■成長戦略
エブレンは半導体市場の成長とともに事業を拡大させてきたが、過去には通信関連分野が主力を担うなど、市場環境の変化に柔軟に対応して発展してきた経緯がある。今後も市場動向を的確に捉え、持続的な成長を目指す。企業価値の拡大に向けた重点施策として、「コア事業の強化」「受託範囲の拡大」「ボードコンピュータ事業強化」「中国子会社の戦略的活用」という4つの戦略を掲げている。これらを着実に実行することで、CAGR10~15%の成長路線を堅持する計画である。具体的な数値目標として、2029年3月期に売上高5,500百万円、経常利益850百万円を掲げている。
(1) コア事業の強化
顧客メーカーの要求仕様に基づく受託設計・受託生産・長期的安定供給のビジネスモデルをさらに拡大していく。これまで大手メーカーは、設計・部材調達・生産などすべてのプロセスを自社で完結させていたが、今後は「選択と集中」が進み、ノウハウを持つ専業メーカーとの協業が進むと見られている。こうした市場環境の変化を捉え、同社は専業メーカーとしての優位性(短納期・低コスト・高品質)を生かし、顧客との協業を通じて設計資産や知見を蓄積していく。これにより、市場における競争優位性のさらなる向上を目指している。
(2) 受託範囲の拡大
近年、顧客メーカーの間では部品を個別に調達する形態から、そのまま組み込み可能なユニット(完成体)としての調達を希望する傾向が強まっている。同社はこうしたニーズに対応し、受託範囲をより完成品に近い形態へと拡大する体制を強化しており、付加価値の向上を通じた収益の伸長を目指している。
この戦略の具現化の1つとして、特に成長が期待されるのが電力関連ビジネスである。背景には生成AIの普及に伴うデータセンターの増設があり、関連する送電設備などの需要が拡大している。電力業界は参入障壁が高いとされるが、新規案件を獲得して試作にとどまらず量産開始まで漕ぎつけた場合、急速な伸びが期待できる。そうしたなか同社は、電力会社関連の新規ビジネスを獲得した。さらなる受注獲得が期待され、先行きが注目される分野と言える。
(3) ボードコンピュータ事業強化
4つ掲げる戦略のうち、同社が最も注力する戦略である。技術革新に伴う機器の小型化や低消費電力化が進展するなか、エッジコンピューティングやIoT技術を用いた小型ワンボードコンピュータを活用し、FAシステムやDX関連のシステム開発を加速している。パートナーシップの活用を含めた技術部門の体制増強を図り、製品開発力のさらなる向上を目指している。
主な開発案件には、半導体検査用制御装置をはじめ、次世代ワイヤーボンダーのシステム制御用コントローラーや光学特性検査装置向けの信号変換・演算ボード、半導体製造装置用の高速モーションコントローラーなどがある。さらに、監視カメラやFAカメラ向けの「AI画像処理システム」、FA用の「ショットピーニング用AEセンサーモジュール」、ビーム描画装置などの「半導体製造装置用制御部」、精密機械向けの「除振装置用コントローラー」、「ECU(Electronic Control Unit)検査装置」といった幅広い分野での製品開発に取り組んでいる。
(4) 中国子会社の戦略的活用
中国子会社の蘇州エブレン(蘇州惠普聨電子有限公司)を拠点とし、中国・台湾を中心とした技術力と価格競争力に優れた現地部材調達先の開拓を推進している。現地生産によるコスト競争力を生かした製品を、現地企業や日系進出企業へ提供する方針である。現地企業との取引では、既に医療機器メーカーなどで実績を上げている。中国関連ビジネスを取り巻く環境は、内需低迷や日中関係の影響が懸念されているが、同社は中国と日本以外の第三国間で行う「アウト・アウト取引」も多く展開しており、こうした取引の拡大を通じて事業の安定と成長を図る。
■株主還元策
2027年3月期配当は前期比10円増の58円を予定、今後も増配を継続する方針
同社は2020年の上場以来、毎期増配を継続してきた。2026年3月期の1株当たり配当金は48.0円、配当性向は19.9%となった。2027年3月期は前期比10.0円増の58.0円を予定しており、今後も安定した増配を継続する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)