■要約
1. 特殊紙製品を原点に「電気物性評価技術」を生かし、抄紙、塗工、粉体、粘・接着分野の新技術を生み出し成長
巴川コーポレーションは、1914年に「電気絶縁紙」と「電気通信用紙(さん孔紙)」の国産化という時代の要請に応えるべく創業し、1917年に前身の(株)巴川製紙所を設立した。その後「電気物性評価技術」と「抄紙、塗工、粘・接着、粉体」の生産技術を組み合わせて事業を多角化し、「製紙会社」から「高機能性材料メーカー」への転換を推進してきた。2024年1月には社名を(株)巴川コーポレーションに変更し、東京証券取引所の所属業種も「パルプ・紙」から「化学」へと変更されている。同社は「抄く・塗る・貼る・砕く」の4つのプロセス技術に、材料知見・処方技術・加工技術・評価技術を掛け合わせ、「熱・電気・電磁波」をコントロールする製品群「iCas(アイキャス)」や、環境配慮型の「GREEN CHIP(グリーンチップ)」ブランドを展開。高機能性「材料」にとどまらず、モジュール化・部品化・装置化まで手掛ける「提案型ソリューションパートナー」を標榜している。
2. 2026年3月期は前期比3.3%増収・26.2%営業増益。トナー事業の減益をハイテク関連の伸長がカバーし増益を確保
2026年3月期の連結業績は、売上高35,552百万円(前期比3.3%増)、営業利益1,618百万円(同26.2%増)、経常利益1,853百万円(同18.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益945百万円(同26.1%増)と、増収かつ2ケタ営業増益となった。売上面ではトナー事業がモノクロ製品の市況低迷で減収となった一方、機能性シート事業(特に機能性不織布)と半導体・ディスプレイ関連事業(車載用光学フィルム、半導体実装用テープ)が拡大し、全社で進めた価格転嫁の効果も加わり増収を確保した。利益面では、開発費用の増加や積極的な設備投資に伴う減価償却費・修繕費の増加があったが、増収とMIX改善による粗利率上昇、価格転嫁の進展がこれらを吸収し、2ケタ営業増益となった。また前期計上したトナー事業の貸倒引当金の一部戻し入れも利益改善に寄与している。
3. 2027年3月期は7月23日に上方修正を発表。営業利益を1,000百万円から1,600百万円へ増額し、実質前期並みの水準を確保予想
同社は2026年7月23日、2027年3月期の中間期及び通期連結業績予想の上方修正を発表した。通期予想は売上高38,600百万円(従来予想比600百万円増、前期比8.6%増)、営業利益1,600百万円(同600百万円・60.0%増額、前期比1.1%減)、経常利益1,700百万円(同700百万円・70.0%増額、同8.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益700百万円(同250百万円・55.6%増額、同25.9%減)へ引き上げた。当初計画で示されていた「営業利益38.2%減」という大幅減益シナリオは事実上解消し、営業利益は前期比ほぼ横ばいの水準まで回復する。修正理由として、1) 中東情勢の不透明感を背景とした顧客からの前倒し発注、2) 円安進行、3) 価格転嫁の想定以上の進展、4) 光学フィルム関連での新規案件受注、を挙げている。
ただし内訳を見ると、上方修正の大半は上期に集中している。中間期予想は売上高19,000百万円、営業利益は1,200百万円へ引き上げられた一方、通期からの逆算による下期の営業利益は400百万円(前年同期663百万円に対し39.7%減)にとどまり、通期営業利益の75%が上期に偏る形となっている。上期の押し上げ要因である前倒し発注は本来下期に計上されるはずの需要の先食いと判断、また当初計画に織り込まれた「中東情勢による価格転嫁未達リスク△8.0億円」のバッファーも、その相当部分が下期に影響する前提としているもようだ。下期をかなり保守的に見ており、今後、再増額修正の可能性はある。
4. 2026年8月7日発表の第1四半期は営業利益が前年同期比2.4倍。通期予想比55%の進捗率で、会社予想の保守性が実績で裏付けられる
2027年3月期第1四半期の連結業績は、売上高10,107百万円(前年同期比18.5%増)、営業利益875百万円(同136.8%増)、経常利益893百万円(同96.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益593百万円(同95.8%増)と、大幅な増収増益となった。営業利益率は8.7%(前年同期は4.3%)へ改善している。特筆すべきは進捗率で、第1四半期だけで通期営業利益予想1,600百万円の54.7%、通期純利益予想700百万円の84.7%に上る。上期予想(営業利益1,200百万円)に対する進捗率も72.9%となっている。前述の上方修正後予想がなお保守的である可能性が、四半期実績によって裏付けられた格好だ。ただし会社は第1四半期の好調を、中東情勢の不透明感を背景とした半導体・ディスプレイ関連事業及びトナー事業における顧客の前倒し発注と円安進展によるものと説明しており、7月23日修正の業績予想を据え置いた。前倒し発注は下期の反動減につながり得るため、第1四半期の上振れをそのまま通期の実力とみなすことはないとの判断と見られる。
■Key Points
・2026年3月期連結業績は前期比3.3%増収・26.2%営業増益。トナー事業の減益もハイテク関連の伸長と価格転嫁で増益を確保
・2027年3月期連結業績は期初予想を7月に主に利益を大幅増額修正し、前期比8.6%増収・1.1%営業減益予想とした。営業利益予想は1,000百万円から1,600百万円(60.0%増額)とし、当初の大幅減益シナリオは解消
・第9次中期経営計画(2027/3~2029/3)は最終年度に売上高400億円・営業利益20億円目標。初年度営業利益の16億円予想への修正で、今後の新製品群の収益拡大見通しを考慮すると、計画の前倒し達成も視野に
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)