■グリムスの今後の見通し
1. 2027年3月期の業績予想
同社グループは、電力コストの高騰、脱炭素社会の構築といった現在の経済環境を踏まえ、再生可能エネルギーの活用による電力コストの削減を提案することで、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の向上を図っている。2023年3月期より事業用太陽光発電システムの販売拡大を軸とする成長戦略をとっているが、引き続き好調な受注を背景に、今期もさらに事業用太陽光発電システムや蓄電池の販売を拡大する。また、小売電気事業については業績変動に対するリスクヘッジの徹底を図り、安定的なストック収益源として規模の拡大を図ることで、グループ全体の成長につなげる考えだ。さらに、系統用蓄電池事業においては6基の系統用蓄電所が稼働することで、新たなストック収益源を構築する計画だ。
以上の前提に基づき、2027年3月期の連結業績は、売上高37,174百万円(前期比9.5%増)、営業利益7,900百万円(同10.5%増)、経常利益7,928百万円(同8.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,376百万円(同9.8%増)と増収増益を予想し、売上高及び営業利益は今期も過去最高の更新を目指す。同社グループの市場環境は、高成長が続く見通しである。また、期初の業績予想は保守的な傾向が強く、通期業績は最終的に期初予想を上回る可能性が高いと考えられる。
2. セグメント別業績予想
エネルギーソリューション事業では、2027年3月期には売上高13,876百万円(前期比5.6%減)、営業利益(全社費用控除前、以下同)5,390百万円(同7.1%増)、営業利益率は38.8%(同4.6ポイント上昇)を計画する。主として中小企業の工場等の屋根に太陽光発電システムを設置し、創った電気を工場で自家消費することで電力コストを削減する。蓄電池のクロスセルを強化することで、顧客のライフタイムバリューを高め、着実な成長を図る。再生可能エネルギーの拡大を背景に需要が高まる系統用蓄電池事業においては、6基の系統用蓄電所が順次稼働開始する予定であり、需給調整市場での収益を主軸にストック収益基盤を構築する計画だ。売上高が減少するのは一般消費者向けビジネスから撤退するためであり、3,025百万円の減収の影響があるが、その一方で、利益率の高い法人向けビジネスにシフトすることで利益率が改善して増益を見込む。
小売電気事業については、売上高23,297百万円(前期比21.1%増)、営業利益3,243百万円(同12.4%増)で、営業利益率13.9%(同1.1ポイント低下)を計画する。電力市場価格の動向に不透明性があるものの、独自燃調と相対電源によるリスクヘッジ策が再現できており、安定的なストック収益が得られると予想している。また、積極的な人材投資を行うことで、前期より供給口数の増加ペースを高め、中期的な観点で成長を図る計画である。
小売電気事業の安定ストック化を目指す戦略としては、第1に「負荷率の低い顧客を選別受注」することで基本料金の割合が上がるため、1kWh当たりの基本料金が大きくなり、収益性が向上する。第2に、「再現性の高いリスクヘッジ策」を取っていることで、前期と同様に同社が顧客転嫁せずリスクを負っている割合よりも多くの割合を相対電源と先物でリスクヘッジ済みのため、市場価格が高騰しても「売上増加>原価増加」となり、また下落しても「売上減少<原価減少」となる。2027年3月期の市場環境は、中東情勢により市場価格が高騰しているが、通期にわたってリスクヘッジ済みである。
エネルギーソリューションは高収益と高成長を、小売電気は安定成長を目指す
3. 成長戦略
同社グループでは、以下のような成長戦略を計画している。
(1) エネルギーソリューション事業
エネルギーソリューション事業では、独自の顧客満足度の高い提案営業を進めることで、高収益と高成長を実現する。すなわち、事業用太陽光発電システムを販売の中心として持続的な拡大を図る。主として中小企業顧客の工場の屋根に太陽光発電システムを設置し、作った電気を工場で利用(自家消費)してもらうことで、電気を購入するよりもコストを低く抑える提案を行う。同社グループが強みを持つ中小企業をメインターゲットとすることで差別化を図り、受注の安定と高い収益性を目指す。また、人的リソースを投入するほか、他社との提携も積極的に推進する。さらに、今後は余剰電力の有効活用のために蓄電池とのセット販売も推進する計画である。
事業用太陽光のターゲティング戦略としては、今後、第7次エネルギー基本計画における目標に従って自家消費型の太陽光発電が大幅に拡大する見通しの中、中小企業をターゲットに低圧市場で独自の成長を実現する計画だ。すなわち、同社グループのように、太陽光の知見・実績が高く、中小企業への営業を得意とする企業は少ないと考えられるからだ。大手企業では、日本の商慣習上、代理店制度などを活用し、リテール営業を直接行わないことも差別化の背景にある。また、同社グループは、中小企業の顧客基盤があるが太陽光の知見が少ない企業とのアライアンスも推進していく計画である。
事業用太陽光のターゲティング戦略
事業用太陽光が拡大すると見る背景には、東日本大震災以降、電気料金の高騰が継続しており、太陽光導入による顧客の経済メリットが傾向的に拡大していることが挙げられる。中小企業に大幅な電力料金の削減を実現させる事業用太陽光発電システムが、長期的に同社グループの業績拡大をけん引する見通しだ。すなわち、低圧電力の顧客は電気を購入すると40円以上/kWhだが、事業用太陽光発電システムを導入することで10円台前半/kWhで電気を創ることができ、大幅な電気料金の削減を享受することができる。同社のターゲットは低圧顧客であるため、顧客の経済メリットは大きく、顧客満足度は高いものと考えられる。
事業用太陽光の潜在市場について、同社グループでは次のように考える。同社グループのターゲットは中小企業で主に製造業(工場等)であるが、中小企業の裾野は広く、潜在需要は膨大である。主に事業者が契約する低圧電力(200V)契約は約600万件であり、ほとんどは中小事業所と推測される。その中で、屋根の形状等から約600万件の約20%が選別対象と想定し、さらにこの半分を顧客候補と想定すれば約60万件になる。同社グループの累計実績は約6,300件であるが、顧客候補に対する市場開拓率は依然1.0%に過ぎない。ここでは大手との競合が存在せず、同社グループが先行的な立場と考えられ、今後のシェア拡大の余地は大きい。以上から、事業用太陽光事業は、長期にわたって同社グループ業績をけん引すると見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)