本日の内容
氏家俊明氏(以下、氏家):みなさま、おはようございます。株式会社タダノ代表取締役社長CEOの氏家俊明です。本日は暑い中お集まりいただき、誠にありがとうございます。
また、Webでご参加いただいている方々にも、お忙しい中、お時間を割いていただき感謝申し上げます。これより、2026年1月から6月の上期決算説明会を始めます。
本日は、スライドに記載の2026年度上期実績と2026年度業績予想、「中期経営計画(24-26)」の進捗状況についてご説明します。
26年度上期(1-6月)実績と26年度業績予想
まず、2026年度上期の実績についてです。スライドに示したとおり、2026年度上期はTIS(タダノインフラソリューションズ株式会社、旧IHI運搬機械)の買収効果に加え、米国関税還付などにより、増収増益となりました。
TISに関しては、昨年7月1日に買収を行ったため、上期業績に初めて合算されています。また、2026年度通期の業績予想については、期初予想を据え置くこととしています。
具体的な2026年度上期の実績について3点ご説明します。スライド右側にある2つの棒グラフは、2026年と2025年上期の実績を示しています。まず1点目は、その棒グラフをご覧いただくとわかるとおり、堅調な北米市場に加え、TISの買収効果もあり、上期の売上高は過去最高を更新しました。
2点目に、売上高の増加に加え、米国関税還付などの影響もあり、営業利益が増加しています。
米国関税還付については、還付があった場合、お客さまに価格転嫁でご負担いただいていたものをお返しする分と当社が得る分があり、これらはほぼ半々です。お返しする分については、売上金額の減少として計上しています。また、当社が得る分については営業利益に含まれています。
3点目は、営業体制強化による新規顧客の獲得があり、長野県にあるTUL(旧長野工業)の製品である、自走式高所作業車の海外売上が順調に増加しています。
2026年度通期の予想については、プラス要因(関税還付・円安)がある一方で、中東情勢などの影響による先行きの不透明感が見られることから、期初予想を確実に達成するという方針で、据え置きとしました。
26年度 事業環境認識
事業環境認識です。まず、スライド左側に記載の需要動向についてです。日本については、中東情勢などの影響で、民間の中型工事に若干の遅れが見られますが、一方で公共工事は順調に進んでいます。
海外については、中東情勢が依然として不透明で、今後の見通しはつかめていません。上期の中東需要は減少しており、船積みが困難な状況も見受けられます。
しかし、商談は継続していますし、中東でのクレーンの使用頻度も変わらず高いままです。そのため、輸送ルートが確立できれば、需要は回復すると考えています。
上期に積み残した分については、下期に入り、他のルートでの出荷が始まっています。このため、中東市場には特に大きな問題はないと考えています。また、北米需要は堅調に推移しています。
次に、マクロ情勢についてです。為替に関しては、資料作成時はユーロ安・ドル高の状況が見られましたが、足元ではドルが安含みになっています。これは当社にとってはあまり望ましい状況ではありませんが、日本製品の売上が最も大きいことを考えると、円安・ドル高は追い風になっていると言えるでしょう。
米国関税については、今後の見通しは不透明であるものの、相互関税の還付措置などもあり、少なくとも今期については追い風になると見ています。
中東情勢や地政学リスクについては依然として先行きが見えませんが、油価が上昇している現状は北米や中東において油ガス関連のお客さまが多い当社にとって、マイナスよりは若干のプラスに働いているのが実態です。
最後に、市場競争環境についてです。米国において移動式クレーンは輸入への依存度が高い状況です。そのため、日本だけ、あるいはドイツだけが不当な関税措置を受けない限り、基本的に競争環境は大きく変わらないと理解しています。
ただし、過度な関税が課されると、クレーンのレンタル業者などが購入を控えるようになり、需要が冷え込むことが予想されます。その結果、当社にとってマイナスの影響が生じる可能性がありますが、現状では特段の問題はありません。
また、中国系メーカーが当社の主力市場、すなわち西側先進国市場への参入を進める動きについては、非常に懸念しています。この点は引き続き注視していきます。
欧州需要は回復傾向にありますが、当社の製品ラインナップ不足解消については、時間を要する問題があり、ここで販売に苦戦を強いられています。販売体制を強化することで、シェアの回復を目指しています。
中東情勢・米国関税影響
まず、中東情勢の外部環境として、中東地域の地政学リスクが続いています。ホルムズ海峡の情勢悪化に伴い、一部の船舶が代替航路へと切り替えており、その結果、調達・物流コストが増加しています。
業績への影響ですが、現時点では喫緊の生産影響はありません。海上運賃や調達・物流コストの増加については、2026年度見通しにすでに織り込み済みです。
中東向けの出荷は、先ほどお話ししたとおり一部後ろ倒しとなりましたが、別航路を活用することで再開しています。
また、中東のクレーン稼働は引き続き順調です。油価上昇が米国を含む他の産油国でのクレーン需要増加につながっているのが現状です。
次に、米国関税の外部環境についてです。還付は継続しています。また、国際緊急経済権限法(IEEPA)が無効化されたことで還付が進行しており、上期と下期に分けて還付される見込みです。
さらに、7月24日に122条追加関税(10パーセント)が失効し、301条追加関税へ移行しました。この301条追加関税による日本の追加関税率は12.5パーセントとなります。
現行の301条追加関税は強制労働等を理由とした制裁措置とされていますが、日本で強制労働が存在するとは到底考えられません。この点については、日本政府は大きな不満を表明しているわけではありません。
当社としても、他国と同じ条件で大きな影響がないと判断しており、同じ範疇であれば、お客さまと関税コストの負担を折半するという話し合いができています。「関税が還付された時にはお返しします」という考え方をベースとして進めているため、当社から大きな声を上げることは考えていません。
業績への影響ですが、301条追加関税(12.5パーセント)適用の影響はすでに想定の範囲内です。なお、2026年上期に関税還付として29億円を計上しました。
また、価格転嫁については顧客の理解も得られており、市場環境も追い風となり、受注・販売は堅調です。したがって、少なくとも今期についてはご心配にはおよばないと考えています。
建設用クレーン需要動向(RT・AT・TC)
スライドは建設用クレーンの需要動向を示しています。表の上部、横一列にはカレンダーイヤーの2022年から2025年、また、2025年上期と2026年上期の前年同期を比較した数字が記載されています。
ご覧のとおり、北米は1,500台前後で堅調に推移しています。今年と昨年の上期を比較すると、昨年のほうが若干多いですが、おおむね安定した動きを見せています。
また、補足としてお伝えすると、米国では台数だけでなく、大型化の傾向が顕著に進んでいます。したがって、売上金額が落ちる見込みはありません。
中南米については、他の地域と同様に、2022年から2024年にかけて大きな伸びが見られます。このような急激な増加が起こる背景としては、中国メーカーが特定の国で積極的な販売を進めた時に見られる現象です。
欧州は安定しており、1,500台前後の水準で推移しています。2025年は1,400台程度でしたが、今期はすでに10パーセント弱増加しています。そのため、おそらく今年は昨年より多く、1,500台程度のレベルになると見込んでいます。
中東についても、2022年から2024年にかけて大きく増加しています。この増加は中国企業の販売が関与している状況です。
一方で、今期は減少していますが、1つの要因として、船積みルートを変更する必要があるという当社と同じ状況が中国企業にも発生しているのではないかと推測されます。しかしながら、中東全体としては堅調であると考えてよいと思います。
オセアニアについては、2023年から2024年にかけて急激に減少しています。この2年間については、中国企業が輸出した機械の台数が、当社の販売店では確認できない状況で、正確な情報が不明です。
いずれにしても、2024年から2025年にかけて、オセアニアは低迷している印象があります。現在も実績としてはまだ大きな回復は見られませんが、「オセアニア市場は少し戻りつつある」といった感覚はあります。
アジアについてです。アジアでは、2022年から2023年にかけて跳ね上がっている状況が見られます。これは、中国企業が在庫機を大量に投入した結果であり、今期の上期についても同様に跳ね上がっています。また、中東に出せなくなった機械などがアジアへ流れていることも一因と考えています。
CISについてです。どの国を「CIS」と定義するかについては、現在でも大きな議論があるとは思いますが、2022年から2023年にかけて一時的に伸びを見せています。
正直申し上げて、2010年代には1,000台にも届いていませんでした。これはロシアには自国製のクレーンがあることが要因と考えられます。自国製のクレーンがあるために、輸入機はあまり多くありませんでした。
しかし、ウクライナでの戦争が始まり、自国製のクレーンが製造されなくなったようです。その影響で、中国からのクレーンが大量に流入する状況となっています。
ただし、中国製のクレーンであっても耐久年数は10年から20年は十分に持つため、2024年から2025年にかけては需要が減少しています。当社が製造するクレーンは30年は使用可能ですが、このように耐久性のある機械が普及すると、いずれ飽和状態に至ることとなります。
その結果、2024年から2025年にかけて需要が落ち込み、2026年上期でも大きく減少しています。これがロシアを中心としたCISの現状だと考えています。
一方、アフリカでは2024年から2025年にかけて需要が急増し、前年同期と比較しても大幅に増加しています。こちらは、中国企業が中国の投資案件に絡む機械として多く導入しているのではないかと考えています。
日本は約1,400台で堅調に推移しており、今期も昨年と同様の状況が続いています。
結論として、中国を除いた世界全体では現在、約1万6,000台の規模があります。これには、中国からロシアに輸出される機械の増加や、アジアなどに広がる中国製機械の需要拡大が背景にあると考えられます。
中国の国内需要については、2022年以前は5万台でしたが、その後2万台に減少し、現在は1万1,000台程度となっています。現時点でも減少傾向が続いているように見受けられます。ただし、中国の国内統計では、昨年よりも今年のほうが多いとの報告もあり、正確な状況は不明です。
いずれにせよ、中国の国内需要は以前の5万台から1万1,000台程度に減少しています。長期的に見れば、需要が2万台から2万5,000台程度まで回復する可能性はあると思いますが、5万台まで戻ることは難しいと考えています。
なぜなら、クレーンがまったくなかった国に急速にクレーンが導入され、その機械が20年から30年使用されるとすると、新規需要で市場が拡大してきた状況が、今後は入れ替え需要に移行すると予想されるからです。
そのため、欧米や日本と同じように入れ替え需要を中心とした市場に移行すれば、需要が極端に大きく回復することはないと考えます。
一方で、通常の西側諸国の事業では、5万台の市場が1万台規模まで縮小してしまうと、事業の継続が難しくなるのが一般的です。
余剰分の4万台を他の地域に供給しようとしても、その他の世界では需要がせいぜい1万5,000台程度しかありません。そのため、4万台が余った状態となります。
「余った4万台はどこにいってしまうのだろう」「なぜそれで企業が生きていけるのか」といった疑問点については、土地代が当社に比べて相当安いのか、あるいは設備投資の償却がほとんど必要ないのか定かではありません。
中国企業は3社に限定されています。そのうち1社は国営企業で、残りの2社は上場企業となっています。この2社が持つ資金がAIやロボット分野に一気に流れる可能性もあり、この点については不確定要素が残っています。
当社としては、とりあえず静観する方針ですが、中国製品が欧州、米州、あるいは他の地域に今後どのようなかたちで進出していくのか注視しています。現時点では、中国製クレーンが欧米市場に大規模に進出する事例は見られません。
建設用クレーン需要動向(RT・AT)
スライドは建設用クレーンの機種別需要動向を示しています。ラフテレーンクレーン(RT)については、2025年には非常に高い水準にあることが確認できます。
2025年および2026年の上半期のグラフをご覧いただくとわかるとおり、今期は前年同期より若干少ないものの、依然として高い数字にあるのが実態です。
また、オールテレーンクレーン(AT)については2023年以降、非常に高いレベルを維持しています。前年同期を比較すると若干下がっているようにも見えますが、この高い水準を維持できると考えています。
地域別についてはグラフをご確認いただければと思いますが、欧州はオールテレーンクレーンの市場となっています。北米については、RTとAT両方のクレーン市場があります。
建設用クレーン受注残高推移(RT・AT)
スライドは当社の受注残高の推移を示しています。右側が受注残高、左側が新規受注です。
左側の棒グラフの右から2番目が2026年の第1四半期で、大きく伸びていることがわかります。これは、北米で開催された「CONEXPO」という展示会の影響です。この「CONEXPO」は、比較的発注が多い展示会で、当社としては受注する機会が多い展示会と認識しています。
第1四半期に受注が急激に伸びたため、第2四半期は減少しましたが、まったく心配していません。
一方で、受注残高をご覧いただくと、破線がコロナ禍前の水準を示しています。これと比較すると、現在の残高は非常に高いレベルとなっています。
棒グラフの一番左側は、欧州での生産制約により供給ができなかったため、高止まりしてしまったものです。しかし現在は生産制約は解消されており、当社としては非常に高い受注残高を保持しているのが現状です。
以上が2026年上期のご説明です。
車両搭載型クレーンと高所作業車の世界展開
ここからは、今年を最終年度とする「中期経営計画(24-26)」の進捗状況についてご説明します。
スライド左側のグラフには、建設用クレーンと車両搭載型クレーンが示されています。
車両搭載型クレーンに関しては日本市場では、おおよそ当社製のシェアが50パーセントとなっています。これらは主に、トラックに架装するかたちの運搬用クレーンを指しています。
当社の建設用クレーン、車両搭載型クレーン、高所作業車の国内売上比率は、5対2対2となっています。スライド左のグラフは2026年上期を表しており、建設用クレーンが約250億円規模になります。ですので、車両搭載型クレーン、高所作業車はその約半分の約100億円規模となっています。
米州においては、日本よりも建設用クレーンの規模がはるかに大きいことがわかります。しかしながら、車両搭載型クレーンと高所作業車の売上はほとんどありませんでした。したがって、「買収で車両搭載型クレーンと高所作業車を増やしていこう。5対2対2まではいけるはずだ」というのが今回の中期経営計画でのお話になります。
同様に欧州においても、建設用クレーンに対して、車両搭載型クレーンと高所作業車の売上の割合を5対2対2までもっていけるだろうという見通しで、「買収していこう」という話でした。
結局のところ、Manitex社を買収することで、車両搭載型クレーンと高所作業車を欧州および米州で手に入れることができたのが、今回の最初のステップになります。
運搬機械のビジネス展開 – TIS
TISは、IHIの子会社であるIHI運搬機械という会社の事業を当社が買収し、その後現在の社名であるTIS(タダノインフラソリューションズ)に変更した会社になります。
IHI運搬機械が製造していた主な製品の1つが、スライド右上に掲載されている「連続アンローダ」というものです。これは、石炭船の船倉から石炭をかき出す機械です。石炭をかき出した後、コンベヤで石炭を運び、その石炭を陸上にある貯蔵地に積み上げるのが「連続アンローダ」という製品です。
「連続アンローダ」は現在もTISにとっての主力製品ですが、今後新規の石炭火力発電所が日本や世界で増えることは基本的にありません。そのため、メンテナンスに注力することが1つの方向性となります。
同様のシステムはバルク系の食料、例えば小麦や飼料などにも活用されており、これらは今後も増加基調にあると考えています。
したがって、食料・飼料系については新設が増えると予想されますが、石炭向けの新設については増加の見込みはまったくありません。
日本は東日本大震災以降、原子力発電所が停止しました。これを補完するために選ばれた手段が石炭火力発電でした。石炭火力発電所は、環境アセスメントを経ずに建設可能な小規模なものが複数建設されました。
ここで重要な点の1つは、現代の石炭火力発電が昔に比べてエミッション(排出)の観点で改善されていることです。
もう1つの点として、増加する電力需要を支えるために、石炭火力発電は今後20年から30年間は維持される見込みであることが挙げられます。
維持にあたっては、バイオマス混焼などさまざまな手法が検討されていますが、新設ではなく、延命のためのメンテナンスが非常に重要となり、今後20年から30年継続して求められるでしょう。
一方で、石炭火力発電所が次々に建設された当時、日本国内の供給元は数社に限られていました。TISがリーダー企業でしたが、そのほかには2社程度しかなく、この3社だけでは需要を賄うことができなかったため、中国製や韓国製の製品が導入されました。しかしながら、海外企業は撤退されました。
当社では、他社製品のメンテナンスも対応しているため、このような海外企業がいなくなった状況でも、引き続きメンテナンスを受けています。
そのため、石炭火力発電所の新設がないとしても、メンテナンス需要が減少する方向にはないと考えています。
ただし、新規の設置案件が減少すれば事業の先細りは避けられないため、今後の事業展開についてなにかしらの対応を講じる必要があると認識しています。この点については、後のページで詳細をご説明します。
スライド左下に掲載されている、「ジブクライミングクレーン」についてです。当社では「JCC」と略して呼んでいます。世界的にはタワークレーンと呼ばれるものに分類され、例えば近隣の「TOKYO TORCH」で使われているクレーンはすべて当社製品です。
過去の例で目を引くものとしては、「東京スカイツリー」があります。こちらもすべて当社製品を使用しました。
当社はリーダーであったものの、TISはほとんどが受注生産で、「お客さまの意向を聞いて作ります」ということをベースに仕事をしてきました。したがって、これまではコストを下げるというよりも、お客さまのニーズに応じた製品作りを重視してきました。
しかし近年では、レンタル業者がこの製品を所有するようになり、お客さまの要望についていくことが難しい状況になっていました。
タダノは量産化を得意とするメーカーであるため、タダノとの融合によりコストダウンや製品改善、性能向上を目指すことになりました。その一環として、TISのジブクライミングクレーン設計部門をタダノ開発本部に移管しました。こちらは出向で、現在すべてタダノに所属しています。
それにより、作り方やコストの見直しを進めており、その一環としてドイツで製造しているクローラクレーンがあります。タダノは400トン吊り以上のクローラクレーンをドイツで製造しています。
日本国内にあるクローラクレーンのメーカーは、当社以外に2社ありますが、この2社は主に400トン吊りまでを製造しており、400トン吊り以上となると非常に大きな機械となります。
このように、400トン吊り以上の非常に大きな機械を製造しているのは、ドイツ・アメリカ・中国の海外企業です。
クローラクレーンのアッパーストラクチャー、いわゆるブーム部分は、高張力鋼材(ハイテン材)のパイプを使用して製造されています。
ハイテン材を使用しないと重量が増し、結果として性能が低下します。クレーンの場合、先端へ行くほど軽量である必要があります。先端が重いと荷物を吊る性能が大きく制限されてしまいます。
ドイツではハイテン材を使った溶接技術が一般的であり、またハイテン材も豊富にあります。
一方、日本では軽量化があまり進んでいません。日本製鉄などで製造が不可能なわけではありませんが、需要が少なかったため、ほとんど生産されていません。このため、TISの呉工場にドイツからハイテン材を持ち込み、溶接を行いました。
しかし、ハイテン材の溶接には予熱を当てないと割れるなどの課題が伴い、非常に難しい工程です。現在、この課題に取り組んでいます。
日本でもこの技術が実現できれば、日本国内や、例えばオーストラリア、アメリカ西海岸などへの輸送時に同一製品のコストを削減できるメリットがあります。
さらに、この技術を用いることで機械の性能を向上させることも可能です。他社が行っていない、ハイテン材を活用した設計や溶接が可能になれば、当社は競争優位性を確保できると考えています。
工場での技術実証はすでに終えていますので、今後は新機種にどのように反映するかが課題です。
また、日本のクローラクレーン市場は事実上鎖国状態であり、当社を含め輸出している企業はありません。しかし、日本には多くの同様の形状のクレーンが存在しています。地震大国にもかかわらず「東京スカイツリー」は東日本大震災を経験しながらも、なんら問題なく耐えました。地震の際は恐怖を感じたかと思いますが、構造がしっかりと保たれていたのです。
こうした性能は他国製品では証明されていない部分もあり、ハイテン材を用いた設計や溶接を変革することで、世界市場にも進出していきたいと考えています。
これらはTISを買収し、タダノと一緒になったことで生じた大きなプラス効果の1つだと捉えています。
もう1つは、造船向けのクレーンです。こちらは、現在の政権が戦略として掲げる17分野の1つであり、造船向けクレーンの生産キャパシティ向上を目指しています。
日本の造船業再生に向けた取り組み
タダノは、8月25日に香川県内の臨海エリアに約10万平方メートルの土地を購入したことを発表しました。スライド右側に構想図を掲載していますが、この土地の一部を利用して、造船専用ジブクレーンのセミファイナル組み立てを行う予定です。
また、この土地には幹線道路があり、200メートル道路に面しています。この場所に新たに本社を建設しようと考えています。
現在のタダノ本社は高松市にあり、65年前に建てられたものになります。今回、初めて本社移設を行う予定です。新しい本社ビルを建設すると同時に、造船用の組み立て場所も準備する計画です。造船業は四国に非常に多く集まっています。
造船用クレーンの高さは70メートルから80メートルにもなるため、フルアセンブルよりセミアセンブルのほうが適しています。したがって、旋回輪より下と旋回輪より上の2分割の状態までここで組み立てを行い、その後バージで運搬する計画です。
日本国内で造船用クレーンを製造しているメーカーは、当社を含め2社です。他にも小規模で製造を行っている数社がありますが、政府の倍増計画を達成するには、それだけではとても足りません。
当社はTISとして、これまでは空いている造船所を借りて製造していました。しかしながら今回、この場所に自社のアセンブリ施設を構えることを決めました。この取り組みは一歩大きな前進になると考えています。
ただし、政府の計画は2035年までに倍増させることです。そのため、2035年までにクレーンが必要となりますので、全力で製造に取り組みます。
では、2035年以降についてはどうかというと、造船用クレーンは通常30年から40年使用されることから、その後の需要はほぼゼロに近くなると予測されます。
当社としては、この場所について、もともと自走式クレーンの製造のために買収を検討していた経緯があります。そのため、将来的には他の用途に転用する可能性もあります。ただし、専用の積み込み施設などを設置する計画があり、その投資は非常に厳しいものとなる見込みです。もし補助金などの支援が得られれば、それを活用しつつ進めていきたいと考えています。
スライド左側は、長野県のTUL(旧長野工業)です。この地域には高所作業車の工場がありましたが、近隣の工場を新たに買収し、製造キャパシティを従来の1.5倍程度に拡大しました。海外向けの台数も増加しているため、製造キャパシティを確保することが非常に重要だったと考えています。
欧州事業(AT・CC) 再建の進捗
当社にとって最も重要な課題である、オールテレーンクレーンおよびクローラクレーンの欧州事業についてです。現在、苦戦しています。
生産効率については、スライド左側に記載のとおり、非常に改善していると考えています。
さらなる対策と進捗としては、移管先である日本国内の工場とドイツのLauf工場で、生産工程への習熟を定着させることが非常に重要です。一方で、Lauf工場の生産効率は移管前を上回る水準まで改善しています。
非常に重要なのは、内製と外注の見直しです。ドイツにあるDinglerstraße工場は内製率が非常に高く、大型設備を多数保有しているため、メンテナンスコストが非常に高額となっています。
一方、ドイツ国内には製缶物の下請け企業が多く存在するため、外注を増やすことで生産コストの安定が図れるのではないかと考えています。また、ボラティリティの影響も考慮する必要があります。このような観点から、現在のメンテナンスコスト高の状況を打破しようとしています。
原価低減についても課題が含まれています。
販売強化については、当社の最も重要な取り組みになります。これまでは生産効率が悪く、原価や価格が高い上に納期も遅れていたため、販売部門にかなりの閉塞感がありました。しかし現在は、生産状況が改善してきたことを踏まえ、販売を加速させるために人員の入れ替えなどを進めています。
ただし、ラインナップに課題があります。オールテレーンクレーンは、一番小さいもので40トンから、大きいもので1,000トン程度まであります。このうち、重要なモデルが数機種含まれていますが、現在100トンと200トンのモデルが欠けている状況です。
大手のレンタル会社は1人のオペレーターがさまざまな機械を動かせるようにしたいため、モデルが歯抜けになると、「ラインナップをしっかり持っていない会社からは買えない」という状況になります。現在、その状況に直面しています。
しかしながら、挽回は簡単ではありません。現在の見通しでは、歯抜けになっているモデルをすべて上市できるのは2030年までかかる想定です。これをなんとか前倒ししようと取り組んでいます。
少なくとも来年や再来年においても新しいモデルは市場に投入されない見通しです。そのため、フルレンジがないと購買に至らない超大手のお客さまよりも、「このレンジとこのレンジだけでよい」という中小のお客さまに対し、手間はかかるものの、しっかりと売り込みを行っています。
北米市場〈当社主力市場の盤石化〉
北米市場についてご説明します。スライド右上グラフの水色のバーが北米の売上、紺色のバーがタダノの連結売上を示しています。2026年の予想として連結売上4,000億円を目指していますが、その中で北米の売上は1,100億円程度を見込んでいます。現在の為替レートでは、1ドル160円程度であるため、1 billionドルの売上で1,600億円に達すると見込まれます。
現在の北米事業は、ワンビリオンカンパニーを目指してモチベーションが非常に高まっています。買収したManitex社の売上が加わったことなどにより、ワンビリオンカンパニーを実現できると見ています。これを次期中期経営計画の期間中に実現することを目指しています。
欧州については、来年、当社が買収したDemag社が創立200年を迎えます。現在、元気のない欧州のモチベーション向上と、お客さまに対する当社のプレゼンス向上という意味で、来年はなんらかのしっかりとしたイベントを行う予定です。
以上でご説明を終わります。ありがとうございました。
質疑応答:上期の実績評価と想定との差異について
質問者:上期の実績に対する評価を教えてください。上期の着地、特に営業利益の進捗は非常に良好だったと思います。上期の計画は公表されていませんが、期初想定よりもかなり良かったのではないかと考えています。
また、関税還付の話もありましたが、期初想定よりも良かった点と悪かった点について、それぞれのポイントを教えてください。
氏家:まず、良かった点については、外部環境に非常に助けられているのは事実です。為替が当社にとって追い風になったことや、関税還付があったことが非常に大きな要因です。
売上は通期計画の半分を下回っていますが、米国関税還付のうちお客さまへお返しする分が売上金額のマイナスとして計上されている部分もあります。その点からすると、2026年連結売上目標の4,000億円は達成可能であると考えています。
ただし、中東情勢などによって船積みが順調に進められるかどうかという問題があります。中東に限らず、世界各地で船のやりくりが変化しており、これが期中に予定どおり進むかどうかが課題の1つです。
一方、良くなかった点については、買収した米国のManitex社が挙げられます。この会社では、買収前の設計において、当社から見ると不備があると判断される箇所が見受けられました。
大きな事故には至りませんでしたが、問題が発生しました。当社はこれを重大な課題と捉え、4月初めに一部モデルの販売を停止しました。この影響により、Manitex社の売上は上半期に大きく減少しました。
この問題に対応するため、日本の設計担当者が設計変更を行いました。
この期間中、対象モデルの新規の製造や販売は一切行いませんでした。その後、対応のめどがついた段階で、7月末から8月にかけて販売を再開しました。
お客さまからは厳しいお言葉をいただきました。一方で、タダノによるこのような措置を評価し、感謝の意を示してくださるお客さまも多くいらっしゃいます。
また、最も難しいと思われていたお客さまとも会話ができました。今後の対応方針をご説明したことで、前述のとおり「良かった」との評価をいただいています。そのため、下期の売上は回復すると考えています。
上期におけるManitex社の売上減少は残念ではありましたが、問題はすでに収束しており、結果的に良い方向へ進んでいると考えています。
Manitex社の買収時にともに取得した、欧州のPM社というナックルブームクレーン(車両搭載型クレーンの一種)のメーカーについてです。同社では、南米向けの取引が決済や船舶問題などで滞っていましたが、これも下期には回復する見通しです。PM社の上期業績は前年同期を下回りましたが、下期には回復し、前年と同水準になると見ています。
現在、PM社では生産力の増強が最も重要な課題となっています。ルーマニアに存在する下請け工場である孫会社への投資を進めており、工場の拡張や機械の発注も始まっています。これにより、PM社は成長していくと考えています。
次に、欧州についてです。欧州の生産能力は回復基調にありますが、ラインナップの不足は容易に解消できるものではありません。また、モチベーションが低下している販売担当者に対する人員の入れ替えなどが必要であり、これがなければ販売の拡大は難しい状況です。
まず、営業部門のリーダーを交代した結果、新しいリーダーが大幅なモチベーション向上を実現しました。この効果により、欧州の超大手顧客からの受注が再開しています。
そのため、下期に向けてある程度の回復を見込んでいますが、期初に想定していたよりも回復に時間がかかっているのが現状です。
今後の進め方については、次期中期経営計画で詳しく述べたいと考えています。本日の時点では、あまり具体的な内容をお伝えすることはできません。
質問者:簡単にまとめると、上期は為替や関税還付が外部要因としてプラスに寄与したが、それを除くと、Manitex社、PM社、欧州において、実質的には想定よりも弱かったという認識でよいでしょうか?
氏家:おっしゃるとおりです。もう1点補足すると、売価の改善にはしっかりと取り組むことができています。その意味で、自助努力がまったくなかったわけではありません。ただし、一番大きな要因となったのは為替と関税還付であることは、事実です。
質疑応答:欧州事業の収益性改善施策と下期および来年度の見通しについて
質問者:欧州の上期の実績は、想定より回復が遅れている一方で、生産効率や習熟度は大幅に向上しているとのお話でした。
決算短信を見ると、欧州事業はまだ2桁億円の赤字となっています。下期の見通しや、来年に向けた収益性の改善施策、収益の目標について、お話しいただける範囲で教えていただけますか?
氏家:欧州が苦戦していることは事実です。ただし、生産効率は大幅に向上しています。
日本に生産を移管した2軸および3軸のモデルについて、2軸はすでに市場で販売を開始しており、3軸は欧州以外の地域では販売できていますが、肝心の欧州市場にはまだ投入できていません。
日本で製造した製品を欧州に輸出するには、ホモロゲーション(法規認証)に多くの時間が必要です。もともとの設計案はドイツで作られたものであり、基本的には認証を通らない理由はないはずですが、工場の認定など複数の要因で時間を要しています。
これが解決すれば、まず小型モデルについて、日本製で価格競争力のある製品を投入できますので、大きなプラスになると考えています。
一方で、先ほど申し上げた100トンや200トンといった歯抜けになっている重要なモデルについてです。
どれだけのスピードで戻すことができるのか、すなわち旧モデルの再開を選ぶのか、あるいは現在設計中の新モデルを急がせるのかについては、まだ結論には至っていません。この問題が解決せず、製品ラインアップがそろわない限り、競合と本格的に戦うのは非常に難しいというのが現状です。
また、クローラクレーンについては、安価なものでも1台10億円程度と非常に高額です。この売上がどの期に計上されるかによって、全体の売上が大きく変動します。
前年度の上期と今年度の上期を比較すると、前年度の上期にはクローラクレーンの売上が多く計上されていました。今年度は下期に売上が計上されるクローラクレーンがありますが、それによって黒字転換できるとまでは言えません。
今期の欧州事業については、現時点では前期とほぼ同じボトムラインになると考えています。ただし、現在取り組んでいる内容や状況を把握できるようになってきており、来期に向けてはもう少し良い状況を描けると考えています。詳細については、中期経営計画の発表までお待ちいただければと思います。
質問者:承知しました。来年は損益がやや回復する可能性はあっても、損益均衡や黒字化にはもう少し時間がかかるとの理解でよろしいでしょうか?
氏家:おっしゃるとおりです。一般的に言われる、一度大きな損失を出した後に急激にV字回復するような展開にはならないと考えています。時間をかけて、慎重に進めていきます。
質疑応答:来年の業績の見通しについて
質問者:少し気が早いかもしれませんが、来年の業績イメージを教えてください。
今年入った関税還付は来年にはなくなると思います。一方で、北米は受注残がかなりたまっており、データセンター向けなどでクレーンの売上が伸びそうです。日本については、先ほど造船向けの売上が来年かなり伸びるというグラフもありました。
欧州は少しずつ改善しているものの、外部要因の影響もあって不透明感が残りますが、来年の業績の見通しについて、プラス要因とマイナス要因を交えながらコメントをお願いします。
氏家:まず、当社にとって一番影響力のある北米市場についてですが、現在も商談は非常に活発です。
当社の見通しとして、大統領選挙の前年後半にはシフトダウンする傾向があります。来年の後半がこれに該当するため、大統領選挙に向けて来年下期から商談が減少する可能性があることを懸念しています。
ただし、来年前半までの商談は非常に堅調であると考えています。そのため、来年の北米市場の売上で大きなマイナスが生じるとは想定していません。
TISの造船向けジブクレーンについて、スライド右下には2027年の数字が示されています。新設売上高は2025年から2027年にかけて増加し、2027年には今期の3倍以上となる見通しです。
しかしながら、先ほど申し上げた当社の工場での組み立て開始は2029年となります。
そのため、2027年と2028年については、なんらかの方法でどこかで生産することを前提としています。それでも、このような状況になっています。2027年については「受注済み」と記載のとおり、すでに受注している数字ですので、ほぼ確実です。
これに加え、新規受注が入れば、TISの場合は工事進行基準で売上を計上しますので、上乗せが発生すると考えています。このように、TISは成長の余地が非常に大きいと認識しています。
これはクレーン部門に関する話ですが、造船業界では同時に高所作業車も必要となります。自走式高所作業車は造船向けの非常に重要な製品であり、新規システムなども現在開発中です。また、来年に向けて新製品が登場する予定です。
このようなかたちで、造船向け需要を着実に確保していきたいと考えています。この領域は明確に希望の持てる分野だと見ています。
質疑応答:Liebherr社との競合状況とマーケットシェア戦略について
質問者:Liebherr社について、欧州ではどのような競合関係にあり、シェアや価格競争はどのような状況でしょうか? また、北米ではLiebherr社の影響は出ていないでしょうか? 御社が強いRTとATに分けたほうがよければ、それぞれの競合状況を教えてください。
氏家:Liebherr社は総合建機メーカーであり、クレーンが非常に強いメーカーです。
当社の足元の欧州マーケットシェアは5パーセントから6パーセントです。2019年にDemag社を買収した際、単純に合算するとシェアは20パーセント程度でしたが、それ以降低下してきました。
現在はさまざまな事情によりシェアが6パーセント程度まで落ち込んでいますが、少なくとも25パーセントまでは回復できると信じています。この低下の要因としては、先ほど申し上げたようにプロダクトレンジの中で、どこを重点的に戦うかという選択の問題があると考えています。
2019年頃に立てた計画では、台数の多い小型領域に注力し、モデルを拡充しました。この考え自体が間違っているとは言い切れませんが、ドイツで生産する場合、どうしても価格が高くなります。
そこで、当社は現在、日本での生産に切り替えています。この方針によって、生産コストを圧倒的に抑え、リードタイムも短縮が可能となりました。競合には難しい、日本での生産を活用し、巻き返しを図っています。
一方、当社がDemag社を買収した最大の目的は、450トンを超える機械を手に入れることでした。
Demag社には、450トン以上の500トン、700トン、1,000トンのモデルがありました。しかし、ディーゼルエンジンの生産終了などにより、700トンと1,000トンのモデルはすでに製造中止となり、500トンのモデルが生産を継続している状態です。
歯抜けになっていた100トンや200トンの部分を補完します。小型モデルについては、2019年頃にドイツでの生産に注力する方針を見直し、日本に移管しました。これは大きな転換点となります。
現在、40トンモデルは日本で生産を開始しており、60トンモデルはおそらく来年中に上市できる見込みです。このように整理・統合を進めることで、欧州での競争力が復活すると考えています。
米州におけるラフテレーンクレーンでは、当社のマーケットシェアが50パーセント程度となっています。ここで重要な点は、関税などの影響を慎重に考慮することです。
今後も新規導入モデルなどを追加することで、ラフテレーンクレーンにおいて北米市場でも日本市場でもリーダーであり続けることを目指しています。
北米のオールテレーンクレーンについては、欧州と異なり、当社は25パーセントから30パーセント程度のマーケットシェアを保持しています。
北米においてもいくつかの競合企業は存在しますが、当社の状況は欧州市場と比べてかなり堅調です。その背景には、当社のコストが高かった時代に、利益率の高い北米市場へのアロケーションを増やしたことがあります。現在もコストは高い状態が続いていますが、その取り組みが現在の成果につながっています。
また、欧州市場でのシェア向上は非常に重要です。当社としては、25パーセント程度のマーケットシェアを十分に達成できると確信しています。