■要約
1. 事業内容
クラボウは、1888年創業の大手繊維メーカーである。創業以来、常に時代の先を見据えながら、新しい価値の創造に挑み続けてきた。現在は、暮らしを支える繊維、自動車、住宅、バイオメディカル、食品や、産業を支えるエレクトロニクス、半導体、環境プラントなど幅広い分野に事業を展開している。また、創業時より社会貢献活動に積極的に取り組んできた実績があり、今後もサステナビリティを意識した事業活動を進め、健康、快適、環境への配慮などをテーマとした商品・技術開発を追求し、より良い未来社会の創造に向けて貢献していく。前期よりスタートした中期経営計画「Accelerate’27」では、成長性が期待できる注力事業に経営資源を集中し、事業ポートフォリオ改革をさらに加速する方針だ。
2. 価値創造プロセス
同社の価値創造プロセスは、蓄積してきた技術やノウハウ、人財などの経営資源を社会課題の解決や成長市場へと展開し価値を創出するものである。これまでの歴史を振り返っても、樹脂加工技術を自動車部材や住宅用建材へと展開した化成品事業、さらには染色工程での「色」制御の自動化から色彩管理及び検査・計測へと広がったエレクトロニクス事業(環境メカトロニクス事業)など、これらは祖業である繊維事業から派生したものである。また、不動産事業の安定収益や技術研究所を中心とするR&D体制なども価値創造を支えている。現在は、半導体製造関連市場、ライフサイエンス・テクノロジー領域(自動化・制御装置市場、メディカル市場、食品市場などで構成)、高機能フィルム、ロボットビジョンといった収益性が高く成長が見込める分野へ経営資源を集中し、社会課題の解決と持続的な成長を同時実現する価値創造ストーリーを描いている。
3. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.6%減の143,758百万円、営業利益が同11.0%減の9,182百万円と減収減益となったが、利益面では計画を上回る水準を確保した。売上高は、AI用途以外の半導体市況の低迷により高機能樹脂製品が軟調に推移した「化成品事業」が減収となったほか、構造改革を進める「繊維事業」についてもカジュアル分野の苦戦により落ち込んだ。一方、「環境メカトロニクス事業」は、FA設備、鉄道業界向け軌道検査装置、ウェハー洗浄装置などが順調に伸びた。また、「食品・サービス事業」及び「不動産事業」は総じて堅調に推移した。利益面でも「化成品事業」における高機能樹脂製品の減速、並びに「繊維事業」での構造改革費用などにより減益となった。もっとも、利益率の高い「環境メカトロニクス事業」の伸びや第4四半期に入ってからの高機能樹脂製品の巻き返しなどにより、2回目の増額修正予想をさらに上回る利益水準を確保することができた。また、政策保有株式売却益(約64億円)の計上により親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益を更新した。
4. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の業績について同社は、売上高を前期比7.1%増の1,540億円、営業利益を同22.0%増の112億円と見込んでいる。売上高は、「化成品事業」「繊維事業」「環境メカトロニクス事業」の主力3事業がそれぞれ伸長する想定である。「化成品事業」は特に半導体市況の回復・拡大を背景とする高機能樹脂製品の伸びが増収に大きく寄与する。また、「繊維事業」はカジュアル分野での回復を、「環境メカトロニクス事業」では撹拌脱泡装置の回復やロボットビジョンの拡販などを見込んでいる。利益面でも、収益性の高い高機能樹脂製品の伸びや「繊維事業」の構造改革効果(黒字回復)により大幅な増益を実現する。年間配当(株式分割考慮前※)は前期比24円増配となる1株当たり331円を予定している。
※ 2026年10月1日に株式分割を予定(1株を5株に分割)。
5. 中期経営計画「Accelerate’27」の基本方針
中期経営計画「Accelerate’27」(2026年3月期~2028年3月期)は「長期ビジョン2030」※(2020年3月期~2031年3月期)の第3ステージにあたり、「高収益事業の成長加速と経営資源の効率的な活用による企業価値の向上」という基本方針の下、半導体製造関連やライフサイエンス・テクノロジー領域などを注力事業とする事業ポートフォリオ改革をさらに加速し、最終ステージでの仕上げにつなぐ考えだ。最終年度(2028年3月期)の連結売上高1,650億円、営業利益130億円を目標に掲げ、営業利益率は7.9%(2025年3月期比1.1ポイント上昇)に改善を図る。加えて、資本収益性を重視した資源配分と財務・資本政策の実施によりROICを7.9%(同2.4ポイント上昇)以上、ROEを10.0%(同2.4ポイント上昇)以上に高める計画だ。また、株主資本配当率(DOE)4%、及び3年間で200億円の自己株式の取得を目標値として設定している。
※ 2030年の目指す姿として、「イノベーションと高収益を生み出す強い企業グループ」を掲げている。
■Key Points
・2026年3月期は減収減益となるも、計画を上回る利益水準を確保し、親会社株主に帰属する当期純利益は政策保有株式の売却益により過去最高益を更新
・2027年3月期は半導体製造関連向け高機能樹脂製品の伸びなどにより大幅な増収増益を見込む
・中期経営計画では事業ポートフォリオ改革をさらに加速し、利益率や資本収益性の改善を推進
・株主還元については2028年3月期までに株主資本配当率(DOE)4%、3年間で200億円の自己株式取得を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)