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kubell Research Memo(6):金額レンジによる業績予想を開示、達成の蓋然性が高まる(1)

■kubellの今後の見通し

1. 2026年12月期の業績見通し
2026年12月期の連結業績は、売上高は10,768~10,958百万円(前期比13.0~15.0%)、EBITDAは1,500~1,700百万円(同9.4~24.0%増)、営業利益は620~918百万円(同28.0~89.3%増)、経常利益は615~913百万円(同34.4~99.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は456~753百万円(同112.2~250.5%増)を見込んでいる。これまで成長率ベースによる開示から具体的な金額レンジによる開示へと変更した。これは、期初時点と比較して事業環境や業績動向に対する見通しの確度が高まったことを受けたものであり、業績の進捗に対する一定の手応えを示す内容と評価できる。

売上高の成長を維持しながらも営業利益や経常利益は前期比で大幅な増益を見込み、親会社株主に帰属する当期純利益については2倍超から最大で3.5倍近い成長を予想している。これは、Chatworkの利用が拡大する一方で、BPaaS事業への投資を継続しつつも収益性を重視した事業運営体制の構築が進展していることを反映したものと考えられる。

一方、中期経営計画では2026年12月期の売上高目標として15,000百万円を掲げている。通期業績予想の売上高との差異が生じているのは、M&A等で4,000百万円以上の売上貢献を達成することを想定しているためで、オーガニック事業の進捗が計画から大きく下振れていることを示すものではない。M&Aは足元でも複数案件の検討を継続しているものの、不確定要素があるため通期業績予想の開示には織り込んでいない。中期経営計画と通期業績予想を峻別する姿勢は、開示の透明性及び実現確度を重視する経営方針の表れであると弊社では見ている。

2. 弊社の見方
足元の株式市場では、AI技術の急速な進化を背景に「SaaS is Dead」という見方が広がりつつあり、SaaS関連銘柄の評価にも影響を与えている。AIエージェントが各種SaaSのUIを介さず直接APIを利用することで、基幹系SaaSでは席数課金モデルの正当性が低下し、情報系SaaSではAIによる内製化や低価格サービスとの競争激化が懸念されている。しかしながら、同社の主力サービスであるChatworkは、こうした議論とは異なるポジションに位置している。

Chatworkが属するコミュニケーション系SaaSは、人が直接利用すること自体に価値があるサービスである。ビジネスチャットは従業員同士や取引先とのコミュニケーションを支える基盤である。利用者それぞれが固有のIDを持って対話することが前提になるため、AIによって利用アカウントが集約されるという基幹系SaaSに対する懸念は当てはまりにくい。むしろ利用者が増えるほどネットワーク効果が高まり、サービス価値が向上する特性を持つ。会社側も、コミュニケーション系SaaSはAIに代替されるのではなく、「人とAIが対話する基盤」として価値が高まる領域であると位置付けている。

さらに同社は、AI技術の進化を脅威ではなく成長機会として捉えている。Chatworkには長年蓄積されたコミュニケーションデータが存在しており、AIによる要約や文面生成、業務支援機能などを実装する余地は大きい。実際に同社はAI要約やAI下書き作成機能の提供を開始しており、今後もAI機能の拡充によるARPU向上を目指している。このようにAIはChatworkの付加価値を高めるレバレッジとして機能する可能性が高い。

また、AI時代において競争優位の源泉はプロダクト機能そのものからディストリビューションチャネル、すなわち顧客接点へとシフトすると同社は考えている。AIの進化によってソフトウェア開発コストが低下し、機能面での差別化が難しくなる一方で、どれだけ広く深い顧客基盤を有しているかが競争力を左右する。同社は823万を超える登録IDと100万社を超える導入企業基盤を有し、Chatworkは中小企業の日常業務を支えるコミュニケーションインフラとして定着している。同社の有する強固な顧客基盤は、他社が短期間で模倣することが困難な資産と言える。

加えて、この顧客基盤はBPaaS事業の成長を支える強力な販売チャネルとしても機能している。既存顧客に対して追加コストをほとんどかけることなくBPaaSサービスを販促できるほか、日常的なコミュニケーションを通じて顧客の業務内容や課題を深く理解していることから、高いLTVや低い解約率にもつながる。AIによって新規参入のハードルが下がったとしても、蓄積された顧客接点と信頼関係は容易に代替・再現できるものではなく、同社の構造的な強みとなっている。

さらに、同社はBPaaS事業を通じて顧客固有の業務コンテキストを蓄積できる点にも強みを持つ。AIは公開情報のみでは一般論的な回答にとどまりやすいが、顧客ごとの業務フローや課題、過去の対応履歴といった文脈情報を組み合わせることで、より高品質な提案や業務支援が可能になる。同社はBPaaSオペレーターを介してこうした情報を収集・構造化できる立場にあり、AIの進化とともにその価値は高まると考えられる。単なるソフトウェア提供企業ではなく、顧客の業務理解とAIを組み合わせた付加価値創出が可能な点は大きな特徴である。

将来的に一部の業務特化型SaaSが再編圧力を受ける可能性は否定できないものの、同社はコミュニケーション基盤であるChatworkとBPaaSを組み合わせることで、「ヒトとAIが協働するプラットフォーム」への進化を目指している。従業員、BPaaSオペレーター、AIエージェントがChatwork上で連携し、総務、労務、経理、営業など幅広い業務を支援する構想は、AI時代における同社の方向性を示すものである。市場ではSaaS全体に対する懐疑的な見方も存在するが、同社はAIによって代替される側ではなく、AI活用を加速させる基盤として価値を高める立場にあると評価できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)

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