■要約
今仙電機製作所は、自動車部品及び輸送用機械器具部品、産業用機械部品の製造販売を行うメーカーである。1932年に創業者である今井仙三郎(いまいせんさぶろう)氏が日本初となる電磁式ホーンの開発・生産に成功したのが始まりで、1939年2月に株式会社として設立された。同社はそのホーンを「ナイトホーン(Knight Horn)」と名付け、販売を開始した。その後、1954年には自動車用ランプ、1958年には自動車用ウインドレギュレータ、1965年には自動車用シートリクライニングアジャスタ、2004年には電子ユニットの生産をそれぞれ開始し、時代のニーズを捉えたモノづくりにより事業を拡大してきた。また、1968年から海外に生産拠点を構築するなど、グローバル化の時代に即した経営を行っている。1996年12月には店頭登録銘柄として株式公開、2001年9月には名古屋証券取引所(以下、名証)第2部に上場、2002年9月に名証1部に指定替え、2003年2月に東京証券取引所(以下、東証)第1部上場と着実にステップアップし、現在は東証スタンダード市場、名証プレミア市場に上場している。
1. 2026年3月期の業績概要
8月7日に発表した2027年3月期第1四半期決算では、売上高214.95億円(前年同期比2.5%増)、営業利益5.19億円(前年同期は0.29億円の利益)、経常利益が7.40億円(同0.67億円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益が3.96億円(同1.90億円の損失)で着地した。日本での売上高は前年同期比6.1%増の93.47億円、営業損失は1.53億円(前年同期は5.15億円の損失)となっており、電子製品売上が増加したことで増収となった。利益面ではシート事業にて合理化改善による原価低減効果により損失縮小となった。一方、北米での売上高は同2.7%減の68.08億円、営業利益は同42.1%増の4.69億円となった。為替影響があるものの、モデル末期機種の生産終了により、売上高は減収となったが、構造改革及び合理化改善の効果により、営業利益は増益となった。そのほか、アジアでの売上高は同3.6%増の53.39億円、営業利益は同8.4%増の1.57億円となった。中国での生産減少はあるものの、主にインドでの生産増加に加え、為替影響により、売上高は増収となった。利益面では中国での減収影響があるものの、中国における希望退職を含む構造改革及び、タイにおける調達コスト改善により、営業利益は増益となった。
2. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の連結業績は、売上高が860億円(前期比1.3%減)、営業利益が30億円(同47.2%増)、経常利益が28億円(同32.0%増)に、親会社株主に帰属する当期純利益は23億円(同7.3%減)と、減収ながら営業利益と経常利益は大幅増益を見込んでいる。主要市場である北米や中国などで引き続きメーカー側の減産の影響が残るものの、北米を中心に前年までの投資による改善効果の刈り取りに加え、中国における人員最適化、国内工場再編などの構造改革、自動化・省人化の推進などが貢献する。筋肉質な経営体質が具現化する見通しだ。
3. 中長期経営計画
同社はこれまで中長期経営計画で掲げていた2027年3月期の中期収益目標である売上高910億円、営業利益率4.0%、ROE4.0%以上のうち、売上高と営業利益率を修正し、売上高を860億円に、営業利益率を3.5%とした。しかし、2030年3月期の売上高1,500億円、営業利益率6.0%、ROE7.0%以上とする長期計画の目標は変えていない。この定量目標を達成すべく9つの重点施策を進め、さらなる成長を目指す。事業成長のドライバーと位置付ける電子事業の強化については、マツダとの合弁会社で開発しているインバータについて、量産体制の構築に向けて取り組んでおり、今後の事業拡大に向けて積極的に投資を図っている。
中長期経営計画における9つの重点施策は以下のとおりである。
1) 意思決定のスピードアップと権限移譲の促進
2) 営業機能の強化
3) メガサプライヤーを超える競争力の強化
4) 北米・中国再編による収益強化
5) 調達構造の再構築による材料費率の改善
6) 稼ぐ力の再構築
7) ROEと資本コストを意識した資本政策
8) グループシナジーによる将来製品開発
9) ESG経営の推進
4.株主還元
同社は株主への利益還元を経営の最重要課題の1つと位置付けており、業績が厳しかった時期においても配当を実施した。2025年3月期より配当方針を見直しており、業績に応じた安定的増配、配当性向30%を目標とし、年次の経営環境や業績により決定することとしている。これに従い、2026年3月期の年間配当は1株当たり27.0円を実施した。2027年3月期の年間配当は前期比5.0円増配の1株当たり32.0円を予定している。また、株主優待制度を新設しており、ポイント制優待サービス「プレミアム優待倶楽部」を採用した。株主は保有株数に応じたポイントを受け取り、専用サイトを通じて食品や日用品など多彩な商品と交換できる仕組みである。同社は、配当と優待の両面から株主還元を強化し、資本市場における評価向上につなげたい考えだ。
5.株価
8月7日の決算発表以降、株価は水準を切り上げ、今年5月28日につけた960円に迫っている。PBR0.35倍台で推移するなか、これが1倍水準に是正されるだけでも、株価は2,740円付近が視野に入ってくる。また、2030年3月期の売上高1,500億円、営業利益率6.0%、ROE7.0%以上とする長期計画を目標として掲げているが、目標達成時の営業利益90億円は今期予想(2027年3月期の営業利益見通し30億円)から3倍となる水準である。今期の予想EPS108.28円から仮に3倍水準となる324.84円に現状水準のPER8倍で評価すると、過去最高値水準(2014年9月2799円)に迫る2,600円程度は試算される。総じて、PBR0.3倍台かつ配当利回り3.4%付近で推移し、株主優待も導入して積極的に還元姿勢も強化するなか、インカムゲインも享受しつつキャピタルゲインの獲得妙味がある銘柄として注目しておきたい。
■Key Points
・構造改革により収益体質が強固になり、2027年3月期第1四半期は好スタート
・2027年3月期は減収ながら営業利益と経常利益は大幅増益を見込む
・中長期経営計画に沿って、2030年3月期に売上高1,500億円、営業利益率6.0%、ROE7.0%以上を目指す