■ウェルネス・コミュニケーションズの業績動向
1. 過去の業績推移
過去の業績動向(2020年3月期~2026年3月期)を見ると、売上高、経常利益ともに順調に拡大しており、CAGRは売上高で11.7%、経常利益で16.5%となっている。健康診断出荷件数、「Growbase」ID数ともに右肩上がりとなっている。特に「Growbase」ID数の伸びは大きく、2020年3月期から2026年3月期までのCAGRは22.9%と高い成長を遂げている。
2. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高で前期単体実績比5.1%増の14,778百万円、営業利益で同6.9%増の1,186百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同5.9%増の822百万円となり、9期連続の増収増益、8期連続の過去最高益を記録した。「Growbase」の価格改定戦略の推進やプラットフォーム化投資の加速、高度人材の採用強化、複数のM&Aの実行など、中長期の成長を見据えた積極的な投資を行いながらも、主力事業の成長により基礎収益力が高まり、不透明な経済環境にもかかわらず着実な成長を遂げることができた。
増収の主因は、主要事業における顧客基盤の着実な拡大である。「Growbase」の契約企業グループ数は前期末比30グループ増加して262グループとなったほか、「ネットワーク健康診断サービス」の利用者数は同0.94万人増の39.8万人となった。売上総利益は、売上高の増加に加え、BPR/DX推進・AI活用によるコスト削減による生産性向上が寄与し、前期比10.8%増の3,109百万円と2ケタ増益となり、売上総利益率は21.0%と前期比1.1ポイント改善した。
一方、営業利益の伸びが1ケタにとどまったのは、前述した成長投資の影響により販管費が前期に比べ225百万円増加し1,923百万円となったことが要因である。もっとも、M&Aにかかる一過性費用を除いた調整後営業利益は前期比11.1%増の1,242百万円、EBITDA※は同12.1%増の1,540百万円と、それぞれ2ケタ成長となっている。
※ EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費+M&Aにかかる一過性費用。
(1) 健康管理クラウド事業
売上高で前期比23.7%増の1,523百万円、売上総利益で同24.7%増の1,269百万円、営業利益で同6.3%増の767百万円となり、売上高、売上総利益は前期比20%超の成長となった。これは、「Growbase」の直販新規営業が好調で、導入企業グループ数が増加したことによる。対照的に、営業利益の伸びが1ケタにとどまったのは、受注拡大に備えたカスタマーサクセス体制の強化など先行投資が利益率を抑制した。
2026年3月期末の「Growbase」の契約企業グループ数は262グループ(前期末比30グループ増)、ID数は183.6万ID(同9.2万ID増)、第4四半期末のARRは1,223百万円(同76百万円増)となり、いずれも順調に拡大した。
(2) 健診ソリューション事業
売上高は前期比3.8%増の13,018百万円、売上総利益は同7.3%増の1,798百万円、営業利益は同29.6%増の379百万円となった。新規顧客の獲得やサービス利用者数の拡大による増収に加え、BPR/DX推進やAI活用による外注費削減などが利益改善に寄与した。
2026年3月期末の「ネットワーク健康診断サービス」の契約企業グループ数は226グループ(前期末比10グループ増)、サービス利用者数は39.8万人(同0.94万人増)と堅調に推移した。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期の財務状況は、資産合計が前期末単体実績比4,546百万円増加の9,729百万円となった。主な増加要因は、上場に伴う資金調達により現預金が2,473百万円、あしたのチームの買収等によりのれんが増加し無形固定資産が1,883百万円増加したことによる。
負債合計は前期末単体実績比2,171百万円増加し3,896百万円となった。主な増加要因は、有利子負債が1,445百万円、契約負債が543百万円増加したことによる。純資産合計は同5,832百万円と同2,375百万円増加した。配当金の支払428百万円がマイナス要因として働いたものの、上場による資金調達等により資本金及び資本準備金がそれぞれ893百万円増加したことに加えて、親会社株主に帰属する当期純利益822百万円を計上したことによる。
経営指標については、自己資本比率は59.9%と高水準を維持しているほか、流動比率も225.0%と健全と考えられる水準をキープしており、財務健全性は高い。
収益性について見ると、営業利益率は前期の7.9%から8.0%へ改善した。一方、ROEは上場に伴う資金調達により前期の24.5%から14.1%へ低下した。既存事業でのAI活用による生産性向上や事業ポートフォリオ拡充による利益拡大が予想されることから、中期的に改善余地があると考えられる。
4. キャッシュ・フローの状況
2026年3月期末における現金及び現金同等物は5,260百万円となり、前期末比2,473百万円増加した。営業活動によるキャッシュ・フローは1,099百万円の収入となり、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上が主な増加要因となった。投資活動によるキャッシュ・フローは111百万円の支出となり、主として無形固定資産の取得や事業譲受による支出が影響した。財務活動によるキャッシュ・フローは1,485百万円の収入となり、配当金支払いがあったものの、上場に伴う資金調達などが上回った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)