■業績動向
1. 2026年5月期の業績動向
日本国土開発の2026年5月期の業績は、売上高が135,207百万円(前期比9.6%増)、営業利益が7,150百万円(同208.4%増)、経常利益が6,566百万円(同237.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が5,450百万円(同308.9%増)となった。期初の業績予想に対して、売上高で4,207百万円、営業利益で3,650百万円の超過達成となり、中期経営計画初年度としては好調なスタートとなった。
日本経済は、雇用・所得環境の改善を背景として景気は緩やかな回復傾向が続いた。一方で、イラン情勢の緊迫化に加え、物価上昇の継続や米国の通商政策による景気の下振れリスク、金融資本市場の不安定化などが懸念材料となった。建設業界においては、公共投資の底堅い動きや民間設備投資の持ち直しもあり、建設投資全体としては堅調に推移した。しかし、建設資材・エネルギー価格の高止まりや労務需給の逼迫など、コスト面で懸念される状況が続いた。
このような環境下において、同社は、採算重視の受注と原価管理の徹底などを戦略的に推進した。この結果、建築事業で手持ち工事が順調に進捗し、同事業の売上高は20%を超える増収となった。利益面では、建築事業の大型工事が好採算となったことに加え、土木事業で収益構造の改善に取り組んだため、採算が大きく改善した。この結果、営業利益は3倍を超える増加となった。期初予想を大幅に上回った要因については、建築事業の手持ち工事の順調な進捗に加え、採算重視の受注や原価管理の徹底が想定以上に進展したことが主な要因である。
土木事業は、採算案件への入れ替えと施工トラブルの再発防止策などが浸透し、重大な不採算案件の発生がなくなったことで黒字転換を達成した。営業体制を強化して技術提案型の受注活動を推進したほか、施工指導強化室(2026年6月1日から「施工指導強化部」に格上げ)の設置による若手従業員の施工品質向上、民間工事を中心とした受注段階における収益性審査の厳格化、業績管理対策本部による重点現場の管理徹底が奏功した。これにより、従来の規模追求によって低下していた収益性が改善したほか、損失につながる施工トラブルを早期に把握・対処できる体制が整った。
建築事業は、工事の進行も採算も想定以上となったため業績が好調に推移し、期初計画に対しても大幅な超過達成となった。前期に受注した大型案件が順調で完工高が伸びたことに加え、そうした大型案件の採算が良好に推移したことや、上期中心に好採算の追加工事を獲得したことが寄与した。土木事業に先駆けて採算重視の受注体制へ転換してきた成果が現れていると言える。特に現場力の向上に伴い、採算管理を含めた適正な現場運営が可能となった。なお、過年度に発生していた不採算案件は2025年5月期までにすべて完工・処理を完了した。
不動産事業は、前期に計上された大型販売用不動産の売却がなかったため減収となったものの、賃貸収益はおおむね計画どおりに推移した。また、期初計画に対してやや未達になったのは、保有物件の売却時期が翌期へ繰り越しとなったことが要因である。なお、不動産事業は、投資回収型のビジネスで開発も売却も一定の計画のなかで実行しているが、期ごとの売却規模によって業績が変動する特徴がある。
エネルギー事業も、前期に計上したような大型販売用発電設備の売却がなかったため減収となったが、売電によるストック収益は安定的に推移した。エネルギー事業は、売電によるストック収益が主軸のため、引き続き自社開発案件やセカンダリーの取得を進めるとともに、蓄電池事業への進出などによりストック収益の強化を図る。一方、販売用発電設備の売却についてはタイミングを見ながら実施する方針である。
その他では、ANION事業が立ち上がり、福島エコクリートが収益をけん引するなど新規事業が順調に推移した。
2027年5月期は反動減を予想するも、中期経営計画は順調な進捗を見込む
2. 2027年5月期の業績予想
2027年5月期の業績予想について同社は、売上高が137,000百万円(前期比1.3%増)、営業利益が6,300百万円(同11.9%減)、経常利益が5,700百万円(同13.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が4,000百万円(同26.6%減)を見込んでいる。前期が好決算となった反動で減益予想となったが、中期経営計画2期目の予定どおりの計画値であり、「中期経営計画2027」は順調に推移する見込みである。
建設業界の環境は、労務費や資材価格、人材確保などの点で先行きが不透明な状況だが、同社は、適正利益を重視した受注戦略を引き続き推進し、収益基盤強化や成長事業投資により事業ポートフォリオを強化していく方針である。前期業績が期初予想を大幅に上回ったことによる反動減を見込むものの、収益基盤の強化が進むとともに受注環境も良好であり、中期経営計画は順調に進捗する見通しである。なお、一般的に資材価格に現れると言われる中東情勢の影響については、リスクが大きくならないよう物価の変動を考慮して受注し、案件ごとの採算管理を徹底している。
セグメント別では、前期の好決算をけん引した建築事業が減収減益予想となっているが、土木事業は収益改善を継続し、不動産事業とエネルギー事業は平常ペースに戻るなか増益に転じる見込みである。
採算案件への入れ替えが進んだ土木事業は、「損失処理」から「安定利益創出」の局面へ入るが、施工管理体制の強化を継続することで持続的かつ安定的な収益基盤の確立を図る。また、シールド工事や防災・国土強靱化などの案件を成長ドライバーとする一方、適正利益を確保した選別受注によって安定した利益体質への回帰を目指す。建築事業は、重点エリア・重点市場への営業を強化するとともに品質管理と施工管理を徹底し、収益性の向上と成長基盤の強化を進める。受注については、物流施設や食品工場など好環境かつ好採算の案件の確保を進める一方、次世代の人財の育成に適したやや小規模な案件も獲得する。前期の好決算の反動に加え、資材や労務など建設コストの上昇リスクを織り込んだ慎重な業績予想となっているものの、中期経営計画最終年度の利益目標達成に向け、順調な進捗と言える。
不動産事業は、大型案件を含む複数の不動産売却と開発関連案件の収益計上を見込み、大幅増益予想となった。さらに、優良収益不動産の取得やアセットタイプの多様化、土地区画整理事業案件の獲得などを推進し、ストック収益とフロー収益を組み合わせた持続的な利益成長を目指す。
エネルギー事業は、自社開発やセカンダリー案件の取得による発電容量拡大に加え、蓄電池事業やPPA事業への展開により収益基盤の拡充を図る。また、ストック収益を長期安定的に積み上げるため、既存施設のバリューアップも進める。
新規事業では、引き続き地域課題解決パートナーとしての地域共創事業の創出を図る。なかでもANIONは、中期経営計画内の本格的な収益化フェーズへの移行を目指し、南相馬工場で製造する「ADOXパウダー」の販売拡大に努める。福島エコクリートは、石炭灰リサイクル事業として継続的な利益を見込んでおり、環境価値と安定収益を両立する事業としての成長を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)