■TDSEの業績動向
1. 2027年3月期の業績見通し
中期経営計画の初年度となる2027年3月期の業績は、売上高3,200百万円(前期比6.5%増)、営業利益130百万円(同39.3%減)、経常利益130百万円(同44.1%減)、当期純利益85百万円(同51.3%減)を見込んでいる。中期経営計画の2年目、3年目の成長加速へ向けて、構造改革と成長投資に集中するため、1ケタ増収と減益を予想している。
日本経済は、物価上昇の影響はあるものの、雇用・所得環境は底堅く推移しており、景気は緩やかな回復基調で推移しているが、中東地域を巡る地政学的リスクや各国の通商政策を巡る不透明感が継続しており、依然として先行き不透明な状況が続いている。一方、情報サービス産業においては、企業の競争力強化、生産性向上のためのDX関連投資の意欲は引き続き高い状況にあり、なかでも生成AIやAIエージェントを活用したDX市場は拡大を続けている。こうした環境下、同社は中期経営計画に沿って、営業と技術両面での構造改革、ストック型収益源の準備、生成AIエージェントのビジネス基盤構築を推進している。
特に営業面では、生成AIやAIエージェントの提案、既存顧客に対するアカウントマネジメント、アライアンスパートナーとの接点拡大、顧客視点での成果を重視した提案などを強化している。技術面では、コンサルティング領域における生成AIの活用拡大、人材ポートフォリオの継続的拡充、収益モデルの多様化と継続収益基盤の構築を推進している。このように同社は、新規獲得と既存リピートに向けた積極的な活動、提供技術サービスの向上を図っているが、2028年3月期以降の成長加速に向けて構造改革に集中するため、売上高の伸びは1ケタにとどまる見込みである。加えて、減価償却費や外注費などを1.2億円ほど削減するものの、人材確保や商品仕入など成長投資約4億円を先行して使うため、営業利益は減益予想としている。
2027年3月期第1四半期は営業増益で、中期経営計画は好スタート
2. 2027年3月期第1四半期の業績動向
2027年3月期第1四半期の業績は、売上高が788百万円(前年同期比17.6%増)、営業利益が25百万円(同286.3%増)、経常利益が26百万円(同485.4%増)、四半期純利益が17百万円(同611.0%増)と大幅増益となった。生成AIやAIエージェント関連の受注が引き続き拡大し、売上高、利益ともに計画どおり順調に推移した。中期経営計画初年度の立ち上がりとして、好調なスタートと言える。
(1) 業績動向
同社は、新中期経営計画に沿って、成長軸の転換、収益構造の転換、実行体制の転換という3つの転換を進めた。営業面では、生成AI/AIエージェント領域における提案、既存顧客に対するアカウントマネジメント、アライアンスパートナーとの関係、マーケットインを重視した提案の強化を、技術面では、コンサルティング領域での生成AI活用、データマネジメント領域、AIエージェント領域の強化を推進した。また、営業、技術両面において、人材育成やストック収益基盤構築など成長投資を先行的に進めた。この結果、DifyとDatabricksが順調に拡大し売上高を押し上げ、営業利益は、成長投資に伴って費用は増加したものの、増収効果によって大幅増加となった。また、通期業績予想に対する売上高の進捗率が24.6%と前年同期と比べてやや早い進捗となったが、これは、生成AIやAIエージェントを中心に大手企業からの引き合いが強まり、受注が継続的に積み上がったことが要因である。
(2) 領域別の状況
主要領域の状況は、生成AIエージェント領域では、企業のAI活用が「実験」から「業務実装」へ本格的に移行するなか、Difyを中心に引き合いが強く、Dify関連の売上高は前年同期比2倍以上の増加となった。従来のコンサルティング領域では、営業と技術組織を再編したことで攻めの営業姿勢に転換するとともに、生成AIの活用を徐々に強めた。また、「TDSE AI Forge」をリリースし、セキュアなオンプレミス環境で高速稼働するAI基盤サービスの提供も開始した。データ基盤領域では、国内でも希少なDatabricksの「Silver Tier」として正式認定されたことで提案時の優位性が高まり、大手企業からの引き合いが大きく増えているようだ。SNSアナリティクス領域では、既存契約の継続を最優先することで安定したストック型収益基盤としての役割を維持する一方、生成AI機能「Quid Terminal」をリリースして新規顧客の開拓にも努めた。また、AIエージェントとの連携機能の実装も進めた。
(3) 中期経営計画の進捗
構造改革は全般的に想定どおりのスピードで進行している。成長軸の転換は、Difyを中心とするAIエージェント案件の引き合いが拡大傾向で売上高が大幅に増加、コンサルティングにおける生成AIシフトも開始するなど、想定以上の進捗となった。収益構造の転換は、AIエージェントの継続利用やAI基盤の運用が好調のうえQuidも前期並みに推移するなどストック型収益が順調に積み上がり、計画どおりの進捗となった。実行体制の転換も計画どおり、営業面の組織統合と人員強化を第1四半期中に完了し、運用オペレーションや売上精度向上に向けた取り組みを開始した。技術面でも、コンサルティングの生成AIシフトに向けた体制移行が完了し、スキル強化に向けた人材育成計画の策定に入った。KPIも、中期経営計画の立ち上がりであるにもかかわらず、生成AIエージェント売上比率は通期目標の45%以上に対して既に47%、ストック型売上比率も通期目標の23%以上に対して23%に達するなど、順調に推移した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)