マネーボイス メニュー

新たなオイルパワー(2)【中国問題グローバル研究所】

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

※この論考は7月31日の< The New Oil Power>(※2)の翻訳です。

新たなオイルパワー
石油産業への投資の不足により、過去数十年にわたりイランの原油輸出は生産能力をはるかに下回るレベルにとどまっていた。1979年に政権を手にして以来さまざまな形の制裁が行われ、イランにとって友好国といえる相手は少なかった。中国、ロシア、イラン、北朝鮮から成る国家ネットワーク「CRINK」の中で、イランは文字どおり中核を成す国であった。米国の世界的影響力を弱めるという共通目標を持つCRINKは、加盟国以外に対して何ら積極的な活動をしていないが、加盟国同士の相互援助も限定的なものにとどまっていた。しかしそうした状況は近年変化しており、その契機となったのがドローン技術を初めとするイランからロシアへの多大な支援であった。だがCRINKが実際に意味のある枠組みだという考えを中心で支えるのは中国である。国連や米国の制裁にもかかわらず中国はイラン産原油の最大顧客であり、「影の船団(シャドーフリート)」と呼ばれるタンカーの一団を活用してイランからの原油輸入を続けている。公的には中国は2022年以降イランから原油を購入していないことになっているが、非公式の購入は数百億ドルに達するとも推定されている。

中国は世界最大の原油輸入国であると同時にホルムズ海峡経由で輸送される炭化水素の大口顧客であり、今回の海峡封鎖であまり影響を受けていないことに多くの者が疑問を抱いている。中国は経済への大きな影響なく1日当たり数百万バレルの輸入削減に成功した。他国と同様、中国は平時の生活を続けるために大量の備蓄を取り崩す一方、世界的な原油価格上昇圧力の削減も図っているとみられている。だが中国の地上貯蔵施設はほぼ満杯であるため、そうした仮定すら定かではない。中国には秘密の備蓄があるのだろうか?だが現在明らかなのは、中国のパートナーであるイランが代理勢力であるイエメンのフーシ派を通じてホルムズ海峡およびバブ・エル・マンデブ海峡を支配していることだ。今や中国が両海峡を支配しているというのは言い過ぎだろう。中国は市場価格に比べてかなりの安値でイラン産原油を購入しているものの、イラン経済にとっては重要な買い手だ。中国政府はイラン指導部に指示をして従わせているわけではないが、多大な影響力を持つことは確かで、その構図は今後も変わらないだろう。中国は好むと好まざるとにかかわらず、将来の湾岸地域で主導的役割を担う存在になる。2023年、中国はサウジアラビアとイランを交渉の席に着かせて外交関係の再構築に合意させることに成功したが、今後待ち受けている問題はずっと困難である。イランは今回の紛争を通じて近隣諸国とその石油関連設備に積極的に攻撃を仕掛けている。サウジアラビアへの攻撃は歴史的に長く、イエメンの内戦は事実上イランとサウジアラビアの代理戦争である。湾岸地域における米国のプレゼンスが縮小するか、事実上無視されるようになれば、湾岸諸国は間違いなく中国の積極的な関与を求めるだろう。中国にとってこれは経験したことがなく意図もしていない事態だ。湾岸地域は依然として弱い国家の寄せ集めであり、炭化水素により多大な富を有しながらも、経済的不平等と民意が反映されない貧弱な政治に悩まされている。

中国が湾岸地域で存在感を増すにつれ、他のアジア諸国にその連鎖的影響が及んでいる。日本や韓国のような国々は湾岸地域から輸入する石油に大きく依存しており、中国が湾岸地域への関与を強める様子に穏やかではいられない。これらの国々は自国のエネルギー供給が中国の影響下に置かれる状況への対抗策を考えざるを得ない。その解決策の1つが中東以外の輸入先の確保だが、もう1つの解決策として、あらゆる交渉で軍事的プレゼンスを発揮できる海軍力増強がある。東アジアで海軍力の増強が進めば、中国もすでに巨額になっている軍事予算を増やさざるを得なくなり、地域の緊張は一層高まるだろう。ホルムズ海峡の通行料徴収が台湾海峡やマラッカ海峡で起こることはないと断言できる者はいるだろうか?そうした状況はにわかには信じ難いかもしれないが、イラン戦争を単なるトランプ政権の失策として片付けるだけでは済まず、可能性はもはや否定できない。世界的な航行の自由を強制する強い意志も能力もなく存在感が低下した米国は、他国が同様の通行料制度を採用しても阻止できないかもしれない。それは必ずしも金銭的な制度とは限らず、自国にとって好ましくない国と往来する船舶を制限するような形かもしれない。旧来の慣習はもはや守られなくなる。

中国は政治的交渉の手段として貿易を積極的に活用しており、極めて緊密な貿易相手国であっても例外ではない。日本、韓国、オーストラリアは、中国がごく些細な口実で貿易を制限することがある国だと身をもって経験している。石油についても同じことが起きるのではないだろうか?例えば、中国は台湾問題に関して自国と同調する国々に対して優遇措置を提供するようイランに働きかけるのではないか?

パックス・アメリカーナの終焉は人々が思っていたより早く訪れた。トランプとその支持者たちはグローバルリーダーシップという重荷から解放されたがっているのかもしれないが、彼らもその子孫たちも、新たな世界ははるかに危険なものになり、米国が依然として関与する必要があることを思い知らされるだろう。

中国指導部は湾岸地域という泥沼で身動きが取れなくなっているトランプの姿を嬉々として見ているだろうが、今や中国は無干渉かつ経済中心の外交術だけでは立ち回れない大きな役割を担うことを求められている。中国は中東の緊張を緩和させる解決策を有しておらず、数十年にわたり成長を続けながらも近隣のアジア諸国と友好関係を築けていない。中国が今後、繊細かつ責任ある役割を担えるかどうかは疑問が残ると言わざるを得ない。

混乱状態のホルムズ海峡(写真:ロイター/アフロ)

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/7464

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。