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セルシス:「SaaSの死」とは一線を画すデジタル創作ツールのグローバルトップ、クオリティグロースで配当付き

セルシスは、デジタルコンテンツクリエイター向けのソリューション開発・販売を中心として、クリエイターエコノミー市場のコンテンツ制作と流通にかかわるサービスを提供する企業である。2026年12月期第2四半期の売上高は5,563百万円(前年比17.4%増)、営業利益は2,221百万円(同44.8%増)と大幅な増収増益で着地、主要な収益指標において過去最高を更新した。同時に通期業績予想と配当予想も上方修正しており、売上高は事前予想となる9,963百万円から前期比14.1%増の10,810百万円、営業利益は同3,317百万円から同34.8%増の4,000百万円へと変更されている。中期経営計画の営業利益は見直し中だが、現状の成長ペースを考慮すれば、株価に割安感がある。「SaaSの死」を巡る懸念の中で、市場で一時的に同一視され調整した株価は、再び高値を突破する勢いとなっている。

同社は事業体制を「クリエイターサポート分野」と「クリエイタープラットフォーム分野」の2分野体制としており、主力プロダクトであるイラスト・マンガ・アニメ制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の開発・販売はクリエイターサポート分野が担っている。

CLIP STUDIO PAINTは、日本国内の漫画家使用率95%、アニメ制作現場使用率82%と圧倒的な数値を誇る。11言語に対応するこのアプリは、海外ユーザー比率が約8割、世界最大級のイラストSNSであるPixivでの利用シェアは63%で、累計出荷本数は約6,700万本にのぼる。同社のようにクリエイター向けのイラスト・アニメ制作アプリを開発・販売している企業には、イラスト(デザイン)分野だけを切り出した場合、アイビスやオーストラリアのサベージインターラクティブ社、米国のアドビ社があるが、同社を含め各社がターゲットとする顧客層や利用端末が異なっている。また、複数社のアプリを併用するクリエイターも多く、必ずしも競合としてシェアを奪い合う関係ではないと言える。

アドビ社の調査をもとに同社が推計した世界のデジタルクリエイターの市場規模は、1.3億人。一方、CLIP STUDIO PAINTのサブスクリプション利用契約者数は約100万人(2026年6月末時点)であり、市場には十分な成長余地が残っている。この未開拓市場での顧客開拓のために、同社は3つの重点施策に取り組む。ひとつ目の施策は、タイやインドネシア、ブラジルなどの新興国をメインターゲットとした、グローバル展開の強化による新規ユーザーの獲得だ。2つ目の施策は、若年層・ライトユーザーの取り込むためのモバイル環境での競争力強化。そして、3つ目の施策は、ユーザーコミュニティサービスの活性化による継続利用率の向上となっている。

同社は、2027年12月期を最終年度とする中期経営計画(中計)を公表、最終年度の計画数値として売上高107億円、営業利益33億円、ROE30%以上を掲げた。2026年12月期第2四半期における好調な業績進捗を受けて通期業績予想を上方修正したことにより、中計の売上高および営業利益目標は1年前倒しで達成する見込みとなり、同社は2027年12月期の目標値の見直しを予定している。中計における事業面での重要な施策のひとつは、サブスクリプション契約の増加である。サブスクリプション契約は、買い切り版の販売に比べ短期的な収益性は低くなる。しかし、新規ユーザーにとっては利用開始の敷居が下がるとともに、継続利用によるストック型の収益源となることが見込まれる。中長期的な事業成長を支えるために欠かせない、重要なイニシアティブと言えよう。2022年12月期には35%だったサブスクリプション契約の売上構成比は、2026年12月期第2四半期で54.6%へ上昇しており、2027年12月期にはこれを69%まで引き上げることを目指す。重要KPIとしているARR(サブスクリプション契約から1年間で得られる収益)は、 2026年6月時点で63億円(前年同月比30.7%増)に達しており、2027年12月期の77億円に向け順調に拡大を続けている。

同社は事業再編を実施、CLIP STUDIO PAINTを中心としたアプリやサービス展開をする「クリエイターサポート分野」とクリエイターエコノミー市場での新サービスを創出する「クリエイタープラットフォーム分野」の2分野体制とした。このクリエイタープラットフォーム分野における、新サービスの開発・提供が、中計におけるもうひとつの事業面での柱だ。クリエイターエコノミー市場は、2029年には46兆円まで成長すると推計されている。同社は既存事業で培った世界中のクリエイターからの信頼と流通ソリューション資産を活用し、この巨大市場での新サービスを開発・提供、創作活動の活性化と事業の拡大を図る。「クリエイタープラットフォーム分野」においては、2026年以降のリリースに向けて「クリエイターのマネタイズを支援するサービス」や「ユーザーコミュニティ強化のための新サービス」といった新サービスの企画・開発を継続している。

同社は株主還元にも積極的であり、11期連続となる増配を予定している。2026年12月期の1株当たり年間配当金は、事前予想から14円増加(中間2円+期末2円+創立35周年記念10円)して前期比16円増の52円となる。主力のCLIP STUDIO PAINTは、世界的なユーザー基盤と高いブランド力を背景に、今後も安定した成長が見込まれる。加えて、グローバル市場や新サービス領域における積極的な投資は、中長期的な売上の複線化を進めるうえで極めて重要な布石だ。収益性の高いサブスクリプションモデルへの移行も順調に進んでおり、ARRを中心とした成長指標の伸長が株価の新たなドライバーとなる可能性は高い。拡大するクリエイターエコノミー市場を取り込む次の成長局面において、有望なポジションにいる同社の展開には注目しておきたい。

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