■事業概要
5. リスク要因と課題・対策
日本創発グループが属するクリエイティブサービス業界において収益に影響を与える一般的なリスク要因としては、景気低迷による企業の販促投資抑制、デジタル化進展に伴う商業印刷物の減少、競合激化による受注条件の悪化、技術革新への対応遅れ、情報セキュリティ管理・システム障害、人材確保・育成、法的規制などがある。
こうしたリスク要因への対策として同社は、デジタル化の進展など事業環境の変化に迅速に対応し、事業資産の配分を適切に変更することで競合優位性を維持している。成長分野においてグループシナジーによる高付加価値サービスの提供を推進するため、M&Aも活用して優良な技術・顧客・コンテンツ資産を積み上げながら、ITメディア セールスプロモーション分野やプロダクツ分野への業容拡大を推進するとともに、ニーズの変化に対応するため商材ポートフォリオ、人材ポートフォリオ、事業ポートフォリオの最適化を柔軟に進めている。
■業績動向
2026年12月期中間期はEBITDA増益
1. 2026年12月期中間期連結業績の概要
2026年12月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比13.4%増の46,606百万円、営業利益が同51.6%減の639百万円、営業利益ベースEBITDAが同9.0%増の2,516百万円、経常利益が同3.8%増の1,551百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同49.3%減の839百万円となった。売上高はM&A効果のほか、既存事業会社も伸長して増収となった。営業利益は原材料価格高騰の影響、M&Aや人的資本投資に伴う人件費の増加、生産性向上に向けた設備投資に伴う減価償却費の増加などにより減益となった。ただし営業利益ベースEBITDAは増益、経常利益は積極的な設備投資に伴う補助金収入を計上(1,122百万円)して増益となった。親会社株主に帰属する中間純利益は固定資産売却益の減少(前年同期は1,452百万円、当期は234百万円)により減益となった。
売上高の事業分野別構成比は印刷分野が68%、ITメディア セールスプロモーション分野が18%、プロダクツ分野が14%となった。前年同期との比較では印刷分野が2ポイント上昇、ITメディア セールスプロモーション分野が2ポイント低下した。売上高の前年同期比増加額は5,510百万円で、このうち新規企業連結(損益計算書)効果が約50億円となった。したがって既存事業会社の増加額は約5億円(前年同期の連結売上高41,096百万円に対して約1%増収)となる。
利益面では売上総利益が前年同期比10.4%増加したが、売上総利益率は同0.8ポイント低下して30.2%となった。売上総利益率の低下は、原材料費が用紙費の高騰などにより同23.7%増加したことが主因である。ただしチラシ印刷等の低採算取引を縮小して高付加価値化を推進したほか、重点施策として推進している生産性向上も寄与したため想定ほど低下しなかった。販管費は同17.6%増加し、販管費比率は同1.0ポイント上昇して28.8%となった。新規連結や積極的な人的資本投資に伴って人件費が同16.1%増加したほか、減価償却費が同80.5%増加、のれん償却費が同199.3%増加、賃借料が同16.0%増加した。この結果、営業利益率は1.4%で同1.8ポイント低下した。営業利益ベースEBITDAマージンは5.4%で同0.2ポイント低下にとどまった。
営業利益の前年同期比681百万円減益の増減を分析すると、増益要因が増収で5,510百万円、その他の原価減少で270百万円。減益要因が、原材料費増加で2,123百万円、外注加工費増加で543百万円、運搬費・版権料・保管費増加で200百万円、人件費増加で2,056百万円、減価償却費・のれん償却費増加で889百万円、賃借料増加で179百万円、その他の経費増加で469百万円となる。
財務面の懸念材料はない
2. 財務の状況
2026年12月期中間期末の資産合計は前期末比7,372百万円増加して92,430百万円となった。主に流動資産の受取手形・売掛金及び契約資産が2,222百万円減少、固定資産の建設仮勘定が1,335百万円減少した一方で、流動資産の現金及び預金が3,372百万円増加、固定資産の建物及び構築物が2,107百万円増加、機械装置及び運搬具が3,319百万円増加、のれんが524百万円増加した。これは、付加価値の高い印刷物へのシフトや生産性の向上に向けて、印刷製造分野で設備更新(大規模な設備廃棄+最新鋭設備の導入)を進めているためである。負債合計は同3,199百万円増加して66,974百万円となった。有利子負債残高(長短借入金と社債の合計)は同1,599百万円増加して50,374百万円となった。内訳は、流動負債で短期借入金が4,000百万円増加、1年以内償還予定の社債、1年以内返済予定の長期借入金が増減なし、固定負債で社債が250百万円減少、長期借入金が2,150百万円減少した。純資産合計は同4,172百万円増加して25,456百万円となった。利益剰余金が571百万円減少した一方で、子会社において種類株式を発行したため非支配株主持分が5,081百万円増加した。この結果、自己資本比率は同2.9ポイント低下して21.5%となった。
なお同社はM&A・設備投資・運転資金として長短借入金を活用しているが、金利上昇に対応して長期・短期のバランス調整を進めるほか、当期は子会社において種類株式を発行するなど資金調達の多様化を進めている。中長期的には有利子負債の削減や自己資本比率の向上が課題となるが、現状は有利子負債が経営上の負担とはなっていないため、特に懸念材料にならないと弊社では考えている。
■今後の見通し
2026年12月期は期初予想据え置き、EBITDA増益で過去最高見込み
● 2026年12月期通期連結業績予想の概要
2026年12月期通期の連結業績予想は期初予想を据え置いて、売上高が前期比9.2%増の95,000百万円、営業利益が同20.3%減の2,400百万円、営業利益ベースEBITDAが同24.0%増の6,600百万円、経常利益が同12.5%増の3,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同69.4%減の2,000百万円としている。売上高は既存事業会社が順調に成長し、新規連結事業会社も寄与して増収、営業利益は生産性向上など売上総利益率改善を推進するが人件費や減価償却費の増加により減益、営業利益ベースEBITDAは増益で過去最高、経常利益は営業外収益で設備投資に係る補助金収入を計上して増益、親会社株主に帰属する当期純利益は前期計上の固定資産売却益(5,758百万円)の剥落により減益を見込む。
なお人件費についてはM&Aによる人員増に加え、人的資本投資として積極採用や物価高騰を背景とした給与水準の見直しも継続するため増加を見込んでいる。減価償却費は前期比81.4%増の3,900百万円としている。2026年12月期までを事業基盤強化の時期と位置付けて高水準の設備投資を実行しているため、減価償却費が大幅に増加して営業利益を押し下げる要因となる。ただし営業利益ベースEBITDAは増益で過去最高の見込みである。そして2027年12月期は減価償却費がピークアウトすることに加え、積極的な設備投資による生産性向上効果やグループシナジー効果なども見込まれることから、営業利益は急回復、営業利益ベースEBITDAは連続過去最高が期待できると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)