※2026年7月21日執筆
以下は、フィスコ・マーケットレポーターのソイキナ・タマラ(X:@web3tama/以下、筆者)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人と連携し、多様な視点から市場や技術動向をお届けしています。
2026年7月、HSK Chainは日本初となる「HashKey Chain Horizon Hackathon Japan」を開催し、その集大成となるDemo Dayを東京都内で実施した。約1か月にわたって開催されたハッカソンには国内外から多くのビルダーが参加し、AI、DeFi、RWA(現実資産のトークン化)、オンチェーン金融などをテーマとしたプロジェクト開発が行われた。当日はエコシステム関係者や開発者、投資家らが集まり、ファイナリストによるピッチに加え、オンチェーン金融の未来やAI時代のWeb3について議論するパネルセッションも開催された。
「金融をWeb3時代へアップグレードする」
イベント冒頭ではHSK Chainによるキーノートが行われた。
HSK ChainはHashKey Groupが開発するEthereum Layer2ネットワークであり、「コンプライアンスを中核に据えた次世代金融インフラ」の実現を目指している。
キーノートでは、「HSK Chainの価値は新しい技術を作ることではなく、伝統金融とオンチェーン経済をつなぐ橋になることにある」と説明。さらに、「業界はもはや『ブロックチェーンが金融を変えられるか』ではなく、『金融がどのようにブロックチェーンを受け入れるか』という段階へ進んでいる」と述べ、今後の金融インフラ像を提示した。
また、資産のトークン化についても、発行や決済の効率化、流動性向上だけでなく、スマートコントラクトによる自動執行やリアルタイムな資産管理など、プログラマブルな金融の可能性を紹介した。一方で、金融機関がオンチェーンへ参入するためには、セキュリティ、規制対応、プライバシー保護、そして実ビジネスで活用できるエコシステムが不可欠であり、HSK Chainはそれらの課題を解決するための基盤として位置付けられた。
オンチェーン金融とAI時代のWeb3を議論した2つのパネル
続いて開催されたパネルディスカッションでは、金融機関やWeb3企業、国内コミュニティの関係者が登壇し、日本市場におけるオンチェーン金融の可能性について議論が交わされた。
パネル1「オンチェーン金融は“使われる金融インフラ”になれるのか」
パネルでは、オンチェーン金融の社会実装に向けた課題として、規制対応やガバナンス、金融機関との協業のあり方が議論された。登壇者は、日本と香港で制度設計には違いがあるものの、金融インフラとして普及するためには、コンプライアンスや利用者保護を前提とした仕組みづくりが不可欠であると指摘した。また、ブロックチェーンは既存金融を置き換えるものではなく、信頼性を維持しながら効率化や新たな価値を実現するための基盤技術として位置付けられるべきとの見解が示された。
パネル2「AIエージェント時代、Web3プロダクトは誰に使われるのか」
第2部では、AIエージェントの普及を見据え、Web3プロダクトのユーザー像や今後のエコシステムのあり方について議論が行われた。AIエージェントがブロックチェーン上で自律的に取引や意思決定を行う未来を見据え、「人が利用するサービス」から「AIも利用者となるサービス」への変化や、それに対応するプロダクト設計について意見が交わされた。また、AIエージェントの活用が進む中でも、信頼性やユーザー体験、コミュニティの役割は引き続き重要であり、人とAIが共存するWeb3エコシステムの可能性について、多角的な視点から議論が展開された。
Demo Dayでは12チームが成果を披露
Demo Dayでは、ハッカソンを勝ち抜いた12チームが最終プレゼンテーションを実施した。登壇したのは、AllScale Agentic Commerce Gateway、Credence、MiuroAI、Mantis、Arcana、Astrail、Helm、Dow Protocol、Recon、TrustRail、The AtlasOS for DeFi、Maneki AIの12チームである。
発表テーマはAIエージェント、ウォレットインフラ、オンチェーンデータ、資産管理、DeFi基盤など多岐にわたったが、全体を通して共通していたのは「実際の金融・ビジネス課題をWeb3技術で解決する」という視点だった。単なる技術デモではなく、社会実装を前提としたサービス設計や、AIとブロックチェーンを組み合わせた実用的な提案が多く見られ、現在のWeb3開発が実装フェーズへ移行していることを印象付けた。
審査の結果、各賞が発表され、優秀チームには賞金とともに、今後の事業化やエコシステムとの連携機会が提供された。HSK Chainは、今回のハッカソンを単発イベントではなく、日本を含むアジアの開発者コミュニティを継続的に支援していく取り組みの一環として位置付けている。
おわりに
AI、RWA、ステーブルコインなど、新たな金融インフラを取り巻く技術が急速に進展する中、今回のHackathonとDemo Dayでは、多くのビルダーがその可能性を具体的なプロダクトとして示した。
キーノートでは、「HSK Chainは伝統金融機関が安心してオンチェーンへ参加できる環境を提供するとともに、開発者やエコシステムパートナーとともに、オープンでコンプライアンスを備えたWeb3金融エコシステムを構築していく」と締めくくられた。
日本市場でもWeb3と金融の融合が現実味を帯び始める中、本イベントはオンチェーン金融が社会実装へ向かう現在地を示す一日となった。
以上