■クラボウの決算概要
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.6%減の143,758百万円、営業利益が同11.0%減の9,182百万円、経常利益が同6.1%減の11,071百万円、親会社株主に帰属する当期純利益(以下、最終利益)が同42.8%増の12,876百万円と減収減益(最終利益を除く)となったが、計画を上回る利益水準を確保した。
売上高は、AI用途以外の半導体市況の回復遅れなどにより主力の高機能樹脂製品が軟調に推移した「化成品事業」が減収となった。また、構造改革を進める「繊維事業」についてもカジュアル分野の苦戦により落ち込んだ。一方、「環境メカトロニクス事業」は、FA設備、鉄道業界向け検査装置、ウェハー洗浄装置などが順調に伸びた。また、「食品・サービス事業」及び「不動産事業」は総じて堅調に推移した。
利益面でも「化成品事業」における高機能樹脂製品の減速、並びに「繊維事業」での構造改革費用などにより減益となった。もっとも、利益率の高い「環境メカトロニクス事業」の伸びや「食品・サービス事業」及び「不動産事業」の底上げ、第4四半期に入ってからの高機能樹脂製品の巻き返しなどにより、2回目の増額修正予想をさらに上回る利益水準を確保することができた。なお、最終利益が大幅な増益となったのは、政策保有株式の売却益(約64億円)の計上によるものであり、過去最高益を更新した。
キャッシュ・フローの状況については、高水準の収益計上や運転資本の減少により営業活動によるキャッシュ・フローが大きくプラス(14,586百万円)となった。投資活動によるキャッシュ・フローも政策保有株式の売却(プラス)が設備投資など(マイナス)を上回りプラス(1,366百万円)となった。財務活動によるキャッシュ・フローは借入金の返済や自己株式取得、配当金の支払いにより大きくマイナス(-15,806百万円)となった。以上から、現金及び現金同等物の残高は前期末比341百万円増の15,499百万円となった。
財政状態については、投資有価証券の増加などにより、資産合計は前期末比5.9%増の201,844百万円となった。なお、政策保有株式の売却を進めたにもかかわらず、投資有価証券が増加したのは、株価上昇の影響(簿価の洗い替え)によるものである。一方、自己資本についても、株価上昇に伴うその他有価証券評価差額金(投資有価証券含み益)の拡大や利益準備金の積み増しが、社外流出(自己株式取得及び配当金の支払い)を上回り、前期末比10.3%増の132,193百万円に増加した。その結果、自己資本比率は65.5%(前期末は62.9%)に上昇した。一方、資本効率を示すROEについても、政策保有株式の売却益を含む利益の積み上げにより10.2%(前期は7.6%)に改善した。
各事業の業績は以下のとおりである。
(1) 化成品事業
売上高は前期比5.1%減の62,654百万円、セグメント利益は同17.4%減の4,154百万円と減収減益となった。売上高は、第3四半期まで続いたAI用途以外の半導体市況の低迷により「高機能樹脂製品」が軟調に推移したことや、前期に中国子会社を譲渡した影響により減収となった。もっとも、「高機能樹脂製品」は第4四半期から回復傾向にあるほか、「機能フィルム」は太陽電池向けが堅調に推移し、半導体製造関連領域での採用も着実に増えつつある。「産業マテリアル」についても、中国子会社の譲渡による影響を除けば、自動車フィルター向け不織布や断熱材の受注が順調に伸びており、各所でプラスの材料も見られる。利益面では、「産業マテリアル」の構造改革や生産性改善に取り組み、一定の成果を上げたものの、収益性の高い「高機能樹脂製品」の落ち込みによりセグメント利益率は6.6%(前期は7.6%)に低下した。
(2) 繊維事業
売上高は前期比10.8%減の43,276百万円、セグメント損失は897百万円(前期は75百万円の利益)と減収減益となった。減収となったのは、「カジュアル」が大口顧客からの受注減により国内外ともに大きく落ち込んだことが主因である。一方、「糸」は、生産トラブルによりブラジル子会社が苦戦したものの、原料改質技術を活用した高機能コットン糸「NaTech」などの差別化原糸が堅調に推移した。「ユニフォーム」についても「Smartfit」のユニフォームアパレル向け製品が好調であった。利益面では、減収による収益の押し下げに加え、一時的な構造改革費用(安城工場の閉鎖に伴う費用)の発生により大幅な減益(セグメント損失の計上)となった。なお、安城工場閉鎖は2025年7月末に完了している。
(3) 環境メカトロニクス事業
売上高は前期比3.5%増の22,716百万円、セグメント利益は同15.7%増の3,867百万円と増収増益となった。売上高は、米国の関税政策などの影響で「ライフサイエンス・テクノロジー」の撹拌脱泡装置などが減速したが、半導体製造関連領域に向けた液体成分濃度計やウェハー・フィルター洗浄装置などの商材が堅調に推移し、「エレクトロニクス」「エンジニアリング」の業績を押し上げた。利益面でも、増収による収益の押し上げに加え、利益率の高い案件が寄与し大幅な増益となり、セグメント利益率は17.0%(前期は15.2%)と大きく改善した。
(4) 食品・サービス事業
売上高は前期比6.6%増の11,145百万円、セグメント利益は同22.1%増の885百万円と増収増益となった。「食品」は即席麺具材の拡販が順調であった。「サービス」ではホテル関連が旺盛なインバウンド需要を背景に宿泊、レストランが順調に伸びたほか、宴会需要も回復傾向をたどった。利益面でも増収に伴う固定費軽減効果により、セグメント利益率は7.9%(前期は6.9%)に改善した。
(5) 不動産事業
売上高は前期比6.5%増の3,965百万円、セグメント利益は同2.5%増の2,299百万円と増収増益となった。賃貸物件の新規開店が業績の底上げに寄与した。セグメント利益率も58.0%(前期は60.3%)と高い水準を維持した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)