岡本工作機械製作所の株価は、8月6日に2027年3月期第1四半期決算を発表して以降、4600円近辺まで調整している。ただ、足元の半導体関連事業の受注状況は前年同期比で大きく増加しており、今後の業績拡大に向けた受注環境は改善傾向にある。PBR0.7倍台かつ配当利回り3%超えで推移する中、PBRが1倍に是正されるだけでも株価は6300円超えが試算される。
2027年3月期第1四半期決算では、売上高8,244百万円(前年同期比6.3%減)、営業損失365百万円の赤字(前年同期は153百万円の営業利益)で着地した。セグメント別では、工作機械は国内で中型平面研削盤の更新需要があったほか、米国では航空宇宙産業向け、中国では産業機械、金型、半導体装置向けを中心に大型平面研削盤が好調に推移した。一方、半導体関連装置は一部案件がユーザーの要望で第2四半期以降へずれ込んだことなどから、減収減益となった。
ただし、第1四半期に計上を予定していた案件の一部は第2四半期以降に売上計上される見込みであり、先行指標となる受注高は大幅に拡大している。第1四半期の受注高は15,934百万円(同2.0倍)となり、うち工作機械が8,922百万円(同39.8%増)、半導体関連装置が7,011百万円(同4.7倍)となった。受注残高も34,874百万円(同20.7%増)と高水準。生成AIの普及に伴うAIデータセンター投資の拡大を中心に市場の成長が見込まれるなか、市況としてはシリコンウェーハ市場では在庫調整の正常化が進みつつあるとともに、先端パッケージであるPLP向け加工装置など次世代分野への関心も高まりつつある。このような状況で同社は、半導体事業の収益力維持・向上を目指して、ウェーハ業界向けのポリッシャーやグラインダの次世代新機種開発などの施策を推し進めており、国内や東アジア向けにファイナルポリッシャーの受注を獲得した。足元の売上・利益は案件の計上時期による影響を受けているものの、受注面では今後の業績拡大につながる動きが鮮明になっている。通期では売上高50,000百万円(前期比17.6%増)、営業利益3,000百万円(同97.6%増)を見込む。第1四半期は営業赤字となったものの、会社側は期初の業績予想を据え置いている。
同社は研削盤と半導体関連装置を主力とする総合砥粒加工機メーカーである。平面研削盤では世界的に高いシェアを誇り、独自の精密加工技術を軸に金属加工から半導体ウェーハまで幅広い産業分野に展開している。事業は工作機械、半導体関連装置を中心に、歯車や鋳物などを手掛ける精密部品・素材までカバーする。工作機械で培った「削る」技術を半導体分野へ展開してきた点が特徴で、加工・製造から販売、アフターサービスまで一貫して提供できるグローバルな事業基盤を構築している。
同社の競争優位の源泉は、創業以来約100年にわたり蓄積してきた研削技術と、それを半導体分野へ応用してきた技術開発力にある。もともとは工作機械メーカーとして発展してきたが、約30年前に半導体関連企業を傘下に収め、ウェーハの研削・研磨領域へ進出した。半導体装置ではファイナルポリッシャーと呼ばれる最終工程の研磨装置を中心に、国内では高い市場シェアを持ち、世界大手ウェーハメーカーへの納入実績を有する。砥石を用いて高精度に「削る」研削技術と、表面を高精度に「磨く」研磨技術の双方を持つことが大きな特徴であり、工作機械と半導体関連装置の技術を相互に活用できることも差別化要因となっている。さらに、シリコンウェーハで培った加工技術をSiC・GaNなどの高硬度材料やLT/LN、PLPなどの先端パッケージ領域へ横展開しており、半導体材料・製造技術の変化を新たな成長機会として取り込める技術基盤を有する。また、三井物産との資本業務提携を通じ、販売網や人材、事業開発面での知見も取り込みながら、技術力をグローバルな事業拡大につなげる体制を整えている。海外ではEllison Technologies(米三井物産子会社)と連携し、工作機械・半導体装置の販売拡大を進めている。
市場環境をみると、半導体分野では生成AIの普及に伴うAIデータセンター投資の拡大やIoTの進展などを背景に、中長期的な市場拡大が期待されている。シリコンウェーハの在庫調整も正常化が進みつつあるほか、先端パッケージであるPLP向け加工装置など次世代分野への関心も高まっている。同社でも国内や東アジア向けにファイナルポリッシャーの受注を獲得している。一方、工作機械では国内の中型平面研削盤の更新需要に加え、米国では航空宇宙産業、中国では産業機械、金型、半導体装置向けの大型平面研削盤の需要が堅調である。地政学リスクや米国の通商政策など不透明要因は残るものの、足元の受注環境は工作機械、半導体関連装置ともに良好な状況にある。
中期経営計画「INOFINITY700」は3年目に入り、2030年3月期に売上700億円、営業利益率16%、ROE17-18%を目指す。中長期戦略では半導体関連装置事業を積極投資セグメントとして位置付け、次世代材料・先端半導体領域での事業拡大を図る一方、工作機械事業では収益性の高いコア機種での成長と収益力改善を進めていく。半導体分野では従来のシリコンウェーハに加え、SiC・GaN・LT/LNなど新素材対応のグラインダ開発を進めるとともに、生成AIの普及に伴って拡大が期待されるPLPなど先端パッケージ領域にも展開する。半導体関連装置事業では2026年3月期の売上高129億円から2030年3月期に300億円を目指しており、新機種の開発と段階的な市場投入を進める。2025年12月にはさいたま市に東京テクニカルセンターを開設し、最新装置の紹介、テスト加工、設計・製造へのフィードバック、長期耐久試験、市場情報収集の拠点として活用を開始した。九州地区では、高硬度材向けグラインダの将来的な生産に向けた体制整備を進めるなど、中長期的な生産能力の強化に取り組んでいる。そのほか、工作機械でもコア機種である平面研削盤を中心に北米・中国・インド展開を図り、三井物産との連携を活用した顧客開拓を推進していく。
株主還元では、2028年3月期に配当性向45%を目標として掲げている。従来の30%水準から大幅に引き上げ、安定的かつ持続的な配当を重視する姿勢を鮮明にした。2027年3月期の年間配当は160円を予定している。経営資源を成長が期待される半導体関連装置分野へ重点的に投入する方針を明確化しており、M&Aも視野に入れ、三井物産との連携による開発・販売・人材面でのシナジーを追求する。海外では米国・インドを重点市場とし、Ellisonとの協業を通じた販売網拡大も進めている。
総括すると、岡本工作機械製作所は「研削」と「研磨」を両輪とする独自技術を武器に、半導体分野での地位をさらに高めつつある。受注残高も前年同期比20.7%増の高水準となるなか、足元の損益以上に先行きの業績拡大を期待させる内容となっている。中長期では、SiC・GaNなどの次世代材料に加え、PLPなど先端パッケージ領域への展開、東京テクニカルセンターを活用した開発力・提案力の強化、三井物産・Ellisonとの連携による販路拡大が成長ドライバーとなる。豊富な受注残を着実に売上・利益へ転換し、成長軌道へ回帰できるか、今後の業績進捗に注目しておきたい。