■今後の見通し
1. 2027年3月期業績見通し
さくらケーシーエスの新中期経営計画の初年度である2027年3月期の業績予想は、売上高25,700百万円(前期比8.0%増)、営業利益1,420百万円(同1.1%増)、経常利益1,620百万円(同0.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,230百万円(同0.5%増)となっている。増収を見込む一方で、利益面では小幅な増益にとどまる見通しである。
前期比8.0%の増収を見込む主な要因として、金融関連部門においてSMBCグループを中心とするIT投資の継続が見込まれること、公共関連部門で本格化した自治体システム標準化案件の継続が期待されること、産業関連部門では収益性の高いSAPビジネスの拡大が想定されることが挙げられる。
損益面では、増収効果に加え、収益性の高いビジネスに注力することによる売上総利益率の改善を見込んでいる。一方で、人材確保に向けた処遇改善として3期連続で平均約5%の給与ベースアップを実施したほか、積極的な採用活動、生成AI活用推進、新データセンター関連など、将来の収益獲得に向けた先行投資を拡大する計画である。この結果、営業利益の伸びは前期比1.1%増にとどまり、営業利益率は前期の5.9%から5.5%へ低下する見込みである。
2027年3月期第1四半期は、成長投資の増加により利益は前年同期を下回る
2. 2027年3月期第1四半期の業績概要
2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)業績は、売上高5,175百万円(前年同期比4.3%増)、営業損失4百万円(前年同期は64百万円の営業利益)、経常利益103百万円(同24.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は71百万円(同22.6%減)となった。売上高は前年同期を上回ったものの、営業損益は赤字に転じ、経常利益と親会社株主に帰属する四半期純利益は減益となった。もっとも、減益の主因は計画的な成長投資によるものであり、売上高・利益面ともにおおむね会社想定に沿って進捗していると考えられる。
売上面は、産業関連部門においてシステム構築及びシステム機器販売が減少したものの、金融関連部門においてシステム構築が増加したことにより増収となった。
利益面を見ると、増収効果や収益性の高い案件の寄与により売上総利益は前年同期比5.9%増となり、売上総利益率も同0.4ポイント改善し26.3%へ上昇した。しかし、販管費の増加が売上総利益の伸びを上回ったことで営業損失に転落した。販管費は、オフィス環境整備などの設備投資に加え、給与のベースアップや人材育成のための教育研修など、成長に向けた先行投資を実施した結果、1,365百万円(同11.9%増)へ増加した。営業外損益では、期末に係る受取配当金及び資金運用による受取利息が増加したものの、先行投資による営業損失の影響を吸収するには至らず、経常利益と親会社株主に帰属する四半期純利益ともに2ケタ減益となった。
なお2027年3月期第1四半期より、2026年4月1日付の組織変更に伴い、産業関連部門の一部を金融関連部門に集計する方法へ変更している。以下の増減率は、前年同期の数値を変更後の区分に組み替えたうえで比較したものである。セグメント別に見ると、金融関連部門はSMBCグループ向けの収益性の高い情報化投資案件が寄与し、売上高2,064百万円(前年同期比24.2%増)、営業利益507百万円(同51.2%増)と2ケタの増収増益となった。公共関連部門は自治体情報システムの標準化案件が計画どおりに進捗し、売上高1,246百万円(同0.8%増)、営業利益67百万円(同0.6%増)と、前年同期並みの水準を確保した。一方、産業関連部門は前期にあった高採算の大口システム構築案件やシステム機器導入案件の反動減に加え、SAPビジネスに関わる人材育成のための成長投資が影響し、売上高1,864百万円(同9.6%減)、営業利益280百万円(同28.3%減)の減収減益となった。
AI活用、人的資本、株主還元を軸に中期経営計画は計画どおり進展
3. 中期経営計画の進捗状況
第1四半期における中期経営計画の主な取り組みについて、同社は計画どおりに進捗しているとの認識を示している。株主還元では、DOEを指標とする方針の下、2027年3月期は年間62.0円の配当を予定しており、6期連続増配を見込んでいる。
新たな収益獲得に向けた研究開発については、システム開発の要件定義から運用保守までAIと協働する新プロセスの検証に着手し、第1四半期に41百万円を研究開発に投資した。また、AI利活用に関してはCAXOとAX推進部を新設し、AI CoEと連携してERP人材育成、案件マッチング、契約事務効率化など複数のテーマを始動させている。さらに、AIプロンプトコンテストを通じて現場発の知見共有も進めている。
人的資本経営の進化に向けては、3期連続で平均約5%のベースアップを実施したほか、オンライン学習サービスを導入し、勤続3年以上の社員を対象とするキャリアデザイン休職制度も整備した。これらにより、人材の獲得・育成・定着を支える基盤を一段と強化している。
■株主還元策
DOEを新たな指標として導入し、株主還元の強化を進める
同社は株主還元を経営上の重要課題の1つと位置付け、「高水準かつ安定的な配当」を基本方針として積極的に推進している。前中期経営計画では、連結配当性向30〜40%を目安とした安定配当を掲げていた。
前述のとおり、2026年3月期の業績拡大を踏まえ、同社は業績や財務状況、投資計画などを総合的に勘案し、連結配当性向を50%水準まで引き上げた。1株当たり年間配当55.0円(中間配当17.0円)を実施し、5期連続の増配となった。これにより、配当性向は50.3%、DOEは3.2%となった。
一方、新中期経営計画では、従来の配当性向に基づく利益連動型の還元方針から、DOEを重視する株主還元方針へ転換した。これは、成長投資を積極的に進めるなかで、利益水準の変動に左右されやすい配当性向から、DOEに転換することで、高水準かつ安定的な配当を積極的に推進する姿勢を投資家へ明示するものである。資本政策の面では、保有意義が低下した政策保有株式を計画的に売却するとともに、ROEが資本コストを上回る水準を確保しながら、余剰資本については株主還元及び成長投資へ配分する方針である。また、キャッシュ・アロケーションや余剰資金の状況を踏まえ、新中期経営計画期間中にDOE3.5〜4.0%の水準を維持することを目標としており、株主還元のさらなる拡充・強化を図る。
こうした方針を反映し、2027年3月期の年間配当は6期連続の増配となる1株当たり62.0円(中間配当31.0円)を予定している。これに伴い、配当性向は56.5%まで上昇する見込みであり、引き続き高水準の株主還元が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)