本日、覚えていただきたい3つのポイント
谷口方啓氏(以下、谷口):みなさまこんにちは。TOA株式会社代表取締役社長の谷口です。本日は当社のご紹介と、私たちが目指す姿についてご説明します。どうぞよろしくお願いします。
本日お伝えしたいポイントは3つです。本日はこの順でご説明します。
1つ目は、当社の特徴です。景気に左右されにくい「社会に不可欠な事業」であり、業界トップの高いシェア、財務も健全で安定したニッチトップであると自負しています。
2つ目は、今後の成長についてです。社会を支える「報せる」役割を進化させ、社会インフラ企業を目指します。グローバル成長を加速させ、創業100周年を迎える2034年度までに、連結売上高1,000億円超を目指します。
3つ目に、株主還元についてです。将来のための重点投資を実行しながら、高水準で継続的な還元を行います。
会社概要
谷口:当社の特徴についてお話しします。まず会社の概要です。当社は1934年に神戸で創業し、92年目となりました。国内に35の拠点、海外に27の拠点を構え、グローバルに事業を展開しています。売上高は昨年度553億8,600万円、グループ従業員は3,083名です。
企業目的と3つの事業領域
谷口:私たちは企業目的を「Smiles for the Public 人々が笑顔になれる社会をつくる」と定め、この目的のもとで「Public Safety(安心)」「Public Communication(信頼)」「Public Space Design(感動)」の3つの事業領域で事業を展開しています。
多くの人が集う場に安心、信頼、感動を届け、社会を支えるかけがえのない価値を提供することで、笑顔あふれる社会作りに貢献します。
音響から映像まで、多品種にわたる製品を提供
谷口:製品分野として売上の約8割は、音響分野です。スピーカー、アンプ、会議システム、インターカムなど、人々が集まる場所で使用される業務用音響機器です。
そのほか、防犯カメラやレコーダーなどの映像分野、および、鉄道車両分野があります。幅広い製品を取り扱うことで、特定の市場の浮き沈みに左右されにくい安定した事業基盤を築いています。
こんなところで活躍しています
谷口:当社の商品は、みなさまの身近なところで活躍しています。例えば、学校や駅などの公共施設、ショッピングモールなどの商業施設においてはスピーカーなどが、工場や倉庫ではネットワークカメラなど、オフィスや会議室では当社のワイヤレスマイクなどが使われています。
関本圭吾氏(以下、関本):かなり幅広い製品分野で、さまざまな製品が使われている印象ですが、どのような点がお客さまに評価されているのでしょうか?
谷口:ご評価いただいている理由は、大きく3つあると考えています。
1つ目は、長年培ってきた品質と実績が、お客さまからの信頼につながっていることです。90年以上にわたり、当社は公共空間向けに製品を提供してきました。業務用製品ですので、時には命に関わるような重要な設備として、高い信頼性が求められます。
当社は家庭用とは異なる業務用の品質を追求し続け、高いシェアを維持してきました。また、実際に多くの導入実績を積み重ねることで、その実績が信頼へとつながり、新たな案件でも当社製品が選ばれる理由となっています。
後ほどご紹介しますが、非常用放送設備においては、日本の消防法や欧州のEN規格など厳しい基準に対応しています。
例えば、停電時でもバッテリーでバックアップされていることや、設備が壊れていないかを常に監視する技術力が求められます。当社は以前から業界リーダーとして、このような規格にいち早く対応してきました。
2点目に、幅広いニーズに応える商品ラインナップです。それを支えるのは、多品種少量の生産体制です。
3点目はエンジニアリング力です。創業以来培ってきたノウハウと技術力が、現場ごとの課題解決に貢献しています。例えば空港や駅は、人々の声や周囲の音が非常に騒がしく、建物内の残響が大きいものです。そのような環境下でも明瞭にアナウンスが届かないと利用者にとって不便です。
そのため、当社が音響設計の段階から関わり、どこにどのようなスピーカーを配置すればよいか、またその配置による音響効果をシミュレーションして、お客さまに納めています。
そのようなことを通じて、「まずはTOAに相談してみよう」という信頼をいただいていることが、当社の製品が広く使われている理由だと考えています。
国内の非常用放送設備シェアNo.1
谷口:中核商品の1つである非常用放送設備についてご紹介します。これは1968年に有馬温泉で起きた火災の悲しい事故がきっかけでした。当社はこの事故を受け、非常用放送設備の開発にすぐに着手し、翌1969年に卓上型非常用放送設備を商品化し、それを出発点に製品と技術を進化させてきました。
この非常用放送設備は、火災時に建物内の人々に避難を呼びかけるための設備であり、日本では消防法により、建物の規模や用途に応じて設置が義務づけられています。また、その設置にはスピーカーの配置や音の届き方について厳密な基準を満たす必要があり、高い専門性が求められる分野で国内約半数のシェアを占めています。
グローバル展開
谷口:国内で培った非常用放送設備の強みを、海外でも展開しています。例えばヨーロッパでは、建築や電気設備に関する規格の統一が進み、EN規格というものが採用されています。当社はこのような規格に対応した商品を業界に先駆けて開発し、EUでは日本市場と同様に高付加価値な製品・サービスを提供しています。
アジアにおいては、例えばシンガポールや香港は成熟市場です。新築に加えて既存設備の更新も進む中で、当社のEN規格における競争力が事業機会につながっています。一方、アジアの中でも東南アジアの国々で規格化が進んでいない地域においては、当社が先んじて必要となり得るものを広め需要を創出する活動を進めています。
中東でも都市開発を背景に、商業施設や病院、交通インフラなどで需要が拡大しています。
このように、地域ごとの市場環境に合わせ、非常用放送設備の海外展開を進めています。
関本:国内外で広く販売されているとのことですが、直接販売されているのか、それとも代理店を介しているのかを教えてください。
谷口:非常用放送に限らず、商品全般について国内外とも基本的に代理店を通じて販売しています。
商品の販売形態は大きく2つです。1つは、単体販売と言って、単体で使用される商品、例えば携帯型の電気メガホンのように箱から出してそのまま使えるものや、簡単な配線で済む商品を単品として販売するケースです。
もう1つは、建物や施設全般をシステムで構築して納める形態です。事前の設計や工事が伴うためプロジェクト販売と呼びます。
単品販売については、国内では電材の卸店や家電量販店、事務機や教材販売を行う業者を通じて行っています。プロジェクト販売は、施主やユーザーへの提案活動には当社も積極的に関与しますが、物品を納める商流としては、ゼネコンやサブコンなどの建築流通に対し、代理店を通じて販売しています。
海外でも基本的には同様ですが、特にプロジェクト販売におけるエンジニアリングやコンサルティングの領域では、当社が対応する部分よりも代理店に依頼している比率がまだ高い状況です。
国内での競争力と同様に、代理店に依頼するだけでなく、自社でエンジニアリング力を高め、より付加価値を高めていくことを現在の課題として取り組んでいます。
売上高の推移
谷口:スライドは、創業以来の売上高推移のグラフです。当社はこれまで、バブル崩壊やリーマン・ショックなど、数々の不況を経験し、少しの売上高の落ち込みはあったものの、それを乗り越えて継続的に成長することができました。
新型コロナウイルス感染症の影響があった時も、経済の落ち込みから回復を遂げ、昨年度2026年3月期は売上高約553億円、営業利益約46億円と、いずれも過去最高を更新しています。
また、2022年3月期から5年間で進めてきた前の中期経営基本計画については、昨年度が仕上げの年でしたが、掲げた数値目標をすべて達成し過去最高の数字で締めくくることができました。
関本:業績の状況についてもうかがえればと思います。過去の推移を見ると、リーマン・ショック時の減収も10パーセント程度にとどまっていて、非常に安定的だと思いました。これは市場そのものが安定的だからなのか、あるいは御社独自の強みで耐えられたのか、この辺りはいかがでしょうか?
谷口:どちらの背景もあります。まず、当社の事業が比較的、景気変動の影響を受けにくいことがあります。学校や空港、駅、工場、商業施設など、さまざまな公共的な市場に製品を納めているため、特定市場に依存していません。
さらに、長期スパンでの導入となるプロジェクトベースであるということも、短期的な影響を受けにくい要因の1つです。
コロナ禍の時は、当時はみなさまマスクをして、しかもパーテーションが設置され、会話が聞き取りにくいという問題がありました。それを受け、数ヶ月という短期間で、パーテーションに取り付けて、その反対側とコミュニケーションができるような機器を開発して売り出したところ、多方面でご採用いただきました。
このように世の中のニーズに素早く対応する短期的な動きも、コロナ禍の影響をカバーできた1つだと考えています。そのような危機をしっかり乗り越え、長期的な継続成長を実現してきました。
関本:大変わかりやすいお話でした。直近の状況について、この数年は過去最高の業績を実現され、非常に堅調かと思います。中東情勢による原材料価格上昇や半導体価格動向も注目されている中、この数年間の市場環境は実際にいかがでしたか?
谷口:おっしゃるとおり、特に原材料やエネルギーといったコスト、また物流費の高騰の影響は、当社も例外ではなく、かなりの混乱を経てコストアップもありました。以前であれば認められない風潮でしたが、世の中全体がそのような流れの中にありますので、お客さまも価格転嫁を受け入れてくださっています。
加えて、当社の事業そのものが、やはり公共性の高いものです。「高かったら要らない」というものではなく、設置しなければビルはオープンできず、業務もできません。価格転嫁できたことが1つ大きなことかと思っています。
純資産、総資産、自己資本比率
谷口:当社は健全な財務体質のもと、安定した企業経営を継続しています。高い自己資本比率を維持し、無借金経営を行っています。引き続き、会社の継続的な発展と安定した企業経営を実現していきます。
長期経営戦略「NEXT100 TOA」
谷口:今後の成長についてお話しします。当社は、2034年度に創業100周年を迎えます。昨年11月に「NEXT100 TOA」という長期経営戦略を発表しました。
この戦略は、創業100周年を迎えるにあたり、その先の100年も生き抜ける会社であり続けるために、2034年度までの9年間を対象とした長期間の道筋を示しています。
これらの取り組みを推進する原動力として、人材および技術への投資を強化し、2034年度には連結売上高1,000億円を超える水準の成長を目指します。
長期戦略の骨子の1つに、「すべての人が適切に情報を受け取れる社会の実現」という項目があります。その中で重要なキーワードとなる「報せる」について、これから少しお話しします。
社会課題に応えて生み出してきた、TOAの商品の価値
谷口:当社の原点は、音を遠くまで多くの人に届けることです。いわゆる拡声から始まりました。創業期から販売しているトランペットスピーカーや電気メガホンは、一度に多くの人へ声を届けたいという社会のニーズに応えるものでした。
その後、地元有馬温泉の火災や東日本大震災といった災害をきっかけに、音を届けることの意味が再認識されてきました。単に聞こえる音ではなく、危険を知らせ、人々の避難や安全確保につなげる音へと進化してきました。非常用放送設備や防災用スピーカーは、その代表例です。
また、高齢化社会の進展を背景に、より聞き取りやすい音を実現する音声明瞭化技術の開発にも取り組んできました。この技術は、騒音の大きな駅や、音を聞き取ることが重要な教育現場で、コミュニケーションを円滑にするためのものです。
また、先ほどもご紹介しましたが、コロナ禍においては、対面コミュニケーションを支援する製品を開発しました。このような取り組みを通じて、その時々の社会課題に向き合い、それに応える商品やソリューションを生み出してきました。
当社の歩みを振り返ると、私たちが提供する価値は、単に音を届けることではなくなってきているとあらためて実感しました。音や声を通じて情報を正しく伝え、人々の行動を促し、具体的な行動につなげることが、私たちが考える「報せる」の意味であり、社会に貢献する価値であると考えています。
「報せる」を社会インフラに、そして世界に
谷口:私たちが目指す「報せる」のさらなる進化についてお話しします。日本では、駅や商業施設で放送が流れるのは当たり前の光景ですが、私たちは「報せる」を、電気、ガス、水道、電話といった社会インフラと同等の価値を持つものと考えています。
今後、音で「報せる」を実現するだけでなく、映像や光、ネットワークなども組み合わせ、さらに進化させていきます。
平常時に便利でわかりやすい案内を提供し、緊急時には人々の混乱を抑え、適切な避難行動につながる情報を発信します。これを1つの施設だけでなく、施設間やエリア全体で統制することが、私たちが考える「報せる」のこれからの姿です。
この役割を日本だけでなく、まだ情報伝達の仕組みが十分に整っていない国や地域にも広げ、「報せる」を社会生活の安全・安心を支える重要な社会インフラにしたいと考えています。それを世界に広げることが当社の次の成長方向性です。
熊本の地震では、ショッピングモールの中にいる人に避難を呼びかけることはできたものの、外にいる人に戻ってはいけないことを「報せる」ことはできませんでした。
また、先般の千葉の水害では、町中にスピーカーやカメラが設置されていれば、冠水した道路に入ろうとする車に警告したり、水没しかけているドライバーに「フロントガラスを蹴破って逃げろ」と呼びかけたりすることができた可能性があります。
アジアに目を向けると、何万人もの人々が集まる施設でありながら、火災時にはベルが鳴り響くだけという状況も目にしました。このような現実に直面するたびに、私たちがまだ手を付けていない課題や、取り組むべきことが数多く残されていると痛感します。
人々が安心して安全な社会生活を送れるように、私たちは強い使命感を持って、「報せる」を社会インフラとして普及させていきます。
音とネットワークで「報せる」を拡大
谷口:スライドは、「報せる」の進化を具体的にどのように実現していくのかを示したものです。当社の原点であり、これまで培ってきた強みである「音」は、必要な情報を確実に聞き取りやすく届ける力があります。
その力が当社の安定した事業の基盤となっており、この音の「報せる」は、これからも私たちの事業の中核です。これからは、音の強みにネットワーク技術を組み合わせ、音響機器をネットワークに接続することで、遠隔での制御や複数拠点への情報発信を可能にします。
さらに、音に限らず、映像やAI、クラウドサービス、外部システムとの連携を通じて、現場の状況を映像で確認したり、各種センサで状況を把握したりすることができるようになります。その中で、必要な情報を選び出し、音や表示などから最適な手段を用いて、そこにいる人に「報せる」ことを可能にします。
音とネットワークによる情報伝達を通じて、人々の行動につながる「報せる」を、さらに進化させていきます。
未来の街のモデル
谷口:未来の街で「報せる」が果たす役割の実例として、大阪・関西万博での取り組みがあります。会場全体を未来の街に見立て、各パビリオン内の放送設備と屋外の約600台のスピーカーをネットワークで接続しました。
放送システムを一元管理できるプラットフォームを構築し、混雑しているエリアだけに案内を流したり、特定の場所に注意を呼びかけたりするなど、より細やかな情報発信を可能にしました。必要な場所に必要な情報を届ける仕組みを、この万博で実証しました。
今後は、この万博で得た知見を活用し、実社会における駅や商業施設、街全体への展開を図り、社会の情報伝達を担う会社を目指していきます。
中期経営基本計画の位置づけ
谷口:中期経営基本計画の位置づけについてです。当社は、2034年度までの9年間を大きな変革の期間と捉え、3年間ずつ3ステージ「再定義」「洗練」「新生」に分け、中期経営基本計画として進めていきます。最初のステージはこの4月から始まりました。
今回ご説明するのは、最初の3年間の「再定義」に当たる部分です。将来の飛躍的な成長に向けて積極的に投資し、次のステージにつながる事業変革の道筋を定める3年間と位置づけています。
基本方針および重点施策
谷口:具体的な取り組みについて、基本方針と重点施策を順にご説明します。事業変革の道筋を定める重点施策はスライドに記載した5つです。
1つ目から4つ目は、事業の柱となる取り組みとなる「報せるソリューションの革新」「海外成長の加速」「顧客支援ソリューションの進化」「新規事業開発」です。
5つ目は、これら4つを支える基盤作りとしての、商品・人材・DXへの投資を土台とする部分です。それぞれ順に説明します。
報せるソリューションの革新
谷口:重点施策の1つ目は、当社の中核となる取り組み「報せるソリューションの革新」です。「報せる」の進化を具体的にかたちにするのが、報せるプラットフォームです。スライド左側から、入力、処理、出力を示しています。
入力では、マイクやカメラ、交通機関の運行情報や気象情報など、外部システムからの情報を取り込みます。
次に、それらの情報を分析・判断し、状況に応じた放送コンテンツを生成します。これが処理です。
さらに、そのコンテンツを音声だけでなく、テキスト情報や映像、光なども使って出力することで「報せ」ます。
音が聞こえにくい方や、言葉がわからない方にもしっかりと届く仕組みです。重要なのは「届けて終わり」にしないことです。情報を受け取った人が気づき、行動に移すところまで見届けていきます。
また、このような仕組みが事前の行動プランニングや混乱時の運用コンサルティングにまでビジネスを広げていく基盤となります。
関本:「報せるプラットフォーム」は、例えばプロダクトに落とし込むと、どのような売り方や商品になるのか、また実現までの期間をどのくらいと見ているのか、このあたりをうかがってもよろしいでしょうか?
谷口:非常に大きなコンセプトですので、ハードウェアというよりも、ソフトウェア的なプラットフォームをイメージしています。それは日々進化させていくものですので、「何年頃に完成する」といったかたちではありません。
本中期経営計画中には、実証実験できるレベルのものを提示し、市場と対話を続けながら育てていきたいと考えています。そのための体制を現在整え、進めています。
先ほどもご説明しましたが、判断し、コンテンツを生成し、「報せる」というプロセスが、このプラットフォームの鍵となります。例えば、万博では事前に大勢の人をどのような動線で誘導するかという点で、日本国際博覧会協会も課題を抱えていました。
当社からも人員を派遣し、その部分に関わり、実際の会場の放送設備の運用ソフトウェアにまで落とし込みました。これは非常にミニマムなモデルですが、このように運営管理者のさまざまな思いをかたちにするソフトウェアプラットフォームに進化させていきたいと考えています。
具体的なかたちについては知的財産権の関係もあり、現時点で詳細をお伝えできませんが、準備が整い次第開示していきます。
海外成長の加速
谷口:海外成長の加速についてご説明します。2034年度までに海外売上が日本売上を大きく上回る規模まで成長させることを目指しています。
具体的な打ち手として、1つ目はエンジニアリング力の強化、2つ目は有望な国や地域への進出です。市場を十分に調査した上で、最適なかたちでタイムリーに進出していきたいと考えています。
海外成長の加速(目標)
谷口:スライドは地域別の売上目標です。2029年3月期に向けて、アジア・パシフィックで約31パーセント増、欧州・中東・アフリカで約16パーセント増、アメリカで約15パーセント増を計画しており、日本を大きく上回る成長を計画しています。
特にアジア・パシフィックでは、域内の経済成長が年率4パーセントから6パーセントで続くと予測されています。都市化の進展に伴い、公共および商業インフラへの投資が拡大し、さらに各国政府による防災・減災投資も追い風となると考えています。
欧州ではEN規格に準拠した高付加価値ソリューションを展開するとともに、ドイツの大型インフラ投資が好機となります。中東もこの地域に属します。特にサウジアラビアでは「サウジ・ビジョン2030」と呼ばれる大型プロジェクトが次々と進行しており、非常に有望な市場と見込んでいます。
こうした取り組みを通じて、2034年度には海外売上が国内売上を大きく上回るグローバル企業へと成長したいと考えています。
関本:海外での成長ポテンシャルは非常に重要なポイントだと感じます。実際に、海外の大手メーカーと競争し、それらを上回る案件を獲得するにはどのように進めていく予定なのか、もう少し具体的におうかがいしてもよろしいでしょうか?
谷口:海外の大手メーカーとの競争については、実は当社のように、製品の音の入り口から出口まで、さらには映像機器までを総合的に扱っているメーカーは少ないです。大半がマイクやスピーカーのみを手掛ける専業メーカーです。
この点で当社には2つの優位性があります。まず1つ目は営業力です。例えば空港の案件では、多くの関係者が関与する中で、事前のコンサルティングを基に受注につなげるため、深く入り込んで対応することが求められます。
当社は総合的なソリューションを提供できる強みを持ち、全世界に拠点を展開していますので、横のつながりや情報共有を活かし、お客さまに信頼される提案を行うメーカーとして認められています。このようなメーカーは海外でもほとんど存在しません。
2つ目は、エンジニアリング力とソフトウェアの強さです。各地域向けに現地で展開しているソリューションを横展開することで、お客さまの要望に合わせたカスタマイズが可能となります。この対応力が、競争力として当社の強みとなっています。
顧客支援ソリューションの進化
谷口:重点施策の3つ目は、日本国内における「顧客支援ソリューションの進化」です。人口減少により国内市場は縮小していくと見られがちですが、当社にとっては事業機会が広がっています。
特に、労働人口の減少に伴い、自動化や省人化のニーズが高まっており、さらに老朽化した設備の改修も必要となっています。また、防災分野では地域で助け合う仕組みへの期待が高まっています。
これらの課題に応えるには、高いシェアと幅広い顧客接点を持つ当社の、現場ごとの長年の実績という強みが重要になると考えています。
関本:国内の取り組みについて、1点おうかがいしたいと思っていました。国内市場はあまり伸びない想定のように見えますが、どのようにお考えでしょうか?
谷口:海外市場が成長する中で、国内市場での成長率は1パーセントという状況ですので、「これだけなの?」という疑問は当然持たれるだろうと思います。国内市場はすでに成熟段階にあり、当社は国内で高いシェアを持っているため、大幅な市場拡大を前提とはしていません。
むしろ安定的な更新需要を着実に取り込みつつ、選択と集中を進めながら、収益性の向上を図っていく考えです。一方で、海外市場は市場自体の拡大が続くため、成長の源泉として位置づけています。
中長期的には、国内市場を安定成長・安定収益とし、海外市場を成長ドライバーと捉えています。
新規事業開発
谷口:中期経営計画の4つ目は「新規事業開発」です。既存事業とは異なる領域で、将来的に中核となる可能性がある事業を生み出していきます。
生み出す仕組みを作る段階にあり、今は何を行うかを決め打ちするのではありません。
事業成長を支えるヒト・モノ・情報基盤の強化
谷口:ここまでご説明してきた4つの重点施策を実行するための土台作りが、重点施策の5つ目「事業成長を支えるヒト・モノ・情報基盤の強化」です。
商品は、高付加価値化と生産性向上の両輪を柱とし、ネットワーク対応と環境性能を軸に高付加価値商品を広げていきます。また、ラインナップの最適化と生産の自動化を進めることで、事業基盤を強化します。
人材面では、一人ひとりの成長をチームの成果につなげるマネジメントを磨き、挑戦が連続的に生まれる環境を育てます。
DXは、業務の効率化にとどまらず、業務そのものを再設計します。自動化・標準化・組織知の活用により時間を生み出し、その時間を挑戦的な取り組みに振り向けます。
ファイナンスの実施
谷口:昨年12月に自己株式の処分と新株式発行を実施しました。この実施により、個人株主のみなさまからいわゆる希薄化(ダイリューション)の懸念の声をいただきました。ご指摘は当然のことと認識しています。
その上で、今回の資金調達には2つの意義があります。1つ目は、その資金の用途をあらかじめ決めているという点です。
スライドの右側に記載のとおり、先ほどご紹介した「報せるプラットフォーム」の開発、海外での競争力強化を目的とした新商品の開発、生産・出荷の自動化、統合基幹システムの更新、また本社の改修など、中期経営計画で実行すると決定した投資案件に対する原資として調達しました。余裕資金として確保するための調達ではありません。
2つ目は、流動性の向上です。次期TOPIXの継続採用に必要な浮動株比率の向上も考慮しました。市場で売買される株式が増え、より多くの投資家のみなさまにご参加いただきやすくなりました。
流動性を高めた結果として、総株主数は1万名を超えることができました。この調達した資金を将来の収益を生む投資に振り向け、その成果を業績と株主還元でお返ししていきたいと思います。
キャッシュアロケーション
谷口:キャッシュアロケーションについてお話しします。スライド左側が原資で、事業から創出するキャッシュに、昨年12月に実施したファイナンスを加えたものです。これらを3年間で次の3つの要素に配分していきます。
成長投資には約120億円プラスアルファを充てる予定です。具体的には、技術・商品開発、人的資本の強化、海外の新拠点設立などに充てます。
また、将来の収益を生むための投資として、基盤投資に約55億円を配分します。生産自動化設備や本社の大規模改修を予定しています。
最後に、株主還元として約90億円以上を充てる計画です。配当については、あらかじめ計画に組み込んでおり、安定配当85円を下限としてお約束できると考えています。
これらを支えるのは、自己資本比率76パーセント、実質無借金の財務基盤です。成長投資と高水準の株主還元を同時に実行できる状況です。
中期経営基本計画 業績目標
谷口:これらの施策を通じて目指す3年後の姿を示します。2029年3月期において、連結売上高は600億円、連結営業利益は51億円を目標としており、2026年3月期の553億8,600万円から約46億円の売上を積み上げる計画です。また、ROICは6.4パーセントから6.6パーセントに向上する見込みです。
9年間全体において、この3年間をステージ1「再定義」と位置づけ、将来の飛躍に向けて積極的に投資を行い、事業基盤を構築する期間と位置づけています。そのため、2027年3月期のROICは、先行投資の影響により一時的に低下する見込みです。
背伸びした計画ではなく、着実な計画を着実に超えていくことを目指していきます。
サステナビリティ方針
谷口:サステナビリティ方針についてです。企業目的「Smiles for the Public」を原点に、「三つの安心」「四つの言葉」という価値観を大切にします。
また、経営方針に基づいて進めている長期経営戦略「NEXT100 TOA」の取り組みは、当社だけの目標のみならず、社会にとっても重要なテーマです。
マテリアリティ
谷口:当社のサステナビリティ方針を前提に、「NEXT100 Initiatives」の取り組みをESGの観点で整理し、マテリアリティとしました。
配当方針
谷口:株主還元についてご説明します。当社は、株主のみなさまへの利益還元を段階的に強化してきました。
以前は安定配当20円、配当性向35パーセントを目安としていましたが、2023年3月期には安定配当を年間40円、配当性向を45パーセントに引き上げました。さらに、2026年3月期からは新たな指標として株主資本配当率(DOE)を導入しました。
安定的で見通しの立つ株主還元と、資本効率を重視した企業価値向上の実現、さらにDOE5パーセント以上を基準に年間85円の安定配当を維持することを基本とし、業績を加味した連結配当性向85パーセントとのいずれか高い方を目安として配当金を決定します。
この方針により、高水準で継続的な株主還元を行うとともに、会社の成長を明確に示すため、方針を変更してきました。今後も株主価値の向上につながる取り組みを継続していきます。
関本:配当と資本効率について、うかがいます。先ほどキャッシュアロケーションについてご説明いただきました。配当が大きく増えたことは、投資家側にとってはうれしいニュースです。
しかし一方で、これだけ増配すると「投資に回せるのか、財務体質に問題はないのか、キャッシュフローは?」といった疑問も出てきます。この点についてお考えをお聞かせください。
谷口:まず、当社の財務基盤は非常に健全な状態です。自己資本比率は70パーセントを超え、借入もほとんどなく、実質無借金経営を行っています。また、これまでに内部留保も十分に蓄積されています。
その上で、配当の原資は毎年の利益であり、蓄えを取り崩してお支払いするものではありません。当社は年間で相当額の営業キャッシュフローを生み出しており、その中から成長投資と株主還元の両方を実施することが可能です。計画の中にもしっかりと組み込まれています。
成長投資と株主のみなさまへの還元に振り向けることが、資本効率を高め、企業価値の向上につなげると考えています。
関本:資本効率について、ROEは今期予想で約6パーセント、現在のPBRもおそらく1倍程度かと思います。ROEを10パーセント以上に引き上げるなど、ステージ2以降でさらなる資本効率の改善は可能なのでしょうか?
谷口:資本効率の向上は、当社にとって重要な経営課題であると認識しています。今中計3年間の数字は、長期経営戦略「NEXT100 TOA」の9年間全体の中で見ても十分ではないと認識しています。
当社は社会インフラを担う企業として、安定した経営と財務の健全性を維持することが非常に重要だと考えています。その上で、成長投資の拡大による収益力向上と株主還元の充実を通じて、資本効率の改善を図っていきます。
特に日本の会計制度および当社事業の特性からすると、成長投資においては資産取得をして減価償却していくかたちよりも、年間損益として試験研究費や労務費などの費用に計上される場合が多いです。したがって、成長投資を拡大すると短期的にROEを引き下げる方向に作用してしまいます。
このような背景も、高い配当性向を方針に掲げた理由の1つです。短期的にROEの数値目標だけを追うのではなく、持続的な企業価値向上の結果として、ROE向上を実現していきたいと考えています。
株主数の変遷
谷口:個人株主数の変遷です。2023年3月期における配当方針の変更や新NISA制度の後押しもあり、個人投資家のみなさまは年々増加しています。
また、昨年度実施したファイナンスにより市場に流通する株式が増加し、より多くの投資家のみなさまにご参加いただきやすくなりました。その結果、2026年3月期には個人株主が9,000名を超えました。
本日ご覧いただいているみなさまも、ぜひ応援いただけましたら幸いです。
本日、覚えていただきたい3つのポイント
谷口:本日の内容を、3つのポイントでまとめます。
1つ目は、当社の特徴として、社会に不可欠な事業で高いシェアを持つ、安定したニッチトップであることです。
2つ目は成長面として、「報せる」の役割を進化させ、グローバル展開を加速し、2034年度までに連結売上高1,000億円超を目指します。
3つ目は株主還元です。重点投資を実行しつつ、連結配当性向85パーセントを目安に高水準の還元を続けていきます。
「おせっかい」を社会を支える力へ
谷口:最後に、私の思いをお伝えしたいと思います。海外では、日本のように頻繁かつ丁寧にアナウンスが行われているわけではありません。
そもそも、誰かのためにわざわざ音声で案内するという行為は、日本の少し「おせっかい」な国民性に由来しているとも言われています。しかし、この日本の「おせっかい」の良さが、世界で見直されつつあるようにも感じています。
当社の企業目的「Smiles for the Public 人々が笑顔になれる社会をつくる」は、いわば「おせっかい」なことです。しかし、この「おせっかい」な企業目的こそが私たちTOAの存在意義であり、これを世界に広めることで、世界中の人々が笑顔になれる社会を作ることにつながると確信しています。
これからも商品や技術で、それ以上に私たちの思いによって、人々が笑顔になれる社会を作る集団であり続けたいと思います。誰かが誰かの笑顔を願って行動している、その行動を支える「おせっかい」な私たちTOAを、ぜひ応援いただければ幸いです。
以上です。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:還元方針と財務基盤の継続性について
分林里佳氏(以下、分林):「昨年の大幅な増配発表と、その直後の自己株式処分のタイミングが市場で大きな話題となりました。私は御社の高配当を魅力に感じ、腰を据えて長期で応援したいと考えています。
今回のテーマにもある安定配当について、今後の事業環境の変化も踏まえ、現在の高い還元方針を将来にわたって維持・向上していくための秘訣や、社長の自信のほどをお聞かせください」というご質問です。
谷口:当社の還元方針を支えているのは、強固な事業基盤です。非常用放送設備は安定した需要があり、国内外で更新需要も継続的に発生します。
また、自己資本比率76パーセント、無借金という健全な財務基盤も大きな強みとなっています。このような強固な事業基盤と財務基盤があるからこそ、成長投資を行いながら、高水準の株主還元を継続することが可能です。
健全な財務体質だけでは継続性に乏しいという危機感を持ち、適切に成長投資に振り向けること、また、「報せる」を社会インフラとする使命感を持つことが、事業の維持や企業価値の向上につながると考えています。引き続きご支援のほどよろしくお願いします。
質疑応答:海外市場における注力分野について
分林:「さまざまな分野で製品を展開していると思いますが、海外成長の加速にあたって、どの分野をメインに進めていく方針でしょうか?」というご質問です。
谷口:海外は一括りにできず、地域ごとに市場環境や法規制、規格といったものが異なります。それぞれの市場状況に応じて重点領域を変えながら事業を展開していきます。
質疑応答:海外市場のシェア拡大に資する強みや背景について
分林:「貴社の非常用放送設備は日本の消防法によって設置が義務づけられているという背景があり、そこに対する実績やノウハウでシェアを伸ばしているものと思います。海外も同様にシェアを拡大していけるのでしょうか? 他社の参入障壁や、貴社独自の強みなど、現時点で成長できる理由として認識しているものはありますか?」というご質問です。
谷口:特に非常放送という分野においては、国内では消防法で規定されています。例えば台湾では日本の消防法に準じたものが古くから適用されているため、当社の競争力も高まっています。
さらに、ヨーロッパのEN規格も、ヨーロッパの中だけでなく、周辺国やアジア諸国も準拠したかたちで適用されている国があります。ただし、義務化されていない国もあり、また一部の国ではまったくそのような規定が存在しない場合もございます。
当社は、有馬温泉の火災事故をきっかけに、非常放送を生み出したパイオニアです。災害時に何が起こっているのかわからないまま避難できない状況を避けるため、しっかりと音声で安全な避難を促すシステムの価値を広めるとともに、「人の命はもっと大切なんだ」という認識をその国の文化として育てていく必要があると考えています。
そのような市場を開拓すると同時に、その要望に応えられる商品開発や技術開発、彼らが保有する予算に合わせたコストダウンの施策も含めて、より世界の人々にこの非常放送が届くような施策を進めていきます。
質疑応答:海外での成長促進とリソース拡充の取り組みについて
関本:海外市場は一括りにできないというお話もありましたが、やはり海外の成長が重要なテーマだと考えています。
現状として、海外の販売は代理店に預けている部分が多いとのことですが、ボトルネックの解消、エンジニアリングあるいは提案力を強化するためのリソース拡充のために、どのようなアクションを検討されているのでしょうか?
谷口:ご指摘のとおり、最終的には人間の提案力が必要です。AIによる効率化が進む中でも、現場ごとにユーザーが抱える課題を聞き出すことが出発点であり、そのためには人と人とのコミュニケーションが不可欠です。
現在は、その国の首都に事務所を構えているのみですが、今後は各地に営業網を設けてニーズを吸い上げ、相談に応じる体制を整えたいと考えています。そのためには主に人のリソースが必要です。人材の採用を強化するだけでなく、現地でエンジニアリング能力の高い企業があれば、M&Aも選択肢の1つとして検討しています。
質疑応答:人材の育成期間と難易度について
関本:提案できる人材を育てるには、何年か経験を積まないと難しいものでしょうか? もしくは1年間から2年間でしっかり教育を行えば対応できるものなのでしょうか?
谷口:以前は、現場での経験をかなり積まないと対応が難しいとされていました。また、商品がネットワーク化されていて設定や変更が難しい部分もありました。しかし、現在では設定や変更についてはAIやネットワークによって、簡単にできるようになってきています。
むしろ、そのような業務をさらに簡単にすることが、我々の技術課題だと捉えています。教育コンテンツを充実させ、半年から1年程度で戦力になれる体制を整えることが重要だと考えています。
質疑応答:ステージ2以降の見通しと成長戦略について
関本:今年のステージ1の期間は積極投資を行うため、売上は伸びるものの利益は大きく伸びるわけではないと認識しています。ステージ2以降のステージ1が花開くタイミングではさらに伸ばせるものなのか、見通しを教えてください。
谷口:非常に答えにくいところですが、そうなることを期待しています。ただ、足元でも中東情勢や為替状況を含め、先がなかなか読めない状況です。しかし、そのような状況下においても投資の手を緩めることなく、基盤を構築していくことが将来の成長につながると考えます。
短期的な変動に惑わされることなく、将来のビジョンに向けて9年間を走り抜ける覚悟で、まずはこの3年を着実に実現し、その中で少しでも数字として結果をお返しできればと思っています。もちろん、短期についても諦めずに、しっかりと日々の管理や統制を進めていきます。
谷口氏からのご挨拶
谷口:当社はこれまで社会課題と向き合い、変化に挑む意志を持って価値を生み出してきました。今後もこれまで培ってきた音の技術や情報伝達の力をさらに広げ、国内だけでなく海外においても一層社会に必要とされる価値を届けていきます。
音の技術をさらに昇華させ、「報せる」社会インフラ企業を目指していきます。
また、2034年度の創業100周年に向けて、成長への投資と株主還元の両立を図りながら、次の100年も社会に必要とされ続ける会社を目指し、誠心誠意邁進していきます。
ぜひ今後ともTOAを応援いただければと思います。本日はご視聴いただき、誠にありがとうございました。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:御社は「つながるビジネスによる収益基盤の強化」を重点施策とされています。株主としては、機器を一度販売して終わるモデルから、保守・クラウド・遠隔監視・ソフトウェアなどの継続収益型へ移行できれば、企業価値の評価も大きく変わると考えています。現在、ストック型・サービス型売上が連結売上高や営業利益に占める割合はどの程度で、2030年頃にはどこまで引き上げたいと考えていますか?
回答:今中計の重点施策として掲げている「報せるソリューションの革新」は、「情報を届け、行動につなげるところまでを見届ける」サービス提供やコンサルティングまでを価値として提供し収益化していくことを目指した取り組みです。現時点で2030年時点でのストック型・サービス型の収益規模を数値でお示しすることは難しいですが、上記のような取り組みを通じて事業を変革していきます。
<質問2>
質問:御社は「Dr. Sound―社会の音を良くするプロフェッショナル集団―」という2030年のビジョンを掲げています。これまでの音響機器メーカーというポジションから、AI、センシング、ネットワーク、映像などを組み合わせた社会インフラ・ソリューション企業へ進化できれば、大きな成長余地があると考えています。
今後、AIやIoTを活用した新規事業について、売上高だけでなく営業利益ベースでどの程度の事業規模を目指していますか? また、既存の音響機器事業とのシナジーをどのように数値化していますか?
回答:これまで培ってきた「音」による情報伝達の強みを核として、セミナーの中でもご説明した「報せる」の価値をさらに高め、世界へ広めていく活動を進めていきます。
これを実現するためには、私たちの持つハードウェアやシステムの技術にネットワーク、AI、IoTの技術を掛け合わせたソリューションの開発が不可欠であり、多くのものがこれらと切り離せないものとなっていくと考えますので、切り分けて数値をお示しすることは難しいです。
新規事業としての割合ではなく、これらの取り組みを進めることで9年後に売上高が1,000億円超の規模となることを目指しています。
<質問3>
質問:中期経営計画ではROIC6パーセントから7パーセントを経営指標とされていました。一方、成長投資を行う一方で株主還元も強化する方針です。
今後はROICを単なる目標値として掲げるだけでなく、事業別ROICを開示し、資本コストを下回る事業については撤退・縮小も含めてポートフォリオを見直す考えはありますか? また、余剰資本が生じた場合の配当・自己株式取得の判断基準も教えてください。
回答:資本効率を高めていくことは重要な経営課題の1つです。従来の事業を核としつつ、新たな事業領域に進出し、非連続的な成長を遂げることにより、企業価値の最大化、事業ポートフォリオの安定性を高める必要があると考えています。
一方で、社会インフラを担う企業として、安定した経営と財務の健全性を維持することも非常に重要であると考えています。
財務の健全性の維持、成長に向けた積極的な投資、高水準で継続的な株主還元の最適なバランスを勘案し、引き続き資本効率を高める取り組みを進めていきます。
<質問4>
質問:2025年3月期は営業利益35.9億円と過去最高となり、2026年3月期には45億円を目標とされています。一方、中期経営計画では営業利益率8.7パーセントを目標としていました。
今後、売上高を増やすだけでなく利益率をさらに改善する余地はどこにあると考えていますか? 製品価格、商品ミックス、生産性向上、販管費効率化のそれぞれについて、営業利益率を何ポイント程度改善できると見ていますか?
回答:中東など不安定な社会情勢に伴う原油高や半導体の受注バランスなどによる原材料価格の高騰、物価上昇、賃金上昇などにより製造原価、販売管理費は上昇傾向にあります。
現在これらのコストを抑え込み、低減していくことは難しい状況にあり、新商品開発やエンジニアリング力の向上による提供価値の向上と、販売価格への転嫁により、売上高の向上と利益率の改善を合わせて進めています。
<質問5>
質問:2025年3月期は日本国内の業務用放送機器に加えて、中国・東アジアを除く海外3地域でも収益が好調だったとのことです。一方で、海外事業は為替や地域ごとの販売網などによって収益性に差が出やすいと考えます。
海外各地域について、売上高だけでなく営業利益率やROICをどのように管理されていますか? また、今後最も利益成長を期待している地域と、その地域での成長ドライバーを教えてください。
回答:地域により販売体制や商品ミックス、競合構造などがそれぞれ異なり、収益性にも差があります。また、強みとするエンジニアリング力やシステム提案力についてもエリアごとに差がある状況です。
経済成長のレベルや販路開拓の状況からアジア・パシフィック地域への成長期待が高いと言えます。この地域での成長ドライバーは、人口増加に伴う宗教施設向けなどの量的販売の増加に加え、経済成長と都市化に伴うビルや施設向けのシステム品販売の増加が見込まれます。