規事業で事業化までにどの程度の時間軸を見ればよいのか、教えていただけますか?

菱沼:進捗を見ながら都度判断することになりますが、来年2027年度から新しい中期経営計画が始まるため、この期間内には事業化を進めたいと考えています。

Ken:今後3年から4年ほどのスパンで、ある程度売上が立つという考えでしょうか?

菱沼:事業化に向けて、事業開発の経験があるキャリア採用の人財も揃えていますので、スピード感を持って事業化を進めていきたいと考えています。

持続的な企業価値向上に向けて

菱沼:持続的な企業価値向上に向けて重要視している財務指標についてご説明します。最重要指標はROEと考えています。

2025年度のROEは4.6パーセントで、減損の影響を除くと7.1パーセントでした。ROEを早期に10パーセント水準へ回復させ、その後は海外事業と新規事業の利益のウエイトを高めつつ、15パーセント水準に近づけていきたいと考えています。

海外事業の営業利益が連結全体の営業利益に占める割合は、2025年度で5パーセントでした。2035年度には、海外事業と新規事業を合わせて30パーセントまで高める計画です。

当面の財務戦略としては、成長投資と株主還元のバランスを最適化しつつ、適切な資本構成を追求していきます。

現在の自己資本比率は60パーセント超と、極めて健全な水準にあります。この強固な財務基盤を攻めの施策にも活用し、50パーセントから55パーセントを目安に財務レバレッジを最適化していきたいと考えています。

成長領域である海外・新規事業には負債を活用して積極的に投資する一方で、国内では投資効率を厳格に管理します。

2026年度は構造改革が先行しますが、食品・医薬品セグメントともに海外・新規事業を成長ドライバーとし、計画を着実に実行することで利益成長を実現し、持続的な企業価値向上を目指していきます。

Ken:ROEを早期に10パーセントという水準を目指される中で、ROEの改善に向けて、来期以降キャッシュフローも改善されるのではないかと考えています。その中で、総還元性向の引き上げやその引き上げ余地について、議論があるのかどうかを教えていただけますでしょうか?

菱沼:株主還元の方針については、中期経営計画ごとに見直しを行っています。2026年度までの中期経営計画においては、総還元性向50パーセント以上を継続しています。来期から始まる中期経営計画については現在検討中ですが、現状を上回る水準を考えています。

株主還元の強化

菱沼:最後のテーマとして、株主還元と株主さま向けの活動についてご説明します。まず、配当についてです。当社の株主還元方針は、総還元性向50パーセント以上と継続的な増配を掲げています。2026年度の配当金は5円増配の110円を予定しており、13期連続の増配となります。

優待制度

菱沼:優待制度についてです。当社では、毎年3月末時点で100株以上を保有する株主さまを対象に、所有株式数に応じた明治グループ製品の詰め合わせをお届けしています。商品内容は毎年見直しを行っています。

長期保有株主さまへの優待制度導入

菱沼:新たに導入した長期保有株主さまへの優待制度についてです。3年以上当社の株を継続保有いただいた株主さまには、先ほどご紹介した優待品に加えて「長期保有感謝BOX」をお届けする予定です。

この制度は、当社の成長を信じ、支えてくださった株主さまへ日頃の感謝をより深くお伝えしたいとの思いから導入しました。今後も株主さまに喜んでいただけるような優待品をお届けしていきますので、ぜひご期待ください。

株主さま向けイベントの実施

菱沼:株主さま向けイベントを定期的に開催しています。今年8月には、ミルクチョコレートなどを製造する坂戸工場で見学会を開催する予定です。

今後も株主のみなさまに魅力を感じていただけるイベントを企画していきますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:新しいチョコレート商品と市場創出の取り組みについて

荒井沙織氏(以下、荒井):「原材料高や価格改定への対応が続いていると思います。価格改定後もブランド力を維持し、販売数量を確保するために重視している取り組みを教えてください」というご質問です。

菱沼:明治にしかできない付加価値のある商品や、ブランド力のある商品をお客さまに届けることが重要であり基本だと思っています。

例えば、チョコレート分野では、チョコレートという既存市場は定着していますが、先ほどご紹介した「生のとき」のような新しい食感や生食感を持つチョコレートを創造し、これを提供することで、既存のチョコレートに新たな市場を創造することが可能になります。

その結果、人口が減少している日本においても物量を増やせると思います。これは一例ですが、このような取り組みによって価格改定後も物量を伸ばしていくことに取り組んでいきたいと考えています。

質疑応答:国内食品業界の値上げと今後の戦略について

Ken:「ヨーグルトや牛乳など国内シェアの高い製品が伸長しているとのことですが、今後は数量拡大、単価向上、新商品の投入のどれが売上成長に最も効くと見ていらっしゃいますか?」というご質問です。

菱沼:日本は長い間デフレ経済が続いていましたが、2023年頃からインフレに転じたのではないかと思います。

国内食品の値上げは2023年度以降、毎月のように発表されていますが、それ以前の約20年間はあまり値上げを行ったことがありませんでした。しかし、ここ数年で値上げを実施しています。

正直にお伝えすると、2023年度以降に実施した何度かの値上げによって物量がどうしても減少しています。そのため、業界としてはまず足元では物量をある程度回復させることが重要だと思っています。

一方で、日本は少子高齢化の進行により、全体の市場がどうしても拡大しにくい状況です。そのため、重要なのはシェアを伸ばしていくことと、より高い付加価値を持つ商品や高価格帯の商品を受け入れていただくことだと考えています。

どれが最も重要かという点については、まず物量を少し戻しつつ、付加価値の高い商品によって単価を上げ、金額ベースのシェアを拡大していくことが今後の戦略の中心になると考えています。

質疑応答:健康栄養領域で最も成長が見込まれる市場について

Ken:「『ザバス』や『明治メイバランス』など、健康栄養領域は中長期で需要が伸びる分野と考えています。今後、プロテイン、流動食、乳児向け商品のうち、最も成長余地が大きい領域はどこでしょうか?」というご質問です。

菱沼:現在の状況では、やはりプロテインが挙げられます。日本国内でも健康維持や体調管理、美容などの目的でプロテインの摂取が一般的になりつつあります。一昔前はフィジークの方などが中心で、本格的なアスリートがプロテインを摂取していましたが、現在では一般的になっています。

米国では、いわゆる糖尿病治療薬が別の痩せ薬のような役割を果たす一方で、タンパク質の摂取が必要とされており、世界的にタンパク質市場が拡大しています。この分野が今後大きな成長を遂げる可能性があると考えています。

また、日本は少子高齢化社会のトップランナーであり、高齢者用流動食の市場は今後さらに拡大する見込みです。したがって、プロテインと流動食の2つの分野が、日本国内で大きな成長領域になると思われます。

一方、乳幼児分野では、日本の出生数が現在60万人程度と、ひと昔前の3分の1まで減少しているため、日本国内の市場は縮小しています。このため、国内でのシェア拡大を図るとともに、乳幼児向け製品については海外市場で日本ブランドを展開していきたいと考えています。

Ken:プロテインの分野について、日本人のジム参加率は世界的に見ても非常に低く、3パーセント程度となっています。

しかし、最近ではジム関連の銘柄などを見ても参加率が高まっており、おそらく4パーセントや5パーセントを目指せるようになるのではないかと思います。このため、プロテインの需要は市場として伸びていくと感じています。

最近、私も食事管理をかなり意識するようになりましたが、AIを活用することで食事管理がかなり簡単になっていることを実感しています。例えば、写真を撮るだけでPFCバランスを計算してくれて、「タンパク質が不足している」といった結果が出ます。

そのため、プロテインを1杯、2杯摂取しなければならないと感じる場面が増えており、こうした状況からもプロテイン市場には今後も期待できると考えています。外部環境的にも市場として追い風が吹いていると、今回のお話を聞いてあらためて感じました。

菱沼:おっしゃるとおりです。当社では、プロテインを「ザバス」というブランドで展開しています。

これまでは主にフィットネスやスポーツをされている方、あるいは学生の部活動向けの商品として提供してきましたが、一般の方にも摂取いただけるよう「ザバスミルク」というレディ・トゥ・ドリンク(Ready to drink:すぐに飲める飲料)を先ほどご紹介しました。

特に最近ではスマートフォンで食事を記録すると、「栄養が不足している」といった結果が出ることがあります。このようなタイミングに「ザバスミルク」のようなReady to drink商品がマッチします。こうした美容や健康意識の高い層への広がりは、今後さらに続いていくと思います。

質疑応答:新工場の稼働とその効果について

Ken:「神奈川、北海道の新工場は、コスト削減と新商品の開発のどちらへの効果をより期待されていますか?」というご質問です。

菱沼:こちらは両方です。5つの工場が閉鎖されることで、集約効果が見込まれています。

製造間接費や償却費が増える一方で、スマートファクトリーによる省人化が進むため、約50億円のコストメリットが出ると考えています。

神奈川新工場では、生産技術においても新しい技術を導入します。例えば、ヨーグルトなどの賞味期限が大幅に延長できるようになり、生産効率が上がるだけでなく、さまざまな製品形態にも対応可能となります。

北海道新工場では、2つの工場を1つに集約する効果が見込まれます。特に、国内のどのメーカーも使用していないような新規の乳原料の生産が可能になり、これを社内で使用するだけでなく、国内の他社への販売や、ハラル認定を取得して海外市場への展開も行う予定です。

こちらは、新しい乳原料による付加価値の向上効果のほうが大きいと考えています。

質疑応答:中国子会社の業績改善と価格転嫁について

Ken:「中国子会社の減損計上について、原材料コストの増加などについてはすぐ改善が難しい部分だと思いますが、来期以降の見通しはどのように見ていますか?」というご質問です。

菱沼:中国については、昨年度大きな減損を計上したとお話ししました。不正確な表現かもしれませんが、それによってかなりの課題を解消できたのではないかと思っています。確かに中国でも原材料価格の高騰がありましたが、基本的には日本と同様に価格転嫁を行っています。

ただし、同じチョコレートの価格改定であっても、日本ではトップメーカーとしてプライスリーダーの立場にあり、非常に優位性があるため、他社に先駆けて値上げが可能です。

しかし、中国ではポジションが低いため、実際には半年前後値上げのタイミングが遅れており、これが昨年のマイナス要因となりました。

とはいえ、昨年後半からは価格転嫁が実現できており、もともと需要が旺盛であったこともあり、価格転嫁を進めることでしっかりと利益を出せると考えています。

質疑応答:食品・医薬品セグメントのM&A戦略について

Ken:「シェアを伸ばしていくにあたって、どういったM&Aを考えられていますか?」というご質問です。食品および医薬品セグメントに関して、お考えがあれば教えていただけますでしょうか?

菱沼:事業成長において、M&Aは有効な手段であると考えており、さまざまな可能性を常に模索しています。

医薬品セグメントでも絶対にないと言い切ることはできませんが、どちらかと言えば食品セグメントについては国内の人口減少を背景に、海外展開を重視しています。

先ほどお話ししたように、北米市場ではチョコスナックが好調です。設備増強を進めていますが、それだけではスピードが追いつかないため、米国のビスケット会社やチョコレート会社といった企業のM&Aが中心となる見込みです。

ご質問の意図は、国内市場縮小の中で合従連衡のような動きがあるのかということかと思います。直近では、例えば乳業やチョコレート分野においてそのような動きはすぐには見られないかもしれません。10年後の状況については、現時点では予測が難しいです。

質疑応答:米国市場での「ハローパンダ」の成功背景と今後の展望について

Ken:「ハローパンダ」について、米国での売上は2020年度から約5倍になっていると感じます。たまに米国に行くのですが、似たような商品がけっこう見受けられるようにも思います。それでも、なぜこれほど売れているのかという背景について、具体的に教えていただけますか?

菱沼:米国で受け入れられている理由ですが、米国のお菓子はビスケットならビスケット、チョコレートならチョコレートといった具合で、日本のように組み合わせの商品はあまり見られません。

当社の「ハローパンダ」が好調な理由は、米国事業において20年ほど前にビスケット製造会社のスタウファー・ビスケットを買収し、その販売網を活用している点があります。

「ハローパンダ」はお菓子の棚に並んでいるのに対し、日系企業の他社品はアジアン食品売り場に置かれています。この違いが大きいと考えています。

そのため、スタウファー・ビスケットの商流をうまく活用し、米国のお菓子売り場に商品が並んでいるのがポイントです。

Ken:アジアン食品売り場に置かれる製品は、食べたい人や興味を持つ人が中心となると思いますが、そもそもお菓子棚に置かれること自体が、とても大きな差だということですね。

荒井:保守的な方も多いのでしょうか? 米国のお菓子には手が伸びても、知らない商品には手が伸びにくいということでしょうか?

菱沼:やはり、アジアン食品売り場ではアジア出身の方が主な客層となります。米国には多様なバックグラウンドを持つ人が多いですが、アジアン食品売り場に来る方は限られるのが現状です。

また、「ハローパンダ」が非常に評価されている理由として、米国では小袋形態の商品を大箱に入れて販売していることが挙げられます。米国の小学生や中学生は、日本のようにきちんとお弁当を持って行く習慣があまりなく、親がパンに1個お菓子を付けて渡すことが多いようです。

お弁当と一緒に持たせるお菓子として、ぴったりのサイズ感であるため、箱買いをして毎日お子さんに持たせるという利用が広がり、非常に好調な結果につながっていると考えています。

荒井:御社の他製品を今後米国で販売する際には、その棚を他製品でも活用することは可能でしょうか?

菱沼:可能です。その商流や棚を当社は確保しているため、「Chocorooms」のような商品も同様に展開可能です。この「Chocorooms」は現在日本で製造し輸出していますが、売上がさらに伸びれば現地生産に切り替えることも検討しています。

質疑応答:中東情勢の影響と価格政策について

Ken:「足元では中東の影響が長引きそうですが、どんな対策を考えていますか? すでに影響はなにか出ているのでしょうか?」というご質問です。

菱沼:中東の話は毎日状況が変わるため、現時点ではなんとも予測がつきません。

Ken:直近の2日から3日でも状況がまったく変わるようですね。

菱沼:当社では、ナフサ不足で製品が作れない、または包材の色を減らすなどといった影響は出ていません。また、複数のサプライヤーから調達しているため、現時点で調達できないといった現象も起きていません。少し状況が落ち着いてきたので、大きな心配はないと思います。

しかし、価格の面でいえば、包材を中心に下期以降どうしても上昇していくと思います。まずは商品ミックスなどで吸収を図りますが、吸収しきれない部分については価格転嫁が必要になると考えています。

したがって、下期以降、価格政策の見直しに取り組まなければならないと考えています。

Ken:中東の状況が長引くと、原油高の影響で為替にも響いてくるかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか?

菱沼:現在、中東の影響、為替の影響、そしてエルニーニョ現象などが重なり、食料原料価格が上昇しています。このため、相場、為替、中東のナフサという3つの要因が複雑に絡み合っており、どの影響がどれほどのものか明確ではありません。

今年1月時点では、2026年には原材料価格もやや落ち着くのではないかと当社も業界も見ていました。しかし、2月以降に再び状況が変わり、価格政策が今年後半以降の重要なテーマになると考えています。

菱沼氏からのご挨拶

菱沼:みなさま、本日はご参加いただき、誠にありがとうございました。明治グループは、これまでお客さまや患者さまの気持ちに寄り添った製品開発や、時代を先取りした付加価値の創出を通じて、多くの市場を創造してきました。

今後もお客さまのニーズを常に探り、時代の変化に即した製品をタイムリーに提供できるよう努めていきます。本日のご説明が、当社の将来性を感じていただける機会となれば幸いです。これからもご支援賜りますよう、よろしくお願いします。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:プロテインや機能性食品市場は拡大していますが、明治ブランドとしてどのような差別化を図っていくのでしょうか?

回答:多様な市場がありますが、どのカテゴリーにおいても明治の強みを活かした付加価値商品を生み出すことで差別化し、成長を継続させていきます。

当社では「SAVAS(ザバス)」というプロテインブランドを持っています。現在粉末タイプのザバスは競争激化により苦戦していますが、明治ならではの付加価値を付けた商品をお客さまにお届けすることで差別化をしています。16ページにもありますが「ザバス BIOPRO(バイオプロ)」は従来のザバスが持つ、吸収が良いホエイプロテインに、カラダづくりのために選抜した乳酸菌をプラスした新商品です。乳酸菌に強みを持っている明治だからこそできた商品です。

<質問2>

質問:食品と医薬品のシナジーについて、これまでも取り組んできたものの成果が出ていないのですか? それとも、最近力を入れているのでしょうか?

回答:明治グループは2009年に明治製菓と明治乳業が経営統合し、2011年に食品と医薬品の会社に事業再編をしました。その後、特に食品会社では2つの会社の食品部門を統合することに注力する必要があったためシナジーの創出にまで取り組むことができませんでした。近年はその統合作業が終わり、食品、医薬品ともに利益率も高まってきたことからシナジー事業の創出に本格的に取り組むこととしました。27ページでお話しした「R-1 EPS」のがん治療サポート食事療法をはじめとした食薬シナジー事業については、今後事業化に向けてスピードを上げて取り組んでいきます。

<質問3>

質問:実質的に累進配当になっていますが、累進配当宣言はしないのでしょうか?

回答:株主還元の方針は、中期計画ごとに、営業キャッシュフローや投資の状況を踏まえて策定することにしています。現在の還元方針は総還元性向50パーセント以上と継続的な増配です。来年度から始まる新中計に向けて新たな還元方針を検討中ですが、より強化していきたいと考えています。

<質問4>

質問:今後力を入れていく投資分野は何でしょうか?

回答:食品・医薬品ともに成長ドライバーは海外と考えています。食品は菓子事業、医薬品はワクチンや海外需要が見込まれる製品の開発に力を入れていきます。また、新規事業にも経営資源を振り向ける考えです。国内の既存事業で安定した収益基盤を構築し、食品・医薬品の海外や新規事業での成長を加速させます。

<質問5>

質問:医薬品セグメントなど貴社の売上構成比への影響も大きいと見受けられますが、個人投資家向けには「明治 = 食品」のイメージが強いと思います。この認知ギャップについてどのように考えていますか?

回答:食品はスーパーなどで目にする機会が多い一方、医薬品は医師に処方されるものであり患者さまが直接選択する機会が少ないため、認知に差が生じるのは自然なことと考えています。しかしながら、本日ご説明したとおり抗菌薬原薬の国産化など、社会的意義の高い事業に取り組んでいますので、広報活動を通じて認知度を高めていきたいと考えています。

また、今後、食薬のシナジー事業を展開していく中で、医薬品のノウハウはキーポイントになります。個人投資家のみなさまにも、このような説明会を通じて理解を深めていただけるよう継続的にアピールしていきます。

<質問6>

質問:食品・医薬品ともに強みがありますが、5年後に会社の利益を最も支える事業はどの領域になると考えていますか?

回答:食品も医薬品も国内で安定した収益を創出し、海外で成長する計画を推進しています。

一方、成長のための投資を強化するため、5年後は海外の成長投資フェーズが続いている可能性があります。28ページでご説明したように、2035年度には連結全体の営業利益に占める割合を海外事業と新規事業を合わせて30パーセントまで高めていく計画です。

<質問7>

質問:グミ市場は近年急速に伸び、「果汁グミ」の販売も伸びているものの、カンロなど競合の攻勢が激しく、市場シェアとしては徐々に下がっているように思えます。今後の方針はいかがでしょうか? 投資や新製品投入でシェア奪還を目指すのか、それとも収益性重視であまり無理はしないのでしょうか?

回答:不採算商品の整理などの構造改革を進めたことでシェアが低下しましたが、収益性は高まりました。グミ市場は伸長していますので、明治だからこそできる新商品でシェアの回復を目指したいと考えています。例えば12ページでご紹介した「FRUBI(フルビ) by果汁グミ」はコラーゲンやセラミドを配合した商品です。ロングセラーブランドの「果汁グミ」で培った技術を使いながら美容といった付加価値をプラスしています。

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