■JNグループの今後の見通し
3. 弊社の見方
同社は、従来のIoT関連事業中心の事業構造から、デジタルコンテンツ事業、ソリューション事業、暗号資産・ブロックチェーン事業を中核とする事業ポートフォリオへの転換を進めている。2026年11月期中間期累計期間の売上高は1,500百万円(前年同期比15.8%増)となり、ソリューション事業及び暗号資産・ブロックチェーン事業の伸長を背景に増収を達成した。一方で、営業損失570百万円、EBITDA463百万円の損失となったが、これは主として暗号資産交換所Zaifにおける業績低迷や、自己保有暗号資産の評価損計上による影響が大きい。
同社では現状の業績を十分な水準とは捉えておらず、特にZaifの収益改善を重要課題として位置付けている。また、経常損失の拡大要因となったフィスコ及びCAICA DIGITALの持分法による投資損失については、810百万円のマイナス影響が発生しているものの、いずれも当期のキャッシュアウトを伴わない会計上の損失であり、事業活動そのものの収益力とは切り分けて評価する必要があると考えられる。
事業別では、メタバース・デジタルコンテンツ事業が堅調に推移した。コミッションサービス「Skeb」は2026年7月時点で登録者数400万人を突破し、日本最大級のクリエイターコミッションプラットフォームとして成長を続けている。売上の中心は引き続きイラスト関連であるものの、近年はVRChat向けアバター制作需要が拡大しており、オリジナルキャラクターやアバター制作を依頼できる「うちの子リクエスト」が取引全体の約20%を占めるまでに成長している。2026年5月にはVRChatアカウントとのログイン連携を開始したほか、「超メタフェス2026」を開催するなど、VRコミュニティとの接点拡大を進めており、将来的な利用者基盤の拡大につながる取り組みとして注目される。
ソリューション事業では、ケーエスピーが既存顧客を中心に安定した収益基盤を維持しているほか、フードテックと商社機能を組み合わせた新たな商品開発も進展している。JNソフトについては、中途採用者の案件参画遅延により中間期業績は計画を下回ったものの、足元では稼働率改善が進み、7月末にはほぼ100%の稼働率に到達する見込みである。また、ASTERIA Warp関連案件の拡大が続いており、2026年8月には社長直轄の「ASTERIA Warp推進室」を設置するなど、成長分野への経営資源集中を加速している。
暗号資産・ブロックチェーン事業では、「Zaifカード」のサービス拡充や発行体企業との共同イベントなど利用促進策を進めているものの、暗号資産市場の低迷に伴い預かり資産残高や取引高は低調に推移した。もっとも、顧客数は概ね横ばいで推移しており、ユーザー基盤そのものが大きく毀損している状況ではない。今後は金融商品取引法への移行に伴う規制対応コストの増加が想定される一方、税制改正や暗号資産ETFなど制度整備が進展した場合には、市場成長に伴う収益機会の拡大も期待される。
財務面では、利用者暗号資産及び預り暗号資産の減少により総資産・負債ともに大きく縮小したが、これは暗号資産交換業特有の残高変動による影響が大きい。M&Aにより取得した各事業は概ね一定の売上・利益を確保しており、同社が目指す安定収益事業の積み上げは着実に進んでいるとみられる。
通期業績予想は据え置かれているが、その前提には有価証券や暗号資産の売却による利益計上が含まれている。現時点では売却方針が確定していないことから達成には不透明感が残るものの、保有資産の売却という利益創出手段は、通期予想達成に向けた選択肢の1つといえる。短期的にはZaifの収益改善が最大の課題である一方、Skebやソリューション事業を中心とした事業基盤の拡大は着実に進んでおり、中長期的な収益力向上に向けた取り組みは継続していると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)