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ミツバ:二輪・インドが業績を牽引、車載以外への拡販と資本政策の正常化が進む

ミツバは、群馬県桐生市に本社を置く独立系の自動車電装品メーカーである。創業来のモーター製造技術と制御技術を核に、四輪車向けのワイパーシステムやパワーウインドウモーター、二輪車向けのスターターモーターや燃料ポンプモジュールなど、中・小型モーターを中心とする電装品を完成車メーカーに供給する。特定の完成車メーカーの資本系列に属さない独立系でありながら、1960年頃にスターターモーターの納入を通じて本田技研工業(以下、ホンダ)との取引が始まり、現在もホンダ向けが売上高の4割強を占める最大顧客となっている。事業セグメントは輸送用機器関連事業(売上構成比9割強)を主力とし、連結子会社の両毛システムズが手掛ける情報サービス事業などで構成される。そのほか、1986年の米国現地法人設立を始点に米州とアジアを中心に海外展開を進め、2026年3月期の海外売上高比率は65.9%となった。

同社の強みは、車載モーターのグローバルニッチ分野で高シェア製品を多数有する点にある。二輪車向けでは燃料ポンプモジュールが世界シェア約35%で首位、四輪車向けではサンルーフモーターが約40%で首位、パワーウインドウモーターが第3位、フロントワイパーが第4位の地位を占める。高シェアを維持できる背景として、標準品を売るのではなく、カーメーカーが望む製品を共同歩調で開発している点が顧客から評価されているようだ。モーター単体の製造にとどまらず、制御技術まで含めて提案できる開発力が、デンソーやBosch社といった大手部品メーカーと伍していくうえでの武器となっている。また、独立系ながら、二輪車の世界販売台数シェア第1位のホンダと強固な取引関係を構築していることも優位性となる。そのほか、同社はデンソーやBosch社が手掛けるパワートレイン系ユニットを手掛けず、汎用部品ながら小型化・軽量化技術で優位性のある中・小型モーター部品に注力している。ワイパーやパワーウインドウは電動車でも必須の製品となるが、競争環境も相まって同社がシェアを獲得し、残存者利益を得られる可能性もあるようだ。

2027年3月期第1四半期の連結業績は、売上高863.68億円(前年同期比7.1%増)、営業利益43.6億円(同6.3%減)で着地した。中国エリアを中心とした四輪事業での販売減はあったものの、インドやインドネシアにおける二輪事業が引き続き好調に推移したほか、円安による為替影響も加わり増収となった。ただ、銅を中心とする材料費の高騰が利益を圧迫した。銅が想定を超えて上昇しているが、交渉ベースで価格転嫁を進めているようだ。顧客別では、最大顧客のホンダ向けが391億円(同16.4%増)と四輪・二輪ともに2ケタ増収となったほか、新型CX-5が立ち上がったマツダ向けが同52.0%増、スズキ向けが同25.0%増と伸長し、インド二輪大手のHero向けも同12.5%増と拡大した。上期営業利益計画80億円に対する進捗率は54.5%と堅調な立ち上がりであり、通期計画となる売上高3400億円(前期比2.5%減)・営業利益190億円(同20.5%減)は据え置いている。

同社は中期経営計画(2023-2027)において、前半2年間で優先した財務体質の健全化を経て、後半3年間を成長ポートフォリオへのリソースシフト期間と位置づけており、今期はその2年目に当たる。ちなみに、中計最終年度(FY27)目標の売上3,300億円以上・営業利益率6%以上・ROE10%以上・自己資本比率30%以上・ネットD/E0.5倍は、26年3月期時点で実質すべて達成済みとなる。今後の成長戦略の軸は、収益力の高い二輪事業へのシフトと四輪事業の収益改善、そして電動化対応であることに変わりはない。一定の需要が見込める製品は継続受注で稼ぎつつ、獲得したキャッシュは将来の利益を生む次世代製品へ集中投下する方針を示している。また、設備投資は今期195億円と過去最高水準を計画し、前期からの投資案件の期ズレ分も含め、インドにおける燃料ポンプやジェネレーターなど既存製品の増産投資を積極化している。電動化対応では、ブラシレスファンモーターや新型エルグランドに搭載された電動パワーステアリングモーターなどの拡販を図るほか、レアアースフリーモーターの第2弾としてブラシレスルーフモーター「WR20」を投入した。ルーフモーター世界トップシェアの地位を生かし、独Tier1のWebasto社等向けにコントローラー一体型で年間200万個の販売を目指す。

また、同社が今後の展開として強調するのが、車載以外の分野への拡販である。2026年4月に専任部署となる新規ビジネス室を設立し、第一弾として東洋電機製造、泰平電機と鉄道・バス等の次世代移動体向け電気式ドアシステムの共同開発契約を締結した。また、2026年7月には両毛システムズの非公開化に向けた公開買付けが終了し、20%を出資する中部電力との協業によりテレメータリング関連ビジネスを伸ばす体制が整った。情報サービス事業はまだ柱としては細いが、より太くしたい意欲も示されており、輸送用機器分野で培ったモーター・制御技術と情報サービス分野のIT・IoT技術を融合した事業領域の拡大を進める方針である。

資本政策面では、財務体質の健全化が着実に進展している。D種種類株式は、コロナ禍の資本増強で発行した投資ファンド向け種類株式を2024年6月に償還した際、普通株式への転換に伴う希薄化リスクのない設計で取引金融機関向けに発行(総額100億円)したものである。2026年7月末にD種種類株式200株のうち60株(取得価額約31億円)を取得・消却し、「毎期25億円以上」とする部分償還方針を初年度から上回るペースで実行した。同時に、株主還元も着実に実行しており、年間配当は前期の25円から30円への増配を計画し、利益成長に応じて段階的な株主還元の拡充を図り、2031年3月期までに連結配当性向30%の達成を目指す方針を掲げる。IR面では、足元個人投資家向けの施策に注力しており、本社を置く地元群馬県でのファンづくりにも取り組んでいる。

総じて、同社は独立系モーターメーカーとして車載ニッチ分野で築いた高シェア製品群を収益基盤に、二輪・インドの成長を取り込みながら、車載以外の分野への拡販という次の成長ストーリーを描き始めた段階にある。材料費の高騰や中国事業の低迷といった逆風は残るものの、前期の営業利益は10期ぶりに過去最高を更新し、種類株式の償還や増配など資本政策の正常化も進む。中期経営計画の数値目標を前倒しで達成するなか、株主還元拡充への道筋と非車載事業の育成が今後の注目点となろう。

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