■今後の見通し
2. ラクスとの資本業務提携について
ROBOT PAYMENTは8月12日付で、法人向けクラウドサービスの大手であるラクスとの資本業務提携及び第三者割当による自己株式処分を発表した。法人向けで強固な顧客基盤と販売・マーケティング力を持つラクスと、請求・債権管理領域におけるプロダクト開発力及びサービス提供実績を有する同社の強みを相互に活用することで、両社の事業成長及び企業価値の向上を目指す。
(1) 業務提携の内容
提携内容として、同社がラクス向けに「請求管理ロボ」のOEM開発を行い、2026年内にラクスが「楽楽債権管理」として販売を開始する計画である。ラクスは2025年7月より自社開発による「楽楽債権管理」を展開していたが、顧客数を拡大していくためには機能強化が必要で、自社開発を続けるよりも同領域で先行する同社の技術開発力を活用することが得策とラクスは判断した。なお、従来の自社開発版は「楽楽債権管理Lite」としてサービスを継続する予定だ。
OEM製品は、「請求管理ロボ」の主要機能(請求データ連携・作成、発行・送付、集金、消込、未収連絡)のうち、集金・消込・未収連絡の機能を切り出してラクス向けに再構築したものである。ラクスが提供する電子請求書発行システム「楽楽明細」の機能(データ連携・作成、発行・送付)と組み合わせることで、「請求管理ロボ」と同等の機能を有することになる。「楽楽明細」は売上高・導入社数でトップシェア(累計導入社数で17千社※)となっている。まずはラクスの既存顧客に対して新たな「楽楽債権管理」の販売を進めていくものと思われる。
※ 2026年6月末時点。
同社の「請求管理ロボ」とのカニバリが懸念されるが、その影響は限定的と弊社では見ている。ラクスの顧客層が全国のメーカー・卸売業中心であるのに対し、同社は都市部のIT企業や士業、クラウドサービス事業者などが中心で、ターゲット顧客層が異なるためだ。むしろラクスの顧客基盤や販売力により「楽楽債権管理」の顧客拡大が進むことによるプラス効果のほうが大きいと弊社では見ている。
なお、「楽楽債権管理」の役割分担は、同社が開発・保守を、ラクスが営業・マーケティング及びカスタマーサクセスを担う体制となっている。同社は本事業においてレベニューシェアを売上高に計上し、費用には開発・保守コストを計上する。開発面では今後数年かけて段階的な機能拡充を進める。ラクスは2029年に「楽楽債権管理」で1,000社の顧客獲得を目標に掲げている。仮に月額利用料金を4万円と設定した場合、全体で年額5億円規模の売上高となり、同社とラクスでレベニューシェアすることになる。
今回の事業提携により、加速度的に売上を伸ばす事業展開※のスピードは一段と加速すると弊社では見ている。ラクスの販売力をテコに顧客数及び請求取引高が拡大し、ファイナンスサービス(RBF等)を展開する機会が大幅に増えるためだ。さらに、顧客基盤の拡大に伴い請求・債権管理領域のデータ蓄積が加速すれば、AI分析や機械学習を通じた高付加価値機能の提供が可能となり、中長期的な競争優位性が一段と高まるものと予想される。
※ プロダクト数の拡充に伴う顧客数の拡大に加えて、クロスセル率の向上による顧客売上単価の上昇、さらには顧客の請求取引高に関わる新たなファイナンスサービスの提供を通じて成長スピードを加速する戦略を2026年2月に発表した。
そのほかの提携内容としては、営業活動や販売の相互支援や、ウェビナー及びセミナー等を通じた「楽楽債権管理」及び同社製品等のプロモーション活動、並びに利用促進を目的としたパートナー・代理店施策の検討及び実行などがあるが、まずは「楽楽債権管理」の収益化を最優先事項とする方針だ。
(2)資本提携の内容
資本提携については、2026年8月28日付で、同社の自己株式12万株(持株比率3.1%)を1株2,323円でラクスが取得する。自己株式の処分によって調達した278百万円は、今後の「楽楽債権管理」の開発費に充当していく。
2035年12月期に売上高210億円、営業利益31億円を見据える
3. 長期経営戦略
(1) 長期経営戦略の概要
同社は2025年10月に発表した長期経営戦略のなかで、増益を維持しながら明確な投資基準を設けて成長投資を実行し、売上成長を加速する方針を打ち出した。具体的には、前年営業キャッシュ・フローの金額や純資産額の水準をもとに、事業投資や株主還元等の資本配分基準を決定した。純資産50億円までは前年営業キャッシュ・フローの金額の15%を事業投資に充当(うち、20%を新規事業、80%を既存事業)し、純資産50億円を超えた段階で20%に引き上げる。新規事業領域の選定基準は、成長市場であることと、先行する競合が少ないことで判断する。既存事業への投資は、新たなマーケティング手法や機能拡張のための開発投資、営業領域の拡大、人材獲得・教育費用などが含まれる。投資基準を明確化したことで積極的な成長投資が可能となり、既存事業の成長加速と新規事業の開発・育成スピードが加速するものと期待される。
M&A、CVC資金については、純資産50億円以下で前年営業キャッシュ・フローの金額の65%、50~100億円で50%、100億円超で30%を内部留保し、大型M&A案件や有望なCVC投資の機会に備える。M&Aの対象は、既存事業の周辺領域を展開している企業やグループシナジーの創出が見込める企業となる。CVCも同様に、既存事業とシナジーが見込める企業を対象とし、投資から5年以内に含み益の金額が投資金額を上回る企業を対象とする。
株主還元については、純資産の増加に伴い還元率を段階的に引き上げる方針で、純資産が50億円となるまでは前年営業キャッシュ・フローの金額の20%、50~100億円で30%、100億円超で50%を目安に配分する。還元率は目安となる水準を下回る場合もあるが、基本的には「連続増配」を目指す。
(2) 業績目標
資本配分基準に沿った事業投資を実施した場合に見据える業績目標として、M&A効果を含めると2035年12月期に売上高210億円、営業利益31億円、M&Aを除くオーガニック成長では売上高150億円、営業利益24億円を掲げた。10年間の年平均成長率(M&Aを除く)は売上高で17%、営業利益で13%となる。売上高成長率について、今後5年間は新規事業の育成期間と重なるため10%台半ばの水準を維持し、2031年12月期以降に成長率が加速し、2035年12月期には20%台を見込んでいる。ただ、ラクスとの資本業務提携によって成長加速のタイミングが早期化する可能性も出てきている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)